本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。 それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。 本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。 一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。 (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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以下に、17日朝までに報道された主だった記事の骨子を紹介する。
「事故発生」
2011年11月13日22時08分 読売新聞 (写真付)
13日午後3時25分頃、周南市の総合化学メーカー「東ソー」の南陽事業所から「爆発音があった」と110番があった。
警察などによると、同事業所内のプラント「第2塩ビモノマー」で2度爆発が起き、火災が発生し、従業員1人と連絡が取れなくなっているという。
消火活動にあたった消防団員1人が目に痛みを訴えて病院へ搬送された。
午後10時現在も消火活動が続いている。
同事業所によると、連絡が取れなくなっているのは、塩ビモノマー課第2係長(52)。
13日朝、プラントに不具合が見つかり、従業員10人が停止させて、パイプに残っていた塩ビモノマーなどをタンクに移す作業をしていた。
9人とは連絡が取れ、けがの報告はないという。
爆風で事務所の窓ガラスが割れるなどの被害も出た。
同事業所は「爆発の影響でプラントから、のどや目などに刺激を与える塩化水素が漏れている恐れがある」として、周南、下松市全域で、窓を閉めるよう広報車で注意を呼びかけている。
同事業所がプラント近くの定置測定器で塩化水素ガス濃度を調べたところ、許容濃度5ppmの10分の1以下で、事業所の敷地境界では検知されなかったという。
事業所は住民への注意喚起について「念のための措置」としている。
出典URL■■■
「鎮火」
2011年11月14日19時6分 朝日新聞(時事通信)
火災は、14日午後3時半に鎮火した。発生から鎮火まで約24時間かかった。
安全を確認し次第、県警は原因究明のため、炎上したプラントの現場検証を開始する方針。
事業所によると、炎上したプラントは、塩化ビニール樹脂の原料を製造する施設で3階建て。 最も損傷が激しかったのは、2階に設置されていた塩ビ原料を一時的にプールするタンク周辺だった。
同社は、このタンクに亀裂や配管の異常が生じ、静電気などで着火した可能性が高いとみている。
出典URL■■■
「市に連絡せず独断で住民に避難を呼びかけたことを東ソーが謝罪」
2011年11月15日 読売新聞
この爆発事故で、市と事業所の災害時の連携不足が浮き彫りになった。
事業所は独断で住民に屋内退避を呼びかけ、市が呼びかけたのは、事故から4時間以上後。 情報が共有されていなかったためで、市と事業所には混乱した市民から苦情や問い合わせが相次いだ。
「市に相談せず、先走った形で広報して混乱させてしまった」。14日午後に記者会見した副所長は、独自に周南、下松市全域を対象に屋内退避の呼びかけを行ったことについて謝罪した。
事業所などによると、爆発が起きた午後3時25分から間もなく、事業所は工場外周の検知器で塩化水素を検知しなかったことから、住民に影響はないと判断。 周南市も午後4時前に事業所で塩化水素の濃度を確認し、市側も影響はないとみていた。
ところが、事業所に「目がぴりぴりする」などと健康被害を訴える電話や、情報が遅いなどとする苦情が寄せられたため、事業所は市に報告せずに午後5時前から屋内退避の呼びかけを始めた。
事業所は午後6時過ぎに行った記者会見で、塩化水素漏出の事実を初めて公表。会見資料でそれを知った市が広報車を出したり、ホームページに掲載したりして屋内退避を呼びかけ始めたのは午後8時過ぎ。事故から4時間以上たっていた。
14日までに、市と事業所には事故の状況や影響についての問い合わせや苦情が、計200件以上あった。
県の石油コンビナート等防災計画では、災害発生時の通報などは規定しているが、広報態勢など情報伝達の在り方は定めていない。
県防災危機管理課は「屋内退避の呼びかけは、共有すべき情報だった」と指摘。市の防災建設部長は「情報の収集や提供の方法を見直さなければならない。もっと大きな事故が起きれば、市民の安全は守れない」と対応の不備を認め、市長も「今回の事例を詳しく分析し、最善の方法を探りたい」と述べた。
事業所に隣接する自治会の会長(65)は「工業地帯は危険と隣り合わせなのに、今回のような対応では、住民が望む情報提供は期待できない」と話した。
