2020年1月8日5時0分に朝日新聞から下記趣旨の記事が、年度別最大値の棒グラフ付きでネット配信されていた。
東京・多摩地区にある一部の浄水所で、水道水から有機フッ素化合物が高濃度で検出されたとして、東京都が昨年6月、水源の井戸からのくみ上げを止めたことがわかった。
水源を川の水などに切り替えて濃度を下げたという。
専門家は、「(検出された値は)すぐ健康に影響が出るものではないが、体内に長く残る」として、実態把握の必要性を指摘している。
都への情報開示請求で公開された文書をもとに取材して判明した。
検出されたのはペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS(ピーフォス))とペルフルオロオクタン酸(PFOA(ピーフォア))。
米国は2016年、飲み水の水質管理の目安となる勧告値を両物質合計で1リットルあたり70ナノグラム(ナノは10億分の1)に設定。
1日2リットルを70年飲んでも健康に影響がない値とされる。
この勧告値にあたる目標値は国によってばらつきがある。
国内に目標値はなく、厚生労働省が今年春をめどに設ける方向で検討している。
都は、23区を除いた多摩地区(30市町村、一部除く)などで地下水を飲用に使っている。
同地区にある浄水所は停止中を含め71カ所で、都は昨年5月以降、過去に濃度が比較的高かった6浄水所で臨時調査を実施。
国分寺市にある東恋ケ窪浄水所で、両物質合計で1リットルあたり101ナノグラムを検出した。
都は、米勧告値の半分(35ナノグラム)を超えないよう管理する方針を独自に決め、府中市にある府中武蔵台浄水所(昨年の臨時調査で60ナノグラム)と、国立市にある国立中浄水所(一昨年の調査で38ナノグラム)を加えた3浄水所の水源井戸の一部からくみ上げを止めた。
3浄水所から配水されているのは数万件。
都水道局の担当者は、「都民の安心を考え、より慎重に対応している」と話す。
都は05年ごろから多摩地区で両物質の濃度を調査。
記録が残る11~18年度、東恋ケ窪、府中武蔵台の両浄水所では濃度に応じて年に1~12回計測し、各年度の最大値は79~150ナノグラムだった。
都は、過去に使われたものが分解されず地下水に残っているとみている。
発生源について、担当者は「わからない」と話す。
有害物質を規制する国連の会議に昨年、日本から参加した高月峰夫・早稲田大招聘(しょうへい)研究員は、「沖縄を除き、国内でほぼ検出されなくなっていただけに、東京の一部の飲み水で高濃度だったとは驚きだ。都のデータの範囲ではすぐ健康に影響が出る値ではない。ただ、過去に各地の工場や空港で使われており、地下水を飲用に使う自治体はしっかり調査したほうがいい」と話す。
水道統計では、地下水を飲用に使う上水道の事業は全国で約1千ある。
厚生労働省によると、両物質については、調査や報告が自治体に義務づけられておらず、同省が検出状況を把握しているのは全国の浄水施設(約6400)の数%にとどまる。
両物質の健康への影響について、世界保健機関(WHO)は評価を定めていない。
血液中の総コレステロール値を増やすなどの研究報告がある。
PFOAでは米国で数千ナノグラムなど極めて高い濃度の水を飲んだ人たちの健康調査から、精巣がんや腎臓がん、潰瘍(かいよう)性大腸炎など6疾病のリスクを高める可能性があると指摘された。
両物質は1950年代ごろから日用品の防水加工や工業製品の原料、洗浄剤などに使われ、大規模火災用の泡消火剤にも含まれた。
日本でもかつて河川などで高い濃度が検出されることがあった。
【分解されない「永遠の化学物質」】
有機フッ素化合物のPFOS・PFOAは、人間がつくった炭素とフッ素の化合物。
水や油をはじき、熱にも強い。
自然界でほぼ分解されないため、「フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)」と呼ばれる。
1990年代ごろから、人や野生生物への残留性や毒性が分かってきた。
北極圏のアザラシからも見つかり、地球規模で広がっていることもうかがえた。
2000年代からメーカーも製造を自粛していて、今は、どちらも国際条約で製造や使用が規制されている。
ただ、いったん環境中に出たものは回収するのが難しい。
海外では、これらの物質を作ったり使ったりしていた化学工場や空港、基地などの周辺で、河川や地下水が汚染されていたことが相次いで分かっている。
