2020年1月6日5時0分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
米軍横田基地(東京都福生市など)周辺で有害物質の漏出の有無を調べるため、都が監視地点に定めている井戸で昨年1月、高濃度の有機フッ素化合物が検出されていたことがわかった。
うち1カ所の濃度は、米国での飲み水についての勧告値の19倍の値だった。
都によると、検出時、井戸の所有者は飲用に使っていなかったという。
都は、基地内の地下水の濃度などを明らかにするよう、防衛省を通じて米軍に照会したが、回答はないという。
朝日新聞が都に情報開示請求し、公開された文書と取材で判明した。
検出されたのは、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS(ピーフォス))とペルフルオロオクタン酸(PFOA(ピーフォア))。
米環境保護局は、飲み水の水質管理の目安となる勧告値を、両物質の合計で1リットルあたり70ナノグラム(ナノは10億分の1)と定めている。
1日2リットルを70年飲んでも健康に影響がない値とされる。
国内では厚生労働省が、米勧告値にあたる目標値を今年春をめどに設ける方向で検討している。
都福祉保健局は昨年1月、横田基地に近い4カ所の井戸で両物質の濃度を調査。
このうち、立川市にある井戸で両物質合わせて1340ナノグラム、武蔵村山市にある井戸で同143ナノグラムを検出した。
同基地では1993年、大規模なジェット燃料漏れが発覚。
直後から都は、基地近くで都や個人などが所有する井戸18カ所をモニタリング地点とし、水質を調べてきた。
PFOSとPFOAは対象ではないが、これらを含む大規模火災用の泡消火剤が過去に基地で漏出した、と英国人ジャーナリストが2018年12月に報道したことを受け、同局が調べた。
両物質が検出された二つの井戸は、国際的な規制を受けて国内でPFOS規制が始まった10年度に都が濃度を調べた際、それぞれ両物質の合計で1130ナノグラムと、同340ナノグラムだったことも明らかになった。
都によると、このとき飲まれていたかはわからないという。
都基地対策部の担当者は、「地下水脈は複雑なため、横田基地が発生源とは判断できない」と話す。
一方で同部は、基地内の地下水濃度や泡消火剤の使用状況などを明らかにするよう、防衛省北関東防衛局を通じて米軍に求めた。
都や同局によると、米軍からの回答は届いていないという。
防衛省施設管理課返還対策室は取材に、PFOSを含む泡消火剤の在日米軍基地での使用について、「16年以降は訓練で使用していないという情報を在日米軍から得ている」とした上で、「それ以前は使用していたと理解している」と答えた。
横田基地広報部は取材に、「都の調査は横田基地の担当者がいない状況で行われたため、結果を検証することはできない」と答えた。
横田基地には、在日米軍司令部や第5空軍司令部が置かれる。
福生市、羽村市、昭島市、武蔵村山市、立川市、瑞穂町の5市1町にまたがり、面積は東京ドーム約150個分。
【モニタリング地点以外でも検出】
今回、東京都が有害物質のモニタリング地点に定めている横田基地近くの井戸で高濃度の有機フッ素化合物が検出されていたことが判明したが、過去には、今回判明した基地近くの井戸以外でも両物質が検出されていたことも都への取材からわかった。
2010年度から4年間、都環境科学研究所が、23区を含む都内の地下水を研究目的で調査。
基地に近い立川市にある事業用の井戸で10年度、両物質の合計272ナノグラムを検出した。
継続調査では、569ナノグラム(15年度)~284ナノグラム(18年度)で推移していた。
米国防総省は18年、両物質の排出が疑われるなどする軍関係施設が401カ所あった、との報告書を公表した。
日本の基地は含まれていない。
ただ、沖縄県による13~18年度の調査では、米軍嘉手納基地(嘉手納町など)やその周辺で各年度に検出された濃度の最大値は、両物質の合計で498~1379ナノグラムだった。
同基地周辺の川などの水は飲用に使われている。
県は16年度、米国の飲み水の勧告値(PFOSとPFOAの合計で1リットルあたり70ナノグラム)を超えないようにするため、両物質を除去する浄水場の活性炭を緊急で取りかえた。
この対策に約1億7千万円を支出したという。
米軍はこれまで、沖縄県や沖縄防衛局による基地内での立ち入り調査を認めていない。
【英国人ジャーナリストの報道】
東京都が昨年、モニタリング井戸の調査をするきっかけになったのは、日本在住の英国人ジャーナリスト、ジョン・ミッチェル氏(45)の報道だった。
米情報自由法に基づいて開示請求し、米軍が公開した文書を根拠にしている。
ミッチェル氏が入手した「漏出報告書」によると、2012年、横田基地で推定800ガロン(約3千リットル)の泡消火剤が漏出した。
1年以上にわたって貯蔵タンクの床の隙間などから漏れていた可能性に言及。
有機フッ素化合物について「新たに出現した環境汚染物質」と記していた。
また、沖縄の嘉手納基地では、14年6月に基地内の池から約9万ナノグラムのPFOSが検出された記録などがある。
07年の「有害物質漏出事故報告書」には、普天間飛行場(宜野湾市)では約200ガロン(約750リットル)が漏出したと記されている。
沖縄以外では、12~15年に厚木基地(神奈川県綾瀬市など)や三沢基地(青森県三沢市)、岩国基地(山口県岩国市)でも、それぞれ漏出の記録がある。
ミッチェル氏は、「米軍は漏出事故だけでなく、消火訓練での使用履歴などの情報も開示すべきだ。横田を含め、沖縄以外の基地や周辺でも実態調査が必要だろう」と話す。
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〈PFOSとPFOA〉
両物質に代表される有機フッ素化合物は自然界でほぼ分解されず、人体や環境中に長く残るため、「フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)」と呼ばれる。
残留性のある有害物質を規制する国連のストックホルム条約会議で製造・使用が原則禁止されている。
日本でもPFOSは2010年に法律で製造・使用が原則禁止され、PFOAは今春規制される見通し。
1950年代ごろから使われ、自動車の部品や半導体などの製造過程で使われたほか、大規模火災用の泡消火剤などに含まれた。
経済産業省によると、規制前に作られた泡消火剤の使用は認められている。
健康影響では、血液中の総コレステロール値を増やすほか、PFOAでは米ウェストバージニア州などで1リットルあたり数千ナノグラムなど極めて高い濃度の水を飲んでいた住民について、一部のがんなどと関連する可能性が科学者グループから指摘された。
https://www.asahi.com/articles/ASMDS4Q03MDSUUPI001.html
(ブログ者コメント)
沖縄での検出事例は、過去に本ブログでも紹介スミ。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。