本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。 それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。 本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。 一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。 (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
ブログ内検索 Site Search
キーワードに合致した記事を検索できます(複数キーワード検索可)
アーカイブ Archive
最新記事 Latest Articles
(11/22)
(11/21)
(11/20)
(11/19)
(11/18)
(11/18)
(11/17)
(11/17)
(11/16)
(11/15)
(11/15)
(11/14)
(11/14)
(11/13)
(11/13)
(11/13)
(11/12)
(11/12)
(11/12)
(11/11)
(11/11)
(11/10)
(11/10)
(11/09)
(11/08)
最古記事 Oldest Article
(04/09)
(04/09)
(04/09)
(04/09)
(04/09)
(04/10)
(04/10)
(04/10)
(04/10)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
(04/11)
2012年2月8日3時26分に朝日新聞から写真や図付きで、また同日14時20分にNHK岡山から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
7日午後0時半ごろ、倉敷市のJX日鉱日石エネルギー水島製油所から「海底トンネルの掘削作業中に水が噴き出した」と119番通報があった。
トンネル内に海水が流入し、作業にあたっていた6人のうち1人は自力で脱出し軽傷だが、5人が行方不明となった。
警察は、作業工程に何らかの落ち度があった疑いもあるとみて、業務上過失致傷容疑も視野に入れ捜査する方針。
行方不明になった5人は、工事下請けの弘新建設の従業員3人と、弘栄建技の従業員2人。
JX社や元請けの大手ゼネコン鹿島によると、海底トンネルは、製油所内の「B工場」(旧ジャパンエナジー)と水島港をはさんで対岸にある「A工場」(旧新日本石油精製)を結ぶもので、2010年8月から建設作業が始まった。
B工場側で直径約11mの縦穴を約30mの深さまで掘り、そこから直径4.5mの横穴を対岸に向けて、シールド工法で掘り進んでいた。
海底の最も深いところから、トンネル上部までの距離は5m程度だった。
事故は、縦穴から140mほど掘り進んだところで起きた。
6人のうち3人が大型掘削機周辺で作業にあたり、残りは掘った土を車で縦穴まで運ぶ作業などをしていたという。
流入した海水は一気にトンネル内に満ち、縦穴の入り口付近まで上昇した。
JX社と鹿島は「落盤や重機によるトラブルで浸水した可能性もあるが、現時点ではどこからなぜ水が入ってきたのか、わからない」としている。
事故当時、偶然縦穴の底にいて脱出した弘新建設の従業員(61)は、「『危ない、逃げろ』という声を聞いて縦穴の階段を上がった」と話しているという。
警察はダイバー6人で救出活動にあたらせたが、水面の油などに阻まれて捜索が困難と判断し、7日夕にいったん打ち切った。
海底トンネルは、製油所の一体的で効率的な運営を目指す狙いがあり、完成後の総延長は約790m。石油やガスを送るパイプラインを中に通す予定だった。
約10年前には北側に別のトンネルが完成し、パイプラインを通じて石油やガスの原料を送っている。
8日午前、鹿島建設は会見で、海上保安本部の調査で見つかった海底の不自然なくぼみについて、「工事を始める前の調査では確認されておらず、事故で地盤が陥没したためできたのではないか」と述べ、事故によってくぼみができたという見方を示した。