知事は14日の定例記者会見で、「塩化水素ガスが住宅に流れ込めば大変なことになった」と指摘。「事故原因を究明し、再発防止に努めていただきたい」と述べた。
出典URL■■■
一方、若干ニュアンスの違った記事が、15日22時52分に毎日新聞からネット配信されていた。
事故に伴い有毒ガスが漏出していたことについて、東ソーが周南市に連絡していなかったことが分かった。
市が独自に情報を入手し、住民に注意を呼びかけたのは事故発生から4時間半が経過した後だった。
同社の社長は15日、市長を訪ね、謝罪した。
東ソーによると、事故発生から約2時間半後の13日午後6時ごろ、記者会見を開き、有毒な塩化水素ガスが漏れ出した恐れがあるため、同市と下松市の全域に家の窓を閉め外出を控えるよう要請すると発表した。
しかし、両市にはガスの発生や退避要請について連絡せず、周南市の場合は同午後6時前に事業所に出向いた職員が会見資料で状況を把握。市が広報車で市民に注意を呼びかけたのは午後8時過ぎ、防災メールで登録市民に情報を発信したのは発生から約6時間たった午後9時20分になった。
下松市には午後8時過ぎに同社からファクスで連絡があったという。
社長は市長に「連絡が遅くなってしまったことを反省している」と頭を下げた。
同社と市の間では、事故時に通報するような協定などがなく、市長は「事故発生時の役割分担と体制を改めて見直したい」と述べた。
事故当時、同社には「目がチカチカする」など市民からの訴えが4件あった。 また、市長への謝罪に先立って同事業所で会見した社長は「近隣住民などにご迷惑とご心配をおかけし申し訳ない」と謝罪した。
約7割が焼失した第2塩ビモノマープラント(約2万5000m2)について「100億円単位」をかけて再建する意向を示した。
出典URL■■■
「塩ビ樹脂の供給に支障が生じる可能性」
2011年11月15日6時55分 msn産経ニュース
この事故で、塩ビモノマーが原料のプラスチック素材「塩化ビニール樹脂」の供給に支障が生じる可能性が出てきた。
都内で14日、会見した社長は「当面は影響が出る」とした上で、塩ビ樹脂は東日本大震災の復興需要が予想され、「安全を大前提に間に合わせたい」と説明した。
南陽事業所の塩ビモノマーの生産能力は年120万トンで国内全体の3割強。だが、火災で山口県などから停止命令を受けた1基は55万トンで約半分を占める。
東ソーは塩ビ樹脂で国内最大手の大洋塩ビにも出資し、「塩ビ関連で国内最大のメーカー」で、国内外の塩ビ樹脂生産拠点は原料調達で対応を迫られる。
出典URL■■■
「事故発生時のやや詳しい状況]
2011年11月16日 中国新聞 (工場レイアウト図付)
塩ビモノマーの重大事故は、企業の厳重な管理もあり、全国的にもほとんど例がない。
現場は大規模爆発で大きく損傷もしており、前例や証拠に乏しい中で捜査は今後どう進むのか。ポイントを整理した。
【事故現場】
爆発場所は3階建ての塩ビモノマー精製工程施設のうち、塩ビモノマーや塩化水素などが入るタンクがある2階部分とみられる。周囲が爆発で激しく損傷していることから東ソーも位置はほぼ特定している。
沸点マイナス13℃の塩ビモノマーは常温で気体となる、火災爆発の危険性が極めて高い物質。
東ソーも最も厳重な管理をしている場所の一つであり、簡単に空気中に漏れ出すとは考えにくい。何かに引火したとみられるが、現場検証で有力な物証が見つかるかどうかが大きな鍵になる。
【直前の状況】
東ソーによると、爆発場所から約100m離れたオキシ反応工程の制御弁補修のため、13日午前6時に稼働を停止。事故で死亡した同事業所塩ビモノマー課第二係長(52)たち10人でプラント内の原料を貯蔵タンクに移す「移液作業」を進めていた。
ところが、作業開始から9時間半後の同午後3時22分に爆発現場近くで塩化水素ガスが大気中に漏れているのを検知。同24分に火災報知機が作動し、それとほぼ同時刻ごろに大爆発が2回起きた。
事故直前に塩化水素ガスが周囲に漏れていたとすれば、塩ビモノマーのタンク内にも通常時より大量の塩化水素が流入していた可能性を否定できない。
その結果、タンク内で塩ビモノマーが過剰反応し、タンクの圧力が想定外に高まって何かの原因で外に漏れ、引火したとも考えられる。
【証言】
亡くなった係長は通常は従業員の管理を受け持つ、現場に出ない立場。その係長が現場に駆け付けて犠牲になった。 東ソー関係者の一人は「移液作業はめったにないこと。(係長が現場で犠牲になったのは)事故直前に相当深刻なトラブルがあったからではないか」とみる。
早朝から続いていた移液作業の過程でトラブルが起き、塩化水素ガス漏れにつながった可能性もあり、事故前後の関係者の証言も大きな手掛かりになる。
出典URL■■■
(ブログ者コメント)
コンビナート関係の大事故が久しぶりに起きてしまった。
ガス漏れを検知してほとんど時間をおかず爆発したとみられることから、大量の塩ビモノマーが一気に漏れた可能性がある。
運転停止操作中に、何がどうなったのだろう?
