2020年2月12日付で毎日新聞東京版から、都市別の危険個所数一覧表付きで下記趣旨の記事がネット配信されていた。
大津市で2019年5月、散歩中の保育園児ら16人が車同士の衝突に巻き込まれて死傷した事故を受け、道府県庁所在地と政令市、東京23区の計74自治体が園児らの散歩コースを点検した結果、安全対策が必要と判断された「危険箇所」が少なくとも1万6249カ所に上ることが毎日新聞のまとめで判明した。
8割にあたる61自治体がガードレール設置などの対策に乗り出した。
専門家は、「道路整備の考え方を、車中心から歩行者中心に変えることが重要だ」と指摘している。
国は大津の事故の翌月、未就学児が散歩などで日常的に集団で移動する経路を緊急点検するよう、自治体に通知した。
毎日新聞は19年12月~20年1月、道府県庁所在地46市とそれ以外の5政令市、東京23区を対象に、点検に関するアンケートを実施し、全てから回答を得た。
幼稚園については、都道府県が担当との理由で未回答の自治体もあった。
回答によると、全自治体で点検し、対象の幼稚園、保育園、認定こども園など計1万9937施設のうち、86・9%の1万7334施設が既に終えた。
危険箇所の内訳は、
▽幼稚園1666カ所
▽保育園1万71カ所
▽認定こども園2139カ所
▽その他(特別支援学校の幼稚部など)2373カ所。
自治体別では、名古屋が2438カ所と最も多く、
▽大津1138カ所
▽京都1027カ所
▽福井597カ所
▽横浜594カ所
と続いた。
東京23区の合計は2293カ所で、名古屋の次に多かった。
実施・検討中の安全対策(複数回答)を尋ねたところ、「ガードレールやガードパイプ、金属ポールの設置」が61自治体と最多。
「ラインやグリーンベルト、路側帯の新設」が55自治体、「歩道の新設、拡幅・改良」が31自治体で、ハード面の対策は進みつつある。
一方、保育施設などの周辺で時間を区切って車の通行を規制する「キッズゾーン」の導入は24自治体と全体の約3割。
国が19年11月におおよその基準を示したが、具体的なガイドラインがないことなどから、様子を見ているケースが多いとみられる。
散歩など施設外で活動する子どもを見守るための要員「キッズガード」の導入は大津を含む14自治体と、2割弱。
徳島市は、「事故が起きた場合にキッズガードがどこまで責任を負うかが曖昧。国が定義を明確にしない限り、導入できない」と指摘した。
国に求める対策(複数回答)は、58自治体が「安全対策に関する国の補助金創設や増額」を挙げ、「事故抑止のための道路交通法の罰則強化」が22自治体、「キッズガードの制度化」が14自治体だった。
https://mainichi.jp/articles/20200212/ddm/001/040/098000c
2月11日21時23分に毎日新聞からは、右折レーン先端に破線がひかれた現場写真付きで下記趣旨の関連記事がネット配信されていた。
大津市で散歩中の保育園児ら16人が車同士の衝突に巻き込まれた事故から9カ月。
裁判の判決を前に毎日新聞が実施した園児らの散歩コースに関するアンケートでは、子どもの命を守るため、国に補助制度の充実や明確な指針作りを求める声が自治体から相次いだ。
一方で、運転マナーの向上が依然として大きな課題であることも浮き彫りになった。
【園児16人死傷の交差点を強引に右折する車】
2019年5月に16人死傷事故が起きた大津市大萱(おおがや)6の滋賀県道交差点。
園児らが信号待ちをしていた歩道には防護柵が設置された。
事故の原因となった乗用車が対向車と衝突する直前に通った右折レーンの先端には、新たに停止位置の目安となる破線が引かれた。
それでも、強引に右折する車は後を絶たない。
記者が訪れた1月中旬、事故とほぼ同時刻の午前10~11時に右折した車は224台。
この約3割にあたる71台が、対向車が来る前に曲がろうと、右折レーンを無視して交差点の手前側からハンドルを切っていた。
この交差点では5年間、一度も人身事故はなく、右折車と直進車の物損事故も3件だけだったが、重大事故が起きた。
