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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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2022216622分にYAHOOニュース(乗りものニュース)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。

【熟練者でも起こりうる「空間識失調」】

2022131日夕方、石川県の小松基地を離陸した航空自衛隊飛行教導群のF-15DJが、約5km離れた日本海沖で消息を絶ちました。

見つかった破片などから210日に墜落と断定。

その後、パイロットも周辺の海域で発見され、残念ながら搭乗していた2名の死亡が確認されています。

原因の究明は今後、機体の引き揚げ後に本格化しますが、推測として真っ先に挙げられているのが「バーティゴ(pilot vertigo)」と呼ばれる「空間識失調」です。

なぜここまで早く「空間識失調」原因説が推測されたのでしょうか。  

これは一言でいえば、パイロットを常に狙う危険な現象だからです。  

空間識失調は、専門書をあたると「パイロットが航空機の姿勢や運動状態を客観的に把握できなくなった状態」と定義されます。

つまり、自分が認識している飛び方と実際の飛行姿勢などが、著しくかけ離れた状態になるということです。  

典型的な原因としては、飛行運動により平衡感覚を司る三半規管が一時的に異常を来たすことをはじめ、雲中飛行で感覚が崩れる、夜間に漁船の灯火を星と間違えるなどが考えられます。  

実は、この空間識失調、ベテランも新人も技量も関係なく起き、確実に防ぐ手立てはありません。

異常な飛行姿勢を誘発して事故につながりかねず、そのため大変危険視されている現象のひとつです。

1998(平成10)年2月に起きた海上保安庁のシコルスキーS-76Cの事故、20194月の航空自衛隊のF-35の事故でも、空間識失調が推測されています。

前者の海保機の事故報告書でも、空間識失調は「夜間や水平線があいまいで視界があまりよくない状態では陥り易い」と述べられています。  

ちなみに、当該機が所属していた飛行教導群、通称「アグレッサー」部隊は、全国の空自基地を回り、「仮想敵」として戦闘機と対空戦訓練をする部隊で、空自戦闘機部隊の技量向上を図るために存在します。

この目的から、乗員は熟練者揃いで、高い技能をもちます。

当該機のパイロットも、曲技飛行チーム「ブルーインパルス」の隊長を務めた経験もあるほど、腕の立つ人物です。

 

【「空間識失調」が有力説となった背景】

今回事故を起こしたF-15DJが離陸したのは17時半頃。

テレビニュースで離陸時の映像や、気象サイトなどの情報を見る限りでは、当日は雨あるいは雪の降る、あまり良好とはいえない天候でした。

遠くの景色と空の境は分かるものの、空は広く雲に覆われており、この時期の北陸特有の天気と見られます。  

今回の事故では、無線の応答も緊急事態の宣言もなく、見つかった破片や部品からかなり高い速度で海面に衝突したとも見られ、パイロットも予期できない事態が起きたと考えられます。

先述した気象状況から、空間識失調を思い浮かべたパイロット経験者もいたほどです。  

また、現時点の報道を総合すると、問題の飛行を実施するまでの当該機に、システムや装置上の異常は確認できなかったとも。

こういったことから、いつ襲ってくるか分からない空間識失調に当該機の乗員が襲われたという仮説が、より注目されました。

その一方で、操縦していた方が仮に空間識失調に陥ったとして、同乗していたもう一人の方も、同じような状態に陥ってしまったのかという疑問もあります。  

航空機の事故や異常運航は、パイロットや整備士、管制などの人的要因、コンピューターを含む機体とシステム、エンジン、気象から、原因とそれを誘発した要因を調べ、再発防止策へ導くものです。

正確性の高い原因は、正式な調査結果を待つことになります。  

現在、小松基地の公式ウェブページでは、石川県の沿岸に当該機の一部と思われる部品等が漂着しており、自衛隊員が回収している旨を掲載しています。

これらの部品等を拾う行為は、拾得者がケガをする可能性があるほか、「事故原因を究明するための事故調査に(部品等は)必要なもの」とも。

「部品等を探す目的で不用意に海岸に近づくことがないよう、また、当該機の一部と思われる部品等を発見しても、触らず、持ち帰らず、航空自衛隊、警察、消防、自治体等にご連絡いただきますよう、お願いいたします」とコメントしています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/392c447960609a307b2ef499d3ccb2b9d6aaf345 

