2020年1月18日付で毎日新聞東京版夕刊から、下記趣旨の記事が図解付きでネット配信されていた。
工事現場で電気を使って溶接作業をしている時に想定外の場所から出火する火災への関心が、建設関係者の間で高まっている。
予期しない経路に流れる「迷走電流」による過熱のためだが、検証が難しく、出火原因と特定されることはまれだ。
専門家は「火災に発展する危険性が十分に知られていない」と警鐘を鳴らしている。
迷走電流は、溶接作業中に発生する電流を安全に流す回路を確保しなかった場合に、想定しない経路を進んでしまうことを指す。
近くに可燃物があると引火する恐れがある。
専門家には知られている現象だが、警視庁捜査1課が2019年11月、3人が死亡した火災を巡って、溶接作業をしていた60代の男性作業員を業務上過失致死容疑などで書類送検したことで、改めて危険性がクローズアップされた。
この火災が起きたのは同年2月12日の昼過ぎ。
東京都大田区のマルハニチロ子会社の5階建て物流倉庫の5階部分約660平方メートルが焼け、同じフロアで荷さばきや工事をしていた40~50代の男性3人が死亡した。
屋上では、冷却装置を更新するための溶接作業が行われていた。
直後は出火した経緯がはっきりしなかったが、捜査1課は溶接作業との関連に注目した。
作業員が行っていたのは「TIG(ティグ)溶接」と呼ばれる方法。
金属棒に電流を流し、不活性ガスを吹き付けながら高熱で材料同士を溶かしてつなげる。
本来は、アースや「渡り」と呼ばれる別の金属棒を使って電流を通す回路を設けておく必要があった。
【回路確保せず発生】
しかし、作業員は任意の事情聴取に対して、「金属棒(約50センチ)を設置し忘れた可能性がある」と説明した。
捜査1課が再現実験を重ねたところ、金属棒がなかった場合には適切な電気回路が確保されず、電流が予期しない経路に流れることが判明。
このことが原因で、溶接場所から約20メートル離れた5階東側にある壁面のウレタンから出火したと判断した。
迷走電流を巡って業務上過失致死容疑で立件されるのは、全国で初めてだという。
迷走電流による火災は、これまでにも起きている。
14年12月には、川崎市の事業所の建築現場で、溶接機から3・5メートル離れたビニール製のチューブが焼けた。
けが人はなかった。
川崎市消防局の再現実験では、アースが適切に設置されていないと迷走電流によってチューブが過熱し、約80秒後に火災が発生し、温度は最大で495度に達した。
労働安全衛生法は、このような溶接を行う作業者に特別な教育の受講を義務づけ、一定の技能水準を求める。
しかし、中央労働災害防止協会(東京都港区)の加藤雅章・安全管理士によると、場所を移動しながらの作業が必要など、悪条件が重なる工事現場では、アースの取り付けが難しい場合もあるという。
加藤さんは、「電気を使う作業では、迷走電流が起きる危険性を考えておく必要がある。火災の一歩手前でおさまっているケースもあるのではないか」と、作業手順を確認する重要性を指摘している。
https://mainichi.jp/articles/20200118/dde/041/040/026000c
(ブログ者コメント)
マルハニチロ子会社倉庫の事例については、本ブログでも紹介スミ。
『2019年2月12日 東京都大田区の倉庫屋上で配管のTIG溶接中、ワタリを置き忘れたため迷走電流で5階の壁の断熱材から出火、初期消火に向かった人など3人が死亡 』
(第1報)
https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/9363/
(第2報)
https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/10232/
一方、2014年の事例はネット検索しても見つからなかった。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。