また、「事故の直前の7日午後0時17分に、行方不明になっている作業員から地上にある事務所に携帯電話で『工事現場の電気系統になんらかのトラブルがあり、すぐに来て欲しい』という内容の電話があったことを明らかにした。
その上で、「電気系統のトラブルによってすぐに事故につながるとは考えにくいが、関連を調べたい」と話した。
〈シールド工法〉
海底トンネルのほか、地下鉄や下水道、地下道路など、トンネル工事の際に採用される一般的な工法。
円筒形の大型重機の先にドリルをつけてモグラのように横穴を掘り進めていく。
同時に、掘った後のトンネルの壁をリング状のコンクリートで固めていく。
その際、壁とコンクリートの間には隙間ができるため、水漏れが発生しないようにゴム状の素材を埋める。
出典URL
http://www.asahi.com/national/update/0207/OSK201202070060.html
http://www.nhk.or.jp/lnews/okayama/4025861691.html
また、2月9日付の毎日新聞東京版から、シールド工法の安全性について、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
この事故で、鹿島が、掘削工事で海水が異常に出水した際の避難対策を施していないことが分かった。
鹿島は「シールド工法ではこれまで崩落はなく、事故を想定していなかった。出水時に対応した設計もしていなかった」と説明している。
鹿島によると、トンネルを掘りながらコンクリートの壁を造るシールド工法は、掘削先端部が土と接して密閉状態となる。
このため、壁面に水がにじむことはあっても、大量の出水は考えられないとしている。
シールド工法は東京湾や伊勢湾、英仏間のドーバー海峡などの海底トンネルでも採用され、問題は起きていないと説明している。
今回事故が起きたトンネル構内には、ガスや酸素濃度の検知器が設置されていたが、出水時用の緊急警報装置はなかった。
異常時には発見者が同僚に声をかけて避難するか、構内の休憩所など2カ所と地上をつなぐ電話で知らせることになっていた。
構内は、足場用の板を敷いた安全通路と手すりなどを利用して移動。唯一の避難経路となる縦穴には、通常の移動で使うエレベーターとは別に非常用のらせん階段が設けられていた。
しかし、大量に出水した場合の避難先となる気密性の高い避難所や、酸素ボンベは設置していなかったという。
労安法に基づく規則は、トンネル出入り口から100m以上掘削した場合、出水や落盤などの異常を知らせる警報装置の設置を義務づけている。
倉敷労基署は「法に抵触している可能性もある。だが事実確認ができておらず、今後詳しく調べたい」としている。
一方、早稲田大の小泉淳教授(地下構造物)は「安全性が高いシールド工法では、出水の警報装置を設置することはほとんどない」とし、「設置したとしても、今回のように急激に水があふれ出たら逃げ場がなくなるのではないか」としている。
出典URL
http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2012/02/09/20120209ddm041040050000c.html
一方、2月9日2時28分にmsn産経ニュースからは、考えられる事故原因2点に関する下記趣旨の記事がネット配信されていた。
「シールド工法」は軟弱な地盤でも安全性が高く、日本の技術は世界で最高水準といわれる。
一般的にトンネル壁面の崩落は考えられないとされるが、設計段階のデータを入手した専門家は、「壁面の厚みが通常より薄い」と指摘、圧力に耐えられず崩落した可能性もあるとしている。
同工法は大型掘削機「シールドマシン」で穴を掘り進めると同時に、進んだ分だけトンネルの壁面に「セグメント」と呼ばれる円弧状のブロックを組み立てて強度を保つ。掘削した土砂は、掘削機の排土口からベルトコンベヤーで外に搬出される。
シールド工事に詳しい早稲田大学の小泉淳教授によると、セグメントは通常、トンネルの直径に対し5~7%の厚みを持たせて、周囲の圧力からトンネルを守る。
だが、このトンネルの設計段階の資料では、直径約4.8mに対し、セグメントの厚さは約16cmで、約3.3%しかなかったという。
