2021年5月14日0時2分にNHK NEWS WEBから、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
ヘディングに関するリスクを避けるため、日本サッカー協会は、頭部への負担を考慮しながら正しいヘディングの技術を身につけてもらおうと、若い年代の練習方法をまとめたガイドラインを作成しました。
プロサッカー選手が一般の人にくらべて認知症などで死亡するリスクが3倍以上高いとする海外の研究結果などを受けて、イングランドやスコットランドのサッカー協会は、若い年代の一部でヘディングの練習を禁止しているということです。
これを受けて日本サッカー協会は、医学の専門家などを交えて検討した結果、ヘディングの反復が認知機能に及ぼす影響の検証は難しいなどとして、現時点では禁止はしないことになりました。
そのうえで、頭部への負担を考慮しながら正しいヘディングの技術を身につけてもらうため、幼児期から中学生までの練習方法を記載した指導者向けのガイドラインを作成しました。
ガイドラインでは、中学生まで5つの段階に分かれていて、
▼小学1年生と2年生では、落ちてくる風船をキャッチしたり額に当てたりして、遊び感覚で空間を移動するボールに体を合わせる経験を積むのが望ましいとしています。
▼3年生から4年生になると、2人同時にジャンプして空中のボールを手で取り合う動きなどを取り入れます。
▼サッカーボールを使ってのヘディングの練習が導入されるのは5年生から6年生で、1週間に10回程度、高さを変えてジャンプでのヘディングを行うなどとしています。
日本サッカー協会の反町技術委員長は、「現場の指導者としてどうすべきか、ちゅうちょするところもあると思うので、現時点のガイドラインを示した。禁止するのではなく、正しくおそれながら、より適切な方法でヘディングの習得を目指す。今後、新たな情報が出てくればアップデートしていきたい」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210514/k10013029721000.html
5月14日付で毎日新聞東京版からは、プロのサッカー選手が神経変性疾患で死亡するリスクは一般の3倍以上という調査結果もあるなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
日本サッカー協会は13日、15歳以下を対象に年齢に応じたヘディングの練習方法を示したガイドラインを策定した。
頭部への衝撃が脳しんとうや認知障害につながる恐れから、若年世代で禁止する国もあるが、日本協会は「正しい技術の習得が将来に向けて必要。脳へのダメージが少ない強度と方法で段階的に習得する。リスクを避けるため、禁止するのではなく『正しく恐れる』」とした。
ガイドラインでは、未就学の幼児については風船や新聞紙を丸めたボールを額に乗せて慣れる練習を例示し、小学1、2年生には、軽量のゴムボールを10回連続で額に当てるなど遊び感覚の練習を推奨。
小学3、4年生は8人制の試合でヘディングの機会があるため、2人同時にジャンプして空中のボールを手で取り合う運動を取り入れる。
小学5、6年生からは小ぶりのサッカーボールによる反復練習を徐々に導入。
中学生では体幹や首回りを強化し、正しい姿勢でのヘディングを身につける、と定めた。
ヘディングを巡っては、英グラスゴー大が2019年、プロサッカー選手が神経変性疾患で死亡するリスクが一般の3倍以上になるとの調査結果を公表した。
20年秋には元イングランド代表FWボビー・チャールトン氏が認知症になったと家族が公表し、選手時代のプレーとの因果関係が疑われた。
イングランド協会が昨年発表したガイドラインは、11歳以下のヘディング練習を原則禁じる一方、試合では禁止していない。
日本協会は医師、研究者らと試合や練習でのヘディングの頻度などを年代別に調べ、代表経験者や指導者への聞き取り調査も実施して内容を決めた。
https://mainichi.jp/articles/20210514/ddm/041/050/029000c
5月13日21時0分に朝日新聞からは、2018年度の学校でのヘディング事故件数などが、下記趣旨でネット配信されていた。
ヘディングの事故は学校でどのように起きているのか。
国立研究開発法人、産業技術総合研究所の北村光司・主任研究員は、日本スポーツ振興センターの2018年度の学校事故をめぐる災害共済給付制度のデータを分析した。
サッカー全体の事故は小学校5千件、中学3万1千件、高校(高専を含む)3万8千件。
そのうちヘディングの事故は小学校42件、中学756件、高校1824件で、9割近くが部活動中のケガだった。
頭や首の重症率はサッカー全体が1・20%だったのに対し、ヘディングに絞ると10・56%にのぼる。
「頭や首の重い傷害が発生しやすい」という。
ヘディング時の頭や首の重症事故を状況別に見ると、競り合いで「相手の身体」と衝突するケースが58%を占めた。
「ボール」との衝突で生じる痛みや不調は22%。転倒して「地面」にぶつけたのは17%だった。
ボールとの衝突によるケガは、頸椎(けいつい)捻挫が71%を占める。
地面は脳振盪が44%で頸椎捻挫が24%。
それに対し、「相手の身体」との衝突は、脳振盪42%、頸椎捻挫25%に加え、硬膜外血腫や硬膜下血腫、脳出血、脳挫傷の割合が高かった。
北村氏によると、海外の研究では、16歳以下の選手のフリーキックの軌道を元に、守備的なヘディングをした際の衝撃力を測った実験データがある。
それによると、ボールが1回当たった時の衝撃は非常に小さかったが、ヘディングを繰り返すことで、どのように脳損傷などを負うかについては、実験ではまだ分かっていないという。
「近年、ヘディングの繰り返しのリスクに注目が集まっているが、そもそも、頭を使うヘディングがリスクの高いプレーであることを理解する必要がある」
https://www.asahi.com/articles/ASP5F5QKCP5COIPE031.html
2021年5月14日20時45分に朝日新聞から、下記趣旨の記事が複数枚の事故現場写真付きでネット配信されていた。
東京都内を通る首都高から14日早朝、走行中の乗用車が外壁を乗り越え、隅田川に転落した。
運転していた20代の男性が死亡し、警視庁が事故原因を調べている。
河川上を通る道路なのに、なぜ壁は車が乗り越えてしまう高さなのか。
首都高からの転落事故は過去にも起きている。
なぜ繰り返されるのか。
背景を追った。
午前4時50分ごろ、首都高向島線の両国ジャンクション付近で事故は起きた。
現場はゆるやかな右カーブと左カーブが続くS字のような区間。
2車線から1車線になる付近だった。
首都高や捜査関係者によると、乗用車はまず道路左側の外壁に接触した後、右側に突っ込み、約15メートル下の川に転落した。
乗り越えたコンクリート製の外壁の高さは約90センチ。
その手前にあった高さ40~50センチの緩衝材を踏み台のようにして、外壁を乗り越えたとみられている。
事故の直前、転落した乗用車が前の車を追い抜き、接触を起こす前にブレーキランプがつく様子が防犯カメラに映っていた。
付近にブレーキ痕も確認されたという。
同庁は、速度超過やハンドル操作に問題がなかったか調べている。
首都高によると、こうした車両の転落事故は1992年以降、全線で7件確認されている。
多くが外壁を乗り越えたケースだ。
スピードを出す車両が目立ち、河川の上やビルの合間を走る高架なのに、なぜ外壁の高さは90センチなのか。
首都高の外壁は「壁高欄(かべこうらん)」と呼ばれる。
高さの基準は国土交通省の通達に基づき、60センチ以上、1メートル以下と定められている。
壁高欄のほか、その上側に積み荷などの落下や投棄をふせぐ高さ3メートルの防護柵が設けられている区間はある。
だが、今回の現場は対象外。
防護柵を設ける区間は、積み荷などが落ちたら影響の大きい鉄道や石油などを扱う施設の付近だ。
そもそも、壁高欄も防護柵も、車や人の転落を想定していないのだ。
なぜか。
首都高や国交省の関係者によると、「運転者の安全運転義務の遂行」が前提になっているためだ。
首都高の正式名称は「首都高速道路」。
高速道路との呼び方だが、分類上は「自動車専用道路」。
特段の標識がない限り、多くが上限速度は一般道と同じ60キロだ。
上限速度を守る限り、比較的ゆるやかなカーブの今回の区間での事故は起きないとの前提で、「90センチの壁高欄で問題ない」(担当者)との立場だ。
横浜国立大学大学院の田中伸治教授(交通工学)は今回の事故について、「現場は合流部分で必要以上に速度を出す場所ではなく、川の上だったということを踏まえても、壁高欄が90センチに設定されていてもおかしくはない」と話す。
また、首都高などの自動車専用道路は、東名高速など、ほかの高速道路とは違う規格でつくられ、安全に走行できる「設計速度」も低く設定されている。
田中教授は、「首都高が高速道路という前提で、上限速度などを誤って認識している人は一定数いる。首都高側がきちんと周知し、ドライバー側もしっかり認識する必要がある」と話す。
首都高の担当者は、「運転者には合流注意の看板や路面の文字表示などを注視してもらい、今後も安全運転を呼びかけたい」と話している。
https://www.asahi.com/articles/ASP5G6K4BP5GUTIL03R.html
2021年5月13日16時26分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
九州大大学院医学研究院の松元幸一郎准教授(57)=呼吸器内科学=や九大病院の神尾敬子医員(44)らの研究グループが、線香の煙を吸い込むとぜんそくを悪化させるメカニズムを解明したと発表した。
線香の煙が気道を収縮させやすくしたり、異物を防ぐ肺の機能を低下させたりして、ぜんそくを悪化させていた。
日常的に線香を使う家庭の子どもは、使わない家庭の子と比べぜんそくのリスクが高いことが従来の研究で分かっていたが、線香の煙が体に影響する仕組みは未解明だった。
研究グループは、国内で市販している線香の煙をマウスに吸わせ、24時間後に影響を調べた。
その結果、線香の煙が気道を刺激して収縮を引き起こしやすいことや、肺の中で細胞と細胞の隙間(すきま)をつないで異物の侵入を防ぐたんぱく質「タイトジャンクション」の機能低下を引き起こすことが判明した。
燃やす線香の本数を4本から8本に増やすと悪化する結果も得られた。
研究成果は3月31日付の英国のオンライン総合学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。
松元准教授が研究を始めたのは、診療した20代の僧侶や80代男性の患者から「成人してぜんそくの症状は落ち着いていたのに、線香をたいて読経していると、ぜんそくが起きやすくなった」、「親類の葬儀で焼香を終えて自宅に帰ってから、呼吸が苦しくなるなど、ぜんそくが悪化した」などと相談されたのがきっかけだった。
ぜんそくの臨床研究に詳しい湘南鎌倉総合病院免疫・アレルギーセンターの谷口正実センター長(64)は、「ぜんそく患者にとって線香の煙は強い刺激となり、息苦しさなどを引き起こすケースは多い」と話し、患者には可能な限り煙を避けるように勧めているという。
また台湾観光協会によると、台湾では台北の観光スポットである龍山寺で2020年3月から参拝客による線香の使用を全面禁止するなど、寺院での使用見直しが広がっている。
国内のある線香メーカーの担当者は今回の研究発表について、「最近の日本の家屋は気密性が高く、煙が薄まるまで時間がかかることが影響している可能性もある。論文内容を真摯(しんし)に受け止めて研究を進め、安心安全な商品の提供に努めたい」と述べた。
線香のどの成分が有害物質を発生させているかは不明だが、松元准教授は「線香を使うときにはしっかり換気をしたり、煙の少ない線香を選んだりするようにしてほしい」と呼びかけている。
https://mainichi.jp/articles/20210513/k00/00m/040/169000c
※ちょっと前、2021年4月2日18時49分にマイナビニュースからは、燃焼時に多くの有害物質が発生しており、タバコの燃焼時よりもPM2.5が長時間室内に浮遊するなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
九州大学(九大)は4月1日、線香の煙を吸入すると気道が収縮しやすくなり、気道を覆う上皮のバリア機能も低下することで、ぜん息を悪化させる可能性があることを明らかにしたと発表した。
線香は日本をはじめ、アジアや中東の多くの国において、宗教的行事や香りを楽しんだりするものとして慣習的に使用されてきたが、実は燃焼時に多くの有害物質が発生しており、タバコの燃焼時よりも高濃度のPM2.5が長時間室内に浮遊することも近年の研究から判明している。
また最近の臨床研究からは、線香を日常的に使用する家庭の子どもは、使用しない家庭の子どもと比べてぜん息のリスクが高く、肺機能が低下しやすくなることなども報告されていた。
しかし線香の煙の吸入が、肺や気道の機能にどのように影響するのかは、よくわかっていなかったという。
そこで今回の研究では、マウスに線香の煙を吸入させる実験を実施。
その結果、気道過敏症が亢進。
つまり、気道が収縮しぜん息を起こしやすくなり、肺に存在するタンパク質である「タイトジャンクション」の発現が低下してしまうことが判明したほか、線香の煙が気道を覆う上皮細胞のバリア機能を低下させることも判明したという。
タイトジャンクションは細胞同士を密に結合させ、気道上皮のバリア機能を保つタンパク質で、炎症の原因となる吸入抗原が体内へ侵入することを防ぐ役割を担っていることが知られている。
なお、線香の煙によるマウスの肺や気道への有害な作用は、線香の煙を吸入したあとに発生した酸化ストレスによるものであるため、抗酸化剤を使用することで症状を改善することが可能だという。
また、九大病院に通院するぜん息患者の中には、線香の煙で咳が止まらなくなったり、呼吸が辛くなったりすることがある人もいるそうで、そういう経験がある人がいる場合は、線香の本数を減らしたり、室内の場合は換気を行ったりするなどして、できるだけ線香の煙を吸入しないように心がけた方が望ましいと研究チームでは説明している。