原因解明が待たれるところだ。
(2011年12月1日 修正1 ;追記)
2011年11月23日付で毎日新聞山口東版から、事故による水質汚染に関し、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
事故による有害物質の二塩化エタン流出問題で、県は22日、同事業所の周辺海域から、環境基本法の環境基準を上回る二塩化エタンを検出したと発表した。
ただちに健康への影響はないという。
県によると、21日に徳山湾の4カ所で海水を採取したところ、同基準(1ℓあたり0.004mg以下)を4カ所とも上回った。
同事業所の排水口に一番近い200mの海域で0.011mg、もっとも遠い3.5kmの海域でも0.01mgを検出した。
21日には排水口でも測定したが、水濁法の基準(1ℓあたり0.04mg以下)を下回る0.009mgだった。
県は「21日までに水濁法の基準を上回る量を排水した可能性が高い。新たに同法の基準を上回る排水が出る可能性は低いが、状況を見守りたい」とし、徳山湾での測定地点を9カ所増やして対応する。
また火災で塩ビモノマーが大量に燃えたため、ダイオキシン類についても調査を進めている。
二塩化エタンの環境基準は、基準の濃度を70年間飲んで100万人に1人に発がんの恐れがあるレベルとされる。
出典URL■■■
また、11月30日付で毎日新聞山口東版から、土壌と大気のダイオキシン調査に関し、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
事故を受け、県は29日、土壌と大気でダイオキシン類などの調査をすると発表した。
県によると、大気中に広がったダイオキシン類が地上に落ちるまで約2週間かかるため、30日から調査を実施する。
同事業所から2~6.5kmにある市内の公園6カ所で土壌を採取。
大気では、二塩化エタンやダイオキシン類などを12月1~14日に調査。
結果は同中旬~来年1月中旬に判明するという。
出典URL■■■
(2011年12月3日 修正2 ;追記)
2011年12月1日18時20分にNHK山口から、周辺海域の水質が基準を下回ったと、下記趣旨でネット配信されていた。
有毒物質の二塩化エタンを含む排水が海に流出した問題で、県はこれまで2回、周辺の海域で水質を調査し、このうち先月24日の調査では排水口から4.5km以内の13地点のうち3つの地点で国の環境基準を超える二塩化エタンが検出された。
これを受けて県は30日、前回の調査で国の基準を超えた3つの地点を含む5つの地点で水質を調査した。
結果、いずれの地点でも基準を超える二塩化エタンは検出されなかった。
火災のあとの県による水質調査で、基準を超える二塩化エタンが検出されなかったのは今回が初めて。
県では今回の調査結果について「工場から排出される二塩化エタンが減ったことや時間がたったことによって有毒物質が拡散したことが原因ではないか」と話していて、今月9日にもさらに地点を増やして水質調査をすることにしている。
(2012年1月29日 修正3 ;追記)
2012年1月25日7時54分にNHK山口から、この事故で防災計画が修正されることになった旨の記事がネット配信されていた。
この火災を受け、県や市などでつくる協議会は火災や爆発が発生した場合、関係機関が情報を共有できるよう事業所内に「現地連絡室」を設置することなどを盛り込んだ防災計画の見直し案をまとめた。
この火災では、有毒な塩化水素ガスが発生したとして、会社側が周南市と下松市の市民に、屋内待機を呼びかけた際、自治体への連絡が遅れ、混乱を招いた。
これを受けて、県や市、企業などでつくる協議会が防災計画の見直しを進めていたもので、24日見直し案がまとまった。
この中では、今後、コンビナートで火災や爆発が発生した場合、
□関係機関がすばやく情報を共有できるよう事業所内に「現地連絡室」を設置する
ことや、
□自治体ごとに作られていた連絡網を一本化する
ことなどが盛り込まれている。
県では、今回の見直し案をもとに、コンビナートを抱えるほかの地域の意見も踏まえてことし3月中に、防災計画を修正することにしている。
県防災危機管理課は「新たな取り組みを県全体に広めたい」と話していた。
出典URL
