2024年3月22日8時3分にYAHOOニュース(現代ビジネス)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
【低反発バット導入の契機の1つとなった事故】
ホームランどころか、外野手の頭を越える打球もめっきり少なくなっている今年のセンバツ。
今大会から導入された低反発の新基準バットの影響が大きく出ていることは間違いなさそうだ・・・。
今回のバットの新基準はなぜ導入されたのか。
反発係数など、具体的にどういった数値を、どんな理由で策定したのか。
詳細を日本高等学校野球連盟の古谷事務局次長に聞いた。
日本高野連にとって今回の新基準バット導入は「今年の大きなトピックスの1つ」との位置付けにとどまらないという。
「金属製バットを初めて高校野球で導入したのは1974年ですから、ちょうど50年が経ちました。
その50年間、日本高野連がずっとこだわり続けていることが、大きく言えば2つあります。
1つは、やはり部員の経済的な負担軽減。
木製バットは今でも、高ければ2万円位します。
しかも、極端に言えば一球で折れてしまう可能性もありますので、高校の部活動ということから言えば、経済的な負担が大きいわけです。
もう1つは、あくまで木製バットの代用であること。
バットの性能見直しの契機となったのは、2019年4月に設置した『投手の障害予防に関する有識者会議』で、球数制限以外にも、現場での指導経験をお持ちの委員の方などから『打球が飛びすぎる』といったお話があり、投手の負担軽減を考えて、バットの反発性能をより木製に近づけるべきとのご提案をいただきました」
さらに、その年の夏の選手権大会で岡山学芸館高校の投手が打球を顔面に受けて頬骨を骨折するという事故が起きてしまう。
【NCAA(全米大学体育協会)のバット】
「私も大会本部にいて本当に肝を冷やしました。
幸い、その彼は試合中にベンチに戻ってきて、その後は関東の大学で野球を続けていくということで少し安心したのを覚えています。
そうしたことが重なり、9月に『業務運営委員会』という、日本高野連の主要な理事の方々が集まる会議で、すぐに着手しようということになりました」
元指導者の委員で構成される「技術・振興委員会」を中心に動き出すが、木製バットに近づけるといっても、材質が違う以上、同じ性能にすることはかなわない。
では、打球速度をどれほど抑えればいいのか、反発係数をいくつまで落とせばいいのか。
正解はないのかもしれない。
バットの買い替えの負担を考えれば、一度、定めたものをすぐに改めるというわけにもいかないだろう。
そうした中で、目指したバットがあるという。
「それ以前から金属製バットの反発性能の国際基準を作りたいと、アメリカの関係者の方などとミーティングを重ねていたんです。
その中でNCAA(全米大学体育協会)が定めているBBCOR(打球の反発係数)が、当時の日本のものよりも10%弱低い、より木製に近づけたもので、それを参考にしました」
【重大事故が起きてからでは遅い】
NCAAのBBCORは、圧搾空気によって約219km/hに加速したボールをバットに衝突させ、ボールの衝突速度、反発速度などを測定。
それらによって求められたBBCORが0.5以下であることと規定されている。
そのBBCORバットと従来の日本のバットで同じ球速の球を同じスイングスピードで打った場合、BBCORバットが100mなら、日本のバットは108~109mの飛距離が出るという。
「国際基準ではないものの、より木製に近い基準があるにもかかわらず、それに近づける努力をしなかったら、もし重大事故が発生したときに悔やみきれません。
技術・振興委員会でも、導入への反対意見はありませんでした。
危ないのは投手だけではありません。
委員の方からは、サードの強襲ライナーも非常に危険とのご指摘もありました。
事故を防止するためにBBCORの基本バットを1つの目標にしました」
https://news.yahoo.co.jp/articles/b411f4196d5e0c338572f657d992e9ddc7947c73
3月23日9時3分にYAHOOニュース(現代ビジネス)からは、新基準のバットの詳細など、下記趣旨の続編記事がネット配信されていた。
【予期せぬリスクの発生】・・・
新基準バットの目指す方向が定まり、「非木製バット専門部会」を発足して尽力してくれた製品安全協会や、全日本野球バット工業会とも議論を重ね、コロナ禍の影響もあったが、技術・振興委員会も計4回の会議が行われ、22年2月18日の理事会にて「金属製バットの新基準」が正式に決定した。
【1】最大径の制限
67mmから64mm未満
【2】設計の規程
バット本体は金属製バットの単層管であること
【3】質量の規程
従来通り900g以上
【4】形状の規程
バットの先端からグリップ部までは、なだらかな傾斜でなければならない。
