2019年5月8日6時2分に神戸新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
兵庫県は7日、瀬戸内海の水質管理について、下水処理場などの排水基準の一部を本年度中に緩和する方針を明らかにした。
排水に含まれる窒素とリンは海水の「栄養塩」とされ、その減少がノリの色落ちやイカナゴの不漁などの原因とされている。
見直すのは、水の汚れを示す生物化学的酸素要求量(BOD)の規制値。
瀬戸内海では、かつて家庭や工場の排水などで窒素やリンが過剰となり、プランクトンが死滅する赤潮が頻発した。
そこで県は1974年に条例を制定して、BODを厳しく規制。水質改善に取り組んだ。
ところが近年、水質改善の一方で、海水中の栄養塩が低下して水産資源の減少や品質の低下につながっているのではないかとの懸念が浮上。
県の規制改革推進会議が今年4月、排水基準の見直しを提言した。
井戸知事はこの日の定例会見で、「環境基準の範囲内で、栄養塩を増やす対応を考える。海がきれいになりすぎず、魚がすめるようにしていきたい」と述べた。
今後、県環境審議会にBOD規制の科学的検証などを要請。
その検証を踏まえて、来年3月までに条例を改正する方針だ。
出典
『イカナゴ不漁の原因? 瀬戸内海への排水基準見直しへ』
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201905/0012309524.shtml
(2019年6月3日 修正1 ;追記)
2019年6月3日付で神戸新聞から、全国で初めて海水中の窒素濃度基準に下限を設ける方針など、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
兵庫県は、県内の瀬戸内海で水質の環境基準を独自に見直す方針を固めた。
瀬戸内海は水質改善が進んだ半面、魚介の栄養素となる窒素などの「栄養塩」が減り、漁獲量の減少やノリの色落ちが問題となっている。
国の現行基準は、窒素の濃度を、工場地帯などを除き、主に海水1ℓ当たり「0.3mg以下」としているが、県は「同0.2mg」という下限基準を加え、一定の窒素濃度を保つ考え。
県によると、海水の環境基準に下限を設けるのは全国初という。
3日の県環境審議会の小委員会で新基準案を提示する。
同委員会での議論を経て、早ければ年内にも下限基準が設けられる見通し。
県内の瀬戸内海の窒素濃度は、高度成長期直後の1977年度に、1ℓ当たり0.7mgまで上昇。
窒素などの栄養塩を餌とするプランクトンの大量発生で赤潮が多発し、「瀕死の海」と呼ばれた。
73年には瀬戸内海環境保全臨時措置法(現在の瀬戸内海環境保全特別措置法)が制定され、工場排水などの規制が強化された。
これにより窒素濃度は年々低下。
2016年度には、工場地帯を除くと同0.14~0.18mgとなり、劇的に水質が改善した。
一方、90年代半ばからノリの色落ちが顕在化し、近年は春の風物詩であるイカナゴのシンコ(稚魚)が極端な不漁に陥っている。
こうした問題から15年に特別措置法が改正され、「美しい海」を求めてきた政策を転換。
水産資源が豊富な「豊かな海」を目指す理念を掲げた。
18年には,水産庁の外郭団体が漁業者らに対し、水産生物に最適な窒素濃度を「0.2mg以上」とする参考値を示していた。
県は、同法改正などを受け、既に一部の下水処理場から海に流す水の窒素濃度を高める試みを進めており、新基準と合わせて対策を加速させる方針。
県環境審議会の委員会メンバーである藤原建紀・京都大名誉教授(水産学)は、「窒素濃度0.2mg以下は、ダイビングに適するほどの透明度。瀬戸内海では、海藻だけでなくアサリや小魚などにも影響が出ており、対策が急がれる」としている。
◇ ◇
【栄養塩】
植物プランクトンや海藻の栄養となる、海水中に溶けた窒素やリン、ケイ素など。
不足すると、カキの質低下などにもつながるとされる。
植物プランクトンを餌とする動物プランクトン、さらにこれを食べる魚・・・という食物連鎖を支える要素にもなっている。
出典
『水質改善しすぎても…全国初、県が窒素濃度に下限』
https://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/201906/0012391196.shtml
(2019年12月9日 修正2 ;追記)
2019年12月8日11時33分に神戸新聞から、兵庫県は条例を改正し海水中の窒素濃度に下限値を設けたなど、下記趣旨の続報記事が図解付きでネット配信されていた。(新情報に基づき、タイトルも修正した)
兵庫県は瀬戸内海の海水について「きれい過ぎてはダメ」と、水質管理に新たな基準を設けました。
これまで「きれいな海」を目指して規制してきた海水中の窒素濃度について下限値を設け、下水処理場の水質基準も見直します。
「豊かな海」を目指すそうですが、どういうことなのでしょう?