https://news.mynavi.jp/article/20210402-1863718/
2021年5月13日15時0分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
滋賀県信楽町=現・甲賀(こうか)市=で平成3年、信楽高原鉄道(SKR)とJR西日本の列車が正面衝突して乗客ら42人が死亡した事故は、14日で発生から30年となる。
当時、鉄道事故の原因を究明する専門の調査機関はなく、遺族らは「鉄道安全推進会議」(TASK)を設立。
現在の運輸安全委員会の発足につなげたほか、事故遺族を支援する制度も充実させた。
TASKは一昨年、役目を終えたとして解散したが、安全の指針として社会に示したものは大きい。
【鉄道安全推進会議(TASK)を設立】
《事故に奪われた命はかえってくるものではないが、事故の悲惨な犠牲を将来に生かすことはできる》
5年8月に発足したTASKの設立趣意書には、鉄道事故調査の専門機関を求める遺族らの強い決意が記されている。
その8カ月前、旧運輸省が公表した事故の報告書は、わずか12ページ。
到底、遺族が納得できる内容ではなかった。
事故はなぜ起きたのか。
直接原因は、信楽駅で信号が赤のまま変わらないトラブルが生じたのに、SKRが規則通りの対応をしないまま列車を出発させたこと。
JR西の運転士も、列車がすれ違える唯一の場所だった待避線にSKRの列車がいなかったことを分かってはいたが、青信号に従って漫然と運行を続けた。
背景要因もあった。
ずさんな安全管理だ。
両社は、法律に基づく届け出をせずに、それぞれの信号システムを変更。
当日のトラブルを生んだ。
事故前にも3回、信号トラブルが起きていたが、原因究明や再発防止の行動を取らなかった。
両社間の連携不足、安全意識の欠如…。
組織的背景が複合して起きた事故。
しかし、運輸省の調査は、運転が規則通りに行われたかどうかに焦点が絞られた。
関西大の安部誠治教授(交通政策論)は、「なぜ現場がルール違反をしたのか。再発防止にはその背景までも解明することが重要だが、その観点は全くなかった」と指摘する。
遺族らは事故翌年、独立組織として事故原因を調査するアメリカのNTSB(国家運輸安全委員会)を訪問し、専門機関の必要性を確信。
その後もヨーロッパを視察したり、ほかの鉄道事故の被害者らから状況を聞き取って、独自の観点から事故原因を考察した意見書を作成したりしながら、運輸省への訴えを続けた。
【運輸安全委員会発足につながる】
国は当初、「飛行機や船の事故は場所を特定することから始まり、難航する。鉄道はレールの上。わざわざ調査機関は必要ない」といった説明を繰り返していたが、TASK元副会長の国府(こくふ)泰道弁護士は「次第に訴えに耳を傾けるようになった」と振り返る。
そして事故から10年後の13年10月、航空・鉄道事故調査委員会が発足。
同委員会は20年、権限を大幅に拡大した運輸安全委員会となった。
13年以降、運輸安全委員会は鉄道事故だけでも320件を調査。
調査は事故原因を明らかにするだけではなく、乗客の生死を分けた状況から座席や設備の問題を分析する「サバイバルファクター」なども加わった。
乗客106人が死亡した17年のJR福知山線脱線事故の調査では、JR西への情報漏洩(ろうえい)が発覚したが、その反省から、調査の途中経過の公開範囲を拡大し、被害者への情報提供を強化する事故被害者情報連絡室が新設された。
安部教授は、「遺族らが求めてきたことは一定実現された。だが、安全の追求に終点はない。より良い調査方法や報告書への執念を失ってはならない」としている。
【被害者支援も後押し】
悲願の運輸安全委員会が発足する2カ月前の20年8月。
当時TASKの会長だった遺族の吉崎さん(男性、故人)は、75歳の高齢ながら、群馬県の「御巣鷹(おすたか)の尾根」へ初めて登った。
520人が死亡した昭和60年の日航ジャンボ機墜落事故の慰霊登山。
「事故は違っても痛みは同じ」。
ほかの事故遺族の悲しみに寄り添う姿は、TASKの理念を象徴していた。
30年前、信楽高原鉄道事故の遺族は家族の安否を知るため、現場や病院をさまよった。
鉄道会社や国は、説明を求めても、ほとんどが門前払いだった。
「被害者を均等にサポートする仕組みが必要」。
事故調査機関の設置に並ぶTASKの目標となった。
「国に被害者支援も自分たちの仕事だと理解させることが第一歩。そのために手をつなごう」。
信楽事故の遺族の言葉に共感し、TASKに参加したのが、花火大会の見物客11人が死亡した平成13年の兵庫県明石市の歩道橋事故で次男を亡くした下村さん(男性、62歳)。
下村さん自身も行政や警察の対応に憤りを感じていた。
歩道橋事故では、情報の乏しい中で複数の病院を回った揚げ句、遺体安置所で子供と対面した夫婦もいたという。
下村さんはTASKの役員として「被害者の心情に共感して寄り添う支援」を求めて奔走。
国土交通省に要望書を提出したり、職員に被害者支援の必要性を訴えかけたりした。
中華航空機墜落事故(6年)やJR福知山線脱線事故(17年)など、多くの事故遺族とも連携を深めた。
その結果、国交省は21年度に被害者支援の検討会を立ち上げ、24年、国交省は検討会のまとめを受け、「被害者らに寄り添う」ことを基本とした「公共交通事故被害者支援室」を設置した。
【「被害者に寄り添う」組織の設置】
同室は約70人の職員が、事故の被害者からの相談を一元的に受け付け、安否情報の収集や、補償制度の紹介などを担う。
15人が死亡した28年の長野県軽井沢町でのスキーバス事故では、現場に近い事務所に臨時の窓口を設置し、継続的に被害者の支援にあたった。
一方、同室を周知するために配布されるカードについて、JR福知山線脱線事故の負傷者らと意見交換した際は、「見た目を柔らかくすべきだ」などの指摘を受け、一部、文章を改めた。
同事故で次女が負傷した三井さん(女性、65歳)は、「国の職員が被害者と一緒に机を囲み、未来の支援のために意見を聞こうとする日が来るなんて思ってもみなかった」と話す。
「TASKの一員であったからこそ、悲しみに押しつぶされそうになったときも『将来の安全のために』と自身を奮い立たせることができた」と下村さん。
遺族らの思いや活動が積み重なり、TASKは事故の遺族や被害者支援のあり方に大きな足跡を残した。
◇
【信楽高原鉄道事故】
平成3年5月14日午前10時35分ごろ、滋賀県信楽町(現・甲賀市)で、信楽高原鉄道(SKR)の列車とJR西日本の臨時列車が単線上で正面衝突。
乗客ら42人が死亡し、600人以上が重軽傷を負った。
大津地裁は12年、業務上過失致死傷罪などでSKR側の3人を有罪とした。
JRの運転士らは不起訴となったが、一部遺族が起こした民事訴訟で大阪地裁は11年、事故原因は「両社による複合的な人為ミス」として、JR西の注意義務違反を認定。
大阪高裁もJR西の控訴を退け、判決が確定した。
SKRは単線(貴生川-信楽)を折り返し運転していたが、当時、信楽町では世界陶芸祭が開催されており、輸送量向上のため、途中ですれ違える待避線を設けてJR西の列車が直接乗り入れられるようにしていた。
https://www.sankei.com/affairs/news/210513/afr2105130010-n1.html
5月14日19時8分にNHK滋賀からは、信楽鉄道では事故当時を知る社員が1人もいなくなったので風化防止が課題など、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
信楽高原鉄道事故から30年、事故の記憶と教訓をどう伝えていくのか、遺族と鉄道会社の今を取材しました。
【高齢化の中で遺族は】
事故のあと遺族らは「鉄道安全推進会議・TASK」という組織を立ち上げ、鉄道事故の調査の専門機関を設置するよう国に求めるなど、積極的に活動してきました。
しかし、遺族の高齢化が進む中、中心的なメンバーが亡くなったほか、事故の調査機関の設置や被害者支援で一定の役割を果たしたとして、おととしにはこの組織も解散しました。
遺族の1人、京都府城陽市の西山さん(男性、72歳)は、事故で妻の姉の中田さん(当時42)を亡くしました。
事故直後には、現場近くに建てられた慰霊碑のデザインをするなど、事故の原因究明に向けて遺族会の活動に積極的に参加していました。
しかし、西山さん自身も70歳を超えるなど、遺族の高齢化が進み、事故が風化するのではないかと不安を募らせています。
西山さんは、「一緒に活動してきた遺族の仲間が亡くなっていき、本当につらい。消えていく意見かもしれないが、この事故のことを誰かに知っていてもらいたい」と述べ、事故のことを忘れないでほしいと訴えていました。
【教訓を継承する取り組み】
事故から30年、信楽高原鉄道では、事故当時を知る社員が1人もいなくなり、記憶と教訓の継承が課題となっています。
こうした中で、月命日である毎月14日を安全の日として定め、それにあわせて、社員が慰霊碑周辺の草むしりなどをし、犠牲者を追悼する取り組みを、10年前から続けているということです。
また7年前からは、毎年5月に、地元の甲賀市の新人職員を事故現場に招き、事故の経緯と原因について説明を行うなど、風化の防止に向けた取り組みも行っています。
去年の夏に、信楽高原鉄道の安全管理を担当する常務に就任した松田さんは、「わたしも事故を経験していないので、正確に自分自身が知ることが大事だし、風化を防止するために継続して伝えていくことが重要と考えている」と話しています。
一方、JR西日本でも、8年前から、新人を含めた社員が年に1回慰霊碑の清掃に取り組むなど、若い世代へ事故の教訓と再発防止に向けた活動に取り組んでいます。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/20210514/2060007511.html
5月13日9時0分に毎日新聞からは、事故当時の様子などが下記趣旨でネット配信されていた。
すし詰めだった乗客が衝撃音と共に折り重なった。
漂う燃料の臭いに恐怖感は増す。
助け出された母の手を握ると脈は止まっていた――。
滋賀県甲賀市(旧信楽町)で1991年5月14日、信楽高原鉄道(SKR)とJR西日本の列車が正面衝突して42人が死亡、600人以上が負傷した事故。
自らも重傷を負って生き延びた女性は、当時の光景をまざまざと思い出す。
あれから30年。
関係者の高齢化が進み、亡くなる人も相次ぐ中、風化を懸念する遺族らと、教訓を受け継ぐ人たちの声を聞いた。
・・・
あの日。久しぶりに親子で出掛けようと、信楽で開かれていた世界陶芸祭に母と姉と3人で向かっていた。
「車で行くより列車の方が安全だから」と鉄路を選び、SKRに直通乗り入れしていたJRの先頭車両に京都駅から乗車。
車内は陶芸祭を目指す人であふれていた。
・・・
突然「ドーン」と大きな音がした。
同時に身動きが取れなくなった。
何が起きたのか分からず、隕石(いんせき)が落ちたのかと思った。
人が折り重なり、左肩に姉のあごが乗っていた。
足は座席に挟まれ、首もわずかしか動かせない。
「どうしよう、ママがいない」。
姿が見えない母を姉と一緒に何度も大声で呼んだが、返事はなかった。
「苦しい」「息ができない」――。
しぼり出すような声が周りで聞こえ、消えていった。
燃料の臭いがして、誰かが「燃えるんちゃうか?」と声を上げた。
「このまま焼け死ぬの?」。
恐怖で体が震えた。
どれくらい閉じ込められていただろうか。
ようやく救助作業が始まり、他の乗客たちの下敷きになっていた母が引き上げられていくのが見えた。
ぐったりして意識はないようだった。
とっさに手を伸ばし、母の手首を握った。
数秒だったが、「脈がない」と感じた。
引き上げた隊員が首を横に振るのが見えた。
・・・
【信楽高原鉄道事故】
1991年5月14日午前10時35分ごろ、JR草津線貴生川駅と信楽高原鉄道(SKR)の信楽駅を結ぶSKRの単線上(滋賀県甲賀市、旧信楽町)で、SKRの普通列車(乗車人数15人)とJR西日本の臨時快速(同716人)が正面衝突。
42人が死亡、628人が負傷した。
両駅のほぼ中間にある信号所でSKRの列車が待機し、JRの快速と行き違うはずだったが、信号トラブルが発生してSKR側は赤信号で出発。
JR側も、信号所にSKRの列車が待機していなかったのに青信号に従って進行し、衝突した。
SKR側は過失責任を認め、業務上過失致死傷罪などに問われた社員ら3人が2000年に大津地裁で執行猶予付き禁錮刑を言い渡されて確定。
JR西は過失を認めず刑事訴追もされなかったが、遺族に起こされた民事訴訟の大阪地裁判決(99年)で「事前の信号トラブルなどから事故を予見できた」として過失責任を認定された。
控訴審判決(02年)でも敗訴し、社長が03年に初めて責任を認め謝罪した。
https://mainichi.jp/articles/20210512/k00/00m/040/227000c
(ブログ者コメント)
温故知新事例として紹介する。
2021年5月12日14時26分にNHK滋賀から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
光に反射する糸を使った編み物のアクセサリーをお年寄りに身につけてもらい、交通安全に役立ててもらおうと、警察が開く裁縫教室で講師を務める人たちの委嘱式が行われました。
滋賀県警は、夜間に発生することが多いお年寄りの交通事故を減らそうと、光に反射する「反射糸」を使ったブローチなどのアクセサリーや洋服を手作りする裁縫教室を開き、交通安全につなげる取り組みを行っています。
12日、県警本部で委嘱式が行われ、裁縫教室の講師11人が「反射糸ファッショナブル・ディレクター」に任命され、そのうち5人が委嘱状を受け取りました。
任命された講師は、高齢者施設などで開かれる裁縫教室で、反射糸を使ったアクセサリーや洋服の作り方をお年寄りに指導することになっています。
講師に委嘱された片岡さん(女性、78歳)は、「私にできることはやりたいと思いました。この活動が次の世代に引き継がれるように取り組んでいきたいです」と話していました。
