2017年2月24日22時50分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
2月25日付で朝日新聞静岡版(聞蔵)からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
静岡県御殿場市の陸上自衛隊東富士演習場で、2010年、野焼き作業中に男性3人が死亡した事故で、業務上過失致死の罪に問われた元東富士入会組合長のW(76)と同組合事務局長のK(59)の両被告=いずれも同市=に対する判決が、24日、静岡地裁沼津支部であった。
斎藤裁判長は、W被告に禁錮1年執行猶予3年(求刑禁錮1年)、K被告に禁錮10カ月執行猶予3年(同10カ月)を言い渡した。
判決によると、野焼きは同年3月20日、同組合を含む4組合が実施し、地元住民らが参加。
k1さん(当時37)、k2さん(同33)、iさん(同32)が、強風にあおられた火に巻かれて焼死した。
W被告は作業の総責任者、K被告は統制本部の責任者だった。
争点は、両被告が今回の事故を予見できたか、対策をとる義務があったかという点だった。
判決では、野焼き作業では火災の延長や拡大などの危険から、作業員の安全を確保できる幅のある「防火帯」から着火して、焼け跡を背に進行するなど、避難場所を確保しながら作業を進めないと危険が及ぶ恐れがあったとした。
事故が起きた現場の幅は約4.7mで、防火帯にはなり得ないものだったと指摘。
防火帯外からの着火の禁止などの措置が現場で取られていれば、事故は確実に防げていたと言及。
両被告は、前年度の実施計画を漫然と踏襲し、作業担当責任者との間で、防火帯以外からの着火禁止などについて、周知徹底することを怠ったとした。
さらに「作業員らの安全確保は、野焼きの主催者が負う最も基本的な注意義務」として、「(両被告が)安易に前例を踏襲し、安全確保に留意するよう抽象的に求めるだけで、具体的な事故防止対策は作業班など地元に丸投げしていた」と指摘した。
弁護側は、「事故は、突如発生した猛烈な風のためで、予想できなかった」と反論したが、判決は「猛烈な風が吹いたとしても、防火帯外の場所からの着火を禁じ、現場作業員に周知徹底していれば、今回の結果は発生しなかった」と結論づけた。
弁護側はまた、野焼きについて「3000ヘクタールの広大な地域で1000人超が実施する作業で、安全確保は現場作業班に委ねざるを得ない」とし、両被告の無罪を主張していた。
両被告は即日控訴した。
総務省消防庁によると、野焼きなどの火入れが原因の林野火災は、2012~16年に1105件起き、この間、19人が死亡している。
今月19日には山口県美祢市の秋吉台で、山焼きの火入れをしていた男性(48)が焼死した。
野焼きは範囲が広大で、作業に当たる人数も多い。
進め方も、前例や個々の経験に頼る面があり、捜査関係者は「事故が起きても、特定の誰かに刑事責任を求めるのはなかなか難しい」と指摘する。
今回のように起訴された例は珍しいという。
09年3月、大分県由布市で野焼き作業をしていた住民ら4人が死亡した事故では、実施主体の役員10人が過失致死容疑で書類送検され、10年3月に9人が起訴猶予処分、事故で死亡した1人は不起訴処分になっている。
御殿場市では、事故後、市の「火入れ条例」を改正。
火入れの実施を、風速などを測る計器を使ってデータに基づいて判断するようにし、あらかじめ草刈りをして作る防火帯の幅を、従来の倍の「20m以上」に広げることを義務づけた。
出典
『元組合長らに有罪判決 野焼き3人死亡事故 静岡』
http://digital.asahi.com/articles/ASK2Q7SFQK2QUTPB016.html?rm=705
2月25日付で中日新聞からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
斎藤裁判長は判決で、両被告が野焼きの実施計画を企画・立案する責任者であり、作業員の安全を確保する注意義務を負う立場にあったと認定。
「防火帯以外での着火を禁止する義務があった」と判断した。
その上で、死亡した3人の作業場所が、防火帯の基準に満たなかった点を強調。
両被告が適切な安全教育などを行わずに事故につながったとし、安全教育がなければ作業員の生命・身体に危険が及ぶのは「いわば常識」と述べ、事故の予見可能性も認めた。
一方で、検察側と弁護側で意見が対立した、3人が巻かれた炎の火元は特定せずに、「被害者らの着火した炎か、隣の作業班の炎」と述べるにとどめた。
判決によると、両被告は、野焼きの計画段階で防火帯以外での着火禁止の周知など十分な安全策を取らず、10年3月20日の東富士演習場の野焼きで3人に漫然と着火作業をさせ、焼死させた。
<解説>
陸自東富士演習場での野焼き事故をめぐり、実施団体「東富士入会組合」の元組合長と事務局長を有罪とした静岡地裁沼津支部の判決。
主催者が格別な措置を講じずに現場の適切な判断を期待するのは許されないと、現場への安全教育の徹底を、実施団体の義務と認定した。
全国で相次ぐ野焼き事故の防止に、一石を投じる内容になった。
弁護側の話では、野焼き事故で実施団体の役員が起訴された例は、「調べた限りない」という。
大分県で2009年に4人が死亡した事故では、実施団体の10人が過失致死容疑で書類送検されたが、大分地検は、起訴猶予や不起訴とした。
静岡地検沼津支部の起訴は、踏み込んだ判断だったといえる。
背景には、事故直後から「現場の責任」を主張する組合側に対し、法廷で真相を確かめたいという遺族の感情があったとみられる。
公判では、証人の一人として、同規模の野焼きを行う山口・秋吉台の実施団体の関係者が出廷。
組合と同様に「最終的な安全確保は実施団体の指示でなく、現場の判断に多くを委ねている」と語った。
その秋吉台で、今月、野焼き中に男性1人が死亡する事故が起きた。
今回の判決は、実施団体が大きな責任を有するという判断を示した。
東富士入会組合にとどまらず、各地の実施団体に安全対策の徹底を迫っている。
出典
『東富士野焼き焼死 有罪』
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20170225/CK2017022502000064.html
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。