2016年8月20日9時00分に産経新聞から、下記趣旨の記事が図解付きでネット配信されていた。
8月16日11時43分に毎日新聞からも、同趣旨の記事が図解付きでネット配信されていた。
視覚障害者の男性が、盲導犬を連れていたにもかかわらず駅のホームから転落し、電車にはねられて死亡した。
視覚障害者にとって「欄干のない橋」、「柵のない絶壁」ともいわれる駅のホーム。
危険性はたびたび指摘されており、鉄道各社は対策に取り組んでいるが、転落事故は後を絶たない。
なぜ男性はホームから転落したのか。
どうしたら事故は未然に防げたのか。
事故が起きたのは15日午後5時45分ごろ。
東京都港区の東京メトロ銀座線青山一丁目駅ホームで、盲導犬を連れていた世田谷区の会社員の男性(55)が、近くにある勤め先の会社から帰宅途中に、線路に転落した。
男性は進入してきた電車にはねられ、病院に搬送されたが、まもなく死亡した。
ホームには、主を失った盲導犬が残されていた。
警察などによると、男性はホームの線路に近い端に配置された点字ブロックを歩いていた。
ホームの幅は約2.9m。歩いていた点字ブロックの先には、一部にかかる形で柱があり、通れる幅が狭くなっていた。
東京メトロによると、転落する直前、白線より外側のホームの端を歩く男性に駅員が気付き、白線の内側に戻るようアナウンスしたが、間に合わなかったという。
防犯カメラの映像には、男性が少しずつ線路に近寄っていき、右手に盲導犬のハーネス(胴輪)を握ったまま、左足を踏み外して転落する様子が写っていた。
捜査関係者は、「盲導犬が柱を避けようと線路側に寄り、男性が転落した可能性がある」と指摘するが、原因は明らかになっていない。
男性の盲導犬を訓練した北海道盲導犬協会によると、男性が連れていたのはラブラドルレトリバーの「ワッフル号」(雌、4歳)。
同協会によると、盲導犬は障害物があると、5mほど手前でも、よける行動を取る可能性があるという。
ただ、男性が落ちたのは、柱の手前約10mの場所で、盲導犬は柱を急に避ける動きはしていなかった。
盲導犬が初めから柱を認識し、ホームの端を歩いていた可能性もある。
一方で協会は、「ホームを歩く際は、線路側に盲導犬を置くことを指導している」と説明するが、事故当時は位置が逆で、男性が線路に近い場所を歩いていた。
警察は、転落の詳しい状況を調べている。
東京メトロは、点字ブロックの一部に柱がかかって通れる幅が狭くなっていた構造について、「先に柱が立っていたところに点字ブロックを設置したため。法律上、問題はない」としている。
その上で、「点字ブロックは、これよりホーム側を歩いてくださいという意味で設置している」という。
視覚障害者がホームから転落する事故は、後を絶たない。
平成23年1月には、JR目白駅で全盲でブラインドテニスの先駆者だった武井視良さん=当時(42)=がホームから転落、死亡する事故が発生。
24年3月にも、東武東上線の川越駅で、男性が転落して列車にはねられ死亡している。
国交省によると、視覚障害者がホームから転落した事故は21年度の38件から増え続けており、24年度には92件になった。
日本盲人会連合のアンケート(23年)でも、回答した視覚障害者252人のうち37%が「ホームからの転落経験がある」と答え、60%が「転落しそうになったことがある」と答えている。
事故防止の決め手とされるのがホームドアだ。
アンケートでも、転落防止策を問う質問には、「ホームドアの設置」(228人、複数回答可能)という声が最も多かった。
今回、事故があった青山一丁目駅は昭和2年開業と古い地下鉄で、ホームドアは設置されていなかった。
コスト面の問題から、ホームドアの普及は進んでいるとは言い難い。
国交省によると、今年3月末現在で、1日10万人以上が利用する全国約250駅のうち、可動式ホームドアが設置されているのは77駅で、全体の約3割に過ぎない。
1日3000人以上が利用する全国約3500駅では、2割弱の665駅(昨年3月末現在)だ。
東京メトロでは、全179駅のうち、85駅でホームドアを設けている。
設置率は約47%だが、東京都営地下鉄の約6割、JR山手線の約8割と比べて低い。
東京メトロ広報は、「相互乗り入れの路線が多く、他社との調整に時間がかかっている」などと説明する。
今回事故が起きた銀座線は全線開業が1939年と古く、ホームの強度を確保してからドアを設置する必要があるため、設置工事が遅れている。
現時点で、上野駅の片側にしかない。
平成29年度から整備を始め、総額約90億円をかけて、30年度中に渋谷駅と新橋駅を除き完成する予定。
新橋、渋谷両駅では、30年度以降に設置するという。
千代田線は32年度、日比谷線は34年度の完成を目指している。
東西線と半蔵門線は調整中だ。
事故を受け、東京メトロは、「体の不自由な乗客が利用する際には動向を注視し、必要な声掛けをする」との文書を各駅に通知し、ソフト面の対応強化に乗り出した。
捜査関係者は、「声がけやホームドアなど複数の施策を組み合わせてこそ、有効な防止策が実現するだろう」としている。
出典
『視覚障害男性の転落事故はなぜ防げなかったのか 駅のホームは「欄干のない橋」も同然だった』
http://www.sankei.com/affairs/news/160820/afr1608200002-n3.html
『盲導犬男性転落死 点字ブロック上に柱 白線の線路側に』
http://mainichi.jp/articles/20160816/k00/00e/040/232000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。