また、小泉教授は、事故の状況から1分間に小学校のプール1杯分の海水が流れ込んだと試算。
直径約60cmの掘削機の排土口からこれほどの海水が流入することはなく、「セグメントが圧力に耐えられず、トンネル自体が崩れた可能性は否定できない」と指摘する。
一方、海底のくぼみの位置から、トンネル先端の掘削現場から海水が流入したとも見方もある。
海洋土木会社の関係者は「一般的にはセグメントの強度からトンネルの崩落は考えにくい。掘削機の故障など何らかの理由で先端側から海水と土砂が一気にトンネルに流れ込み、くぼみができたのではないか」と話す。
出典URL
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120209/dst12020902280001-n1.htm
また、2月10日3時7分に朝日新聞からは、トンネル先端の掘削現場から海水が流入した可能性に関する下記趣旨の記事が、図解付きでネット配信されていた。
事故直前に、現場責任者が工事元請けの鹿島側に「漏電」などと電気系統のトラブルを訴えていたことがわかった。
掘削機への通電が止まった場合、地盤の圧力で掘削機が破壊されるおそれがあり、警察は事故原因につながる可能性もあるとみて調べている。
捜査関係者によると、事故前の7日正午ごろ、海底トンネル内にいた作業員が、地上にいた現場責任者(61)を呼びに来て、2人はすぐに現場に降りていったという。
その後、午後0時17分ごろ、現場責任者から鹿島の担当者に携帯電話で連絡があった。
現場責任者は担当者に「漏電」「ブレーカー」などという言葉を使って、電気系統のトラブルをうかがわせたが、通話状態が悪く、十分に聞き取れなかったという。
現場責任者は「現場に来てほしい」と要請したため、この担当者は自転車で駆けつけたが、すでに海水がトンネルの縦穴から噴き出した後だったという。
出典URL
http://www.asahi.com/national/update/0210/OSK201202090222.html
(ブログ者コメント)
□福島原発事故に続き、また安全神話の一つが崩壊した感がある。
□12日朝の時点で、「漏電があったかどうかは不明」とか、「掘削機の状況をデータ解析中だが、事故発生40分前に掘削機を停止していた」といった情報も報道されている。
□今回の事故は鉄砲水的現象だったように思われ、とすれば、いくら避難場所など事故の拡大防止策をとっていたとしても、無駄だっただろう。
今回の事故原因を明らかにし、その教訓を活かして未然防止に徹する。それしか対策はないだろう。
(2012年8月13日 修正1 ;追記)
2012年8月7日付で読売新聞岡山版から図解付きで、工法は基準から逸脱していなかったもののコスト低減優先が事故の誘因となった可能性があるといった中間報告の内容が、下記趣旨でネット配信されていた。
国交省の有識者による協議会は、「コスト低減や工期短縮を優先した設計や施工が事故の誘因となった可能性がある」との中間報告をまとめたが、はっきりした原因は解明されていない。
詳細な調査には多額の費用が見込まれるため、その手法や負担を巡り、難航が予想される。
事故の再発防止に向けて専門家が検証する国交省の「シールドトンネル施工技術安全向上協議会」(委員長=今田徹・東京都立大名誉教授)は、7月23日に中間報告を発表。
事故は、横坑(約160m)の先端部にある掘削機内で、作業員が壁面ブロック(セグメント)を組み立て中にB工場側の立て坑(内径約11.5m、深さ約34m)から数えて110列目と111列目のリング(幅1.4m)の天井部が崩れ、海水が流入したとの見方を強めた。
設計や施工では、土木学会が定めた基準「トンネル標準示方書」の逸脱はなかったものの、今田委員長は「コスト低減や工期短縮を感じさせるものがあった」と指摘した。
また、協議会の別の委員は「設計段階で想定していなかったような大きな力が、ブロックに掛かったのかも知れない」との見解を示した。
「コスト低減や工期短縮を感じさせるもの」について、早稲田大の小泉淳教授(トンネル工学)は、今回使用された壁面ブロックが、約10年前に現場の北約40mで造られた同規模の海底トンネルに比べ、6.5cm薄く、幅が20cm長かった点などを挙げる。
