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2025年2月20日12時26分にNHK長崎から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
おととし12月、長崎県壱岐市の沖合いで乗客乗員52人が乗った九州郵船の高速船、「ヴィーナス2」が浸水して一時、自力航行できなくなったうえ、乗客4人が軽いけがをした事故で、国の運輸安全委員会が調査報告書を公表しました。
それによりますと、当時、強風と波浪の注意報が発表されていて、船首部分が波の谷間に突っ込んだ際に客室につながる点検口のふたが外れて船内に大量の海水が流入し、浸水したということです。
流入した海水は客室から配電盤がある区画に流れ込み、エンジンがかからなくなって、およそ2時間にわたって自力航行できなくなったとしています。
浸水が拡大した原因については客室の床に隙間があったことや、配電盤がある区画の壁に開けられた穴が完全には塞がれていなかったことを挙げています。
また、注意報が出ているなかで高い波が発生するおそれのある現場海域を航行したのは、船長が航行の継続を中止する条件になる前に通過し終えると思っていたことや、これまでの経験から波の谷間を航行すれば安全だと思っていたことが影響したとしています。
そして、再発防止のため、運航管理者と船長はより慎重に協議を行って運航中止や経路変更の判断を行うことが必要だとしています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20250220/5030023320.html
以下は事故報告書の抜粋。
点検口の蓋を閉めるためのスプリング状コイル15本のうち3本のネジ山が摩耗していたが翌月の入渠時に整備する予定でそのまま運航していた、乗客は船が波の谷間に突っ込んだ際の衝撃で負傷したなどと記されている。
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発生日時 令和5年12月12日 08時01分ごろ
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船長は、本船が追い波を追い越す状態で魚釣埼東北東方沖を南進中、追い波の頂部に達してデプスハンドルで翼深度を下げて追い波を乗り越えた後、次の追い波も同様にデプスハンドルを操作して乗り越えようとしていたところ、追い波の頂部に達したとき、波高が約3.0m~3.5mで波長が短い波であることに気付いた。
本船は、船長がデプスハンドルの翼深度を下げる操作を行ったものの、船首水中翼が波の斜面を飛び出し、揚力を失った状態で船体が急激に前方に傾いて船首部が落下し、08時01分ごろ船首部が前方の波の谷間に突っ込んだ。
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本船は、11月末ごろ船首部ストラット及び船首水中翼等の点検並びに整備作業の目的で、点検口の蓋を開放した際、5か所のスプリング状コイルに不良箇所(ねじ山の衰耗)が判明し、六角レンチで六角ボルトを十分に締め付けることができない状態であった。
スプリング状コイルの予備が2個あったので、締め付けのバランスを考慮して2か所のスプリング状コイルの交換補修が行われ、交換補修がなされなかった3か所以外の12か所が六角ボルトにより締め付けられてい た。
P19/30
A社は、交換補修がなされなかった残り3個のスプリング状コイルの発注手続きを進めていた。
また、令和6年1月26日の造船所への入渠時、六角 ボルト及びスプリング状コイルの点検並びに整備を行う予定であった。
点検口の蓋が外れた状況についてA社は、点検口の外側からの衝撃水圧によって六 角ボルト及びスプリング状コイルのねじ山に大きな力が加わり、ねじ山が破損したと推測した。
P24/30
本船が、揚力を失った状態で船首部が落下し、船首部が前方の波の谷間に突っ込んだ際の衝撃により、旅客3人が頚部捻挫等、旅客1人が外傷性腰部症候群の軽傷を負ったものと考えられる。
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運航管理者は、入手した気象及び海象情報から、荒天が予想されたものの、12日09時15分ごろ博多港に入港するまでは、A社の安全管理規程に定める発航を中止する気象及び海象条件(風速18m/s 以上、波高2.5m以 上)に達しないものと予想し、船長と運航可否の協議を行った。
船長は、僚船から対馬海峡では風速約17m/s の北北東風、波高2.0m 以上~2.5m未満であることを知った。
P27/30
船長は、荒天が予想されたものの、A社の安全管理規程に定める目的地への航行の継続を中止する気象及び海象条件に達する前に魚釣埼沖を通過し終えると思っていたことから、魚釣埼北方沖の変針予定場所に向けて本船の南東進を続けたものと考えられる。
https://jtsb.mlit.go.jp/ship/rep-acci/2025/MA2025-2-15_2023mj0107.pdf
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その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。