県警察本部高齢者交通安全推進室の中島調査官は、「歩行中の事故は夕暮れ時や夜間に多くなるので、ドライバーに自分の存在を目立たせるという努力をしてほしい」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/20210512/2060007480.html
(ブログ者コメント)
以下は滋賀県警からの受講案内。
https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/4042070.pdf
2021年5月12日6時28分にNHK首都圏から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
スマートフォンなどの画面から出る「ブルーライト」を抑えるメガネを子どもがかけることについて、眼科の学会などは先月、発育に悪影響を与えかねないとして慎重な対応を求めましたが、これを受け、東京・渋谷区で検討されていた小中学生に寄贈する計画が中止されたことが分かりました。
ブルーライトはデジタル端末の画面などから出る波長が短い青い光で、この光を抑えるとするメガネが多く販売されています。
このメガネを子どもがかけることについて、眼科の専門医で作る学会などは先月、太陽光を十分浴びないと近視が進行するリスクが高まるなどとして「推奨する根拠はなく、発育に悪影響を与えかねない」とする意見書を出し、慎重な対応を求めました。
このメガネを販売している専門店チェーン、「JINS」の運営会社は、ことし3月、東京・渋谷区立の小中学校のすべての児童生徒に無償で配ると発表していましたが、意見書を受けて渋谷区教育委員会と対応を協議し、関係者によりますと計画は中止されたということです。
「JINS」の運営会社はNHKの取材に対し、「答えられることはない」とコメントしています。
また、教育委員会の担当者は、「意見書を踏まえて判断した」としています。
意見書を作成した東京都眼科医会の福下公子会長は、「ICT教育の推進で子どもの目の健康に関心が高まっているので、同様のことが起きないか、学校教育の現場を注視していきたい」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20210512/1000064242.html
(ブログ者コメント)
ブルーライトの悪影響が議論されているという情報は、本ブログでも過去に紹介スミ。
日本眼科医会などの意見書については、以下の解説記事参照。
(2021年4月21日19時0分 FNN PRIME)
近ごろのメガネ店では、当たり前のように「ブルーライトカット」の商品がずらりと並んでいるが、日本眼科医会など6学会は4月14日に、「ブルーライトカット眼鏡」を子どもに使わせることを危惧する意見書を公開した。
そもそも、ブルーライトとは、太陽光や電球など目に見える光に含まれる青色成分のことで、スマホやパソコンの画面からも出ているという。
この光を「ブルーライトカット眼鏡」で抑えると、スマホなどの使用による睡眠障害や、眼精疲労の軽減、眼球への障害予防などの効果があると謳われているが、意見書は科学的観点から問題点を指摘している。
まず、スマホなどの画面が発するブルーライトは、曇り空やガラス越しの自然光よりも少ないため、いたずらに恐れる必要はないという。
逆に、子どもにとって太陽光は心身の発育に好影響を与えるもので、十分に浴びない場合は、近視のリスクが高まるとしている。
さらにアメリカの科学誌に掲載された最新の研究では、ブルーライトカット眼鏡には眼精疲労を軽減する効果が全くないと報告されているそうだ。
ただ、ブルーライトと体内時計の関係があることは、いくつもの論文で指摘されており、夜遅くまでデジタル端末の強い光を浴びると、睡眠障害をきたす恐れがあるという。
しかし、就寝前ならともかく、日中にブルーライトカット眼鏡を使うメリットはないとしている。
これらの理由から意見書では、子どもにブルーライトカット眼鏡を推奨する根拠はなく、むしろ、かけさせることは発育に悪影響を与えかねないとまとめている。
なぜこのタイミングで意見書を出したのか?
そして、言及はなかったが、大人への悪影響はないのか?
日本眼科医会の担当者に聞いてみた。
【小中学校“デジタル授業”の本格化が背景】
――なぜ意見書を公開した?
政府のGIGAスクール構想により、2021年4月から、多くの小中学校でデジタル端末を用いた授業が本格化したことを踏まえ、文部科学省も子どもたちの目の健康に留意した文書やリーフレットを3月、4月と立て続けに発出しており、我々もまた、健やかな目の成長を願う立場から公開しました。
また、3月に米国眼科アカデミーからもブルーライトカットについての意見が出ました。
偏りのない情報を皆さんにお伝えすることで、子どもたちの健やかな成長に役立てていただくための情報提供として発出しました。
(編集部注:米国眼科アカデミーは3月5日付で公式サイトに「米国眼科アカデミーはブルーライトカット眼鏡を推奨しません。」と掲載)
――今までブルーライトカット眼鏡を使ってきた子供もやめたほうがいい?
現在お持ちのものを使用することが明らかな害になるという証明はされていませんので、お持ちのものをご使用いただくことは大きな問題にならないと思います。
一方で、ブルーライトカット眼鏡を使用すれば、子どもが長時間にわたってデジタル端末を見ても良いことにはなりません。
——子どもがブルーライトカット眼鏡を就寝前に使うのもよくないのでしょうか?
今回の発出文書にもありますが、夜間のブルーライトカットは特に悪いことではないと思います。
また、ブルーライトカットの有無にかかわらず、先の文部科学省のリーフレットにもあるように、就寝1時間前からはデジタル端末を使用することは、控えるべきと考えています。
【大人は、見え方が向上することもあり、すべてにおいて不要ではない】
――ブルーライトカット眼鏡は大人への悪影響はない?
中年以降では、見え方が向上することもあり、すべてにおいて不要というわけではありません。
眩しさに関しては、デジタル端末の場合、画面の明るさ調整も効果的と考えます。
ブルーライトカットの有無よりも、度数や、利用する用途に合った本人に最適な眼鏡の使用をおすすめします。
――パソコンやスマホを長時間見て目が疲れる人はどうしたらいい?
適切な度数の眼鏡を使用する、 画面を離してみる、 休憩を取る、 遠方を見る、 画面は低輝度にする、といった対応がお薦めです。
今回、意見書が指摘しているのは成長期の子どもについてで、ブルーライトカット眼鏡が明らかな害になるわけではないとしながらも、学校の授業のデジタル化が本格化する中で、正しい知識を持って使用してほしいということだった。
https://www.fnn.jp/articles/-/172656
2016年3月27日に掲載した元記事がブログ運営会社の字数制限に抵触しましたので、ここに新情報を第3報修正4として掲載します。
第2報は下記参照。
https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/5767/
(2021年5月13日 修正4 ;追記)
2021年5月12日付で毎日新聞東京版からは、会社がMSDSを入手し副工場長が目をとおしていたことが重視され、裁判では会社側に安全配慮義務違反があったと認められたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
がんを発症したのは同社が安全配慮義務に違反したためだとして従業員ら4人が計3630万円の賠償を求めた訴訟の判決で、福井地裁は11日、同社に計1155万円の賠償を命じた。
健康被害を予見できたのに防止措置を怠ったと認定した。
厚生労働省によると2018年、全国で107事業所の計1168人が、この物質を現在または過去に扱ったとして健康診断を受診した。
発症までの潜伏期間が長いため、今後、被害が拡大する可能性がある。
原告は福井県内に住む50~60代の従業員と元従業員。
この工場では15年12月まで、染料などの原料製造に、この物質を使っていた。
4人は1988~97年に働き始め、2015~16年にぼうこうがんを発症。
厚労省は16年7月、この物質が付着したゴム手袋を使うなどして長期間、皮膚から吸収したことが主な発症原因とする調査結果を公表した。
判決は、同社が01年までに、この物質の有害性が記載された「安全データシート」を入手し、副工場長が目を通していた点を重視。
シートには、皮膚が物質にさらされることによる健康被害や発がん可能性が記されており、同社には01年時点で「被害の予見可能性があった」と認定した。
その上で、皮膚などに浸透しない作業服の着用や体に付着した場合の洗浄などを従業員に守らせる義務があったのに徹底されなかったと指摘。
安全配慮義務違反があったと結論付けた。
一方で、発症から4~5年が経過後もがんが再発したとは認められないことなどから、賠償額を1人あたり275万~330万円と算定した。
訴訟で、同社側は皮膚吸収による発がん性は国や専門家も知らなかったとして、「会社が具体的な対策を講じることは困難だった」と主張していた。
同社では原告4人を含む計13人がぼうこうがんを発症し、12人が労災認定を受けた。
同社は取材に「判決文を精査しないとコメントできない」としている。
【オルト―トルイジン】
染料などの合成原料に用いられる無色の液体。
国際がん研究機関(IARC)は2012年、人に対する発がん性の十分な証拠がある「グループ1」に分類した。
体内に取り込むと代謝生成物が尿に蓄積し、ぼうこうがんを発症すると指摘されている。
厚生労働省は17年、「特定化学物質」に指定し、従業員の健康診断などを事業者に義務づけた。
https://mainichi.jp/articles/20210512/ddm/001/040/079000c
5月11日21時28分に毎日新聞からは、危険性を知っているだけで安全配慮義務が生じると認められた点が画期的だとする原告側弁護士のコメントなどが、下記趣旨でネット配信されていた。
・・・・・
発がん性のある化学物質「オルト―トルイジン」を巡っては、1980年代以降、化学工場の労働者らを対象にした海外の研究でぼうこうがんとの関係が繰り返し指摘され、国内外の専門機関が発がん性への評価を強めてきた。
従業員らは訴訟で「(会社は)遅くとも90年代後半には発がん性を予見できた」と訴えたが、会社側は国の厳しい規制がなかったことなどを理由に、賠償責任を否定し続けた。
会見に同席した原告側の池田直樹弁護士らは、「規制がなくても、会社が発がんの恐れがあることを知っているだけで安全配慮義務が生じると認めたことが今回の判決の画期的な点だ」と評価。
この物質を取り扱い、健康に不安を感じる他の労働者らの救済につながる可能性があると指摘した。
https://mainichi.jp/articles/20210511/k00/00m/040/310000c
2021年5月11日21時46分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
スルメイカを原料で使っていないのに、100%使用しているような表示をして、いか天を販売したなどとして、農林水産省は11日、食品販売加工業「G社」(神戸市)に対し、食品表示法に基づき、改善を指示したと発表した。
農水省によると、同社は2017年3月~今年1月、いか加工品の「しっとりいか天」や「おいしい減塩やわらかいか天」など計3品で、原料にスルメイカを使っていなかったり、使っていても、スルメイカ以外の原料と区別しなかったりして、「するめいか100%使用」、「するめいかの身を贅沢(ぜいたく)に使い」などとスルメイカの使用を強調する表示をしたという。
3品で計約70万5千袋販売していた。
17年にスルメイカの不漁で原料を変更したが、社内の製造部門と商品のデザインを担当する部門で情報が共有されていなかったという。
https://www.asahi.com/articles/ASP5C6TZXP5CUTIL03Q.html
5月11日20時32分に神戸新聞からは、別のイカ類が含まれたケースもあったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
包装に「するめいか100%使用」と表示しながら、原料に別のイカ類が含まれたり、スルメイカが全く使われていなかったりしたケースもあったという。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202105/0014317706.shtml
(ブログ者コメント)
報道が正だと信じ、情報共有化不備事例として紹介する。
2021年5月11日21時1分にYAHOOニュース(現代ビジネス)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
気温が上がってきて、野外活動に絶好のシーズンがやってきた。
しかし、キャンプや野営を行っていると、様々なトラブルに出会うことがある。
その一つが毒虫による被害だ。
ハチやアブ、蚊などに襲われるのは日常的なものだが、温暖化に伴い、これまで気にする必要がなかった猛毒の昆虫も生息域を拡大している。
登山やキャンプ、バーベキューなど、野外活動時の対処方法や準備などをお伝えしたい。
【ハチの毒で毎年約20人が死んでいる】
年間で約20人ほどの死者が発生しているハチによる死亡事故。
春から秋にかけて長期間にわたって全国で被害が発生している。
中でも攻撃性の高いスズメバチによる被害が数多く報告され、ハチの毒に対してアレルギーを持っている人や、以前に刺された経験のある人は「アナフィラキシーショック」と呼ばれる急性の全身アレルギー症状を起こすことがあり、血圧低下や呼吸困難、心停止などが発生し、刺されてから10数分で死に至るケースもある。
これはスズメバチやアシナガバチの他、ミツバチなどに刺されることによっても発生する。
中でもスズメバチは攻撃性が高く、巣に近づいたり、手で払ったりすることで対象に反撃を始める。
かまわずに速やかにその場を離れることが大切だ。
【口で吸ってはいけない】
筆者は機会があって、蜂の習性を十分理解した上で、防護服や薬剤など万全の体勢で、山小屋や別荘、自宅の庭にできたハチの巣の撤去を複数回行っている。