さらに、「本来は、想定外の大きな力が掛かっても対応できるように強度に余裕を持たせて設計するが、今回のトンネル工事には、それがなかったのではないか」と解説する。
業務上過失致死容疑での立件を目指す県警は、トンネル内の海水を抜き、掘削機の引き揚げを含めた調査に向け、工事元請けの鹿島に対し、手法の検討を要望。捜査関係者は「事故を予見できたかどうかを立証するためには、トンネル内部での現場検証が不可欠」と話す。
しかし、専門家の一人は、トンネル内の海水を抜くとなれば、費用は「何十億円とかかる」と指摘する。
鹿島側は2012年3月期決算で、今回の事故関連処理費として約29億円の特別損失を計上したが、その中には、今後の調査費用は含まれていない。
同社は「捜査には全面的に協力するつもりだが、正式に要請を受けておらず、調査方法や費用負担について、まだコメントする段階ではない」とする。
長岡技術科学大の杉本光隆教授(トンネル工学)は、「どういうメカニズムでセグメントが壊れたかを把握することは重要だ。方法や費用負担について議論が必要だが、将来、同じ事故が起こらぬよう、関係者が原因究明に向け、最大限の努力をする必要がある」としている。
出典URL
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/okayama/news/20120806-OYT8T01335.htm
(ブログ者コメント)
鹿島は、この事故で多額の対応費用を支出せざるを得なくなった。
他方JXは、予定どおりにトンネルが完成せず、経営に大きな影響を受けていることだろう。
まこと、事故は最大の無駄であることを、この事故で改めて認識させられた。
7日午後0時半ごろ、倉敷市のJX日鉱日石エネルギー水島製油所から「海底トンネルの掘削作業中に水が噴き出した」と119番通報があった。
トンネル内に海水が流入し、作業にあたっていた6人のうち1人は自力で脱出し軽傷だが、5人が行方不明となった。
警察は、作業工程に何らかの落ち度があった疑いもあるとみて、業務上過失致傷容疑も視野に入れ捜査する方針。
行方不明になった5人は、工事下請けの弘新建設の従業員3人と、弘栄建技の従業員2人。
JX社や元請けの大手ゼネコン鹿島によると、海底トンネルは、製油所内の「B工場」(旧ジャパンエナジー)と水島港をはさんで対岸にある「A工場」(旧新日本石油精製)を結ぶもので、2010年8月から建設作業が始まった。
B工場側で直径約11mの縦穴を約30mの深さまで掘り、そこから直径4.5mの横穴を対岸に向けて、シールド工法で掘り進んでいた。
海底の最も深いところから、トンネル上部までの距離は5m程度だった。
事故は、縦穴から140mほど掘り進んだところで起きた。
6人のうち3人が大型掘削機周辺で作業にあたり、残りは掘った土を車で縦穴まで運ぶ作業などをしていたという。
流入した海水は一気にトンネル内に満ち、縦穴の入り口付近まで上昇した。
JX社と鹿島は「落盤や重機によるトラブルで浸水した可能性もあるが、現時点ではどこからなぜ水が入ってきたのか、わからない」としている。
事故当時、偶然縦穴の底にいて脱出した弘新建設の従業員(61)は、「『危ない、逃げろ』という声を聞いて縦穴の階段を上がった」と話しているという。
警察はダイバー6人で救出活動にあたらせたが、水面の油などに阻まれて捜索が困難と判断し、7日夕にいったん打ち切った。
海底トンネルは、製油所の一体的で効率的な運営を目指す狙いがあり、完成後の総延長は約790m。石油やガスを送るパイプラインを中に通す予定だった。
約10年前には北側に別のトンネルが完成し、パイプラインを通じて石油やガスの原料を送っている。
8日午前、鹿島建設は会見で、海上保安本部の調査で見つかった海底の不自然なくぼみについて、「工事を始める前の調査では確認されておらず、事故で地盤が陥没したためできたのではないか」と述べ、事故によってくぼみができたという見方を示した。
また、「事故の直前の7日午後0時17分に、行方不明になっている作業員から地上にある事務所に携帯電話で『工事現場の電気系統になんらかのトラブルがあり、すぐに来て欲しい』という内容の電話があったことを明らかにした。