【高度成長期 排水による汚染改善向け法律や規制】
高度成長期、阪神や播磨の工業地帯が栄えた一方、工場や家庭の排水で川や海の水は濁り、水をきれいにする法律や規制ができました。
瀬戸内海では植物プランクトンが大量発生し、赤潮が頻発。
海の酸素を消費し、浜辺にたくさんの死んだ魚が打ち上げられました。
近畿や中四国、九州の沿岸自治体は瀬戸内海をきれいにするよう求め、1973年に瀬戸内海環境保全臨時措置法が、78年には同保全特別措置法(瀬戸内法)が制定。
プランクトンの栄養が増え過ぎた「富栄養化」解消に向け、「栄養塩」とされる窒素やリンの濃度も規制されました。
排水処理技術の向上や下水道の普及もあり、海への窒素やリンの供給はどんどん減少。
窒素やリン、水の汚れを表す指標、化学的酸素要求量(COD)は低下し、多い年には120件に迫った赤潮の発生は、年約20件にまで減りました。
【海水浄化 漁獲量に異変】
ところが、瀬戸内の漁業に異変が。
年7万~8万トンほどあった漁獲量(養殖業を除く)が、96年以降は6万トン台に減り、質、量とも全国屈指の養殖ノリが色落ちするように。
窒素やリンは農作物肥料の主成分で、海藻や植物プランクトンの栄養です。
それを食べる小魚、大魚と連なる生態系に異常が起きていると指摘され始めました。
沿岸自治体を中心に、対策を求める声は高まり、2015年には国会の議員立法で改正瀬戸内法が成立。
美しさを求めるだけでなく、「豊かで美しい海」を目指す政策へと転換されました。
海底を土砂でかさ上げし、岩を沈めて魚介のすみかや産卵場をつくるなどし、陸でもため池の水を抜き、海に栄養素を供給する「かいぼり」が復活。
栄養豊かな池の水を海に届ける活動が広がりつつあります。
しかし、兵庫県沿岸の瀬戸内海の漁獲量は4万トン前後と、回復しません。
17年には春の味覚、イカナゴのシンコ(稚魚)の漁獲量が前年の1割に届かず、18年、19年も低迷し続けています。
県は、瀬戸内海の栄養塩の回復策を、専門家でつくる県環境審議会に諮問(相談)。
改正瀬戸内法は栄養塩の減少と水産資源への影響に関する調査の必要性を指摘しましたが、具体策は示しておらず、審議会は、海の窒素やリンの濃度、COD、漁獲量の変化などを検証しました。
00年以降、工場地帯を除く県沿岸の瀬戸内海の栄養塩濃度はピーク時の3分の1と、スキューバダイビングに適するほどに薄まっていたのです。
漁獲量の減少との関係も示唆されました。
【栄養増やす取り組み】
審議会の議論を経て、県は今年10月、条例を改正し、窒素とリンを減らそうと規制してきた上限値に加え、減らし過ぎないために県独自の下限値(窒素は海水1リットル中0.2ミリグラム)を設けたのです。
同時に、豊かで美しい瀬戸内海の再生に努めることを事業者や県民の責務としました。
さらに、海の栄養が減る冬場、下水処理場の排水に含まれる窒素をあえて残す「季節別運転」の実効性を高めるため、生物化学的酸素要求量(BOD)値の規制撤廃に必要な条例改正案を県議会12月定例会に出しました。
工場排水にも多くの窒素が含まれ、陸から海に届く約3割を占めています。
企業の窒素放流を促すため、県は本年度中にガイドラインをまとめる予定です。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201912/0012942544.shtml
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。