そのためハチ、特にスズメバチの攻撃性は非常に高く、危険であることを身をもって知っている。
ただし一般の方は、自宅に巣を作られた場合は自分で撤去しようとせず、コストはかかるものの、自治体(無料の場合もある)か、業者に依頼するほうが得策である。
万が一、ハチに刺されてしまった時の応急処置は、まず流水で刺された箇所を洗い流し、周辺を抑えて毒液を絞り出すようにすること(市販のポイズンリムーバーがあれば使用)。
この際、口で吸うような事をしてはいけない。
毒物を吸収する可能性があるからだ。
そのあとは抗ヒスタミン剤の入った薬を塗り、患部を濡れタオルなどで冷やしながら安静にする。
目まいや動悸など、別の症状が現れたら、迷わず病院へと向かうことだ。
山や高原ではハチの被害を避けるため、基本的に長袖長ズボンを着用するように心がけたい。
さらに、ハチは黒い動く物体を攻撃する傾向があるため、黒い衣装を着ないこと、必ず帽子を被ることが大切だ。
キャンプや屋外でのバーベキュー時、化粧水や香水など匂いをするものを付けないように指示しておくことも必要だ。
アウトドアでは、その他にも様々な虫が人を襲ってくる。
アブ、ブユ、蚊などの吸血性の虫を避けるために虫よけスプレー(対象の虫を必ず確認)が効果的なので、屋外活動には常備しておきたい。
ちなみに筆者は、自作の虫よけスプレーを持参していく。
ミント(ハッカ油)、無水エタノール、精製水などを混ぜたものを定期的に衣服に吹きかけることで十分に効果を発揮する。
香りで気分転換にもなるので、他の虫よけ効果のあるアロマオイル(レモングラス、ゼラニウム、シトロネラ)などと組み合わせるのも良いだろう。
【マダニがもたらす深刻な病気】
日本全国に広く分布している吸血する「マダニ」。
野草や葉の先端付近に付いていて、動物が近づくのを待ち構えていることが多い。
ハチや蚊などと違って、噛まれているときに痛みや痒みがあまり発生しないため、気づかないことが多く、食いついている姿を見て慌てるケースも多い。
マダニやツツガムシは「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」、日本紅斑熱、ライム病、ツツガムシ病などを発生させる、様々な致死性のあるウイルスを媒介していることで知られている。
SFTSは2019年に過去最高の102例の感染報告があり、これまでの死亡率は50代以上に限られるが、27%と恐ろしく高い。
刺された後、1週間~2週間程度で発症し、発熱や下痢、腹痛、嘔吐、意識障害など、様々な症状が発生して死に至る。
日本列島の温暖化に伴い、これらのダニ類は生息地域を広げている。
マダニは多くの野生生物に寄生することで繁殖しているのだが、犬や猫などのペットを屋外で遊ばせた後に付着していないか、注意して見てあげないといけない。
2020年にはマダニによって感染した動物(猫)からヒトへの感染が報告されてニュースとなった。
過去には死亡例もある。
【ワセリンでマダニごと覆う】
マダニは吸血により3mm程度の体長が1cmにも膨張する。
そこで気が付いて、あわてて無理やり引き抜くことで、虫の体液が逆流。感染リスクが高まる。
そのため、食いついた部分を身体に残さないように、ピンセットなどで丁寧に抜く必要がある。
ワセリンなどの軟膏で噛まれている部分を被覆して、窒息したマダニが自然に取れるのを待つ方法もある。
マダニに吸血された後、もしも熱が出ることがあれば、すぐに医療機関に駆け込むようにしたい。
マダニは屋外活動で衣服などに付いてたものが家屋内に持ち込まれる時もある。
被害を防ぐには、草むらなどに入った後は付着していないか注意深く確認すること、草むらに直接座らずに敷物を使うこと、上着やタオルなどを地面に不用意に直接置かないこと、虫よけスプレーを活用すること、帰宅後は玄関外で十分に衣服に付着していないか確認し、すぐにシャワーを浴びて着替えをするなどを習慣付けておくことが必要だ。
日本の平均気温の上昇により、これまで日本に存在しなかった神経毒を持つ外来種の毒蜘蛛(セアカゴケグモ)やアナフィラキシーショックを起こす毒素を持つ蟻(ヒアリ)なども生息範囲を広げていると報告されている。
屋外で見知らぬ虫を見つけたら、うかつに近づかない、触れない、かまわないようにすることを心がけたい。
和田 隆昌(災害危機管理アドバイザー)
https://news.yahoo.co.jp/articles/f7181931969100ee58d6f222aa56dfa937f1c052
(ブログ者コメント)
1ケ月ほど前のブログ者経験談。
そこそこ整備された森林公園内の、車も通る鋪装道路を散歩中、クマンバチに5分ほどつきまとわられた。
大きな羽音が聞こえ続けたり、2~3mほど前を横切られたりして、ヤバイ感は半端なかった。
刺激するとマズイだろうと思い、速度を変えず、ゆっくり歩いていくと、そのうち、いなくなったが、今、思えば、その時の服装は黒い帽子に黒いジャージの上下と、黒づくめだった。
2021年5月12日19時42分にYAHOOニュース(東北放送)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
11日午後3時50分ごろ、仙台市太白区四郎丸の四郎丸小学校で、「工事作業員が足場から落下した」と消防に通報がありました。
この事故で、宮城県石巻市後生橋の建設作業員・佐藤さん(男性、52歳)が病院に運ばれましたが、胸などを強く打ち、間もなく死亡しました。
警察や仙台市によりますと、四郎丸小学校では、校舎の建て替え工事が行なわれていて、佐藤さんは当時、地面を1.5メートルほど掘ったところにコンクリートの型枠を取り付ける作業をしていました。
現場には、鉄筋が組まれていて、佐藤さんは、鉄筋の上に渡された9センチ角の2本の角材の上を歩いていたところ、バランスを崩し、落下したということです。
警察は、現場の安全管理に問題がなかったか調べています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/59eac43cf86dec13efc9d36d7f8c6d04ecd347bc
5月12日20時20分にYAHOOニュース(仙台放送)からは、落下する際に鉄パイプに胸を強く打ったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
5月11日午後、仙台市太白区の四郎丸小学校の校舎の増築工事をしていた52歳の作業員の男性が、高さ1メートルほどの足場から落下する事故があり、その後、死亡しました。
事故があったのは、仙台市立四郎丸小学校の校舎の増築工事現場です。
警察と仙台市によりますと、11日午後3時50分ごろ、コンクリートの土台の基礎工事をしていた、石巻市後生橋の会社員、佐藤さん(52)が、足場替わりに使った縦横9センチメートル長さ1.5メートルの角材を踏み外し、1メートルほど落下しました。
佐藤さんは落下する際に鉄パイプに胸を強くうち、意識のある状態で病院に搬送されましたが、およそ2時間半後死亡しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2888570a94aa6665caf06b20735a7870ca7995f3
2021年5月14日17時32分に読売新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
山形市教育委員会は13日、山形市内の市立中学校で、卒業生の個人情報が記された資料13人分が、廃棄処分のためにトラックで運ぶ途上、荷台から落ち、うち7人分が現在も行方不明になっていると発表した。
資料は、今春卒業した生徒の記録で、学校生活について尋ねたアンケートの回答を基に、業者が満足度や意欲などを分析したもの。
1人分がA4サイズ1枚にまとめられ、氏名や学年、クラスが記載されている。
これまで悪用されるなどの被害報告はないという。
発表によると、11日午後3時頃、学校職員2人が機密文書などの回収に来たトラックに、資料が入った段ボール箱50箱を載せた。
市では、機密文書を廃棄する際、箱をテープで密閉すると指導している。
段ボール箱もテープで閉じられていたが、職員たちは資料をとじるクリップを外すために開封し、その後、テープを貼り直さなかったという。
トラックに屋根はなく、風にあおられ、一部が飛ばされたとみられる。
その日の夕方、市民から紙を拾ったという連絡が学校にあり、搬送先で確認したところ、13枚がなくなっていた。
6枚は回収したが、残りは見つかっていない。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210514-OYT1T50073/
2021年5月11日20時40分にNHK千葉から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
11日午後1時半ごろ、成田市のゴルフ場、「Nゴルフクラブ」で、従業員から「客が池に落ちた」と警察に通報がありました。
警察によりますと、東京・江戸川区の会社経営、横内さん(男性、69歳)がコース上にある池に転落し、およそ50分後、消防隊員に池から救助され、病院に運ばれましたが、まもなく死亡しました。
横内さんは、11日朝から仲間7人とともにゴルフ場を訪れてプレーしていましたが、目撃者の話から、横内さんの打ったボールが池の近くに落ち、周辺を探していたところ池に転落したということです。
ゴルフ場によりますと、この池の深さはもっとも深いところで5メートルほどあったということで、周囲に転落を防ぐため注意を促す看板が設置されていたほか、転落した場合に備えて浮き輪も用意されていたということです。
警察は横内さんが誤って池に転落したとみて、詳しいいきさつを調べています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/chiba/20210511/1080014464.html
5月11日20時19分にライブドアニュース(テレ朝ニュース)からは、大きな池だったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
男性は、レスキュー隊によって引き上げられましたが、意識はなく、その後、搬送先の病院で死亡が確認されました。
男性はゴルフ仲間3人と一緒にコースを回っていて、池の付近でボールを探していたところ、誤って池に落ちました。
池の深さは分かっていませんが、縦100メートル以上、横50メートルほどの大きな池だということです。
https://news.livedoor.com/article/detail/20174569/
(ブログ者コメント)
〇このゴルフ場のHPに各コース毎のドローン映像が紹介されていた。
その中で大きな池があるのは以下の2コースだが、両方の池とも、護岸は垂直になっているように見える。
https://gora.golf.rakuten.co.jp/doc/drone/120103/?l-id=gr_cg_drone_gallery03
〇ゴルフ場の池に落ちて死亡した事例は、本ブログでも何件か紹介スミ。
こういった事故は、最近紹介した、ため池に落ちての事故と、相通じるところがあるのかもしれない。
2021年5月11日19時6分にNHK福島から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
11日午前7時45分ごろ、いわき市常磐岩ヶ岡町にある「堺化学工業湯本工場」で、「爆発音がして煙が見える」と近くに住む住民から消防に通報がありました。
警察や消防などによりますと、この爆発で協力企業の社員4人が病院に運ばれ、このうち63歳の男性1人が全身にやけどを負って重傷です。
また、62歳と42歳、それに29歳の男性も顔や背中などにやけどを負って病院で手当を受けていますが、4人とも意識があり、命に別状はないということです。
爆発した工場は、建物の外壁や屋根に大きな穴が空いて、周りに爆発で吹き飛んだと見られる部材が散乱していました。
会社によりますと、この工場では、亜鉛のかたまりを熱して蒸発させたうえで冷やし、防さび塗料などに使われる亜鉛の粉末を製造していて、従業員が亜鉛の粉末を飛ばしてふるいにかけるためのファンのスイッチを入れたところ、異音がして、間もなく爆発したということです。
現場は、JR常磐線の湯本駅から南におよそ3キロの工場が建ち並ぶ地域で、いわき市は有毒ガスなどが発生するおそれもあるとして、一時、近隣の住民に屋内に避難するよう呼びかけました。
測定の結果、有毒ガスは検出されなかったということです。
昼頃には火の勢いは収まりましたが、発生から10時間余りたっても消し止められていません。
消防は、午後6時半に消火活動を打ち切っていて、12日朝6時から活動を再開することにしています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20210511/6050014452.html
5月11日16時23分に産経新聞からは、亜鉛粉末を大きさごとに分ける分級ファンを動かした際に異常音がし、その後、爆発したという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
4人が重軽傷を負った爆発は、粉じん爆発だった可能性が高いとみて県警が調べていることが11日、捜査関係者への取材で分かった。
亜鉛粉末を扱う機械を動かした際に異常音がし、その後に爆発が起きた。
同社によると、異常音がしたのは亜鉛粉末を製造する際に使われる「分級ファン」と呼ばれる機械で、風を利用して亜鉛粉末を大きさごとに分けるという。
この機械を同日朝に動かし始めたところ、従業員が異常音に気付いた。
https://www.sankei.com/affairs/news/210511/afr2105110012-n1.html
5月11日20時34分にYAHOOニュース(テレビユー福島)からは、爆発音は数回したという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
近くにいた人
