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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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(2011年3月8日 旧ブログ掲載記事)
 
2011年3月8日0時4分に共同通信から、同日1時3分に中日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
 
福井県美浜町で2008年9月15日、関西電力の鉄塔が倒壊し、作業員4人が死傷した事故で、強度が不足した状態で作業を進めたとして、業務上過失致死傷容疑で、8日、建て替え工事の設計を担当した同社電力システム技術センターの送電グループ課長が書類送検されることになった。

事故は、老朽化した鉄塔(高さ約53m)から仮設鉄塔に送電線を移す工事中に発生。高さ約53mの送電線用鉄塔が45m付近で折れ、鉄塔に上って作業中だった下請けなどの作業員4人が転落。うち2人が死亡した。

県警によると、課長は下請け業者から強度不足の指摘を受け、鉄塔にかかる荷重のバランスが崩れる可能性を予期できたが、強度計算を怠り、経済性の理由などから強度が不十分なまま作業を進めた疑いが持たれている。

 
(別記事)
 
鉄塔の東西両側に3本ずつ突き出ている送電線アームのうち、東側の3本の架線を事故前日までに取り外していた。鉄塔は架線が残る西側に引っ張られるように折れた。

県警は、架線による負荷に対し、鉄材の強度が不足して倒壊につながったとみて、同センターが片側の送電線を外した状態での鉄材の強度計算を怠っていた点を重視。他社の同種工事では強度計算をしていることから、センターが事故の危険性を予見しうる立場にあったと判断した。
県警は、昨年2月にセンターを家宅捜索したほか、専門機関に鉄材の鑑定を依頼し、倒壊原因を解析するなど慎重に捜査を進めていた。
 

(ブログ者コメント)
 
□設計者が強度計算を怠ったために起きた事例として紹介する。
□報道で匂わされているような安全軽視・経済性優先といったことは、今の時代、ちょっと信じられない。いや、信じたくない。
 
 
(2011年3月9日 修正1; 追記)
 
2011年3月8日8時0分に、福井新聞から、さらに詳しい下記の記事がネット配信されていた。
 
倒壊した鉄塔は事故当時、片方の送電線を外し仮鉄塔に移設した「片側架線」の状態にあり、片寄った荷重が発生していた。同センターは過去の経験則に基づき強度計算を行っておらず、一部部材の強度不足を見逃したため事故が起きた。

県警の調べによると、下請け業者の一部は工事前の打ち合わせで、関電の担当者に強度不足の可能性を指摘していた。捜査関係者によると、同センター内部からも強度不足の指摘があったという。
そのため県警は、担当者は事故を予見できる立場にあり、防止策を取る権限を有しながら
□強度計算をしなかった
□部材に補強を施したり、張力バランスを取るための仮ワイヤを張るなどの安全対策を施さなかった
ことに過失責任があると判断したもようだ。
 
 
 
(2011年8月3日 修正2 ;追記)

2011年8月2日20時5分に、福井新聞から下記趣旨の記事がネット配信されていた。

□初公判が2日にあった。

□検察は、「部下から部材の強度が社内の安全基準を下回っているとの報告を受けたにもかかわらず、工事着工まで時間的に余裕がない、工事費用が予算を超えたくないとして工事を進めた」と批判。「人命を軽視しており、遺族や被害者の処罰感情は厳しい」と指摘した。

□弁護側は「部材の強度は安全基準をわずかに下回っていただけだった」とし、「培ってきた知識や経験、今回の反省を生かすチャンスを頂きたい」と執行猶予付き判決を求めた。


出典URL■■■



(2011年9月14日 修正3 ;追記)

2011年9月13日18時54分に福井新聞から、同日19時07分にNHK福井から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。

業務上過失致死傷の罪に問われた特命課長(当時)の判決公判が13日、福井地裁であり、「過失は重大」として禁錮3年、執行猶予5年(求刑禁錮3年)を言い渡された。

裁判長は判決理由で、被告は送電業務に熟練した技術と専門的な知識を持っており「部下が行った概算の強度計算の結果が社内の安全基準を下回っていたことから、倒壊の恐れがあることを容易に認識できた」と指摘。「強度計算の社外発注や補強工事にかかる労力、期間、費用を懸念して適切な措置を取らないまま事故は起きないと安易に判断した」と批判した。

一方で、「関電と遺族、被害者の間で示談が成立し、被告も反省している」として執行猶予付の判決を言い渡した。

判決によると、被告は工事で鉄塔の片方の送電線を外すと片寄った荷重がかかり、鉄塔が倒壊する恐れがあることを認識できた。しかし、正確な強度計算や補強工事を行って事故を未然に防ぐ業務上の注意義務を怠り、漫然と工事を始めた過失により08年9月15日、鉄塔を倒壊させて作業員2人を死亡させ、2人に重傷を負わせた。


出典URL■■■



(2011年10月14日 修正4 ;追記)

2011年10月13日2時22分に、msn産経ニュース福井から下記趣旨の記事がネット配信されていた。

業務上過失致死傷罪に問われた元課長の有罪判決が確定したことを受け、関西電力は12日、公判で明らかになった事実を踏まえた原因と対策を再検討した結果を経済産業省へ報告した。

報告書中、判決では「コストと工程を優先した」ことが原因と事実認定していたが、関電は「判決後に元課長から事情聴取して、原因は本人の勘違いとの説明を受けた」として、判決とは違う言い分を認めたことを明らかにした。
報告書では、協力会社から鉄塔の強度が不十分で検討の必要性が指摘されていたにもかかわらず、元課長が強度が十分と勘違いして、強度計算を実施しなかったことが原因としている。


出典URL■■■


関電からは、以下の報告書資料がプレスリリースされていた。(容量3MB)
  
 ■■■

資料中、直接要因として記載された3点の要約は下記。(p57~)

(a)当該鉄塔が片側架線状態になることを意識していなかったため、強度計算を実施しなかった。

(b)設計審査時、工事担当者は片側架線状態になることの意識がなかったため、強度計算に関する説明は行わなかった。審査参加者の中には強度計算は別途行われていると思う者もいた。結果、審査の場で強度計算については審議されなかった。

(c)仮設工事着工打ち合わせ時、協力会社から、架線工事が台風時期にかかることから、鉄塔がもつか不安があり、鉄塔の強度計算について指摘があった。
設計担当者が概算計算した結果、工事中に一部部材の強度が安全率を下回ることがわかったため強度計算発注の必要を指摘したが、上司は、無風で安全率をわずかに下回るのなら数m程度の風であれば安全率を大きく低下させることはないと考え、そのまま工事を進めた。




(ブログ者コメント)

□関電の資料には「コストと工程を優先した」旨の記述はない。判決内容と関電の言い分のどちらが正かは藪の中。
昔なら、関電の言い分は企業防衛のため・・・と思うところだが、村木事件以後は、そうも思えなくなった。「コストと工程優先」など、検察の好きそうなシナリオだと感じるからだ。

□それはともかく、この事例は各種審査の限界をも示している。
書かれてあること、説明されたことについては審査できるが、書かれていないこと、説明されないことについて審査することは、よほどの知識能力経験がある人でも困難なことがある。
その対策の一つが、過去の事例を知っておくこと、ブログ者はそう考えている。




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化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。

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