 

※事故発生当時の報道は下記参照。

202221013分 読売新聞)

31日午後5時半頃、航空自衛隊小松基地(石川県)を離陸したF15戦闘機1機が、日本海上空を飛行中に消息を絶った。

自衛隊が周辺海域に捜索機と救難ヘリを派遣したところ、同日夜、海上で同機の外板や救命装備品の一部を発見した。

自衛隊は同機が墜落したとみて、操縦していた隊員2人の捜索を続けている。

防衛省航空幕僚監部によると、同機は訓練のため同基地を離陸。

その直後、西北西約5キロの空域でレーダーから消えた。

同機は高い技量を持つパイロットが集まる「飛行教導群」に所属している。
この部隊は、同基地を拠点に全国に派遣され、空中戦の訓練で敵役などを務めている。

金沢海上保安部(金沢市)によると、機影が消えたのと同じ頃、石川県加賀市の漁港にいた人から「日本海の沖合で赤い光が見えた」とする通報があった。

海上保安庁は巡視船など3隻を派遣し、状況を調べている。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220131-OYT1T50193/

 

(ブログ者コメント)

空間識失調によるものとみられる国内の墜落事故は、本ブログでも20202月の旭川陸自ヘリと20186月の沖縄米軍戦闘機事故を紹介している。
いずれも訓練中だった。

 

(2022年6月4日 修正1 ;追記)

2022622233分にYAHOOニュース(北陸放送)からは、パイロット2名の両名ともに空間識失調に陥っていた可能性が高いなど、下記趣旨の記事が機体の飛行概要図付きでネット配信されていた。(新情報に基づき、タイトルも修正した)

航空自衛隊の事故調査委員会が、現場海域から飛行データを記録したフライトレコーダーを回収し、事故原因を調査していましたが、航空自衛隊トップの井筒航空幕僚長は2日の記者会見で、隊員2人が「空間識失調」に陥った可能性が高いとする調査結果を発表しました。

 

【墜落直前で立て直しも間に合わず】

死亡した隊員2人は、小松基地で戦闘機パイロットを指導する立場で、訓練で敵役を務める通称「アグレッサー部隊」に所属していました。

事故機は当日、夜間の飛行訓練のため、2機編隊の2番機として、午後529分に小松基地を離陸。

すぐに雲の中に入って右に旋回する中で、機体が過度に傾いたとみられます。

離陸から約42秒後に、高度約650メートルに達したのを境に高度が下がり始め、機体はほぼ真横の状態で急降下。

墜落の2秒前に異常に気付き、機体を立て直そうとした動きがみられましたが間に合わず、離陸から約53秒後、海面に衝突しました。

墜落直前の速度は時速約720キロでした。

 

2人同時に空間識失調に?

「空間識失調」は、操縦士が平衡感覚を失い、機体の姿勢を錯覚する現象で、水平線を視認できない雲の中や夜間に生じやすいとされています。

小松基地の石引司令も2日、小松市役所で記者団に対し、「ベテランでも新人でも誰もが陥る可能性がある生理的な現象で、完全に防ぐことは難しい」と述べました。

20194月に隊員1人が死亡した青森・三沢基地のF35A戦闘機墜落事故でも原因とされ、同型機では墜落回避システムが導入されました。

一方、小松基地のF15戦闘機は2人乗りで、操縦かんを握る前席のパイロットに緊急事態が発生しても、後席のパイロットへの交代が可能です。

しかし事故調査委員会は、フライトレコーダーを解析した結果、墜落の直前まで操縦かんが握られ、縦や横に動かそうとする力が加わっていないことから、隊員2人がいずれも空間識失調に陥り、機体の姿勢を把握できなかったと推定しました。

航空自衛隊の担当者は2日、「なぜ2人とも気づかなかったのだろうと悩んだが、フライトレコーダーのデータは異常を示していない。他のパイロットの話や過去の経験から、2人とも(空間識失調に)陥ることもあるとわかった」と述べました。

 