「音がすごい、2回ドーンって大きい音とそのあとすぐドーンドーンと爆発音がした」
https://news.yahoo.co.jp/articles/fd9e5ba2452cd399e2a8823ca253f591a09a8be4
5月11日19時30分にYAHOOニュース(福島テレビ)からは、禁水性につき消火は難航しているなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
・・・・・
《なぜ消火活動が長時間に及んだ?》
亜鉛末は主にさび止めや化粧品に使われるが、着火しやすく、低温でも引火しやすいという性質がある。
水で消火すると水素が発生し危険なため、今回は砂をかけての消火活動が行われた。
工場内には約50トンの亜鉛があり、消火活動を難航させた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9f55fac7f89f3960d125256dfe639f26f6e58ddb
5月12日9時40分に福島民友からは、午前8時の作業開始に向け準備していたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
いわき中央署や市消防本部などによると、けがをしたのは協力会社の男性従業員。
63歳が全身やけどの重傷、62歳と42歳が顔などをやけどする中等症で、29歳が打撲などの軽いけがをした。
午前8時の作業開始に向けた準備をしていた。
https://www.minyu-net.com/news/news/FM20210512-614261.php
5月12日21時45分にYAHOOニュース(テレビユー福島)からは、異音がしたので分級ファンを止めようとしたが、その直後に爆発したという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
堺化学工業によりますと、爆発事故でケガをした男性作業員は、「粉末に風を送る機械を稼働させたところ異音が聞こえ、すぐに止めようとしたが、直後に爆発が起きた」と話していることが新たにわかりました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4e7ee8cfbf8743e39637e811568d3d7eec6cfeec
5月13日17時36分にNHK福島からは、穴が開いた屋根には雨が入るのを防ぐためシートがかけられている、13日未明には遺留物から白煙が上がったため砂がかけられたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
この工場では、火の勢いが収まったあとも、火災の熱にさらされた亜鉛などの高温の遺留物があって工場に立ち入れない状態が続いていましたが、発生から2日たって温度がある程度下がったことから、警察と消防は午前10時から工場内の実況見分を本格的に行いました。
工場内にあるおよそ50トンの亜鉛粉末は空気や水に触れると自然発火したり爆発したりするおそれがあるため、消火剤として乾燥した砂をかけるとともに、雨が当たるのを防ぐため、爆発で穴が開いた工場の屋根にシートをかぶせる措置をとっていて、自然に冷えるのを待っている状態です。
13日未明には遺留物から白い煙が上がり、消防が砂をかけるなどの対応をとったということで、再び燃え上がるおそれがない「鎮火」の状態になったと確認されるまでには、あと数日かかる見通しだということです。
一方、去年12月の点検ではファンの異常は確認されていなかったということです。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20210513/6050014476.html
5月14日10時37分にYAHOOニュース(福島民友)からは、13日午後にも砂の中から一時白煙が上がったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
13日午前2時ごろ、工場内を巡視していた男性従業員から「爆発した工場から白煙が出ている」と119番通報があった。
同社によると、消火のため散布した砂の中から発煙した。
けが人はいなかった。
市災害対策本部などは、砂の層が薄い部分から亜鉛と空気が反応して発煙した可能性があるとみて、原因を調べている。
散布した砂が均一に行き届いていなかった可能性があるという。
消防隊員らが現場に到着した際には煙は確認できず、再度、砂で覆う作業を行った。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f4601d4d84e228f27627f3a2d6298752956f75f5
(ブログ者コメント)
監視カメラの映像では1回だけの爆発のように見えるが、近所の人は爆発音を数回聞いたとのこと。
2次爆発、3次爆発が瞬間的に起きたということかもしれない。
(2021年5月19日 修正1 ;追記)
2021年5月18日13時7分にNHK福島からは、1週間経っても300℃の場所がある、爆発翌日に亜鉛の固まりを動かそうとしたところ煙や火が出たなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
4人が重軽傷を負った火災から18日で1週間です。
工場内に残っている亜鉛の粉末およそ50トンの一部は依然高温のままで、空気や水に触れると自然発火したり再び爆発したりするおそれがあることから、消防は自然に温度が下がるのを待つ方針で、鎮火の見通しは立っていません。
消防は自然に冷えるのを待っていますが、亜鉛の温度は今も摂氏300度ほどあります。
爆発の翌日に重機を使って亜鉛の固まりを動かそうとしたところ煙や火が出たということで、消防は温度が100度を下回ってから消火活動を再開することにしています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20210518/6050014533.html
(2021年5月27日 ;修正2 ;追記)
2021年5月26日10時32分にYAHOOニュース(福島民友)からは、2週間経って温度は低下傾向だが、まだ216℃あるなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
市災害対策本部は、亜鉛粉末の温度が低下傾向となっていることから、今週中にも鎮火できるとの見通しを示した。
市と同社によると、工場に残る亜鉛粉末の中心部の温度は25日現在で216度を示しており、1日で約60度下がったという。
鎮火の目安となる100度以下となれば、工場内にある亜鉛粉末約50トンを運び出す予定。
爆発事故から25日で2週間が経過した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e881b73d0f4a6c9ed994b66fe3cea1ce190d8e9e
(2021年6月2日 修正3 ;追記)
2021年5月31日13時30分にNHK福島からは、31日に鎮火が確認されたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
30日の計測で、工場内の亜鉛の温度が作業再開のめどとされていた摂氏100度を下回ったことから、現場では31日午前9時すぎから、重機を使って亜鉛のかたまりを崩して状況を確認する作業が進められ、午前10時40分すぎに消防が鎮火を確認しました。
警察と消防は、今後、工場内の亜鉛を取り除く作業が終わるのを待って実況見分を再開し、爆発の原因究明を進めることにしています。
また会社も、専門家による事故調査委員会を設置し、独自に原因を調べることにしています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20210531/6050014674.html
(2021年6月14日 修正4 ;追記)
2021年6月11日18時38分にNHK福島からは、同社は亜鉛粉末製造事業から撤退するなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
堺化学工業によりますと、爆発事故のあと、被害を受けた工場の復旧について検討したものの、市場の状況や再建にかかる費用などを勘案した結果、工場の再建を断念することを決め、亜鉛の粉末の製造事業から撤退することを11日に開かれた取締役会で決議したということです。
亜鉛の粉末の製造は湯本工場のみで行っていて、爆発事故による今年度の業績への影響は約3億円にのぼるとしています。
一方、湯本工場内にある酸化亜鉛の工場については、爆発による被害がなかったことから、引き続き、製造を続けるとしています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20210611/6050014819.html
(2022年1月8日 修正5 :追記)
2022年1月8日11時51分にYAHOOニュース(福島民友)からは、分級ファンの羽根に付着していた亜鉛の塊が剥がれ落ちたことでファンが振動し、その際に回転軸がずれて火花発生、粉じん爆発という報告書が公表されたなど、下記趣旨の記事が爆発メカニズムの解説図付きでネット配信されていた。
同社は7日、亜鉛粉末を大きさでふるい分ける分級工程での粉じん爆発が事故原因だったとする調査結果を発表した。
装置内に広がった粉末が部品の金属同士の接触で起きた高温の火花で着火し、連鎖爆発で被害が拡大したとみられる。
工場内では、防さび塗料の材料に使われる亜鉛の粉末などを製造していた。
専門家と同社幹部でつくる事故調査委員会によると、粉末に風を送る「分級ファン」の羽根に亜鉛の固まりが固着。
装置起動時にはがれ落ち、その影響でファンの回転軸がずれ、部品の金属同士の接触による振動や火花が発生したとみられる。
伝わった振動で亜鉛粉末を分別する「マルチサイクロン」に残ったままの粉末が配管を通じて装置全体に拡散して粉じん濃度が上昇。
粉末がファン内で高温の火花に着火し、粉じん爆発を起こした。
さらに、集じん機や分別機械の分級機セパレーター、マルチサイクロンで連鎖的に爆発を起こし、被害の拡大につながったとみられる。
マルチサイクロンの一部には詰まりがあり、当時は710キロの粉末が残っていたとみられる。
しかし、作業工程に影響がないとして、数年前から放置していたという。
分級ファンについては、事故の5カ月前の定期点検で異常がなかったという。
調査委員長の中村昌允東京工大特任教授らは7日、いわき市で記者会見した。
中村特任教授は再発防止策について、「異常振動時に自動停止するシステム導入や点検回数の増加、監査の徹底が必要だ」と指摘した。
同社の矢倉管理本部長は、「調査内容を重く受け止めており、再発防止策に動いていきたい」と話した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e33cbb022e98ffd1b37ddf73d149ae86cdc37809
1月7日19時58分にNHK福島からは、たまっていた700㎏の粉末が振動によって配管を通りファンに流れ込んで爆発したなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
粉じん爆発は一定の空間に大量の粉末がある環境でしか起きませんが、この工場では、亜鉛粉末の分離装置の一部が数年前から詰まったままになっていました。
このため、爆発が起きるおそれがある量の20倍を超える700キロ余りの亜鉛粉末が装置の中にたまっていて、振動によって配管を通り、ファンに流れ込んで爆発が起きたと見られるとしています。
会社は、こうした装置の不具合を把握していましたが、製品の品質などには影響がないとして放置していたということです。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20220107/6050016872.html
1月8日6時0分にYAHOOニュース(河北新報)からは、マルチサイクロン4基のうち1基に亜鉛粉末が詰まっていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
粉末を選別する「マルチサイクロン」の4基のうち、1基に粉末約710キロが詰まっていた。
ファンのぐらつきに伴って滞留していた粉末が浮遊したため、設備内の粉じん濃度は爆発下限濃度を上回っていたと推定した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/48523a987986067491ee4da9d6e9cc96c9f1330d
(ブログ者コメント)
以下は該社HPにニュースリリースされていた報告書の抜粋。
報告書完全版のP36/77には、着果源として、以下の記述がある。
『シャフトとケーシングの接触による衝撃火花(すなわち、高温の金属摩耗片)が着火源となった可能性が極めて高いと推定される。
シャフトのずれについては、分級ファンの羽根が付着したスケールの剥離により偏芯する兆候があった。
分級ファンの羽根の偏芯によって、分級ファンのシャフトを固定するベアリングボックスが破断して、シャフトが偏芯したと考えられる。』
http://www.sakai-chem.co.jp/jp/topics/yumotoaccident.html
2023年3月20日19時51分にNHK福島からは、亜鉛粉末が詰まる不具合を放置していたとして当時の工場長が書類送検されたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
・・・
この工場では、亜鉛粉末の分離装置の一部が数年前から詰まったままになっていましたが、会社はこうした装置の不具合を把握しながら、製品の品質などには影響ないとして放置していたということで、警察は、安全管理を怠ったため事故が起きたとして、20日、当時工場長を務めていた男性を業務上過失傷害の疑いで書類送検しました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20230320/6050022135.html