健康への影響では、一度、体に入ると排出されずに何年も残ることが問題視されている。
たくさん取り込むと総コレステロール値が上がったり、母親の血中濃度が高いと赤ちゃんの出生時体重が少し減ったりすることなどが報告されている。
飲み水の管理の目安となる目標値は、国によって重視するリスクや計算方法が違い、ばらつきがある。
世界保健機関(WHO)は指針を示していない。
日本の厚労省は、今年春をめどに設定しようと検討している。
飲み水で検出されても、その水をどのくらい飲んでいるかは人によって違う。
また、体に取り込む経路は、食品や空気中のチリなどもあると言われている。
本来は、体内にどれくらい蓄積されているかを知ることが大切だが、化学物質の血中濃度は病院などで日常的に調べてもらえるものではない。
汚染が疑われる地域では国や自治体などが血液検査をすべきだ、と指摘する専門家もいる。
https://www.asahi.com/articles/ASMDT4S65MDTUUPI006.html
(ブログ者コメント)
〇掲載棒グラフによると、3浄水場のうち2浄水場で、検出された最大値は、2011年度から毎年度、管理基準値を超えている。
〇PFOS、PFOAは、沖縄県や福生市の米軍基地近くでも検出されている。(両事例とも本ブログで紹介スミ)
(2020年10月31日 修正1 ;追記)
2020年10月29日5時50分に東京新聞からは、住民の血液から全国平均を上回る濃度のPFOSが検出された、横田基地が汚染源の可能性もあるという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。(新情報に基づき、タイトルも修正した)
水道水の汚染が指摘された東京都府中市と国分寺市の住民を対象にNPO法人が実施した血液検査で、発がん性や発育への影響が懸念される有害化学物質の血中濃度の平均値が、府中市で全国平均の2倍超、国分寺市で1・5倍だったことが分かった。
両市の浄水所では2019年まで指針値を上回る有害化学物質が検出されていた。
NPOは国と都に幅広く住民の健康調査を実施するよう提言する方針だ。
この物質は有機フッ素化合物「PFOS(ピーフォス)」。
NPO法人「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」(東京都江東区)が8月、19年の都の調査でPFOSなどの有機フッ素化合物が指針値を超えた府中市府中武蔵台浄水所と国分寺市東恋ケ窪浄水所の配水区域内に5年以上居住する住民22人の血液を調べた。
調査では、血液成分の約半分を占める血漿中の濃度を測定した。
府中市の住民11人のPFOS平均値は血漿1ミリリットル当たり18ナノグラムで、全国平均8・2ナノグラムの2倍を超えた。
国分寺市の住民11人の平均値は12ナノグラムだった。
厚生労働省は今年4月、水道水の指針値としてPFOSと、別の有機フッ素化合物「PFOA(ピーフォア)」を合わせ1リットル当たり50ナノグラムまでと定めた。
都の19年の調査で、府中武蔵台浄水所は60ナノグラム、東恋ケ窪浄水所は101ナノグラムと指針値を上回った。
都は同年6月に水源の一部の井戸からの取水を停止。
都水道局によると、現在は指針値を下回っているという。
◆水道水の汚染源は米軍基地の可能性も
多摩地区の水道水の汚染源としては、米軍横田基地(福生市など)の可能性が取りざたされている。
18年には英国人ジャーナリストが米軍の内部資料に基づき、横田基地で10~17年にPFOSを含む泡消火剤3000リットル以上が土壌に漏出したと報じている。
PFOSとPFOAは1950年代から消火剤やフライパンのフッ素樹脂加工に使用され、現在はストックホルム条約で製造、販売、使用が禁止されている。
環境中で分解されにくく、地下水などを通じて体内に蓄積されやすい。
NPO理事で熊本学園大の中地重晴教授(環境化学)は調査結果に関し、「今すぐに健康に影響が出るレベルではない」と指摘。
その上で、「全国平均に比べると明らかに高い。原因は米軍基地か工場か分からない。行政が究明しないといけない」と語った。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/64942
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。