2020年3月10日付で毎日新聞東京版から、下記趣旨の記事が模擬ホームの写真付きでネット配信されていた。
視覚障害者が駅のホームから転落する事故が跡を絶たない。
国土交通省によると、2010~17年度に605件に上った。
転落した経験のある視覚障害者に1980年代から聞き取り調査して、分析結果を公開している人間工学専攻の大倉元宏・成蹊大名誉教授(67)は、視覚障害者のためにホーム上に進路を示すマーカーの設置などを提言している。
――2019年10月に京成立石駅、20年1月にはJR日暮里駅と、視覚障害者の転落死亡事故が相次ぎました。
何が問題でしょうか。
◆事故の原因を徹底的に究明せず、再発防止に生かしてこなかった
ことだ。
警察は事件性がなければ、「なぜ落ちたか」はあまり追及しない。
視覚障害者団体などは事故のたびにホームドアの早期設置や駅員の声掛けなどを求めるが、取り組みはそこで終わってしまう。
国や第三者機関がなぜ落ちたのかを調べ、公表することが必要だ。
――大倉先生が調査・作成している事故原因データベースは、その先駆けですね。
◆国がやらないからやっています。
1980年代から今まで、ホームから転落した視覚障害者に状況を聞き取り、詳細を記録、公開している(https://omresearch.jp/fall/browse/)。
基本的に、視覚障害者が聞き取りを拒んだ場合や、亡くなった事故は聞き取りができないので載せていない。
パラリンピックを前に、去年の9月から英語でも読めるようにした。
視覚障害者は、さまざまな事故データを読むことで同じ目に遭わないでほしい。
見えている人も原因を知り、駅で視覚障害者を見かけたら積極的に支援をして。
――事故原因はどのようなものが多いのでしょうか。
◆25件しか集まっていないので一般化できないが、多くはホームの両端を列車が通る「島式」で起きている。
白杖(はくじょう)を使う視覚障害者の大きな特徴は真っすぐ歩けないこと。
いつのまにか横にそれ、ホームの端に寄ってしまう。
混雑した駅では白杖が人に当たりやすいので左右に振れず、杖を時々路面に触れるだけの人も多い。
そんな時に杖が点字ブロックを飛び越え、ブロックやホーム端を検知できないと落ちることがある。
――どうすればよいでしょうか。
◆ホームドア設置が一番良い。
だが、全駅設置はなかなか進まず、まずはできる対策をするしかない。
視覚障害者が白杖でたどりながらホームを階段や改札まで進むためのガイドとなる「触覚マーカー」をホーム中央に設置するのが有効だ。
ホーム端の点字ブロックに沿って歩くと、ブロック上にスーツケースなどがあった時、避けようとして転落することがあるからだ。
実際、大学内に設置した模擬ホームで実験をした際、触覚マーカーがある方が安定して歩くことができた。
警告用点字ブロックを隙間(すきま)なくホームの端まで敷き詰めるのも一つの手だ。
白杖や足で線路の近くにいることを認知しやすくなるし、比較的安価で設置できる。
――ソフト面の取り組みはなんですか。
◆駅員に手助けをお願いしても時間がかかることがあり、「急いでいると頼まない」という視覚障害者もいる。
駅員の数を増やすのが難しければ、駅にボランティアを配置することも一つだ。
視覚障害者自身も歩行訓練を受け、白杖をなるべく地面から離さず使用することが大事だ。
私は、師事していた視覚障害者の先生と転落事故の研究をしていたが、その先生も転落死した。
未然防止には強い思い入れがある。
少しでも事故がなくなるよう、それぞれができることをすべきだ。
https://mainichi.jp/articles/20200310/ddl/k13/040/007000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。