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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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20234221920分にYAHOOニュース(斎藤水難学会会長の寄稿文)から、下記趣旨の記事が写真やグラフなど付きでネット配信されていた。

知床観光船の事故以来、様々な議論がありました。

事故防止のためのチェック強化は必要でしょうが、それでも船というものは沈むものです。

だからこそ、冷水でも浮いて救助を待つことのできる具体策が強く求められます。

【ういてまて】

ういてまては"uitemate"として世界に広がっているコンセプトです。

水の中に投げ出されたとき、生還するために浮いて救助を待つ、あるいは生還のチャンスを待つという、極々当たり前の考え方です。

浮き方として、靴や衣服内の空気の浮力を使ったり、救命胴衣の浮力を使ったり、ペットボトルの浮力を使ったり、浮遊物の上に這い上がったり、ういてまての方法は様々です。

でも、こんなこと昔からわかっていたのですが、浮いていたとしても救助が来るまで命をつなぐことができないことが時々あります。

冷水に沈んだ知床観光船の事故では、まさにそれが現実として突きつけられました。

実際に人は冷たい水に落ちたら、どうしようもありません。

【冷たい海の現実】

筆者は水難学会副会長の安倍淳氏と共に、知床観光船の事故から1年が経とうとしている3月下旬に知床半島のウトロの海岸に立ち、20名の犠牲者に線香をあげ、まだ見つからない6名の人々に思いを馳せました。

少しでも苦しみが共有できるように、気温4.1度の中、未だ春には遠いオホーツク海の水に手を入れてみました。

動画1では、水温2.1度の海水に手を入れている様子を写しています。
果たして何秒間手を海水につけていることができるでしょうか。

「動画」
1 3
月下旬のオホーツク海。まだ流氷の一部が残る。
冷たすぎて言葉がなかなか出ないし、海水に連続でずっと手をつけていられない(筆者撮影)

まだ流氷のかけらが漂うオホーツク海。
宿泊した海辺のホテルで従業員に聞いてみたら、「例年3月いっぱいは流氷が見られる」とのこと。

「去年の観光船の事故のあった日は、流氷が見えなくなって1ヶ月も経ってなかった」そうです。

氷が融けて間もなかったのですから、当時の知床半島沿岸の水温が3度強というのも納得できます。

【冷水の中で人はどうなるのか】

水難学会では過去に、水温10度の中での背浮きの実証試験を行っています。
防寒着を着て、その上に厚手のカッパを着用し、15分間ほど背浮きで浮きました。

開始直後にカッパの隙間から冷水が浸入し、それが内側の衣服内に滲みてきます。
そうやって背中を中心に冷たい思いをするのですが、衣服内の冷水は体温で温められて、そのうち水温が20度近くに達します。
20
度の水温であれば極端な冷たさは感じなくなりますし、少しの間は生命を維持することができるのです。

ところが、この実験での10度の水温と、知床半島の水温3度強では、モノが全然違います。

たった7度の差ですが、3度の冷水に奪われる熱量は直ちに生命に影響を与えると言っても過言ではありません。

さらに、波にもまれると、せっかく体温で温めた衣服内の水はどんどん逃げていきます。

どうやっても、身体が冷えていきます。

人が安静時に皮膚から外に放出する熱量は、文献によると、ごくごく平均的に1時間あたり54 kcal(キロカロリー)です。

ここで、人が冷たい水に浸かると、当然、水に熱が奪われていきます。

もし1時間あたり54 kcalの熱量が奪われるなら、身体の表面での熱の出入りはプラスマイナスゼロで、身体が冷えも温めもされません。

この水温というのが決まっていて、だいたい33度です。
これを中性水温と言います。

33度より温かければ身体は温まり、冷たければ冷えていきます。
この感覚は、ぬるま湯につかったことがあれば、なんとなくわかりますね。

1をご覧ください。
水温3度の冷水に全身が浸かったらどうなるのか、簡単なシミュレーションを図に示してみました。

人間の代わりに、中に熱源があって54 kcalの熱を放出し続ける60リットルの湯たんぽをモデルとして、それを冷水に入れた時、湯たんぽから奪われる熱量を計算しています。

熱が奪われれば、湯たんぽの中の熱源が熱を供給するとしても、湯たんぽの中の水温は下がります。

これが人だと、例えば深部体温で35度を下回れば軽い低体温症になりますし、32度を下回れば中等症、28度を下まわれば重症となる傾向にあるようです。

図にある軽症エリア、中等症エリア、重症エリアは、そうやって湯たんぽの水温を人の体温に見立てて簡易的に表示しました。

あくまでも冷水の危険性の目安程度だと理解していただければと思います。

あくまでもシミュレーションですが、全身が3度の冷水中にある時には、3分半ほど経つと湯たんぽの中の水温は、人間で言うところの「重症エリア」に入ってしまいます。

ところが同じ3度でも、全身が空気中にあれば、まだ奪われる熱量は小さいのです。

要するに、空気中にいた方がまだ命がもつということで、この理由は工学的に言えば、同じ温度の水に比べて空気の熱伝達率がとても低いことから来ています。

ということは、冷水に身体が浸からないようにすれば、生命維持に対してその効果は絶大であるということがわかります。

【身体を空気中に保つのがドライスーツ】

・・・

【実際に生命維持時間を延ばせるのか?】

・・・

【どう活用したらよいか】

・・・

※本稿で使用したデータは、日本財団令和4年度助成事業「わが国唯一の水難事故調査 子供の水面転落事故を中心に」の実施により得られています。

https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohidetoshi/20230422-00346447 

 

(ブログ者コメント)

〇この記事は今年4月6日に紹介した下記情報の詳細版という感じだった。

2023329日報道 水難学会が冷たい水から身を守るドライスーツの効果を実験した結果、ダウンジャケットの上に着ると体温が30℃程度に保たれたなど、効果があることが判明した

https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/13135/

〇記事中、気になったのは、安静時の放熱量が平均で54kcal/hという点だ。
これは1日あたり1296kcalで、一般的に言われている基礎代謝量とほぼ同じ値。
人体維持の仕組みの一端がわかったような気がした。

 

 

 

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化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。

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