http://www.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/4065497701.html
(2012年3月13日 修正4 ;追記)
2012年3月9日付の山口新聞ならびに中国新聞から、事故の原因が下記趣旨でネット配信されていた。
同社の事故調査対策委員会は4回目の会合を終え、8日同事業所で会見した。
委員会によると、事故の約12時間前に塩ビモノマー製造の一部工程で弁の不調があり、工程の1系列が停止したことで他の工程にも影響が及び、原料の塩化水素を取り出す蒸留塔内の温度が低下した。
蒸留塔の温度を調整した際、塔上部の温度をマニュアルで決められている数値より異常に上昇させたことが原因で、上部から取り出される塩化水素に塩ビモノマーが混入したという。
結果、通常だと塔から塩化水素だけを送られる枕タンクに塩ビモノマーが混入し、鉄さびから生じた三塩化鉄を触媒として可燃性化合物である二塩化エタンが生成されたが、現場ではその認識がなく、枕タンクを密閉状態にしていた。
委員会では、枕タンクの中で二塩化エタンの反応速度が上がり、圧力が急上昇して枕タンクが破裂し、漏れた塩ビモノマーや二塩化エタンに何らかの着火源が触れて爆発したと推定している。
委員長は、「基本的な化学知識が十分現場関係者に理解されておらず、会社の教育不足も原因」と話した。
出典URL
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2012/0309/6.html
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201203090050.html
また、3月9日付の朝日新聞(聞蔵)からは、下記趣旨の委員長コメントがネット配信されていた。
「化学反応が起きうることを誰も知らなかった。運転員だけの問題というより、会社全体の問題。長い歴史があり、油断があったのではないか」
(ブログ者コメント)
□おおよその状況はわかったが、不明点も多々ある。
そこで東ソーのHPにアクセスしたが、本件はプレスリリースされていなかった。
情報は早目に公表するが、正式には報告書待ちということだろう。
□塩ビモノマーの性質をkis-netで調べた結果は下記。
結構、反応性に富む物質のようだ。
『熱、火炎、酸化剤に曝されると発火する危険性あり。気体で熱、火炎に曝されると激しい爆発の危険性あり。放置すると空気中で過酸化物を作り爆発することがある。』
(2012年6月21日 修正5 追記;)
2012年6月14日付で中国新聞から、事故調査委員会が報告書を公表したという記事がネット配信されていた。
東ソーの事故調査対策委員会は13日、報告書を公表した。
社内で事故防止に向け、事業所ごとに安全戦略を立てるなどの対策を提言した。
報告書は、プラントの安全管理を製造現場に任せ、プラントの設計などについて運転員の知識も十分でなかったと課題を指摘。
・知識、技術の伝承方法
・専門家による保安活動の定期的な評価
・周辺住民への情報発信
などを検討し、事業所ごとに安全戦略を立てるよう提言した。
委員長は「事故が起きた背景に多くの反省点があった。社内全体で具体的な施策を検討し、一つ一つを実行していきたい」と述べた。
同事業所に3基ある塩ビモノマープラントは事故で全面停止。うち1基は5月に再稼働し、もう1基は7月上旬に再開の予定。第2プラントの復旧は未定。
出典URL
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201206140011.html
以下は、プレスリリースされた報告書。
http://www.tosoh.co.jp/news/pdfs/20120613001.pdf
(ブログ者コメント)
報告書の序文ならびに本文p37に以下の記載があるが、本件、単に東ソーだけの問題ではなく、広く他山の石とすべき内容であろう。
□今回の事故の特徴として、発端事象から爆発までの12時間の間に、複数の直接要因、間接要因が複雑に絡み合っていることが挙げられる。
□・・・事業所、さらに東ソー全体の安全文化や保安を最優先する組織風土の更なる醸成を喚起すべく、この面についても提言する。