2021年5月10日17時55分にNHK新潟から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
東京電力柏崎刈羽原子力発電所で、6年前、協力会社の作業員が同じ会社で働く父親のIDカードを誤って使用し、テロ対策が必要な「周辺防護区域」と呼ばれる区域まで入っていたことが分かりました。
東京電力は、この問題を10日まで公表しておらず、その理由について「当時の核物質防護の運用に従い、公表はしなかった」としています。
東京電力によりますと、平成27年8月、柏崎刈羽原発で働く協力会社の作業員が、テロ対策のため、本人確認が必要な「周辺防護区域」と呼ばれる区域に入る際、誤って、同じ協力会社で働く父親のIDカードを使って入ったということです。
この際、出入り口で委託会社の警備員は作業員とカードの写真を見比べ、違和感を覚えて確認を求めましたが、作業員は応じずに通過し、その後、6号機と7号機の建屋に通じる中央制御室などがある「防護区域」のゲートで警報が鳴り、カードが父親のものだと分かったということです。
これについて東京電力は、「警備員が写真に違和感をもったようだが、作業員も自分のものと勘違いしていて、結果的に入域を許す形になったようだ。規制委員会には、ルールに基づいて発生時に報告している」としています。
一方、違和感をもったという警備員が、なぜ、作業員を止めなかったかについて、警備員は東京電力の内部の聞き取りに対し、
▼作業員が正しい姓を述べたこと
▼親子のため、写真と人相が似ていたこと
さらに
▼朝の混雑する時間帯で、確認に時間をかけるとほかの作業員に迷惑がかかると考えた
からだと説明したということです。
柏崎刈羽原発をめぐっては、東京電力の社員が他人のIDカードを使って中央制御室に不正に入っていた問題や、テロ対策の設備が複数壊れていた問題が相次いで明らかになり、核セキュリティーに関わる問題については、情報公開と安全性のバランスを考慮しながら公表するとしていました。
この問題を速やかに公表しなかった理由については、東京電力は「防護区域への入域は防ぐことができたので、当時の核物質防護の運用に従い、公表しなかった。6年前の事案ということもあり、去年の事案と合わせて公表することは検討しなかった」としています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20210510/1030016762.html
5月10日16時26分に毎日新聞からは、IDカードには姓しか書かれていなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
東電によると、この作業員は周辺防護区域の出入り口で、IDカードを収納する箱から父親のカードと取り違えた。
カードには姓しか書かれていなかったという。
警備員は、カードの顔写真と作業員の顔が異なることに違和感を覚えたが、人相が似ていたことや、朝の混雑時で確認に時間をかけられないと思い、そのまま通過させてしまった。
その後、作業員が原子炉建屋など重要施設がある「防護区域」の出入り口で本人確認を受けた時に警報が鳴り、カードの不適切な使用に気づいた。
東電は、カードにフルネームを記載する対策を取った。
https://mainichi.jp/articles/20210510/k00/00m/040/125000c
2021年5月12日19時51分にNHK富山から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
10日、富山市八尾町にある飲食店で、野草のおひたしを食べた60代の男性が一時、意識を失ったほか、70代の女性が、おう吐や下痢などの症状を訴えました。
2人は料理を食べた直後に異常を訴えて病院に運ばれましたが、いずれも快方に向かっていて、12日までに退院しました。
保健所が調べたところ、野草のおひたしには、食べた場合、呼吸不全などの重い症状を引き起こし死亡することもあるトリカブトの葉が含まれていました。
保健所では、飲食店の店主が山で採取した山菜のモミジガサの中にトリカブトが誤って入っていて、そのままおひたしに混ざったことが原因の食中毒として、この飲食店を13日までの2日間、営業停止にしました。
保健所では、毒を持つ野草のなかには食べられる野草と若葉の形が似ているものもあるので、食べられると確実に判断できない場合は採らないことや、口にしないことを徹底してほしいとしています。
4
https://www3.nhk.or.jp/lnews/toyama/20210512/3060007344.html
5月12日16時56分に毎日新聞からは、残ったおひたしなどを分析した結果、2つの葉っぱが混在していたことが判明したなど、下記趣旨の記事が2つの葉っぱの比較写真付きでネット配信されていた。
富山市保健所は12日、市内の飲食店で野草を食べた60~70代の男女2人が、意識障害や嘔吐(おうと)、下痢などの症状を訴えて入院し、トリカブトによる食中毒とみられると発表した。
2人とも既に退院し、快方に向かっているという。
富山県生活衛生課によると、記録の残る2013年以降、県内でトリカブト食中毒は発生していなかった。
市保健所によると、2人は今月10日、同市の飲食店で、店主が採取し、調理した野草のおひたしを食べた。
残ったおひたしと調理前の野草を県中央植物園(同市婦中町上轡田)で分析した結果、トリカブトと、食用野草のモミジガサが混在していたことが判明。
市保健所は店主が間違えてトリカブトも採取したと判断し、同店を12、13日の2日間、営業停止処分とした。
厚生労働省によると、トリカブトは有毒物質アコニチンを含み、体内に取り込むと重篤な症状に陥ることもある。
早春から初夏にかけて、トリカブトの芽生え期の葉と、モミジガサの葉は酷似しており、中毒事故も多いとして注意喚起している。
市保健所は「山菜採りは十分な知識を持つ経験者とともに行い、確実に判断できない場合は採らない、食べない、売らない、人にあげないことを徹底してほしい」と呼びかけている。
https://mainichi.jp/articles/20210512/k00/00m/040/173000c
(ブログ者コメント)
〇富山市保健所提供となっている2つの葉っぱの比較写真を見てみたが、酷似しているようには見えない。
以下は東京都薬用植物園提供の芽生え時の葉っぱ比較写真だが、この写真でも同様だ。
ただ、1枚1枚比較するからそう思うのであって、多数の葉の中に数枚が紛れ込んだような場合には、判別しにくいのかもしれない。
〇トリカブトの誤食事例は、本ブログでも何件か紹介スミ。
2021年5月10日19時45分にテレビ愛媛から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
10日午後1時ごろ、松山市太山寺町の松山市立北中学校で「理科の実験中に体調不良者が多発している」と消防に通報がありました。
消防が駆け付けたところ、複数の生徒が体調不良を訴えていて、生徒21人が病院に搬送されました。
いずれも意識はあり、命に別条はないということです。
学校によりますと、10日は2年生の3クラス90人が1時間目から3時間目にかけて理科の授業で硫化水素を発生させる実験をしていました。
しかし、実験のあと、気分が悪くなり保健室で手当てを受ける生徒が相次いだことから、学校が消防に通報したということです。
松山市立北中学校・森田校長:
「(実験は)教科書にも出ていますし、教育課程上、やっても問題はない。みなさんにご心配をおかけしまして、申し訳ないと思っております。今は子どもたちの回復を願っています」
実験中は窓を開けて換気をしていたということで、消防と警察が詳しい原因を調べています。
http://www.ebc.co.jp/news/data/index.asp?sn=EBC2021051005648
5月10日17時1分にはNHK四国からは、硫化鉄を使った燃焼実験中だったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
10日正午すぎ、松山市立北中学校から「理科の実験で体調不良者が多数出た」と消防に通報がありました。
学校や消防によりますと、いずれも2年生の生徒13人が救急車などで病院に搬送されたほか、生徒8人が学校が手配したタクシーで病院に運ばれました。
いずれも症状は軽いということです。
学校によりますと、午前中、2年生が理科の授業で理科室で硫化鉄を使った燃焼実験を行い、いずれも授業に出席した生徒が体調不良を訴えたということです。
学校は、燃焼実験では独特のにおいなどが発生するため十分に換気をしていたとしています。
https://www3.nhk.or.jp/matsuyama-news/20210510/8000009552.html
2021年5月11日12時6分にYAHOOニュース(千葉日報)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
10日午前11時15分ごろ、千葉県茂原市東郷の三井化学茂原分工場内で、従業員から「30代の男性がタンク内に転落した」と119番通報があった。
駆け付けた消防隊が男性を救出したが、現場で死亡を確認。
茂原署によると、事故当時、男性を含む3人一組でタンクに備え付けられたメーターの点検作業をしていた。
男性は30代ぐらいで、同署は身元確認を急ぐとともに、詳しい事故原因を調べている。
タンクは高さ約4メートル。
中には薬品の製造に使った廃油が入っていたという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c6ba7db5627fea34fa38ee3fc43925b20160b174
5月10日20時3分にサンスポからは、廃液はタンクの半分ぐらいまで入っていたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
茂原署によると、設備のメーターの点検作業中、男性の姿が見えなくなったことに同僚が気付き、タンクの中で浮いているのを見つけた。
タンクは高さ約4メートルで、薬品の廃液が半分程の高さまで入っていたという。
https://www.sanspo.com/geino/news/20210510/sot21051020030006-n1.html
2021年5月9日21時29分にYAHOOニュース(在英国際ジャーナリストの寄稿文?)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
8日早朝、日立製作所が製造した複数の高速鉄道車両クラス800に亀裂が見つかったため、運行するイギリスのグレート・ウエスタン鉄道(GWR)とロンドン・ノース・イースタン鉄道(LNER)などは安全点検のため運行を停止しました。
混乱は月曜日も続きそうです。
亀裂が見つかったのは車両下にあるジャッキングポイントの溶接部です。
クラス800は運用が始まって約3年半、866両すべての納品が終わっており、イギリスの社会インフラになったと日立製作所は自負しています。
クラス800をベースにした標準車両AT300の拡販攻勢をかけています。
クラス800は世界の鉄道市場に殴り込みをかけた「鉄道の日立」の、まさにフラッグシップと言える車両なのです。
スコットランド議会選を取材した筆者はクラス800のLNER「AZUMA(あずま)」に乗って7日早朝にスコットランドのエディンバラからロンドンに戻りました。
快適な4時間半だっただけに、ニュースに衝撃を受けました。
グレート・ウエスタン鉄道はロンドンとウェールズを結んでいます。
ロンドンとスコットランド、ウェールズを結ぶ大動脈が止まりました。
ディーゼル・電気両用のハイブリッド車両で最高速度は時速200キロメートルのクラス800は2017年10月、ロンドンとウェールズを結ぶGWRの路線で営業運転を開始した際、遅延や空調から水が漏れるトラブルに見舞われ、惨憺たるデビューを飾りました。
この車両には神戸製鋼所がデータを改ざんしていたアルミニウムが使われています。
クラス800は4月26日にも安定増幅装置に深さ最大15ミリメートルの亀裂が見つかり、5両の運行を一時停止して修理したばかり。
今回の亀裂は別の箇所で見つかり、「かなり深い」そうです。
182車両のアルミニウム部分に金属疲労の兆候がないか調査していると英紙デーリー・テレグラフは報じています。
GWRは「複数の車両から亀裂が見つかった」と話しています。
金属疲労は時間が経つにつれ悪化し、保守点検で見逃せば大事故につながる恐れもあります。
労働組合の運輸従業員協会(TSSA)のマニュエル・コルテス書記長は次のようにコメントしました。
「鉄道工学のスタッフが事故につながる前にこれらの亀裂を発見したことは歓迎すべきニュースだ。これらの亀裂の原因を完全に調査することが絶対に不可欠だ。この車両は100%安全と確信するまでサービスを再開することを許可してはならない。車両は比較的新しく、乗客や納税者ではなくメーカーが修理の費用を負担する必要がある」
日本ではどうなのでしょう。
深刻な事故につながりかねない「鉄道重大インシデント」の統計を見てみても、車両障害は最近では年1回しか報告されていません。
2017年12月、「のぞみ34号」で走行中に異臭や異音がし、台車枠の側ばりに亀裂が発見されました。
車両は10年前に製造され、亀裂は実に長さ146ミリメートル、幅16ミリメートルに及んでいました。
溶接や過度の研削が関与したと推定されています。
新幹線としては初の「鉄道重大インシデント」に認定されました。
のぞみの最高速度は時速300キロメートルです。
クラス800は時速200キロメートルとはいえ、これは日本で言う「鉄道重大インシデント」が2週間もしないうちに同じクラス800で立て続けに、しかも同時多発的に起きたということではないのでしょうか。
クラス800は、イギリスでデビューして、まだ4年も経過していません。
クラス800が、神戸製鋼所がデータを改ざんしていたアルミニウムを使用し、今回、アルミニウム部分の金属疲労を調べているというのも非常に気がかりです。