その上で、「電気系統のトラブルによってすぐに事故につながるとは考えにくいが、関連を調べたい」と話した。
〈シールド工法〉
海底トンネルのほか、地下鉄や下水道、地下道路など、トンネル工事の際に採用される一般的な工法。
円筒形の大型重機の先にドリルをつけてモグラのように横穴を掘り進めていく。
同時に、掘った後のトンネルの壁をリング状のコンクリートで固めていく。
その際、壁とコンクリートの間には隙間ができるため、水漏れが発生しないようにゴム状の素材を埋める。
出典URL
http://www.asahi.com/national/update/0207/OSK201202070060.html
http://www.nhk.or.jp/lnews/okayama/4025861691.html
また、2月9日付の毎日新聞東京版から、シールド工法の安全性について、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
この事故で、鹿島が、掘削工事で海水が異常に出水した際の避難対策を施していないことが分かった。
鹿島は「シールド工法ではこれまで崩落はなく、事故を想定していなかった。出水時に対応した設計もしていなかった」と説明している。
鹿島によると、トンネルを掘りながらコンクリートの壁を造るシールド工法は、掘削先端部が土と接して密閉状態となる。
このため、壁面に水がにじむことはあっても、大量の出水は考えられないとしている。
シールド工法は東京湾や伊勢湾、英仏間のドーバー海峡などの海底トンネルでも採用され、問題は起きていないと説明している。
今回事故が起きたトンネル構内には、ガスや酸素濃度の検知器が設置されていたが、出水時用の緊急警報装置はなかった。
異常時には発見者が同僚に声をかけて避難するか、構内の休憩所など2カ所と地上をつなぐ電話で知らせることになっていた。
構内は、足場用の板を敷いた安全通路と手すりなどを利用して移動。唯一の避難経路となる縦穴には、通常の移動で使うエレベーターとは別に非常用のらせん階段が設けられていた。
しかし、大量に出水した場合の避難先となる気密性の高い避難所や、酸素ボンベは設置していなかったという。
労安法に基づく規則は、トンネル出入り口から100m以上掘削した場合、出水や落盤などの異常を知らせる警報装置の設置を義務づけている。
倉敷労基署は「法に抵触している可能性もある。だが事実確認ができておらず、今後詳しく調べたい」としている。
一方、早稲田大の小泉淳教授(地下構造物)は「安全性が高いシールド工法では、出水の警報装置を設置することはほとんどない」とし、「設置したとしても、今回のように急激に水があふれ出たら逃げ場がなくなるのではないか」としている。
出典URL
http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2012/02/09/20120209ddm041040050000c.html
一方、2月9日2時28分にmsn産経ニュースからは、考えられる事故原因2点に関する下記趣旨の記事がネット配信されていた。
「シールド工法」は軟弱な地盤でも安全性が高く、日本の技術は世界で最高水準といわれる。
一般的にトンネル壁面の崩落は考えられないとされるが、設計段階のデータを入手した専門家は、「壁面の厚みが通常より薄い」と指摘、圧力に耐えられず崩落した可能性もあるとしている。
同工法は大型掘削機「シールドマシン」で穴を掘り進めると同時に、進んだ分だけトンネルの壁面に「セグメント」と呼ばれる円弧状のブロックを組み立てて強度を保つ。掘削した土砂は、掘削機の排土口からベルトコンベヤーで外に搬出される。
シールド工事に詳しい早稲田大学の小泉淳教授によると、セグメントは通常、トンネルの直径に対し5~7%の厚みを持たせて、周囲の圧力からトンネルを守る。
だが、このトンネルの設計段階の資料では、直径約4.8mに対し、セグメントの厚さは約16cmで、約3.3%しかなかったという。
また、小泉教授は、事故の状況から1分間に小学校のプール1杯分の海水が流れ込んだと試算。
直径約60cmの掘削機の排土口からこれほどの海水が流入することはなく、「セグメントが圧力に耐えられず、トンネル自体が崩れた可能性は否定できない」と指摘する。