打球部(芯付近)からグリップ部に向かって徐々に細くなっていくテーパー部は、絞りのはじめから終了までの長さに対する半径の寸法減少割合が10%を超えてはならない。
また、テーパー部における任意の50mmの長さに対する半径の減少割合が20%を超えてはならない。
さらに、BBCOR(打球の反発係数)が0.500相当になるように圧縮強度を求めた結果、打球部の肉厚はこれまでの約3mmから4mm程度の製品仕様となり、この点も実質上の変更点に挙げられる。
ちなみに打球音が変わったとの声もよく聞かれるが、それは肉厚になったことで剛性が上がり、打球音が高くなる傾向があることによるものと考えられる。
打球部を肉厚にすることは結果的にバットの製品寿命を延ばすことにも繋がった。
だが、打球部の耐久性の向上は望ましいものの、同時にテーパー部などの耐久性を上回ることとなり、金属疲労が進んで折損してしまうリスクが生まれてしまった。
【敢えて変形しやすくする】
古谷氏も「技術・振興委員会で低反発の基準以上に議論され、非常に頭を悩ませました」と明かすのが、折れたバットによる選手の受傷事故をいかに防ぐかということだった。
「金属製バットでも寿命があり、使い続けていれば折れることもあるわけです。
以前のバットは、打球部が打っていくとはげてくるんですが、最近は染料も良くなって、なかなかそういう形になりません。
ある日、突然折れてしまうというようなことだけは避けたい。
バットのテーパー部での折損が起きる前にバットの寿命をユーザーにどう知らせるかという課題の中で、カウンターをつけるなどいろいろなアイデアが出ました。
しかし、たとえば打った回数が1万回、2万回と言っても、150km/hの球を打った1万回と、100km/hの1万回では全然違う。
では年数でと言っても、使用開始時期や頻度も環境もそれぞれで異なってくる。
そこは議論の大きなポイントの1つだったと記憶しています」
果たして、製品安全協会、全日本野球バット工業会の知見も得て、バット先端部付近での亀裂を誘発するため、その部分の強度を新たに規定し、折損する前に先端部が変形や割れるなどして使用限度を示す設計へとたどり着いた。
こうして生まれた新基準バットは、旧基準のものよりも打球初速で約3.6%、反発性能で5~9%減少。
スイングマシーンのスイング速度を一定にしてティーアップした硬式球を打撃(バット先端から約15cmの位置)する実験では、最大飛距離で比べるとBBCOR基本バットよりも5~6m、旧基準バットよりも10m飛ばないことが確認されている。
「芯で打てば、飛距離はこれまでと変わらない」といった選手、指導者の反応も耳にするが実験結果からはありえないことで、ちょっとした打ち出し角度の違いなどによる感覚的なものに過ぎないと考える方が無理はないのではないか。
【バットではなくボールを変える選択肢は】
「いろいろなメディアや雑誌を見ても、そうしたコメントをしている選手は多いですね。
ただ、芯を外すと明らかに飛ばないと言っている選手が非常に多いので、そのギャップなどもあるのかもしれませんね」
最大径の3mm減も、わずかと思われるかもしれないが、実際に手にすると「細く感じる」との証言も聞かれ、バットに当てること自体も難しくなったと言える。
バットを変えるよりも、ボールの反発係数を下げる方が簡単だったのではないかという疑問も残るが、バットだった理由はいかなるものだったのか。
「バットの旧基準が採用されたのは2001年ですが、ボールもそのあとの07年の選抜大会から低反発球の導入を行っているんです。
バット、ボールときて、今度はバット、という流れですね。
バットが飛びすぎるというのは19年以前からも出ていた話ですし、上のカテゴリーで野球を続ける場合を考えても、木製に近いバットで技術を身につけてもらった方がいい。
そして、前回記事の冒頭でもお話した通り、木製に近づけるというのは日本高野連の大命題ですから、今回はバットを変えようということになりました」
1974年3月の常任理事会で金属製バット導入の決定がなされたが、当時は「金属、木製では反発力が異なるので時期尚早」「金属製バットの基準を策定してから導入すべき」と、連盟内では消極的意見が多かったという。
それでも、木製バットでは経費が掛かりすぎ、高校野球の発展の足かせになると判断した当時の佐伯会長が英断を下して採用されている。
それから50年。
今回の新基準に対しては否定的な声も、たしかにある。
それでも、選手の安全面、高校野球の永続的な発展を考えたなら、やはり英断だったのか。
その答えも、すぐにわかるものではないだろう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/bee95ca2dfa0643ed1bbc0a696378b056e704f16
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。