付近を毎日散歩する無職の男性(78)は、「これでは、まだ子どもたちが安心して通れない」と表情を曇らせ、県警交通企画課の担当者も、「ルールを守り、安全確認をしっかりしてほしい」と呼びかける。
【「キッズゾーン」7割近い自治体が検討さえせず】
安全対策に頭を悩ませる自治体は少なくない。
国は、小学校の通学路に設けられる「スクールゾーン」と同様、保育施設などの周辺で時間帯を指定して車の通行を制限する「キッズゾーン」の設置を促しているが、アンケートでは7割近い自治体が検討さえしていないことが判明した。
宇都宮市は、「対象施設が小学校より多く、小学校と保育園などでは時間指定の考え方に違いがある。効率的な設置に向け、警察や施設設置者などと考え方を整理する必要がある」と説明する。
導入していない東京都北区は、「散歩は毎日同じ時間に同じ場所を通るものではなく、一律の対応が難しい」と打ち明けた。
【見守り「キッズガード」の導入も2割弱】
散歩など施設外で活動する園児らを見守るための要員「キッズガード」の導入や検討も2割弱にとどまっている。
国はキッズガードの配置経費を、保育体制強化事業の一環で2020年度予算案に計上した。
ただし、強化事業は、保育士らの人数が前年同月より減っていないことが補助の要件になっている。
大阪市は、「保育士不足が深刻化する中、保育士が辞めてしまって代わりを確保できなくても補助を受けられるようにしてほしい」と要望する。
都市部の駅ビルに設けられる小規模保育施設や事業所内保育所も事業の対象外で、「園庭がないからこそ対象に」と訴える。
東京都足立区も、「公定価格に散歩中の見守りをする非常勤保育士らの人件費を組み込んでほしい」と求める。
徳島市は、キッズガードの定義を国が指針で明確にするよう訴える。
子どもの見守りをシルバー人材センターに有償で頼もうとした際、都道府県公安委員会の認定が必要な「警備業」に当たる恐れがあると断られたといい、「保険への加入なども含めた身分や役割、事故発生時にどこまで責任を負うのかなどを明確に示してもらえなければ導入できない」と説明する。
アンケートでは、京都市がドライバーへの注意喚起や、交通安全意識の醸成を課題に挙げ、富山市も、「国や自治体は、危険運転そのものを撲滅する効果的な施策を検討・実施する必要がある」と指摘した。
【識者「大きな事故後の対策は有効性検証不十分」 】
帝塚山大の蓮花(れんげ)一己学長(交通心理学)は、「これまでも大きな事故が起きると安全点検や対策が自治体ごとに実施されてきたが、どの対策が有効かの検証が不十分だった。国や都道府県が集約し、専門家の意見も聞いてきちんと検証するとともに、住民の協力を得る仕組みを作ることが大切だ」と話している。
【車が主に使う道と生活道路を区別して整備を】
[明石達生・東京都市大教授(都市計画)の話]
これまでは、車が増加する中、車を中心に道路の整備が進められてきた。
住みやすい社会にするには、歩行者を中心に考えることが重要だ。
車が走る道に安全対策を講じることも大事だが、裏道は車が速度を落とさないと入れないようにするなど、車が主に使う道と歩行者が安全に歩ける生活道路を区別して整備した方が良い。
保育園児らの散歩コースも、舗装をタイルにするなど一目で分かるような工夫をすべきではないか。
【大津・園児死傷事故】
大津市大萱(おおがや)6の滋賀県道交差点で2019年5月8日、右折車と直進車が衝突。直進車が、散歩中に歩道で信号待ちをしていた近くのR保育園の園児らの列に突っ込み、園児2人が死亡、保育士を含む14人が重軽傷を負った。
右折車を運転していた無職、S被告(53)=同市一里山3=が自動車運転処罰法違反(過失致死傷)などの罪に問われ、検察側は禁錮5年6月を求刑。
S被告は起訴内容を認めていたが、判決の言い渡しが予定されていた1月16日の公判で急に起訴内容を争う姿勢を示した。
2月17日の次回公判で判決が言い渡される。
https://mainichi.jp/articles/20200211/k00/00m/040/204000c
(ブログ者コメント)
大津市の事故は関連情報も含め本ブログでも紹介している。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。