2018年6月11日に掲載した元記事がプロバイダーの字数制限オーバーとなりましたので、ここに新情報を第2報修正1として掲載します。
第1報は下記参照。
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/8441/
(2018年7月23日 修正1)
その後の北國新聞紙面に、事故当時の詳しい状況などが下記趣旨で掲載されていた。
(6月7日)
タンクは円筒状のコンクリート製で、工場の1階に設置され、容量約80m3、深さ約5m。
当時、再生紙を作るため、古紙や水、希硫酸、マグネシウムを混ぜて溶かしていた。
現場にはMさんとIさん、別の従業員男性の3人がいた。
タンク内に異物が詰まり、点検作業中のMさんが、除去するため、タンク上部にある50cm四方の開口部からハシゴを使って下に降りている際に倒れた。
その後、Mさんを救助しようとしたIさんも同様に内部で倒れたことから、従業員男性が別の部署に応援を要請。
他の製造作業を中断して駆け付けたNさんも内部に入って倒れたとみられる。
Nさんは、通常は事務職に従事しているが、4日から応援のため、製造現場で勤務していた。
消防が3人を救出する際、ガス検知器で硫化水素が検出された。
開口部付近に設けられた送風機で換気され、消防の到着時に硫化水素濃度は薄まっていたが、事故発生時は致死量があった可能性がある。
3人はマスクを着用しておらず、体の一部はタンクの底に溜まった深さ約20cmの溶液につかっていた。
警察によると、タンクの底部から、長さ約100cm、幅約15cmの布のようなものが見つかった。
この布が配管に詰まった可能性がある。
N製紙では1995年4月、段ボールの原料液を混ぜる撹拌機に作業員が転落、死亡する事故が起きている。
事故が起きたタンクは30年程度使われているが、今回の事故のように硫化水素が発生したケースは把握していない。
タンク内は水と古紙が大半で、硫化水素が検知される状況を同社は想定していなかった。
佐野総務課長は、今回の事故は不定期の作業中に発生したとし、「酸欠主任者の資格を持つ従業員は、他の作業現場にはいるが、今回はいなかった」と述べた。
【拡散されず致死濃度に】
金大物質化学系の千木昌人教授(有機合成化学)は、空気より重い硫化水素が溶剤タンクの底に溜まっていたと推測し、「発生が少量だったとしても、拡散されず、致死濃度に達した可能性がある」と指摘した。
千木教授によると、硫化水素の発生には2パターンある。
一つは、硫酸イオンが細菌で還元されるケースで、空気がよどんだ状態で起きる。
溶剤タンクは、物が詰まった状態でよどみ、希硫酸が投入されていたことから、このパターンで発生した可能性がある。
もう一つは、硫化物に酸性水溶液を加えた場合で、千木教授は「タンク内の古紙などに硫化物が含まれていたら、希硫酸と反応して硫化水素が発生することも想定される」と説明した。
(6月8日)
鼻を覆いたくなるような異臭が漂うタンクの内側を覗き込むと、倒れた2人の姿がうっすら見えた。
「すぐに換気しろ」「危険だ。入るな。」
タンク付近に集まった10人ほどの従業員の叫び声が未明の工場に響いた。
現場を目撃し、119番通報した同僚男性(21)が7日、事故当時の緊迫の状況を証言した。
同僚男性は、事故が起きたタンクから数10m離れた製造現場で作業をしていた。
「タンクに2人が落ちた。助けてくれ。」
突然の大声に作業を中断し、声のほうに向かうと、すでに10人近くの従業員がタンクの前にいた。
騒然とし、腐敗した卵のような臭いが残る現場で、同僚男性はタンクの開口部から下を見た。
「2人が倒れているのが見え、ただ事ではないと思った。」
携帯電話で急いで119番通報した。
他の従業員たちは、別の作業所にあった送風機を慌てて現場に運び、タンクの開口部付近に備えて換気に取り掛かった。
そんな中、3人目の犠牲者となったNさんが従業員の中を駆け抜け、タンク内に入った。
防毒マスクは着けていなかった。
「倒れている仲間を助んなんという思いが強く、危険を冒してでも助けに行ったんだと思う」と振り返る。
しばらくして、消防隊員が到着した。
(6月10日)
同社には、過去に酸欠作業主任者の資格を有する従業員が複数いたが、定年退職などに伴い、現在は1人となっている。
石川労働局は、工場内に複数のタンクがある同社の規模からみると、「1人では少ないのではないか」という。
(6月11日)
白山署は10日、司法解剖の結果、3人の死因は、いずれも硫化水素の吸引による急性中毒だったと発表した。
3人は、内部に入った直後に意識を失ったとみられる。
(6月14日)
「硫化水素が発生するなんて、本当に知らなかった」
警察の事情聴取を終えたN製紙幹部は、ため息をついた。
柴田社長も、「数10年、製紙業をやってきて、硫化水素という言葉を初めて聞いた」と言う。
同社は本当に、この有毒ガスを想定していなかったのか。
古紙と水が入った溶液に希硫酸を混ぜると硫化水素の発生する恐れがあるというのは、「製紙業界の常識」(金沢市の同業者)だ。
同社に30数年勤務した元従業員の60代男性は、「従業員向けの安全会議は定期的に開かれていたが、硫化水素の危険性を教わった記憶はない」と打ち明ける。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。