当時、日立製作所の正井常務は、「きちんと検証をしており、安全性に問題ない。今回の問題は残念だが、安全な製品を届けることがメーカーの責務だ」と説明していました。
欧州の鉄道市場には仏アルストム、独シーメンス、カナダのボンバルディアの3強がひしめき、アルストムがボンバルディアの鉄道関連事業を買収したばかりです。
そこに切り込んだ日立製作所の海外鉄道事業に大きな影響を与える恐れがあるような気がしてなりません。
どうか筆者の杞憂であることを祈ります。
それにしても、イギリスでは富士通の会計システム「ホライゾン」が最大736人にのぼるとみられる準郵便局長の大量冤罪事件を引き起こしており、「モノづくり日本」の輝かしい栄光は一体どこに行ってしまったのでしょう。
【日立製作所のイギリスにおける鉄道事業】
2009年12月、ロンドンとアシュフォードを結ぶ約100キロメートルの区間で日立製作所が製造した高速鉄道用の車両(クラス395)が運転開始
・・・・・
2020年2月、英政府がイングランドの主要都市を南北に結ぶ高速鉄道計画「ハイスピード(HS)2」の建設を進めると発表。
日立製作所はカナダのボンバルディアと第1期の車両受注を目指して応札
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20210509-00237051/
5月11日12時40分にYAHOOニュースからは、問題となっている亀裂はハイブリッド車両に集中して見つかっているらしいなど、下記趣旨の続報的記事がネット配信されていた。
8日、日立製作所が製造した英都市間高速鉄道車両クラス800シリーズのジャッキングポイント溶接部に「深刻な」亀裂が見つかった事故で、緊急点検の対象になるのはグレート・ウエスタン鉄道(GWR)とロンドン・ノース・イースタン鉄道(LNER)など運行会社5社計1456車両にのぼり、不合格は99件に達したと英鉄道専門メディア、レールビジネスUKは報じています。
運休と遅延は数週間続く見通しです。
ワクチン接種が進むイギリスは6月中の正常化に向け、ロックダウン(都市封鎖)を段階的に解除しているものの、ロンドンとスコットランド、ウェールズ間の乗客はパンデミック前の30%程度。
このため運行会社は仏アルストム製の代替車両や長距離バスを使って路線を再開させる予定です。
英政府は日立に対し、乗客への補償として数百万ポンド(数億円)を請求する方針です。
日立製作所鉄道部門の欧州拠点、日立レールは、筆者の電子メールでの問い合わせに一切答えていません。
レールビジネスUKの報道を見ていきましょう。
クラス800シリーズのうち、電気専用の車両クラス801では亀裂はそれほど見つからず、問題はディーゼル・電気両用のハイブリッド車両に集中しているようです。
スコットランドの運行会社スコットレールに納入され、2018年7月から運用されている日立製近郊輸送用車両クラス385でも10件の亀裂が見つかったそうです。
クラス800シリーズ、クラス385の車両は、いずれもアルミニウムでつくられています。
ジャッキングポイントとは、車両を整備するためジャッキで地面から持ち上げる箇所です。
運行が停止されたのは、車両の部品が亀裂により落下して線路や駅プラットフォームの人に危険を及ぼす恐れがあるからです。
クラス800シリーズは摩擦攪拌溶接技術を使って組み立てられており、アルミニウムの溶接部を修復できる施設は限られています。
さらに、溶接の際生じる大電流による損傷を防ぐ必要があるそうです。
クラス800シリーズでは4月11日にも安定増幅装置ヨー・ダンパーに深さ最大15ミリメートルの亀裂が見つかり、修理したばかり。
このとき亀裂は8件見つかったそうです。
亀裂が見つかったシリーズは日立製作所の笠戸事業所(山口県)と英北部ニュートン・エイクリフの車両工場で製造されており、溶接が均一に行われていなかった恐れもあります。
クラス800シリーズの車両には神戸製鋼所がデータを改ざんしていたアルミニウムが使われていますが、当時、日立関係者は「きちんと検証をしており、安全性に問題ない」と説明していました。
鉄道関係者によると、営業運転開始から2~3年で亀裂が立て続けにこれだけ広範囲で見つかるのは本来あり得ません。
ヨー・ダンパーのような台車で亀裂が見つかれば、日本では「鉄道重大インシデント」に当たります。
車両本体に亀裂が入ることは、まずないそうです。
クラス800シリーズは最高時速200キロメートルで走行するので、亀裂が広がれば大事故につながりかねません。
日立製作所と日立レールは、原因が分かり次第、すぐに記者会見する必要があるのではないでしょうか。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20210511-00237318/
(ブログ者コメント)
新型コロナワクチンの開発遅れに続き、技術立国の足元が揺らいでいるかの如きトラブルの報道があったので紹介する。
2021年5月9日5時30分に日本経済新聞電子版から、『必然だったワクチン敗戦 不作為30年、民のはしご外す』というタイトルで下記趣旨の記事がネット配信されていた。
新型コロナウイルスのワクチン開発で日本は、米英中ロばかりか、ベトナムやインドにさえ後れを取っている。
菅義偉首相が4月、米製薬大手ファイザーのトップに直々に掛け合って必要なワクチンを確保したほどだ。
「ワクチン敗戦」の舞台裏をさぐると、副作用問題をめぐる国民の不信をぬぐえず、官の不作為に閉ざされた空白の30年が浮かび上がる。
世界がワクチンの奪い合いの様相を強める中で、国産ワクチンはひとつも承認されていない。
ところが、厚生労働省で医薬品業務にかかわる担当者は、「米国や欧州ほどの感染爆発は起きていない。何がいけないのか」と開き直る。
「海外である程度使われてから日本に導入したほうが安全性と有効性を見極められる」
1980年代まで水痘、日本脳炎、百日ぜきといった日本のワクチン技術は高く、米国などに技術供与していた。
新しいワクチンや技術の開発がほぼ途絶えるまで衰退したのは、予防接種の副作用訴訟で92年、東京高裁が国に賠償を命じる判決を出してからだ。
このとき、「被害者救済に広く道を開いた画期的な判決」との世論が広がり、国は上告を断念した。
94年に予防接種法が改正されて接種は「努力義務」となり、副作用を恐れる保護者の判断などで接種率はみるみる下がっていった。
さらに、薬害エイズ事件が影を落とす。
ワクチンと同じ「生物製剤」である血液製剤をめぐり、事件当時の厚生省生物製剤課長が96年に逮捕され、業務上過失致死罪で有罪判決を受けた。
責任追及は当然だったが、同省内部では「何かあったら我々が詰め腹を切らされ、政治家は責任を取らない」(元職員)と、不作為の口実にされた。
いまや、欧米で開発されたワクチンを数年から10年以上も遅れて国内承認する「ワクチン・ギャップ」が常態となった。
国内で高齢者への接種が始まったファイザーのワクチンは厚労相が「特例承認」したものだが、これは海外ワクチンにだけ適用される手続きだ。
日本ワクチンが歩みを止めている間、米国は01年の炭疽(たんそ)菌事件を契機に、公衆衛生危機への対応を進化させている。
有事には保健福祉省(HHS)が中核となって関係省庁が一枚岩となり、製薬会社や研究機関と連携。
ワクチン開発資金の支援や臨床試験(治験)、緊急使用許可といった政策の歯車が勢いよく回る。
世界のワクチン市場の成長率は年7%近い。
致死率の高い中東呼吸器症候群(MERS)、エボラ出血熱などに襲われるたびに新しいワクチンが編み出された。
新型コロナで脚光を浴びた「メッセンジャーRNA(mRNA)」の遺伝子技術も、ワクチンへの応用研究は20年越しで進められていた。
ワクチンは感染が広がらなければ需要がなく、民間企業だけでは手がけにくい。
しかし、日本では開発支援や買い取り、備蓄の機運は乏しい。
北里大学の中山哲夫特任教授は、「ワクチン・ギャップが生じるのはポリシー・ギャップがあるからだ」と、政策の停滞を嘆く。
新技術でインフルエンザワクチンに挑んだバイオ企業、UMNファーマの挫折は語り草だ。
工場建設に100億円超を投じたが、認可申請は17年、既存ワクチンに比べて「臨床的意義に乏しい」との理由で退けられた。
UMNは債務超過に陥り、曲折の末に塩野義製薬の傘下に入っている。
米国で認可済みのワクチンだっただけに、医薬品業界は「単に新しいワクチンを導入したくないだけではないか」(国内製薬会社)と不信を募らせた。
研究者と技術は海外に流出している。
あるウイルス学者は、「日本は規制が多い一方、支援体制が貧弱だ」と指摘する。
危険なウイルスを扱える実験施設は国内に2カ所しかなく、ひとつは周辺住民の反対で最近まで稼働しなかった。
厚労省、農水省、文科省をまたぐ規制は複雑で、遺伝子組み換え実験は生態系への影響を防ぐ「カルタヘナ法」に縛られる。
欧州は医薬品を同法の適用除外とし、米国は批准もしていない。
製薬会社は日本市場を迂回する。
武田薬品工業が開発中のデング熱ワクチン、田辺三菱製薬のタバコ葉の植物由来ワクチンも国内承認への計画は未定のままだ。
政府は新型コロナで急きょワクチン担当大臣を置いたが、アンジェス、塩野義などが開発中の国産ワクチンは、承認されるとしても22年以降の見通しだ。
国家の危機管理という原点を見失って漂流した30年の代償は大きい。
【問われる科学的理解】
ワクチンはラテン語の「牛」が語源で、牛痘から死亡率がはるかに高い天然痘のワクチンが開発されたことに由来する。
日本のワクチン開発の停滞は官だけの責任ではない。
副作用のリスクを踏まえても予防接種のメリットが大きいという公衆衛生に対する理解が、わたしたち国民を含めて社会全体で足りなかった。
2013年に定期接種になった子宮頸(けい)がんワクチンは接種率が1%未満にとどまる。
投与後に慢性の痛みや運動機能の障害などが出るとして一部メディアで「薬害」と騒がれ、接種勧奨が中止されたためだ。
大規模調査でワクチンと痛みなどに因果関係は証明されなかったが、その後も接種率は改善していない。
科学的根拠のない不確かな情報であっても、「なんとなく打ちたくない」というムードが広がると、挽回が難しい。
がん患者を減らす効果が証明され、接種率90%を目指している世界のワクチン先進国とは対照的だ。
日本は予防接種法を改正し、義務接種を取りやめた。
かつてのような、学校での集団接種も見られなくなった。
ワクチン接種は個人の判断に委ねられている。
厚労省は新型コロナワクチンの副作用の疑いを公表している。
「科学とは、信じることではなく、理解すること」。
18世紀末に天然痘ワクチンを開発したエドワード・ジェンナーの理念をかみしめ、国民一人ひとりが危機と向き合わなければならない。
(先端医療エディター 高田倫志)
【健康被害の救済制度】
ワクチン接種では極めてまれだが、深刻な健康被害が出ることがある。
被害者は法律に基づき、医療費と医療手当、障害年金などの支給で救済される。
医療手当は、通院や入院の日数に応じて月額3万円台。
障害が残ってしまった場合の養育費は年120万~150万円ほど、障害年金は年300万~500万円ほどだ。
厚労省の審査会では健康被害申請の8割が認められており、副作用の程度にかかわらず、諸外国に比べて手厚いとされる。
もっとも認知度は1割に満たず、入院や障害などのケースを除けば、申請せず自己負担している人もいるとみられる。
米国にも同様の救済制度はあるが、健康被害が認定されるのは3割程度だ。
日本や世界が直面する問題の根っこに何があるのか。
「Inside Out」では「解」を求めて記者が舞台裏や歴史を徹底的に探ります。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL024HX0S1A400C2000000/?n_cid=NMAIL007_20210509_A&unlock=1
その4日後、5月13日19時33分に朝日新聞からは、『国産ワクチン、大規模治験の壁 未接種者が減り対象不足』というタイトルで、治験者不足に絞って国産化が難しい理由を解説した記事が下記趣旨でネット配信されていた。
新型コロナウイルスに対する国産ワクチンの実用化に向け、承認前の最後の大規模治験(第3相試験)が大きな壁になっている。
世界中でワクチン接種が進み、未接種の参加者が集めにくくなっているからだ。
政府は対応を急ぐ考えだが、壁を乗り越えるのは簡単ではない。
【数万人単位で必要な場合も】
「現実問題として非常に難しい」「ほかの方法で評価ができないか」――。
9日に横浜市であった日本感染症学会の学術講演会。
国産ワクチンを開発している製薬企業からは、難航する治験について訴えが相次いだ。
治験は、ワクチンや薬の承認を得るために必要な臨床試験で、3段階ある。
第1相、第2相では、少ない人数で主に安全性を調べる。
最終段階の第3相では、多くの人数で有効性も調べる。
データを厚生労働省に提出し、部会で審議にかけられる。
課題となるのが、第3相だ。
ワクチンの治験では通常、未接種の人に対し、ワクチンをうつグループと、生理食塩水などの「偽薬」をうつグループに分け、効果を比較する。
多いと数万人単位の参加者が必要だ。
だが、ファイザーなど複数の新型コロナワクチンが実用化され、世界的に接種が進むことで、国内企業がこれから未接種の参加者を集めるのは容易ではない。
新型コロナのように亡くなるおそれもある感染症で、すでに使えるワクチンがあるのに偽薬をうつことが許容されるのか、倫理的な課題も残る。
厚生労働省は、ほかの方法も検討している。
承認済みのワクチンと比較して「劣っていない」ことを示す方法があり、偽薬を使わないで済むが、治験の規模を小さくできるとは限らない。
感染を防ぐはたらきのある「中和抗体」の値を接種後に測って有効性を調べる方法もあるが、審査を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)の荒木・ワクチン等審査部長は、「中和抗体価の指標を定めるにしても、科学的な知見がまだ足りておらず、難しさがある」と話す。
・・・・・
https://www.asahi.com/articles/ASP5F66Q8P4WULBJ00P.html
(ブログ者コメント)
技術先進国だとばかり思っていた日本が、なぜワクチン開発競争から取り残されたのか?
