2022年12月14日5時30分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
赤い詰め襟の学生服に、鉢巻きとたすきを身につけた人気俳優の浜辺美波さんが「応援団」になり、スーパーマーケットで買い物客に呼びかける。
「たまる! たまる! たまるぞdポイント!」
そんなNTTドコモ(東京都)の15秒間のテレビCMが7月、全国で放映された。
このCMは、ドコモにとって初めての手法で制作したものだった。
「『仮想脳』で評価を重ねて作りました」と、コンシューママーケティング部の曽輪(そわ)主査が明かす。
【脳の反応を推定】
仮想脳は、コンピューター上で、人工知能に人の脳活動から得られるデータを組み合わせたものだ。
動画を読み込ませると、動画を見た時の人の標準的な脳の反応や思いなどが推定できる。
今回のCMでは、シナリオ作りの段階から複数の場面設定の案を仮想脳に評価させ、その中で好感度の高かった応援団の案を採用した。
ところが、撮影後にも評価をさせたところ、事前の時よりも好感度が大幅に下がってしまった。
なぜそうなったのか仮想脳の活動を分析したところ、CMの画面左に位置する浜辺さんだけでなく、右側の買い物客にも注意が分散していたことが分かった。
そこで画角を調整し、浜辺さんがより大きく映るようにしたところ、好感度は改善した。
曽輪さんは「従来は『CMを見る人の目が、実は端の方にいっているぞ』というのは分からなかった。撮影後に『ここを変えた方がいい』と発見できたのは良かった」と話す。
ドコモは、これ以降のCMも仮想脳を活用しているという。
【数十秒で好感度判定】
CMの評価に使われたのは、仮想脳を活用したNTTデータ(東京都)の広告評価サービス「D-Planner(ディープランナー)」だ。
仮想脳は、次のように作られている。
まず、協力者にベッドに横たわってもらい、2時間の映像を見てもらう。
その際、上半身をすっぽり覆うようなドーナツ形をした機能的磁気共鳴画像化装置(fMRI)で、脳の深くまでの活動状況を測る。
こうして得られた複数の協力者の測定結果を用いることで、どんな映像を見ればどのように脳が反応するのか、人工知能で予測できるようにしておく。
一方、これとは別の人工知能には、脳のさまざまな反応パターンに応じて人が抱く好感度や思い浮かべやすい言葉を学習させておく。
この二つの人工知能を組み合わせることで、映像を読み込ませると人の脳の標準的な活動や好感度などが推測できる。
ドコモは今回のCMを作る前、仮想脳の精度を確かめるために、自社の過去のCMを読み込ませた。
すると、実際に視聴者の好感度が高かったCMに仮想脳も高い評価を与えたという。
仮想脳にCMの動画ファイルを読み込ませると、早ければ数十秒後には、CM1秒ごとの好感度や記憶定着度などが数値と折れ線グラフのデータで表示される。
これまでは、CMを見てくれた人にアンケートをして好感度などを調べていたが、その手間ひまを省けるようになった。
NTTデータの前田さんは、「人の脳活動のデータを反映させない人工知能でも、評価ができないわけではない。ただ、仮想脳の方が『おいしそう』や『好き』といった主観的な評価の精度が増す」と説明する。
NTTデータなどの研究によると、これまでの人工知能より好き嫌いの評価の精度が10%向上したという。
NTTデータの大山さんは、「CM制作など『クリエーティブ』と呼ばれる仕事は、勘や経験など個人の力量に委ねられ、データ化できない曖昧な部分に頼らなければならないのが課題だった。仮想脳でその課題を克服できるようにしたい」と話した。
脳に直接「本音」を聞けないか――。
広告を見たり商品を買ったりした時の脳活動を数値化し、商品開発や効果的な広告に生かす手法は「ニューロマーケティング」と呼ばれている。
2021年4月にサービスが始まったディープランナーは、これまで食品業界を中心に40~50社に導入された。
CMのほか、商品パッケージの好感度評価にも使われている。
このような脳科学を活用した商品やサービス「ブレーンテック」が広がりを見せている。
【アンケ結果は主観で左右】
10月下旬、横浜・みなとみらい地区にあるガラス張りのビル「資生堂グローバルイノベーションセンター」の一室。
記者は頭にヘッドバンドのような機器を装着してから、手の甲になめらかさが異なる二つの口紅を順に塗ってもらった。
すると、目の前のモニターに折れ線グラフが表れた。
この機器は、人の目では見ることができない近赤外光で脳表面の血流を測っており、脳の活動の状況が分かるという。
先に塗った口紅の方がグラフの山は高くなり、脳がより強く反応していることを示していた。
「今『快感』を示しましたね」
「左の脳が右の脳より強く活動すると『快い状態』と判断します」
資生堂みらい開発研究所・美容心理価値開発グループの互(たがい)シニアスペシャリストがモニターを見ながら、そう解説してくれた。
化粧品の新商品を開発する時、パッケージや素材、香りなど、いくつものパターンの試作品を作るという。
これまでは協力者にそれぞれ試してもらい、その評価をアンケートで尋ねていた。
しかし「謝礼をもらっているから」と協力者が高い得点を付けたり、中国人の方が日本人より高い得点を付ける傾向になったりして、評価の仕方が協力者の主観に左右されるのがネックになっていた。
互さんは「アンケートの回答のバイアス(偏り)をスキップできるようになった」と語る。
ニューロマーケティングによって開発されたのが、化粧品の「マキアージュ」シリーズだ。
15年から、商品パッケージで「脳科学などにも着目し、『直感で美しい・心地よい』と実感される研究から生まれました」とうたっている。
ただ、こうしたニューロマーケティングの場合は、商品開発のたびに脳の活動を調べる必要があるのが課題だ。
【30年に250億円市場の見通し】
脳の活動から消費者の行動原理や心理を分析し、商品開発などに生かすニューロマーケティングは、脳科学から生まれた技術やサービスといった「ブレーンテック」の中でも、最も応用が進んでいる分野だ。
00年代に欧米を中心に、メーカーなどにその手法を提供する企業が現れた。
その後、国内でも広告大手などが参入した。
米国の調査会社が全世界の市場調査会社など計1000社を対象にアンケートをしてまとめたニューロマーケティングの報告書(グリーンブック)によると、14年はニューロマーケティングを利用していた企業が13%だった。
18年には29%にまで増えたが、20年は新型コロナウイルス感染症による生産活動縮小の影響などもあり、24%に減少した。
一方、内閣府は国内の市場規模が25年に100億円以上、30年に250億円以上となる見通しを示している。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。