2018年7月31日付で毎日新聞東京版から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
西日本豪雨で11府県に出された大雨特別警報の対象は、186市町村に及んだ。
2013年度に制度化されてから10回目の発表となった大雨特別警報で、気象庁は前代未聞の規模で「最後通告」を発していた。
その切迫感が自治体や住民には十分に伝わらず、「平成最悪」の広域豪雨災害となった。
5日朝。
登庁した気象庁の黒良(くろら)・主任予報官は、自席のパソコンで目を通した予報資料に驚いた。
梅雨前線の停滞で、日本列島の広い範囲で今後3日間、24時間雨量が200ミリを超える。
見たこともないデータに、「大きな河川が氾濫するかも」と焦りを募らせた。
上司の梶原・予報課長は、梅雨前線による大雨では異例の記者会見を開くべきだと考えた。
危険が及ぶ地域を細かく特定するデータはなかったが、橋田長官が「やりましょう」と決断した。
黒良予報官は、午後2時からの記者会見で、「西日本から東日本で記録的な大雨になる恐れがある」と強調した。
6日午前10時半からの会見では、気象庁が「最後通告」と位置づける大雨特別警報発表の可能性に言及。
午後5時10分、福岡など九州3県に最初の大雨特別警報を出し、8日までに順次拡大した。
各自治体は避難勧告・指示を最大約863万人に出したが、犠牲者は30日現在の毎日新聞集計で221人に上った。
24人が死亡した広島県呉市の新原(しんはら)市長は5日夕の飛行機で上京したが、事務方は気象庁発表の内容について、予想雨量などから「報告する必要はない」と判断。
新原市長は6日朝から財務省などを回る公務をこなして広島に戻ったが、交通渋滞に巻き込まれ、呉市役所到着は午後11時過ぎ。
広島県に大雨特別警報が出てから3時間半近くがたっていた。
広島市危機管理室の貞森・災害対策課長は6日午前6時半に出勤し、予想雨量から土砂災害の危険度を5段階に色分けしてパソコン画面の地図に示す「メッシュ情報」のチェックを続けた。
午後7時40分、大雨特別警報が広島県内に出た。
地図は、危険度が最も高い紫色で埋まっていく。
「土壌は相当水を含んでいるはずだ。早くやんでくれ」
広島市は、死者が77人に上った14年8月の土砂災害で避難勧告の遅れを批判され、避難所開設を待たずに発令できるよう、地域防災計画を改正した。
今回の豪雨では市内で23人が犠牲になり、大半が勧告を出した地域にいた。
貞森課長は、「我々の危機感は強かった。まだ住民への伝え方が足りないのか……」と悩む。
小田川が氾濫し51人が死亡した岡山県倉敷市真備町地区。
諏訪さん(男性、71歳)は、6日の気象庁会見をNHKで見たが、ピンとこなかった。
午後9時ごろ、自宅前の水路があふれ、間もなく自宅が浸水。
自衛隊のボートで2階から救助された。
「気象庁や市は情報発信してくれたのに、鈍感だった」と反省する。
甚大な被害を受けて、情報発信の見直しが迫られるのは必至だ。
菅義偉官房長官は12日の会見で、
「ここ数年、従来と桁外れの豪雨被害が繰り返し発生している。防災気象情報と避難情報の連携を含めてしっかり検証する必要がある」
と述べた。
静岡大防災総合センター長の岩田孝仁教授は、
「特別警報など、新たな情報が創設され、避難勧告が低く見られた結果、住民が逃げない一因になっているのでは。
今回は、気象庁の危機感が十分に伝わらなかった。
市町村長が直接呼びかけたり、首相や官房長官が会見したりすることも検討すべきだ」
と指摘する。
出典
『検証 西日本豪雨/1 特別警報、伝わらぬ切迫感 市民「ピンとこず」避難遅れ』
https://mainichi.jp/articles/20180731/ddm/041/040/038000c
(ブログ者コメント)
先日紹介した台風21号時の高波被害も、これと同じことではないかと感じた。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。