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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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201811161935分にNHK山口から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。

 

10月、大島大橋に貨物船が衝突した事故で、航海士は大型船が安全に航行するために設定されているルートを事前に把握しながら、距離が短い橋を通過する航路を選んでいたことが、海保への取材で分かった。

 

専門家は、「船の航行に危険がある海域を洗い出し、あらかじめ周知することが必要だ」と指摘している。


10月22日に周防大島町と柳井市を結ぶ大島大橋に外国船籍の貨物船が衝突し送水管などが破断した事故で、インドネシア人の船長は、業務上過失往来危険の罪で罰金の略式命令を受けた。


貨物船の2等航海士は、海保が設定している、大型船でも安全に航行出来る「推薦航路」を事前に把握していながら、目的地までの距離が短い大島大橋がある海域をルートに設定していたことが、海保への取材でわかった。


調べに対し2等航海士は、「大畠瀬戸を通るルートの方が短くいけると思った。深く考えずルートを設定した」と話していたという。


海難事故に詳しい東京海洋大学の竹本孝弘教授によると、瀬戸内海では港の整備が進み、船がこれまで通らなかった海域を航行するケースが見られるようになったという。


竹本教授は、「海域の特性を十分把握しないまま、不慣れな船が航行する可能性があり、危険性のある海域を洗い出したうえで、行政機関が周知するなど、対策が必要だ」と話している。

 

出典

推薦航路把握も最短ルートで事故

https://www3.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/20181116/4060001532.html 

  

※以下は、NHK映像の1コマ。本来のルートと近道ルートが併記されている。


 

 

一方、事故発生の2日後、20181024日付で長周新聞からは、かなり詳しい下記趣旨の解説記事がネット配信されていた。

 

山口県周防大島町と大畠町とを結ぶ大島大橋がかかる大畠瀬戸で、22日午前0時30分ごろ、ドイツの海運会社が所有する貨物船「エルナ・オルデンドルフ」(総重量2万5431トン)が大島大橋の橋梁に衝突し、水道管と光ファイバーケーブルなどを切断する事故が発生した。

 

切断された水道管は周防大島町への唯一の送水ルートであり、同町では同日午前8時ごろから、ほぼ全域の約9050世帯で断水し、約1万4600人の生活が麻痺している。

 

海運関係者の間では前代未聞の事故であり、なぜこのような事故が起きたのか?と唖然とした表情で語られている。

 

 

 内航船も通らぬ大畠瀬戸を航行】

 

事故を起こした貨物船「エルナ・オルデンドルフ」(マルタ船籍)を所有・運航するオルデンドルフ・キャリアーズは、ドイツ最大のバルク(バラ積み貨物)運搬会社で、約4000万トンの運搬能力を持つ約500もの船舶を運航しており、特に鉄鋼貨物では世界最大規模の運搬量を誇っている。

 

船には、船長(インドネシア国籍)を含む船員21人が乗船し、6300トンのアルミナ(酸化アルミニウム)を積み、韓国オンサン港から広島県呉港沖を経由(検疫)し、江田島港を目指す予定だった。

 

高さ約40mのレーダーマスト、さらに35~36mのクレーン4基を搭載した船体で、大島大橋(海面からの高さ31.9m)の下を通過しようとして衝突。

 

その後も、船を止めることも通報もすることなく、クレーンが破損し、マストが折れた状態で呉港沖まで向かっていた。

事故時は船長が操船指揮していた。

 

瀬戸内海は潮汐の干満差が大きく、水道も狭く地形が複雑なため、全国で最も潮流が速い海域として知られている。

 

とくに事故現場となった大畠瀬戸は、大島大橋の下を通過しなければならないうえに、海峡の幅も狭く、漁船も含め1日あたり124隻が行きかうが、最大でも4000トンクラス(平成26年度)。

 

3000トンクラスの内航船タンカーでも、自主規制を敷いて「航行不可」とし、周防大島の東側にある諸島水道(情島と津和地島の間)のルートを使うといわれる。

 