【小松基地は3月に訓練再開 再発防止策は】

・・・

航空自衛隊は今後、隊員への教育を強化するとともに、VR=バーチャル・リアリティの技術を使った訓練装置の導入や、F15戦闘機への墜落回避システムの搭載に向け検討を行う方針です。

https://news.yahoo.co.jp/articles/a5d6142b367806f565c5ae2f4d9e41d2363ec13b 

 

6351品にYAHOOニュース(北國新聞)からは、前方にいる1機のレーダー追尾操作に気を取られていた可能性も考えられるなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。

・・・

フライトレコーダー(飛行記録装置)の解析から、田中1佐が操縦桿を激しく動かした形跡はなく、機体の姿勢が正しいと誤認していたとみられる。

雲の中を飛行し、日没直後で薄暗かったこともあり、空間識失調が発生しやすい状況だったとした。

事故機は2機編隊の後方で離陸し、もう1機と2回、通信していた。

うち1回は前方にいるもう1機をレーダーで追尾できないとの内容だったという。

調査では、レーダー操作に気を取られ、機体の姿勢を立て直すのが遅れた可能性も指摘した。  

・・・

空自は再発防止に向け、空間識失調に関する教育訓練の強化や計器確認の徹底、墜落を自動回避するシステムの搭載を推進する。

井筒俊司航空幕僚長(元小松基地司令)は2日の会見で「デジタル技術を教育に取り入れたい」と述べ、空間識失調の体感にVR(仮想現実)ゴーグルなどの活用を検討していることを明らかにした。

・・・

https://news.yahoo.co.jp/articles/bffc9bc2547515ad3ee4e0be6f2e80ad9d0bc750 

 

 

(2022年6月10日 修正2 ;追記)

20226950分に北國新聞からは、2人は空間識失調に陥った場合の感覚を体験する訓練をコロナ禍の移動自粛などで受けていなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。

防衛省は8日、事故原因とされた機体の姿勢を錯覚する「空間識失調」の最新訓練を2人が受けられていなかったと明らかにした。

過去の墜落事故の教訓から、訓練用のシミュレーター一式が空自入間基地(埼玉県)に導入されていたものの、コロナ禍に伴う移動自粛の影響などで、小松から訓練に参加できなかった。

8日に都内で開かれた自民党の国防部会・安全保障調査会合同会議で、防衛省側が説明した。

空自は入間基地の航空医学実験隊にコックピットを再現したシミュレーターを導入し、全国の操縦士に空間識失調に陥った感覚を体験してもらうことで、再発防止に取り組んできた。

自民の会合は非公開で、出席した国会議員からは、「人命に関わる課題については訓練の在り方を考えるべきだ」「航空医学の研究を深める必要がある」などの指摘が相次いだ。

防衛省側は、空自が持つF15戦闘機全201機に衝突警報装置や自動衝突回避装置が備わっていないとし、警報はできる限り早期に全機に取り付ける方針を示した。

衝突回避装置の実装も目指すが、いずれの機体も1981(昭和56)年以降の導入と古く、現時点で対応が可能か不明という。

F35Aには両方の装置が備わっている。

中曽根康隆防衛政務官は、「今後の再発防止策に全力を挙げ、飛行の安全に万全を尽くす」と述べた。

https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/763326  

 

682131分にYAHOOニュース(時事ドットコム)からは、シミュレーターはパイロット養成課程で使われていたものだが三沢基地での墜落を受け全パイロットが訓練を受けることになっていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。

防衛省は8日の自民党会合で、2人が、事故原因と推定される「空間識失調」対策のシミュレーター訓練を受けていなかったと説明した。

訓練は全戦闘機のパイロットが対象だったが、新型コロナウイルス感染拡大などの影響でペースが鈍化していた。

シミュレーターは2006年に空自入間基地(埼玉県)に配備された。

以前はパイロットになる課程で使われていたが、194月に空自三沢基地(青森県)所属の最新鋭ステルス戦闘機F35Aが墜落した事故を受け、全戦闘機のパイロットが訓練を受けることになっていた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/20dc2b8f55a75f2045b96bd3c6e46bd14e6e6fa0 

 

 

 

  

 

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自己紹介:
化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。

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