2021年12月25日2時0分に日本経済新聞から下記趣旨の記事が、図解や解説表付きでネット配信されていた。
新型コロナウイルスの誕生にはコウモリのウイルスが関わっているとする説を、多くの科学者が支持している。
2003年に世界を揺るがした重症急性呼吸器症候群(SARS)でも、コウモリ起源説が話題になった。
たびたび人類を震え上がらせる感染症の原因をたどっていくと、なぜかコウモリに行き着く。
そこがウイルスの貯蔵庫だからだ。
17年、中国広東省の養豚場でブタの間に深刻な感染症が広がった。
重い下痢を患い、子豚が次々と命を落とした。
少なくとも2万4000匹以上が死んだ。
18年、英科学誌に国際チームが1つの分析結果を発表した。
「命取りとなる豚急性下痢症候群は、コウモリのコロナウイルスから生まれた新たなウイルスが原因」とした。
そして数年後、人間の世界でも、新型コロナと呼ぶ別のコロナウイルスの出現が生命を脅かす。
新型コロナも、コウモリとの関係が濃厚だ。
中国雲南省にいるキクガシラコウモリのコロナウイルスと、ゲノム(全遺伝情報)の96%が一致したなどとする報告がある。
SARSや12年に発覚した中東呼吸器症候群(MERS)を招くコロナウイルスも、コウモリのウイルスが発端とみられる。
ヒトで最大90%の致死率に達するエボラウイルスや、致死率が40~75%のニパウイルスも、コウモリから広がったようだ。
病原性がないタイプを含めて、16年時点で5629タイプのウイルスがコウモリから見つかった。
コウモリをウイルスの貯蔵庫としているのは、その特異な体や暮らしぶりが背景にある。
一般に、どの動物も、体内でウイルスが増えると病気になるが、コウモリは過剰にウイルスが増えないような状況を意図せず作り出しているかもしれず、だからこそ貯蔵庫になりうる。
「貯水池」と称するコウモリ専門家もいる。
古代から伝わるイソップ物語では、コウモリは鳥と獣の争いで双方に「仲間である」といい顔をし、最後はどちらからも見放されて暗い洞窟で暮らす。
こうした振る舞いに、貯蔵庫になりえた手がかりがうかがえる。
まずは、哺乳類でありながら空を舞う。
筑波大学の小薮大輔准教授によると、化石の調査から、コウモリは6000万年前ごろに突如現れた。
哺乳類の中でも、イヌやウマなどより古い。
飛べるようになった後に大きく3グループに分かれ、2つが超音波を使って飛び回る能力を獲得した。
飛ぶには膨大なエネルギーを費やす。
体の負担を減らそうと、代謝をうまく操る方向へと進化したのか、体内を傷める過度な活性酸素が発生しにくい。
体の強さは、「想像だが、副産物として、ウイルスがいても病気を発症しにくいような抵抗力につながった可能性がある」と、小薮准教授は指摘する。
事実、コウモリは長生きだ。種によっては20~30年くらい生きる。
病気のなりにくさには、特有の生活様式が影響していると推測する専門家もいる。
昼夜で体温が大きく変動し、ウイルスの増殖を阻んでいるという見立てだ。
東京農工大学の大松勉准教授らは、デマレルーセットオオコウモリで1日の体温の変動を調べた。
セ氏24度で12時間ずつ明暗の状態を繰り返した。
昼の休眠時の体温は36度で、夜の活動時は39度だった。
「1日のうち、体温が高いときと低いときとで、どちらもウイルスが増えにくい状況になっている。病気を起こさない性質を偶然にもたらしたのではないか」(大松准教授)
さらに、ひとくくりにコウモリといっても1000種以上いる。
哺乳類の約4分の1を占める。
これだけの種類があれば、コウモリ全体で数々のウイルスがいても不思議ではない。
コウモリを感染源とみなして忌み嫌うだけでは、感染症の克服にはつながらない。
MERSウイルスはラクダ、エボラウイルスは霊長類を経たとされる。
ニパウイルスはコウモリの唾液やし尿、血液を通じてヒトやブタに飛び移る。
感染ルートの研究が欠かせない。
多くのウイルスがいても病む気配のないコウモリの謎を解き明かせば、感染症の予防や治療の参考になる。
人間がコウモリから強さの秘訣を次々と学んだとき、コウモリは解決策の宝庫と呼ばれるようになるだろう。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC208XS0Q1A221C2000000/?n_cid=NMAIL007_20211225_A&unlock=1
(ブログ者コメント)
コロナに明け、コロナに暮れた、この1年。
本ブログの今年最終日をしめくくるのにピッタシの情報があったので、紹介します。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。