2022年7月23日16時52分にNHK岩手から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
23日午前9時前、金ケ崎町西根にある農業用のため池「吉田沢堤」で草刈りをしていた、農業・宮舘さん(男性、57歳)が、草刈り機ごとため池に転落しました。
近くで作業していた会社員の齊藤さん(男性、62歳)が、助けようと池に飛び込みましたが、2人とも溺れました。
2人のうち、齊藤さんは転落から15分後に、最初に落ちた宮舘さんは1時間半後に救助されましたが、いずれも搬送された病院で死亡が確認されました。
2人が落ちた地点は、水深が2メートル30センチほどあり、泥がたまり、水草が茂っていたということです。
2人は、ため池周辺の水路を管理するグループのメンバーで、事故が起きる15分ほど前から、同じグループのメンバー14人で草刈り作業をしていたということです。
2人が作業していた場所は、コンクリートで舗装されたのり面で、警察は足場の悪いところで作業していて、誤って転落したものとみて、当時の状況について調べています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/20220723/6040014950.html
7月23日18時30分にYAHOOニュース(岩手めんこいテレビ)からは、現場は草が濡れていて滑りやすくなっていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
23日午前9時ごろ、金ケ崎町西根のため池で草刈りをしていた近くに住む宮舘さん(57)と齊藤さん(62)が池に転落したと、一緒に作業をしていた人から通報がありました。
2人は救急隊などに救出されましたが、心肺停止の状態で病院に運ばれ、死亡が確認されました。
警察によりますと、転落した宮舘さんを助けようとして齊藤さんも池に入りましたが、溺れたということです。
現場は草が濡れてすべりやすくなっていて、警察では事故の詳しい原因を調べています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ff9d9c3ead67d8c71d481b58a5551956ee3d44a4
7月23日18時48分にYAHOOニュース(河北新報)からは、雨が続iいて池は増水していたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
・・・
池の周囲には柵があり、2人は内側ののり面で作業していた。
同署は、農業男性が足を滑らせたとみている。
2人は同日午前8時半ごろから、ほかの住民12人と除草作業をしていた。
近所の自営業50代女性は、「雨が続き、池は増水していた。農業用水は地元の人たちが手入れをしてくれていた。こんな事故が起きるとは思わず、残念だ」と話した。
現場はJR北上駅から南西に約10キロ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/24855a8baf2ff577ba0f4f1f15827dd8befd2f0f
7月25日6時51分にYAHOOニュース(斎藤水難学会会長の寄稿文?)からは、ため池で2人同時に亡くなる事故は近年あまり聞かない、複数人で作業する時はバディシステムなどの対策をとったほうがよいなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
7月と8月は、ため池草刈り時の溺水事故が頻発します。
なぜでしょうか。
どうしたら助かるでしょうか。
草刈りを含めた農作業中のため池転落・溺水事故のうち、2人が同時に亡くなる事故は近年あまり聞きません。
重大事故だと判断します。
この日は多くの人数で草刈りをしていたようです。
それであればなおさら、「これだけでも知っていたら、誰も命を落とさずに済む」という簡単な救助法があります。
【農作業中のため池溺水事故の実態】
筆者は最近、全国各地のため池サポートセンター主催の研修会に講師でお邪魔する機会が増えました。
その際の参考資料として、ため池での作業中の事故例を集めています。
新聞等に掲載された農作業中のため池溺水事故は、この10年間で少なくとも15件。
15人が命を落としています。
内訳は、発生時期では7月3件、8月3件を筆頭に、農繁期に事故が集中します。
作業内容では、草刈り6件、水量調整7件でした。
年齢は70歳代8人、60歳代5人で、犠牲者には高齢者が多く見られます。
今回の事故と同様に、草刈り機を抱えながら池に転落した事故としては、2016年7月に鳥取県で農業の男性(68)が命を落とした例があげられます。
【草刈り中に考えられる転落の要因】
図1をご覧ください。
谷池にしても皿池にしても、転落の発生しやすい最も危険な場所は、水を留めるために作られた堤体のうち、遮水を担う斜面(のり面)です。
通常、表面には、ゴム張りやコンクリート張りをしてあります。
遮水斜面全体がゴムやコンクリートで覆われていれば草刈りの必要はほぼないので、ここに草刈り機を入れることもないでしょう。
ところが、図1に示すように斜面の水面に近いところでゴムシートなどが途切れていると、そこから斜面に従い堤体の天端に至るまで草が茂り、草刈りをしなくてはならなくなります。
図のような斜面であれば、草刈り中はゴムシートの表面が作業者の視野から外れます。
足元のどこまでがゴムシートなのかよくわかりません。
そしていよいよゴムシート周辺の草刈りに入ります。
刈られた草がゴムシートの上に横倒し状態で積まれると、ゴムシートの存在にますます気づきにくくなります。
草刈りが一段落すれば、ゴムシートの上の刈られた草を集めようとします。
その時、草に隠れたゴムシートの上にのってしまい、滑落してため池に吸い込まれます。
ゴムは表面が乾いているとなかなか滑りませんが、濡れたらいっきに滑りやすくなります。
刈った草の水分が漏れ出してゴムシートの表面で潤滑剤になったと言えます。
動画Iの後半では、濡れたゴムシート表面で筆者が滑り、落ちてからしばらく茫然とする様子がわかります。
これが足のつかない池だったら、茫然としている間に溺れることになります。
※動画Ⅰ https://youtu.be/XHqysx1tOhE
【大切な作業者の命を守るために】
基本は次の3つです。
1.救命胴衣の着装
2.複数人数での活動
3.携帯電話の常時携帯
とはいっても、現場では「ないものねだり」の様相もあります。
例えば、夏場の暑い時期の救命胴衣の着装は、身体を動かしながらなので、体温上昇を招きます。
筆者でも、作業着の上に救命胴衣を着装した姿では、このところ続いている炎天下のテレビのロケ現場で20分持ちません。
現実的に無理があります。
ならば、救命胴衣を着装せずに命を守ることを考えましょう。
その場合には複数人数で、特に2人一組のバディーシステムで、お互いが安全確認をしながら活動します。
そして、作業箇所の直近には必ずしっかりしたロープを準備します。
当然、天端から池の少なくとも5 m先まで届くくらいの長さのロープでなければなりません。
種類としては、フローティングロープ(主材:ポリプロピレン)がベストです。
どう使うか?