今回の報道を機に、別報道も見てみたところ、おおよその原因は以下のようなものだとする論調が多かった。
・国の危機管理意識、支援体制が薄い。
・92年の敗訴以降、産学ともに技術の蓄積をしてこなかった。
・企業にとって流行が起きなければ採算が合わないという特殊性
がある。
2021年5月10日11時22分にYAHOOニュース(水難学会会長の寄稿文?)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
5月9日午後、香川県丸亀市のため池に釣りに来ていた小学1年生の男の子と33歳の父親の2人が死亡しました。
なぜ、ため池に落ちると命を落とすのでしょうか。
繰り返される事故に、どう対処すればよいのでしょうか。
【事故の概要】
9日午後3時40分頃、香川県丸亀市綾歌町のため池で、「人が落ちている」と近隣住民から110番があった。
駆けつけた救急隊員が、水中に沈んでいる男性(33)と、水面に浮かんでいる小学1年の息子(6)を発見。
男性は現場で、息子は搬送先の病院で、いずれも死亡が確認された。
丸亀署の発表によると、ため池の水深は約6メートル。
周囲に柵はなかった。
父子で釣りに来ていたが、帰宅が遅いため妻が現場に行き、息子を見つけ、近くの住民が通報したという。
同署は、誤って転落した可能性があるとみて調べている。
(記事中の氏名等を筆者が改変)
最終更新:5/10(月) 9:35 読売新聞オンライン
筆者が現場を直接確認しているわけではないのですが、様々なメディア情報が正しいとすれば、ため池における典型的な後追い沈水とみることができます。
同様の事故は、過去からずっと繰り返されています。
例えば、2016年7月1日に宮城県大衡村で発生した、父子3人が犠牲となったため池水難事故をあげることができます。
大衡村の八志沼で、釣りをしていた父子3人がいなくなったと母親から110番通報があった。
宮城県警大和署によると、沼の中から3人が見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された。
過って転落したとみている。(中略)
車内に残っていた母親が、釣りをしていた3人のところへ向かったところ、姿が見えなくなっていたという。
わが国におけるため池水難事故については、農林水産省がデータとしてまとめています。
平成22年から令和元年までの間に、毎年20人から30人がため池転落で命を落としています。
【宮城県大衡村八志沼での事故調査】
水難学会では、2016年8月29日に水難事故調査委員会(安倍淳委員長)を現場に派遣して、事故調査を行いました。
その結果については、すでに宮城県内において会見を開き、報道発表しています。
八志沼は、すぐ近くを通る道路から徒歩で降りるだけで、岸に簡単にアクセスできました。
日頃から釣りをする人が絶えなかったそうです。
このため池にはコンクリートの斜面が形作られています。
漏水や斜面崩落を防ぐために、コンクリートやゴムなどで斜面が保護されているのが、一般的なため池の構造となっています。
陸から見れば、波もない、流れもない、鳥のさえずりに囲まれ、斜面も低く見える、全てにおいて安全を錯覚させるような条件を満たしています。
八志沼は、まさにその条件をすべてクリアしていました。
水難学会事故調査委員会では、現場に赤十字水上安全法指導員有資格者の救助員複数名、医師を配置し、各種実験を行いました。
動画1をご覧ください。
現役の水難救助隊員が斜面を登り降りしています。
乾燥した斜面では、歩行に何の支障もありません。
ところが、足を水に少しだけ浸けたら、滑って、いっきに池に吸い込まれました。
数秒もたたないうちに背の立たない深みにもっていかれています。
『動画1』
動画2では、自力で上がろうとしています。
途中まではいいのですが、腰が水面に出るくらいの地点で足が滑り、それ以上は上がれません。
無理すると、むしろ、より深い方に体がもっていかれます。
勢いをつけて上がろうとすると、反動で、より深い方にもっていかれ、呼吸を確保できなくなれば、そこで溺水します。
『動画2』
子供が先に落水したらどうでしょうか。
当然、大人が助けに池に入ることでしょう。
そして、子供を陸に上げようとしますが、上げることができるでしょうか?
動画3をご覧ください。
ポリタンクに水を入れています。重さはほぼ18 kgになります。
小さいお子さんの体重を想定しています。
お父さん役が頑張って上げようとしていますが、かないません。
そして、最後はポリタンクを水没させてしまっています。
これこそ、現世の地獄です。
『動画3』
【どうすれば命を落とさずに済むか】
とにかく、ため池には近づかないこと。これにつきます。
ため池は構造上、人が入ることを想定していません。
一度滑って落ちれば、這い上がることができない構造になっていると考えてください。
救命胴衣を着用していれば、水に沈むことはありません。
呼吸は確保できます。
でも、6月ー9月の時期を除けば水温が低くなり、発見されるまで浸かっていると、そのうち低体温となり、命を失います。
救助用のロープがあれば、どうか。
ため池の中にいて意識がある人を発見したら、すぐに119番通報をしてください。
救助隊の到着が遅れるようであれば、動画4のようにしてロープにつかまってもらい、陸にあげることができます。
ただし、素手では絶対に引き上げようとしないこと。
同じように池の中に引きずりこまれます。
『動画4』
【ため池の安全対策】
多くのため池で、フェンスなどで囲んで人が侵入しづらくしています。
でも、これは単なる気休め。
そのうち、あちこちが自然に壊れたり、人為的に壊されたりして、人が侵入してきます。
「侵入する人が悪い」という気持ちもよくわかりますが、実は、ため池の管理者も落ちて命を失っています。
要するに、生きて戻ることができればいいという考え方で、水難学会では樹脂ネットを利用した自己救命策を考案し、宮城県内を中心に普及を始めています。
動画5をご覧ください。
被験者の男性がため池に落ちて、背浮きで岸に近づきました。
岸に到達したら、ひっくり返り、ネットを手でつかみました。
そして、手でネットをつかみながら、足をネットにかけ、手足で斜面を登っていきます。
樹脂ネットは何でもよいわけではなく、ため池の自己救命用に適切なネット素材、固定方法がありますので、詳細につきましては、水難学会にお問い合わせいただければと思います。
『動画5』
【さいごに】
父子や兄弟で亡くなる水難事故が絶えないため池。
危険ですから、釣りを含めて、不用意に近づいてほしくないと思います。
さらに、管理されている皆様にも、できるだけコストをかけずに、しかも命を守る効果のある方法について、一度考えていただければと思います。
https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohidetoshi/20210510-00237132/ アカスミ
5月12日13時22分にYAHOOニュース(Real Sound)からは、上記の水難学会動画が5月11日、ユーチューブで1位になったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
普段はエンタメ系の動画が上位を占めることが多いYouTubeの「急上昇動画」ランキングにおいて、5月11日に「ため池からの這い上がり」という動画が1位となり、12日現在もランクインを続け話題を広げている。
本動画はYahoo!ニュース「個人」コーナーで10日に公開された記事「ため池に落ちると、なぜ命を落とすのか」(https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohidetoshi/20210510-00237132/)に合わせて展開された動画で、前日に起こった香川県丸亀市での死亡事故をきっかけに、水難学会が注意喚起を行うものだ。
急上昇動画になったことで、当該記事を読んでいない層にも広く視聴されており、これからのアウトドアレジャーシーズンに向けて、高い啓発効果を発揮していると言える。
これから夏に向けての、釣りや水辺の遊びには、悲しいことに水難事故がつきもの。
なかでも「ため池」は、波も水の流れもない安心感からか、ついつい警戒心が少なくなってしまい、不用意に入ってしまうケースがあるという。
その危険性を伝えているのが、「動画1 ため池に落ちる様子」だ。
一見なんてことのない水面だが、足を水に少しだけ浸けたら、滑って一気に池の中へと吸い込まれていった。
わずか数秒で、肩の位置に水面があることがわかる。
そして怖いのが「動画2 ため池からの這い上がり」だ。
普段から鍛えているであろう、現役の水難救助隊員が自力で上がろうとしているが、腰が水面に出るくらいの地点で足が滑り、それ以上は上がれなく、「もう限界です」と周囲に告げていた。
概要欄には「無理すると、むしろ、より深い方に体がもっていかれます。勢いをつけて上がろうとすると、反動でさらに深い方にもっていかれ、呼吸を確保できなくなれば、そこで溺水します」と記載されている。
動画のコメント欄には「ため池=アリ地獄」と書かれているが、正にそんな感じ。
また、「これくらいの斜面、もし子供が落ちたら、助けられると思って自分も入っちゃうかもしれないな…」というコメントもあったが、この発想こそが“危険”と感じられる動画となっている。
「動画4 ロープ1本でため池から上がれるか」の概要欄には「ため池の中にいて意識がある人を発見したら、すぐに119番通報をしてください」とした上で、救助用のロープが傍にあった場合、「救助隊の到着が遅れるようであれば、動画のようにしてロープにつかまってもらい、陸にあげることができます。ただし、素手では絶対に引き上げようとしないこと。同じように池の中に引きずりこまれます」と、二次被害を出さないための注意書きがなされている。
いずれにしても、ため池の危険性がリアルに感じることができる動画だ。
繰り返されるため池の事故。
“どうすれば命を落とさずに済むか”と考えたら、とにかく、ため池には近づかないことが、なにより大切なことだろう。
「記事を読む」より、「動画を見る」ほうが気軽で、シェアしやすい面もあるだろう。
ぜひ、この動画をチェックして、ため池の危険性を身の回りの大切な人に伝えよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4e291283628fcb6dd5b5677cd44efe5e4494f513
(ブログ者コメント)
ため池への転落事故は、市原市の山倉ダム事例を含め、本ブログでも何件か紹介している。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。