一方、海底のくぼみの位置から、トンネル先端の掘削現場から海水が流入したとも見方もある。
海洋土木会社の関係者は「一般的にはセグメントの強度からトンネルの崩落は考えにくい。掘削機の故障など何らかの理由で先端側から海水と土砂が一気にトンネルに流れ込み、くぼみができたのではないか」と話す。
出典URL
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120209/dst12020902280001-n1.htm
また、2月10日3時7分に朝日新聞からは、トンネル先端の掘削現場から海水が流入した可能性に関する下記趣旨の記事が、図解付きでネット配信されていた。
事故直前に、現場責任者が工事元請けの鹿島側に「漏電」などと電気系統のトラブルを訴えていたことがわかった。
掘削機への通電が止まった場合、地盤の圧力で掘削機が破壊されるおそれがあり、警察は事故原因につながる可能性もあるとみて調べている。
捜査関係者によると、事故前の7日正午ごろ、海底トンネル内にいた作業員が、地上にいた現場責任者(61)を呼びに来て、2人はすぐに現場に降りていったという。
その後、午後0時17分ごろ、現場責任者から鹿島の担当者に携帯電話で連絡があった。
現場責任者は担当者に「漏電」「ブレーカー」などという言葉を使って、電気系統のトラブルをうかがわせたが、通話状態が悪く、十分に聞き取れなかったという。
現場責任者は「現場に来てほしい」と要請したため、この担当者は自転車で駆けつけたが、すでに海水がトンネルの縦穴から噴き出した後だったという。
出典URL
http://www.asahi.com/national/update/0210/OSK201202090222.html
(ブログ者コメント)
□福島原発事故に続き、また安全神話の一つが崩壊した感がある。
□12日朝の時点で、「漏電があったかどうかは不明」とか、「掘削機の状況をデータ解析中だが、事故発生40分前に掘削機を停止していた」といった情報も報道されている。
□今回の事故は鉄砲水的現象だったように思われ、とすれば、いくら避難場所など事故の拡大防止策をとっていたとしても、無駄だっただろう。
今回の事故原因を明らかにし、その教訓を活かして未然防止に徹する。それしか対策はないだろう。
(2012年8月13日 修正1 ;追記)
2012年8月7日付で読売新聞岡山版から図解付きで、工法は基準から逸脱していなかったもののコスト低減優先が事故の誘因となった可能性があるといった中間報告の内容が、下記趣旨でネット配信されていた。
国交省の有識者による協議会は、「コスト低減や工期短縮を優先した設計や施工が事故の誘因となった可能性がある」との中間報告をまとめたが、はっきりした原因は解明されていない。
詳細な調査には多額の費用が見込まれるため、その手法や負担を巡り、難航が予想される。
事故の再発防止に向けて専門家が検証する国交省の「シールドトンネル施工技術安全向上協議会」(委員長=今田徹・東京都立大名誉教授)は、7月23日に中間報告を発表。
事故は、横坑(約160m)の先端部にある掘削機内で、作業員が壁面ブロック(セグメント)を組み立て中にB工場側の立て坑(内径約11.5m、深さ約34m)から数えて110列目と111列目のリング(幅1.4m)の天井部が崩れ、海水が流入したとの見方を強めた。
設計や施工では、土木学会が定めた基準「トンネル標準示方書」の逸脱はなかったものの、今田委員長は「コスト低減や工期短縮を感じさせるものがあった」と指摘した。
また、協議会の別の委員は「設計段階で想定していなかったような大きな力が、ブロックに掛かったのかも知れない」との見解を示した。
「コスト低減や工期短縮を感じさせるもの」について、早稲田大の小泉淳教授(トンネル工学)は、今回使用された壁面ブロックが、約10年前に現場の北約40mで造られた同規模の海底トンネルに比べ、6.5cm薄く、幅が20cm長かった点などを挙げる。
さらに、「本来は、想定外の大きな力が掛かっても対応できるように強度に余裕を持たせて設計するが、今回のトンネル工事には、それがなかったのではないか」と解説する。
