2018年7月29日16時11分に読売新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
福井県あわら市、坂井市、永平寺町、おおい町で、証明書発行といった住民サービスが利用できなくなり、庁内業務を含めて計9市町に影響したシステムの障害は、発生から1週間が過ぎた30日に、ようやく完全復旧となる見通しだ。
県と全17市町の業務に関わる民間のシステム会社で発生した通信障害は、ほぼ1週間に及び、原因も解明されておらず、現代社会を支える情報通信技術が抱えるもろさを露呈した。
【失態】
「復旧作業は順調に進んでいる。明朝には解決する」。
運用するFシステムズ(坂井市)は、トラブルを公表した23日以降、楽観的な見通しを示しては翌朝に撤回、という失態を繰り返した。
障害の発生は、22日未明。
各役場の休みにデータをやりとりする会社のサーバーのソフトを更新しようとして、突然、システムが使えなくなった。
丸一日過ぎても復旧せず、23日には、転出入の届け出や庁内のメール送受信、財務会計や人事給与、電子決裁など、37もの業務に支障が表れた。
坂井、あわら両市と永平寺町の電算事務を担う福井坂井地区の広域行政事務組合(あわら市)のまとめでは、23~26日には、3市町の約500人の手続きを受け付けられず、後日回しや郵送での対応となった。
27日になっても、子ども医療費や重度心身障害者医療費の受給者証を更新、発行するなど、一部の業務を再開できなかった。
【後手】
深刻さを増すトラブルを前に、Fシステムズは、市町などとの協調を欠いた。
若狭の事務組合職員は、
「朝には『午前中に復旧』と言ったのに、昼過ぎに『今度は(サーバーの)本体がやられた』。約束した時間の連絡もなく、対策を考えようもない」
と嘆いた。
住民からも不信感を招き、坂井市の職員は
「こちらも、住民に『明日には』と説明したのに、翌日になって『できない』と電話することになり、何を伝えればいいのかも分からなかった」
と、ため息をついた。
行政サービスのシステムは、通常、トラブルに備えて補助の系統を持つなど、万全を期すのが前提だ。
住民基本台帳ネットワークシステムを運営する地方公共団体情報システム機構(東京都)は、
「複数の自治体から異動情報が届かない状態が数日続き、近年ない規模の深刻な状況だった。障害や故障がないわけではないが、ここまで長引くとは」
と驚く。
【弊害】
障害が起きている間、Fシステムズの復旧作業は、次々と不測の不具合に追われた。
異常に備えたバックアップのデータにもつなげず、一時は、本体機器そのものが動かせなくなった。
代わりの臨時サーバーを持ち出したり、データを移したパソコンを役場に持参したりしながら、サーバーのメーカーや通信技術の専門家を呼んでも、暫定的に動かすのが精いっぱいだった。
県内では競合業者が少なく、自治体がFシステムズに乗り合うことも、一因となった。
同社は1966年に設立され、県庁や県内全17市町で、何らかの形でサービスを利用する。
もし、保存データを損なうようなトラブルに発展すれば、計り知れない範囲に影響が及ぶ。
坂井市の担当者は、「税金を使うので、なるべく地元の業者をと考えるが、こけられるとどうしようもない」と、頭を抱えた。
神戸大の森井昌克教授(情報通信工学)は、
「特に地方では、請け負える会社が限られて、偏りがちだ。自治体側もリスクをよく認識し、危機管理に関しても企業に対処法を徹底させるなど、目を光らせる必要がある」
と指摘する。
出典
『システム障害「業者コケるとどうしようもない」』
https://www.yomiuri.co.jp/national/20180728-OYT1T50076.html?from=ycont_top_txt
上記記事の3日前、7月26日7時20分に福井新聞からは、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
福井県内9市町の「総合行政情報システム」の障害は、発生から4日目となる7月25日も復旧せず、証明書発行や相談業務、職員の事務作業の一部ができない状態が続いた。
あわら市、坂井市、永平寺町などでつくる福井坂井地区広域市町村圏事務組合によると、復旧の時期は未定。
専門家は、「3、4日も住民サービスが滞るのは、かなり異常な事態」と指摘している。
「介護認定支援システム」が使えなくなっている小浜市、若狭、おおい、高浜町が入る若狭広域行政事務組合は、要介護度を決める審査会を8月1日に開く予定だが、「このまま長期化すれば、審査会が開けなくなる」としている。
システム障害は、9市町が共通して使うサーバーの通信障害が原因。
坂井市、あわら市、永平寺町、おおい町では、転出・転入手続きや今月21日以降の一部の証明書の発行などができない状態が続いた。
サーバー管理会社のFシステムズ(本社坂井市)によると、これまでに新たなソフトをダウンロードしたが改善せず、元のソフトに戻しても、通信障害は解消しなかった。
同社は、「サーバー本体とソフトの相性がよくない可能性がある」としているが、原因は特定できていない。
福井坂井地区広域市町村圏事務組合によると、このシステムは昨年10~12月に短時間の通信障害が5回発生。
今回の更新は、そうした障害の解消を目指した作業だった。
ただ、これまでは更新の際に業者からスケジュール案が示されたが、今回は知らされていなかったという。
同組合は、「事前に連絡があれば、万一の際の影響を最小限に食い止めるため、3連休などに行うよう指示できた可能性もある」とし、損害賠償の請求も視野に入れている。
兵庫県神戸市の行政システムの業者選定に携わっている流通科学大(同市)の福井誠教授(経営情報学)は、「住民生活に直結している行政は、高いレベルでシステムを運用する能力、体制が必要。システム停止時のバックアップは想定されているはずであり、それができなかったことは重大な問題」と指摘している。
出典
『行政システム障害「かなり異常」 復旧未定、専門家が指摘』
http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/628936
(ブログ者コメント)
Fシステムズ社は、HPによると従業員180名。
株主として富士通、福井新聞社、福井テレビジョンといった名がある。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。