□塩ビ製造設備は、これまで大きな事故を起こすこともなく長期間にわたって運転されてきたこと、装置面、運転面からの検討が従来から加えられており技術的には確立されたと信じられてきたことが、安全意識の低下、安全推進体制の緩みに繋がり、今回の爆発火災事故を引き起こしたとも言える。
報告書によれば、事故に至った概略の経緯は下記。
□オキシA系の緊急放出弁が故障して突如「開」状態になったため、インターロックが作動して同系が停止。
□大幅なロードダウンにより、下流にある塩酸塔の運転が変動。
□塩酸塔中段温度が低下したため、加熱器蒸気量を増加、還流量を低減した。
□しかし塔頂、塔底温度の制御を意識しなかったため、塔頂の塩酸系に塩ビモノマーが混入。
□混入が原因でプラント緊急停止。
□塩酸塔還流槽に塩酸と塩ビモノマーが通常より高い液レベルで長時間保持されているうちに、気相部に存在していた、定期修理時にジェット洗浄した際に発生したとみられる鉄錆等が触媒となって、1,1-二塩エタンが生成する発熱反応がはじまった。
□ある時点から急激に反応が進行し、爆発に至った。
塩ビモノマーと塩酸が鉄錆触媒の存在下、発熱反応を起こして1,1-二塩化エタン(EDC)が生成することを誰も知らなかったという点については、以下のように記されている。
p25)塩酸塔還流槽での内容物の異常反応に関して、文献調査、ラボ反応実験を行ったところ、VCMとHClから1,1-EDCが生成する反応については、FeCl3等の触媒存在下では、容易に起こり得る発熱反応であることが判明した。また、鉄錆成分であるFe2O3、Fe3O4がHClと反応すると触媒作用を有するFeCl3を生成することも判明した。
p28)プラント全停止後、部長、課長、係長が、DCS上のトレンドデータにて塩酸塔の塔頂温度異常に気付き、塩酸塔還流槽へのVCM混入の可能性を想定したが、1,1-EDC生成の異常反応に関する知識がなかったため、特別な作業は必要ないと考えた。
分解工程で1,2-EDCを熱分解し、生成したVCMとHClならびに未反応の1,2-EDCの混合物が塩酸塔にフィードされるというプロセスだが、まさか生成した物質同士が反応するとは思ってもみなかったのかもしれない。
反応性の高い物質を取り扱う場合は、あらゆるケースを想定し、検討しておかねばならないという教訓であろう。
(2013年3月16日 修正6 ;追記)
2013年3月15日16時39分にNHK山口から、製造部長らが書類送検されたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
警察は、爆発を防止するのに必要な措置がとられていなかったとして、プラントを監督していた製造部長ら3人を業務上過失致死などの疑いで書類送検した。
書類送検されたのは、南陽事業所の49歳の塩ビ製造部長と48歳の当時の課長、それに44歳の主席技師の3人。
警察の調べによると、このプラントでは装置が誤作動したことをきっかけにプラント全体を停止させようとしていたところ、塩酸が入ったタンクに誤って塩化ビニールモノマーが流れ込み化学反応を起こして爆発したという。
この際に、タンクの中に塩化ビニールモノマーが流れ込んでいたことが計器などで確認されていたにもかかわらず、タンク内の圧力を下げたり、冷却したりといった爆発を防ぐ措置がとられていなかったという。
このため警察では、当時このプラントを監督し、施設の保安を担当していた製造部長ら3人を業務上過失致死などの疑いで書類送検した。
出典URL
http://www.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/4063216061.html?t=1363381880132
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魚田慎二
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自己紹介:
化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。
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