2024年9月1日11時4分にYAHOOニュース(現代ビジネス)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
世界で最も災害の多い国である日本において、我々の先祖たちは、災害の恐ろしさを後世に伝えるため、様々な手段を用いている。
その代表例が「地名」だ。
【写真】桜、亀、滝ほか、あなたの町は…日本全国「あぶない地名」一覧【解説付き】
現在、日本列島に大雨をもたらしている台風10号(サンサン)によって、すでに各地で土砂災害や浸水、川の氾濫などが起きている。
その被害地域を調べるてみると、確かに「あぶない地名」がズバリ当てはまる場所も。
前編記事『【台風10号】死者3名「蒲郡土砂崩れ」現場が《あぶない地名》と判明…!なぜ「ハザードマップの警戒区域ではない」町で災害は起きたのか』では、蒲郡の「あぶない地名」ほか、災害と関係性が高い「蛇」がつく地名などを検証してきた。
■人気の観光地、実は水害多発地帯だった
歴史に残るような大規模な災害。
これらが発生した場所には、多くの場合、特有の地名がある。
今から40年近く前、1982年7月23日から翌24日にかけて、長崎市内を集中豪雨が襲った。
「長崎大水害」と呼ばれるこの水害で、市内全域は瞬く間に冠水した。
被災地の中でも、23人という多くの犠牲者を出したのが長崎県長崎市鳴滝(なるたき)だった。
この町はかつて幕末期に出島で医師を務めたドイツ人・シーボルトが開設した鳴滝塾があった場所として有名で、現在も観光客で賑わう。
だが実は水害多発地帯としての一面もある。
「鳴滝」という地名について『地名用語語源辞典』(東京堂出版)では〈水音をたてる滝。水音の激しい急流〉と説明しており、水が激しく流れる土地を示している。
長崎大水害で甚大な被害を出した鳴滝だが、被災現場を訪れたところ、もはやその面影はなかった。
新しく建てられたのであろう住宅を含めて、家々が密集している。
この鳴滝は昔、人々が頻発する水害を避けたため、それほど住宅はなかったそうだ。
それが近年になって引っ越してくる人が急増し、今のような住宅地を形成しているという。
その理由を、長崎市内の不動産業者はこう指摘する。
「少し前に、鳴滝を『高級住宅地』にする触れ込みがありました。それからですよ、どんどん家が増えていったのは」
■縁起の良い「つる」のはずが…
たしかに町を散策してみると、シーボルト記念館の周辺は綺麗に整備されており、異国情緒すら感じられる。
ほどよく自然もあって、閑静な山の手といった雰囲気だ。
不動産業者は続ける。
「お店に来る年配のお客さんの中には『高級住宅地』という宣伝文句に惹き付けられて鳴滝に家を建てた方が大勢いらっしゃいますが、後から防災マップを見て、ビックリされますよ」
同じく九州は福岡県みやま市瀬高町東津留(ひがしつる)。
19世紀から今に至るまで20回以上、町を流れる矢部川の氾濫に遭っている。
2012年7月11日~14日にも、梅雨前線に伴う集中豪雨によって矢部川の堤防が決壊、濁流が東津留の家々を呑みこんだ。
この堤防が決壊した現場周辺には「津留」という地名がよく見られる。
矢部川を挟んで東津留の反対にある柳川市大和町六合という地区は、かつて「西津留」と呼ばれていた。
さらにその両地区を「津留橋」が結んでいる。
津留地区で一番の長寿である93歳の男性に話を聞くことができた。
「『津留』という地名はよう水害が起こる場所だと、わしらぐらいの者はみな知っとる。矢部川が鶴の首みたいに蛇行してるだろ。わしが小さい頃はそこからしょっちゅうキレよった(氾濫した)」
現地で矢部川を間近にすると、確かに鶴の首が曲線を描いているように、大きく蛇行している様がよく分かる。
この「鶴」が「津留」となり、今に歴史を伝えているのだ。
■大阪にある《水を「放出」していた地》
一方で、災害が起こりやすい地名を見つける際、土地の今の様子だけを判断材料にしてはいけない。
川や山に近い場所は当然、災害も発生しやすいが、大都市の中心部であっても油断はできない。
大阪府大阪市鶴見区放出(はなてん)もそうした土地に当てはまる。
大阪市の東部に位置するこの放出は、マンションやスーパーマーケット、工場などが立ち並ぶ活気あふれる町だ。
駅に降り立って辺りを見回しても、災害とはまったく無縁な風景が広がっていた。
