2022年3月28日付で労働新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
東京・中央労働基準監督署は、墜落防止措置を怠ったとして、映画・演劇業の独立行政法人日本芸術文化振興会(東京都千代田区)と同社副部長を、労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の疑いで東京地検に書類送検した。
入社1年目の女性職員が高さ2.85メートルの足場から墜落し、重度の障害が残るケガを負っている。
災害は令和2年12月29日、同社が運営する国立劇場内で発生した。
被災者は、舞台で使用する資材の片付け作業を行うため、移動式足場の上に乗っていた。
他の労働者とともに、足場の上で台車に乗せた板10枚を資材置場に収納しようとしたところ、墜落した。
コンクリートの床面に頭を打って重傷を負い、現在も休業が続いている。
労働安全衛生規則第519条では、高さが2メートル以上の作業床の端など墜落の恐れがある箇所には、手すりを設けなければならないとしている。
同法人はこれを怠った疑い。
移動式足場は側面の2カ所のみ手すりが設けられており、前後の手すりは取り外されていた。
車体はキャスターによって移動可能で、当日は労働者数人を足場上に乗せたまま、別の労働者複数人で車体を押して移動させていた。
同労基署は、「資材を出し入れやすくするため、常に手すりを外していたようだ」と話している。
同法人は普段、舞台で使用する資材を低い場所で保管していた。
災害当時は年末年始で、資材が増えて置き場がなくなり、移動式足場を用いて高い場所へ収納しようとしていた。
劇場内では墜落災害が発生したことはなく、被災者はヘルメットを装着していなかった。
同労基署は、「建設業など墜落災害が起きやすい業種では、安全対策に関する知識が浸透している。劇場関係の業種でも、照明や大道具を取扱う部署では対策が講じられているが、そのほかではまだ対策が不完全なケースが多い」と話している。
https://www.rodo.co.jp/column/123288/
(ブログ者コメント)
劇場での転落事故は本ブログでも何件か紹介しているが、今回、関連情報を調査中に以下のガイドラインを見つけた。
内容的には、かなり細かく安全基準が定められている。
以下は46p/154pにある、今回事例と関連する基準。
『劇場等演出空間の運用 および安全に関する ガイドライン 公演に携わるすべての人々に ver.3[2017]』
(劇場等演出空間運用基準協議会)
・・・
08 高所作業
2 mを超える位置での作業は、労働安全衛生法上、「高所作業」と位置づけられている。
公演制作現場においても、これに準じて 2m を超える高さでの作業は、高所作業と捉え、墜落事故および落下事故防止のため、安全対策を講じて万全な注意を払うこと。
・・・
■高所作業員は、必ずハーネス または安全帯と、 保護帽(ヘルメット)を着用し、 携帯物には落下防止対策を施す。
● 高所作業員は、必ずハーネスもしくは安全帯を装着し、堅固な 箇所にランヤード(命綱)をフッキングして墜落防止策を講じる。
それが、ワイヤーや親綱である場合には、墜落時の巻き添えを防ぐために、1本の親綱に複数人がフッキングすることは厳禁である。
● 高所作業員は、保護帽(ヘルメット)を着用し、万一の際のリス クの軽減を図る。
● 高所作業をおこなう際には、必要のない物品を携帯せず、作業に必要な工具等には、ワイヤーなどの落下防止対策を施す。
■高所作業がおこなわれている区域は明示し、立ち入り制限する。
周辺の地上作業員も、 保護帽(ヘルメット)を必ず着用する。
・・・
http://www.kijunkyo.jp/img/archives/guideline2017.pdf
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。