2017年10月28日付で東洋経済から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
「安心・安全にかかわることで、お客様に不安を感じさせることは、『SUBARU』ブランドとして最もやっていけないことだ」
10月27日、スバルは記者会見を開き、群馬製作所(群馬県太田市)で、日産自動車と同様、無資格の検査員による不正な完成検査が行われていたことを発表した。
無資格検査は30年以上も前から常態化。
吉永社長は2時間20分にも及んだ会見で、反省の言葉を繰り返した。
10月30日に国交省に社内調査結果を報告するとともに、無資格検査で国内に出荷・販売して1回目の車検を迎える前の車両、25万5000台を対象に、リコールを届け出ることにしている。
トヨタ自動車にOEM(相手先ブランド製造)で供給をしている人気スポーツカー「86」も含まれる。
運転支援システム「アイサイト」に代表されるように、安心や安全を消費者に強く訴求してきたスバルだが、クルマづくりの基本ができていなかった。
【「まずいという認識がないまま」30年以上】
スバルで行われていた無資格検査とは、どのようなものか。
同社が国交省へ届け出ていた規定は、「社内試験に合格した完成検査員が完成検査を行う」というものだ。
だが、実際には、完成検査員の資格を取るために研修中の従業員も検査を行っていた。
検査の運用を定めた業務規定では、「監督者の監視下では、知識と技能を100%身につけたと判断された従業員であれば、完成検査の業務に従事できる」と定めていたからだ。
国に届け出た規定と社内の規定が矛盾する状態は、30年以上まかり通っていた。
スバルは、社内調査を行った10月1日時点で、無資格で検査を行っていた従業員が4人いたことを明らかにした。
過去をさかのぼると平均で8人、最大で17人の従業員が無資格検査を行っていたという。
完成検査の有資格者は会社全体で245人おり、同社は、無資格検査の原因としての人員不足を否定する。
吉永社長は、「完成検査は非常に重要な行為だが、社内ではこれでまずいという認識がないまま、過ぎてしまった」と話す。
今回の問題で深刻なのは、「代行押印」が行われていたことだ。
研修中の従業員が、資格のある監督者から借りたはんこを、検査を証明する書類に押していた。
他人のはんこで完成検査終了の認定をすることは、公文書偽造にも繋がりかねない。
年に一度の監査をしてきた国交省からも、「ルールが明文化されていないので、監査をしても(行われていることが)良いのか悪いのか判断できない。透明性が低すぎる」と、厳しい指摘を受けているという。
品質保証本部長を務める大崎執行役員は、「現場で、人のはんこを使うのはおかしいのではないか、と思った者がいても、代々引き継がれていたことを上長に「おかしい」と言える雰囲気ではない」と認めた。
吉永社長も改めて「偽装をしたというつもりはない。組織代行の範疇だと思うが、人のはんこを代わりに使うのは、確かに違和感がある」と述べる。
【問題認識から発表まで24日間】
「あのスバルが・・・残念だ」と漏らす声が、会見と同じ日に開会初日を迎えた東京モーターショーの会場のいたるところから聞こえてきた。
10月25日の報道関係者向け内覧会でも、吉永社長は新たなコンセプトカー「VIZIV(ヴィジブ)」を紹介し、創業時から変わらない「安心に支えられた愉しさ」を押し出していただけに、衝撃は大きい。
9月29日深夜、日産の問題を受けて国交省は、各メーカーに対し、完成検査に関する調査を求める通達を行った。
スバルが自社の完成検査のプロセスに「疑義」があることを認識したのは、週明けの10月3日。
発覚した時点ですぐ、無資格の従業員による完成検査は打ち切り、国交省に法令解釈についての問い合わせを始めていた。
吉永社長がこの事実を知ったのは10月11日。
しかし、翌12日には、社内調査の状況について記者から問われた際、「今のところ問題ない」と発言していた。
スバルが事実を発表したのは、その2週間以上先の27日。
遅すぎるタイミングだ。
これについて吉永社長は、「隠そうとしたつもりはない。無資格検査を止めたことや、国交省とやりとりがあるので、30日までに答えを出せばよいと思っていた」と、しおらしく釈明した。
なぜ、無資格検査が起きたのか。
それは、生産現場のルールが形骸化していたことに起因する。
スバルの長い歴史の中で引き継がれ、常態化してきた現場での悪しき慣習が、今回、日産の問題をきっかけに明るみになった。
知識や技術を継承する中で、明文化されない「暗黙知」や「すり合わせ」によって回っていた現場は、日本のものづくりの強さともいえる。
【「まだまだ実力が追いついていない」】
だが、グローバル化によってマニュアルによる明文化や契約の厳格化が求められる今の時代、あらゆる業務は「あ・うんの呼吸」では通用しなくなっている。
「スバルの経営が、グローバルを目指す上でまだまだ実力に追いついていないと認識した」と、吉永社長はうなだれる。
裾野の広い製造業においては、経営が現場のすべてを把握しきれないことも問題だ。
大崎執行役員は、今後、スバル内のすべての業務規定に、同様の問題がないかを洗い出していくという。
膨大な数の規定を洗い出すには時間が必要だが、信頼回復に努める狙いだ。
スバルの連結売上高のうち、国内は2割のため、ここ5年間好調な業績への影響は相対的に少ない。
だが、吉永社長は「ブランドの毀損を本当に心配している」と危機感を募らせる。
ブランドの骨格に据える安心と安全に対する信頼が失墜すれば、大きな命取りになりかねない。
スバルがグローバル企業として次のステップに上がれるかは、今後の対応にかかっている。
出典
『スバルでも無資格検査、30年以上常態化の謎 安心・安全が看板のメーカーで何が
起きたか』
http://toyokeizai.net/articles/-/195156
(2/2へ続く)
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。