しかし、この町を明治時代の古地図で見ると、様相は一変する。
かつて、この地は田畑や池が非常に多い低湿地帯だったのだ。
北には寝屋川、南には第二寝屋川、そして西には淀川と、3つの川に囲まれる形になっているこの放出。
それゆえ川が氾濫すれば、水が一気に町に流れ込む可能性が高い。
「かつてあった湖水が、淀川に合流する地点で、水を放出していた。昔から水の集まりやすい土地として、『放出』と呼ばれるようになった」(70代の住民男性)。
1972年と1976年の二度にわたって発生した寝屋川の氾濫による水害を体験した、放出で長年暮らす80代の女性は、その時の苦労をこう打ち明ける。
「あの時は生まれて初めて床上浸水を経験しました。家にも泥水が流れ込んでそれはもう大変でしたよ。三日三晩、朝5時に起きて夜の10時まで泥を掻き出す作業をして、もういっぺんに歳をとった気がしました」
放出の住民たちは、「今は(寝屋川や淀川は)整備されているから大丈夫」と話すが、これは油断以外の何物でもない。
国土交通省のハザードマップでは、寝屋川の氾濫時には1~2mの浸水が、さらに淀川の氾濫時には同2~3mが見込まれている。
これは大阪市内の他の地域と比較しても、きわめて危険度が高い。
「水害は過去のもの」とは単なる思い込みにすぎないのだ。
■野毛(ノゲ)は「ガケ」を指します
首都圏にも、他に多くの災害地名が存在する。
神奈川県横浜市中区野毛(のげ)町は、野毛山動物園を頂点とした丘陵地となっている。
町は起伏が激しく、道路脇の急傾斜は、今にも崩れそうな状態をやっと抑えているかのように舗装されている。
2014年10月、この町の一部で崖崩れが発生して寺院に流れ込み、僧侶が1名亡くなった。
近くの住民は、「事故が起こるまで、『崖がある』という程度の認識で、そこまで危険だとは思っていなかった」と言うが、実はこの「野毛」という地名が、災害を警告していた。
『横浜の町名』(横浜市市民局)では〈ノゲとは崖のこと〉としている。
つまり野毛が、崖崩れや土砂崩れが起きやすい土地だと明示されている。
さらに『横浜の町名』の続きには、〈野毛町の地域には、有名な切り通しがあり、この切り通しは「野毛」という地名が意味する崖をまさに切り取っているのである〉とある。
山を切り開いてできた町が野毛の本当の姿。
危険があって当然なのだ。
■土地の由来を知ることが、命を救う
他にも思いがけない災害地名として、「蟹」というものがある。
神奈川県川崎市高津区蟹ケ谷(かにがや)はそんな蟹がつく珍しい地域だ。
川崎市発行の『川崎地名辞典』には〈「蟹」は、「剥落しやすい土地」を示す「カニ」から来たもの〉と、その由来が記されている。
それを証明するように、'89年8月にこの蟹ケ谷で崖崩れがあった。
当時を知る住民が振り返る。
「あの日は大雨が一晩続きました。ゴルフ場やバッティングセンターが建つ崖の上から土砂がなだれ落ちたんです。住宅に流れ込んで3人が亡くなりました」
その後、事故発生現場の崖下は造成されて、住宅地になったとその住民は話す。
新しく引っ越してきた人たちは、大きな崖崩れがあったことを知っているのだろうか。
ここまで災害に関係する数々の地名をあげてきた。
だがこれらは、ごく一部にすぎない。
前出の楠原氏はこう語る。
「地名には必ず、そこで暮らす人の生活の上で不可欠な意味があります。
だからこそ、長い間、災害と接してきた日本には『あぶない地名』があるのです。
せめて自分の住む所、あるいはこれから住もうとしている土地の名前がどんな意味で、どういった場所なのかを知っておいて損はありません」
自分の住む土地の由来や成り立ちを、少しだけ振り返ってみることが、家族の命を救うことになるかもしれない。
(ブログ者コメント)
記事中の添付リストには、以下のような情報が記されている。
鮎;「揺(あゆ)く」に由来。
軟弱な地盤の土地を意味しており、平地では地震災害が発生しやすい。
その他、梅、荻、女、柿、蟹、釜、亀、草、倉、駒、鷺・・・
https://news.yahoo.co.jp/articles/b9f5a3d6c7c22e67f37cc75cf518579f8fed8806
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。