2019年6月15日9時54分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
日本中央競馬会(JRA)は15日、競走馬の飼料添加物から禁止薬物が検出されたため、同添加物を購入した28厩舎に所属する計156頭を競走除外とし、15、16日の函館、東京、阪神競馬に出走させない措置を取った。
15日は計72頭が除外となり、16日に行われる重賞レースの函館スプリントステークス(GⅢ)は、ダノンスマッシュなど6頭が除かれ、7頭立てとなる。
除外された馬はJRAの公式サイトで確認できる。
禁止薬物のテオブロミンが検出されたのは、商品名グリーンカルというビタミン・ミネラル剤。
テオブロミンは興奮作用などがあるとされ、禁止薬物104種類のひとつだ。
グリーンカルは古くから使われている製品。
ただ、競走馬の体内に入るものは、新しく製造されるたびに原料などが違うことから、販売前に公益財団法人・競走馬理化学研究所で薬物検査を受ける規則になっている。
今回は、検査結果が出る前の製品が厩舎に流通していた。
なぜルールが機能しなかったのかは調査中だ。
検査結果がわかったのが14日の午後だったため、全馬の薬物検査をする時間的な余裕がなく、JRAは、グリーンカルを購入した28厩舎の出走予定馬156頭を、体内に摂取した可能性があるとして、一律に競走除外とした。
競走除外になった156頭に加え、関係厩舎の所属馬が来週以降のレースに出走しようとする場合、血液検査に合格すれば認められる。
馬券の前売りはインターネット発売に限られていたため、競走除外に伴う窓口での馬券の払い戻しで混乱はなかった。
150頭を超す大量の競走除外という前代未聞の出来事に、日本騎手クラブ副会長の福永祐一騎手は、「競馬サークルの一員としておわびする。競馬の歴史上、類を見ない事件」などと話した。
競馬専門紙や競馬欄を大きく扱う夕刊紙は、予定していた紙面構成や勝ち馬予想の変更などに追われたという。
影響は地方競馬にも及び、帯広で5頭、金沢でも20頭が競走除外となった。
出典
『競走馬のエサに禁止薬物が混入 156頭が出走取りやめ』
https://www.asahi.com/articles/ASM6H2SQWM6HUTQP004.html
6月15日18時13分にNHK北海道からは、下記趣旨の詳細な記事がネット配信されていた。
この問題で、JRAは記者団の取材に応じ、横浜市に本社のある飼料メーカー「N工業」が、必要な薬物検査の結果が出る前にえさに混ぜるサプリメントを出荷したことが原因だと明らかにした。
JRAによると、サプリメントは製造するごとに競走馬理化学研究所の検査を受け、禁止薬物が検出されなかったことを確認してから出荷することになっているが、このメーカーは検査結果が出る前の去年12月から出荷していたという。
サプリメントは4つの販売会社を通じて28の厩舎に販売され、14日、競走馬理化学研究所の検査で禁止薬物が検出されたため、これらの厩舎の競走馬あわせて156頭の出走が取り消しになった。
JRAは、サプリメントを購入した厩舎から今月22日と23日のレースに出走を予定している競走馬については、15日と16日に血液検査を行い、禁止薬物が検出されなければ出走できるとしている。
JRAの庄村裁決委員は、「製造するごとに検査するという規則が守られていれば起こりえないことなので、業者に対する啓発を厳しくしていきたい」と話している。
【レースへの影響は】
JRAによると、横浜市の飼料メーカー「N工業」は、今回、競馬法上の禁止薬物「テオブロミン」が検出されたサプリメントを去年12月から出荷していたため、これまでのレースで、このサプリメントを通じて禁止薬物を摂取した競走馬が出走した可能性は否定できないとしている。
ただ、JRAは、レースの後に1着から3着の競争馬を対象に尿検査を行っていて、去年12月以降に「テオブロミン」が検出されたことはないという。
一方、対象となった馬を含む馬券については、15日のすべてのレースと16日の一部のレースについてインターネットでの販売が始まっていたが、JRAは全額、払い戻しを行ったという。
【飼料メーカーは】
横浜市に本社のある飼料メーカー「N工業」は、製造したサプリメントから競馬法上の禁止薬物「テオブロミン」が検出されたことについて、「原材料としてテオブロミンを使用しておらず、現時点で原因が特定できていない。原因究明のために、製品や原料、製造工程について調査している」としている。
禁止薬物が検出されたことを受け、現在はサプリメントの販売を停止し、製品の回収にあたっているという。
「N工業」は、出荷した時期や薬物検査に出した時期についても明らかにしなかったが、検査結果が出る前に出荷したことは認め、「厳粛に受け止め、多大なご迷惑とご心配をおかけしたことを深くおわびします。徹底的な原因調査を行い、再発防止に努めます」としている。
【「テオブロミン」とは】
競走馬の出走取り消しの原因となった「テオブロミン」という薬物は、興奮作用などがある物質で、JRAは馬の競走能力を一時的に高めるとして、禁止薬物に指定している。
テオブロミンはカフェインと似た構造をしていて、無臭で、わずかに苦みがあり、カカオやココア製品に含まれている。
欧州食品安全機関によると、動物が一定量以上を摂取した場合の主な作用は、過剰な興奮や発汗のほか、呼吸や心拍数の増加などで、特に、馬はテオブロミンに対する感受性が高く、肝臓や甲状腺に影響を受けるという。
このため、欧州食品安全機関は、テオブロミンを、動物のえさとして望ましくない物質としている。
過去には、2004年に東京の大井競馬で、馬のえさからテオブロミンが検出され、競馬の開催が中止されたほか、2001年には北海道のばんえい競馬で、入賞した馬から検出され、問題となった。
また、国民生活センターは、カカオがたくさん含まれたチョコレートについて、興奮作用があるテオブロミンなどをふだんより多く摂取してしまうおそれがあるとして、幼児やお年寄りなどが食べる際には注意するよう促している。
【問題のサプリメントとは】
禁止薬物が含まれていたサプリメントは「グリーンカル」の名前で販売されていている。
製造した飼料メーカーによると、この製品は競走馬が足などの骨を丈夫に保つための粉末状の馬用サプリメントで、メーカーでは1日あたり100gを2回から3回に分け、エサに混ぜて与えることを目安として示している。
成分は、カルシウムが全体の20%と最も多く、ほかにもリンやマグネシウム、亜鉛、ビタミンAなどが含まれているという。
メーカーでは、この製品を昭和50年代から販売していて、これまでの検査で「テオブロミン」が検出されたことはなかったとしており、メーカーが公開しているこの製品の文書にも、「競走馬理化学研究所の検査を実施しており、競馬法に指定される禁止薬物の陰性を確認しております」と記されている。
出典
『飼料会社の検査前出荷が原因』
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20190615/0011146.html
(ブログ者コメント)
昭和50年代以降、検出事例がなかったため、今度も問題ないだろうと検査結果を待たずに販売した?
それにしても、検査に半年もかかるとは・・・。
ちょっと遅すぎる気がする。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。