2022年12月13日5時30分に毎日新聞から、下記趣旨の記事が図解付きでネット配信されていた。
高齢者の運転ミスによる事故が後を絶たない。
中でも多いのが、ブレーキだと思ってアクセルを踏んでしまう「踏み間違い」だ。
なぜ、わかっているのにミスをしてしまうのか。
脳の「運動前野」という領域が、その謎に深く関わっていることがわかってきた。
公益財団法人・交通事故総合分析センター(東京都千代田区)のまとめによると、運転操作ミスによる対人事故のうち、踏み間違いは4割弱と最も多い。
車両同士なども含めた踏み間違い事故は2018~20年に9738件発生。
このうち死亡重傷事故は797件で、65歳以上が65%を占めた。
踏み間違いをしたドライバーは、赤信号や歩行者などの情報はちゃんと目で捉えているし、止まるという判断もしている。
それにもかかわらず、ブレーキを踏むはずがアクセルを踏んでしまう。
どこかにエラーが起きたのだ。
では、視覚情報から行動までに、脳内でどんな過程をたどるのか。
東京都医学総合研究所脳機能再建プロジェクトの中山義久主席研究員(神経科学)によると、目から入った視覚情報は脳に送られ、まず「側頭葉」で、その物が何かを判別する。
次に「前頭前野(ぜんとうぜんや)」で、物を認知して記憶する。
認知した内容から行動の目的を決め、必要な行為を選び、準備をするのが、次にある「運動前野」だ。
そこから「運動野」に伝わり、手や足などを動かす指令が出るという流れだ。
研究者が注目するのが、目的から準備まで幅広い役割を担っている運動前野だ。
1980年代に英国のチームがこんな実験をした。
サルをドアノブの前に座らせ、赤色が出たらノブを引く、青色が出たらノブを回す学習をさせた。
成功率が9割ほどになった後、運動前野を切除した。
すると、成功率は50%に低下し、当てずっぽうにやった結果と同じになった。
運動前野は視覚情報と動作を結びつける重要な役割を果たしていたのだ。
ただし、運動前野のどこがどの役割を担っているかは、この実験だけではわからなかった。
そこで中山さんらのチームは、実験をより複雑にし、運動前野で何が起きているかを詳細に調べた。
マカクザルに、4色に塗られた4種類の丸やひし形などの記号を一つずつ見せる。
サルには、うち2種類が「左」、2種類が「右」だと事前に学習させてある。
次に、左右に並べた二つの印を、モニター上にランダムに表示。
記号に応じて、どちらかの印をサルに押させる。
英チームの実験では、見せた色と動作が1対1で対応するため単純だ。
しかし、この実験は二つの印が出る場所が毎回変化するので、記号で左右を区別できても、さらにどこの場所を押すかを決めなければならない。
サルの運動前野にある細胞のうち約700個に電極を刺して活動を調べると、記号に基づいて右を押すのか左を押すのかという目的を判断する細胞、モニターの中でどこを押すべきかの動作を判断する細胞、その両方を担う細胞が存在することがわかった。
さらに、サルが押す印をミスしたときには、ミスの直前に、左の指示が出ているのに左に反応して活動する細胞が働かなかったり、左に反応しないはずの細胞が反応したりしていた。
中山さんは「なぜ正常に反応しないのかは分かっていないが、ミスするという予測が事前にできた」と説明する。
ヒトではどうなのか。
中山さんらは、機能的磁気共鳴画像化装置(fMRI)を使ってヒトの脳内の様子を調べ、8月に学術誌で発表した。
被験者に、モニター上で、「開ける」もしくは「閉める」という目的の指示を出す。
その後、取っ手の位置が違う右開きか左開きのドアの画像が示されると、被験者は指示通り、手元のレバーを左右に動かす。
fMRIで血流の様子を調べると、
▽指示が出た
▽ドアの画像を見て動かす方向を判断した
▽判断に従ってレバーの操作を準備した
の三つのタイミングで運動前野が活発に活動し、それぞれの段階で働く場所が異なっていた。
被験者は大学生で、200回に1回程度はミスが起こったという。
踏み間違いのように「わかっているのにミスをする」、その原因も運動前野にあるのではないか、中山さんはそう見ている。
「加齢で運動前野の働きが悪くなると、認知、目的の決定、行動を正しく結び付けられない頻度が増える可能性がある。この仕組みが分かれば、脳をモニタリングすることで運転中の踏み間違いを予測できることが期待される」と強調した。
https://mainichi.jp/articles/20221209/k00/00m/040/370000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
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