業務上過失致死容疑での立件を目指す県警は、トンネル内の海水を抜き、掘削機の引き揚げを含めた調査に向け、工事元請けの鹿島に対し、手法の検討を要望。捜査関係者は「事故を予見できたかどうかを立証するためには、トンネル内部での現場検証が不可欠」と話す。
しかし、専門家の一人は、トンネル内の海水を抜くとなれば、費用は「何十億円とかかる」と指摘する。
鹿島側は2012年3月期決算で、今回の事故関連処理費として約29億円の特別損失を計上したが、その中には、今後の調査費用は含まれていない。
同社は「捜査には全面的に協力するつもりだが、正式に要請を受けておらず、調査方法や費用負担について、まだコメントする段階ではない」とする。
長岡技術科学大の杉本光隆教授(トンネル工学)は、「どういうメカニズムでセグメントが壊れたかを把握することは重要だ。方法や費用負担について議論が必要だが、将来、同じ事故が起こらぬよう、関係者が原因究明に向け、最大限の努力をする必要がある」としている。
出典URL
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/okayama/news/20120806-OYT8T01335.htm
(ブログ者コメント)
鹿島は、この事故で多額の対応費用を支出せざるを得なくなった。
他方JXは、予定どおりにトンネルが完成せず、経営に大きな影響を受けていることだろう。
まこと、事故は最大の無駄であることを、この事故で改めて認識させられた。
(2013年1月30日 修正2 ;追記)
2013年1月29日18時59分にNHK岡山から、掘削機引き上げは今年9月ごろの予定という、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
事故からまもなく1年になるが、原因はまだほとんど分かっていない。
工事を請け負った鹿島では、海底に埋まったままのトンネルの掘削機を引き上げるなどして事故原因の解明を進めることにしていて、29日は鹿島の担当者が水島海保を訪れ、水島港長宛に作業を進めるために必要な許可を得るための申請書を提出した。
申請書によると、作業の内容は海底の土砂を取り除くことや掘削機の引き揚げなどで、作業の期間は4月から9月末までで、港内での船舶の航行に支障が出ない日中と夜間に行うことにしている。
鹿島によると、許可が出れば4月から作業を始めることにしていて、作業が順調に進めば掘削機は9月上旬には引き揚げられる予定だという。
出典URL
http://www.nhk.or.jp/lnews/okayama/4025142191.html?t=1359497587810
PR
この記事にコメントする
通信欄
問合せなどあれば記事末尾の読者通信欄に名前(匿名可)とメルアドを記入し
①確認ボタンをクリック
②記入欄に用件記入
③確認ボタンをクリック
④内容がOKであれば送信ボタンをクリック
してください。
ちなみに「ご送信ありがとうございました」との返信がありますが。それは通信欄会社からの自動メッセージですので、ご留意ください。
カテゴリー Category
最新コメント Latest Comments
[06/09 ※無記名]
[06/01 ※無記名]
[02/08 ※無記名]
[02/08 ※無記名]
[01/20 ※無記名]
[08/31 ガーゴイル]
[09/27 三浦]
[03/02 南方英則]
[11/20 山城守]
[07/20 記事内容について訂正をお願いします。]
[07/16 神戸ファン]
[04/21 Rawi]
[08/12 山田晴通]
[04/24 道産子]
[04/15 道産子]
[04/15 道産子]
[04/05 道産子]
[04/02 道産子]
[04/01 道産子]
[02/27 道産子]
[02/26 愛読者]
[01/10 愛読者]
[11/07 愛読者]
[10/12 愛読者]
[08/24 愛読者]
ツイッターなどへの接続
製造業ブログランキングへの接続
最新トラックバック
カウンター
アクセス解析
プロフィール Profile
HN:
魚田慎二
性別:
男性
自己紹介:
化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。