2万トンをこえる大型船の場合は、さらに東側のクダコ水道(愛媛県の中島と怒和島の間)を主要な航路としている。

 

2万5000トンをこえる大型貨物船が通れる海域ではないことは、海運業に携わる人々の間では常識であり、「ありえない」、「前代未聞の事故」と、驚きをもって語られている。

 

外国船籍が瀬戸内海に入るときは、入域する24時間前までに管轄する海上保安署に船舶保安情報を通報しなければならず、通航する海域によっては、経験豊富なパイロット(水先人)を乗船させることが強制・任意のいずれかで求められている。

 

大畠瀬戸は任意の海域であり、パイロットは乗船していなかったとみられている。

 

また、入港する港には積み荷の受け入れ先となる代理店が存在し、この代理店が船側と連絡を取り合って、航路などの情報を共有するのが常識とされている。

 

橋や岩礁などの障害物の情報はすべて海図(最近は船に電子海図を搭載)に書き込まれており、航海ルートはその海図をもとに決めるため、パイロットがいなくても、必要な情報をもとに計画が立てられていれば、起こりようのない事故だった。

 

代理店について、事故を調査する第六管区海上保安本部は、「本人の同意が得られないため」として公表していない。

 

 

【「常識では考えられぬ事故」船舶関係者らは唖然】

 

長年、外国航路の機関長をしていた下関市在住の男性は、

「大畠瀬戸を通過するのは、小さい船でなければ無理だ。

海峡の幅も狭いし、潮流も複雑。

たまに船を見るような外海とは違って、船の量も多い。

関門海峡ならば5万トンの船でも橋の高さを気にせずに通過できるが、低い橋の下を通るときは、満潮時に海面からマストまでの高さがどれくらいあるかを知っていれば、通らないはずだ。

もしパイロットが乗っていたら、“この船では通過不可能”と指示するから、こんな事故は起きない。

きちんと海図を確認し、代理店からも情報の提供があったのなら、この船長は、自分が乗っている船の高さを認識していなかったことになる。

当たり前の手順を踏んでいれば起きない事故であり、偶然のものではなく、人為的なミスによる必然的な事故だ。

船長と海運会社は責任を免れないだろう」

と指摘した。

 

さらに、

「大型船の場合は、むしろ船底のことが心配されるので、瀬戸内海を通るときはパイロットを乗せるのが適切だ。

海面からは見えない海底に砂が堆積した場所に行けば、座礁する危険性がある。

だから、砂の溜まりやすい関門海峡では、定期的に海底の砂を浚渫する。

目に見える頭上の橋にぶつかるというのは、通常では考えられない」

 

「外国船籍で、船長も機関長も乗組員も全員外国人であったなら、瀬戸内海の状況について、認識はほとんどないだろう。

日本人パイロットを乗せていなければいけないはずだったが、コスト削減などの理由で、それをやっていなかったことが考えられる。

パイロットは、外国航路で10年以上船長をやって無事故だった人にしか資格が与えられない。

外国で日本船が事故をすれば、ものすごい賠償金が課されるので慎重にやるが、日本の場合は規制が甘い。

事故をしても、航行禁止などにはならない。

そのためコスト優先で、安全は二の次がはびこり、事故が増えているのではないか」

と語った。

 

同じく大手商船会社で長年船長を務めた男性は、

「映像を見る限り、事故を起こした貨物船は、荷をほとんど積んでおらず、バラスト(空船)に近い状態だったのではないか。

水面から出る船の高さが、満載時に比べると高くなっていたと思われる。

それにしても、マストがぶつかるというのはありえない。

基本情報となる海図には、水深は最低潮時、橋は最高潮時の高さが書かれており、それを見れば自船が航行可能かどうかは一目瞭然だ。

とくに、橋の下を通るときは緊張するもので、大畠瀬戸は狭く、時速10ノット(約19km)もの潮流があるため、航行が非常に難しい。

相当に急がなければいけない理由があったか、情報も確認せず近道をしようとしていたのではないか」

と指摘した。 

 

 

  (2/2へ続く)

 

 

 

 

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化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
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