滑落した人はすぐに力を抜いて背浮きの状態になってください。
靴や服は脱ぎません。
そうすれば、自然と背浮きの状態になります。
この状態なら、茫然としていても呼吸はできます。
陸の人は「ういてまて」と声をかけてロープの先を投げて渡します。
池に浮いている人がロープを両手でつかんだら、ロ-プで引っ張りながら静かに岸に運びます。
足が届くようになったら、池の中にいる人に立つように指示します。
そこからは、動画IIに示すように、ロープをつかみながら池の中の人は池から脱出します。
※動画Ⅱ https://youtu.be/GxilHh3g2Is
昨今の農業の担い手不足・人手不足で、どうしても1人で草刈り作業をしなければならない場合は、携帯電話の常時携帯と救助ネットの敷設を心がけましょう。
最近の携帯電話は、少々水に濡れても使えます。
背浮きしながら、あるいはため池の立てる場所から119番通報して、消防の救助隊を呼びます。
GPS機能がONになっていれば、「助けて」の一言で消防119番の受付台ではおおよその場所がわかり、救助に来てくれます。
救助用ネットは、遮水斜面の全面に張ります。
どこから滑落したとしても、元の場所に這い上がることができますし、そもそも、ネットのおかげで滑落しにくくなります。
耐候性のよい樹脂ネットを選ぶようにします。
【さいごに】
総務省による「ため池の安全管理に関する行政評価・監視の結果」によれば、「安全管理に関する農林水産省の通知等が、施設管理者に周知されていない」とされています。
筆者・水難学会もYahoo!ニュースを活用しながら安全啓蒙に努めていますが、いまだに全国の施設管理者に必ずしも情報が届いていないと実感しています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohidetoshi/20220725-00307008
7月26日20時26分にYAHOOニュース(岩手めんこいテレビ)からは、傾斜25°以上の濡れた斜面は滑って上がれないなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
ため池での事故について専門家は、「滑り落ちると、ぬれた斜面を上がるのは非常に困難」と指摘しています。
そのうえで、「万が一、転落した場合は、仰向けに浮いて救助を待ってほしい」と呼びかけます。
水難学会 斎藤秀俊会長 :
「特に、農業用のため池はすり鉢状になっている。一度水の中に足を入れたり斜面が滑りやすかったりすると、ため池に滑り落ちるように落下してしまう」
水難事故の対策を研究する水難学会の斎藤秀俊会長は、草やコンクリートなどの種類に関わらず、ぬれた斜面を上がるのは困難と話します。
斎藤会長:
「角度が緩ければ、はい上がれる。
ところが、分度器の角度で25度を超えると、それよりも角度が急になると、滑って水の中から上がれなくなる。
長靴、普通の靴、サンダル、靴の種類を選ばず、ぬれた斜面だと簡単に滑って落ちてしまう」
照井記者:
「男性が立っていたとみられる法面は急なうえ、藻が張っていて滑りやすように見えます」
実際に、今回の事故の現場でも、斜面の傾斜は29度ありました。
斎藤会長は、作業する際はなるべく複数人で作業することや、ロープやネットなど転落時につかめるものを準備しておいてほしいと述べます。
斎藤会長:
「大人数で作業をするなら2人1組で、必ずそばにロープを置いておく。
浮いていたり足を踏ん張って立てていたりしたときに渡せるくらいの長さのロープを準備しておく。
もし、どうしても一人で作業をしなければならないときは、携帯電話は常にポケットの中に入れておく。
転落してから自分で上がるためのネット・樹脂状の網を斜面に垂らしておく」
そのうえで、万が一転落した場合には、呼吸を確保するため、浮いたまま救助を待ってほしいと話します。
斎藤会長:
「すぐに深いところに持って行かれるので、落ちたら『背浮き』の体勢になってほしい。
背中を下にして水面の上に浮いて、ベッドの上に仰向けに寝る感じ。
泳いでも、はい上がれる場所はないので、浮いて救助を待つのが得策」
そして、注意力が下がると事故につながりやすいとして、こう呼びかけています。
斎藤会長:
「暑くて仕方ないというときは注意力が散漫になる。
日中の気温が上がる時間は避け、朝夕など涼しい時間に草刈り作業を行うような注意が必要」
※一部映像は一般社団法人水難学会のYouTubeより
https://news.yahoo.co.jp/articles/8122fc2ea9acedf61196a5b41b8a3837ec5af305
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。