2024年2月15日23時58分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
東京電力は15日、福島第1原発の汚染水から放射性物質を除去する装置が入る建屋で汚染水が漏えいした事故について、原因を発表した。
主な原因は、本来は作業中に閉めておくべきだった手動弁を閉め忘れたことだとした。
漏えいした汚染水については、当初の推計の約5・5トンから約1・5トンに、放射性物質の総量を約220億ベクレルから約66億ベクレルに、それぞれ下方修正した。
東電によると、7日午前8時半ごろ、汚染水が通る装置の配管の線量を下げるため、洗浄水を流す作業を開始。
同53分ごろ、作業員が地上から5メートルにある排気口から建屋外に水が漏えいしているのを見つけた。
汚染水は約40分間にわたって建屋外に漏れ続けたとみられる。
東電は15日までに、鉄板の水を拭き取ったり、周辺土壌の回収などを続けたりしている。
現場では、下請け企業の作業員2人がペアになって手順書に基づいて手動弁が閉じているかを確認するはずだった。
実際は、手順書と弁の番号を照合するだけで、弁の状態を適切に確認していなかった。
作業を担当した下請け企業は、2020年度から十数回程度、同じ作業をこなしていた。
これまでは弁が閉まっていたが、今回は装置の運転停止後に発生する水素を外に逃がすために弁は開いていた。
作業員が確認していた手順書は、東電が作っている。
だが、今回は装置の運転部門と保全部門の間の情報共有が不十分で、実際の弁の状況と異なる手順書を作っていた。
東電の松尾・福島第1廃炉推進カンパニー広報担当は、「事案を重く受け止め、再発防止対策に取り組む」と陳謝した。
廃炉作業が続く第1原発では1日4000人以上が働いているが、人為的ミスによるトラブルが頻発している。
松尾氏は「人間はミスをするので、完全にヒューマンエラーをなくすことは難しい。仮にエラーが起こったとしても、大きなトラブルにつながらない設備面の対策も必要だ」と話した。
【知事「あってはならないこと」】
内堀雅雄知事は15日の定例記者会見で、第1原発での汚染水漏れについて「県民に不安を与えるトラブルが再び発生したことはあってはならないことだ。東電は、こうしたトラブルが繰り返し発生したことで、県民から厳しい目が向けられているということを十分認識し、全社を挙げてしっかり取り組んでほしい」と苦言を呈した。
県は8日、第1原発の田南所長を県庁に呼び、再発防止策の徹底や安全管理体制の構築を申し入れた。
https://mainichi.jp/articles/20240215/k00/00m/040/309000c
※ちょっと前、2024年2月9日9時23分に福島民報からは、閉めなければいけない弁16カ所のうち10ケ所が開いたままになっていたなど下記趣旨の記事がネット配信されていた。
東京電力福島第1原発の高温焼却建屋外壁にある排気口から放射性物質を含む水が漏えいした問題で、東電は8日、手順書通りの作業が行われていなかったと明らかにした。
手順書では、建屋内にある汚染水の浄化装置を洗浄する際には、装置と排気口をつなぐ配管の手動弁を閉じるよう記載しているが、実際は一部の弁が開いていた。
東電は7日の発生から10日以内に原子力規制委員会に現状や対応を報告する。
手順書は手動弁の開閉について、装置の運転中と洗浄中は閉め、運転停止中は装置内で発生した水素を排気口から放出するために開くとしている。
今回は弁を閉める必要があったが、16カ所のうち10カ所が開いたままになっていた。
東電の担当者は8日の記者会見で、人為的なミスかを問われ、「作業員からの聞き取りを含めて確認している。評価は改めて報告する」と説明した。
東電によると、7日午前、協力企業の作業員6人が汚染水の浄化装置を洗浄していたところ、装置が入る建屋から放射性物質を含む水が流れ出た。
東電は最大220億ベクレルの放射性物質を含む5・5トンの水が漏えいしたと推計している。
8日夕方、水が染み込んだとみられる建屋周辺の土壌の回収作業を開始した。
https://www.minpo.jp/news/moredetail/20240209114454
※東京電力からのプレスリリース主要箇所は以下のとおり。
・・・
4.原因
・弁開放点検前の線量低減を目的とした”線量低減作業”を、フィルターおよび吸着塔のドレン弁(計10箇所)が「開」状態のまま実施。
・・・
5.問題点
(1)手順書作成段階の問題点
• 今回の作業前の系統構成(※1)の作業責任は、当社保全部門となっていた。
当社保全部門は、設計図書に基づき手順書を作成しており、操作や確認の手順自体に誤りはないが、現場状態と一致した適切な手順書となっていなかった。
具体的には、現場の弁状態を反映し、当該弁を『「開」から「閉」に操作する』とするべきだったところ、今回の手順書では、当該弁は『「閉」を確認する』となっていた。
(※1)系統構成:
作業に当たり、作業対象範囲を系統から切り離すために境界弁を閉める等の安全処置のこと
(背後要因)
• 当社では、設備の保全作業前の系統構成は原則、設備の運用・状態を把握している運転部門が実施している。
• 福島第一原子力発電所では、事故発生後に現場が高線量となり、作業量も増大したことから、運転員の被ばく線量を抑制する必要があり、上記の原則に加え、保全部門(協力企業を含む)も系統構成を担う運用を独自に行っている。
• こうした経緯から、今回の系統構成の作業責任は当社保全部門となっていた。
• 当社運転部門は、当該弁について、サリー系統の運転中は「閉」、停止後直ちに保全作業(線量低減作業等)を実施しない場合は、吸着塔等に水素が滞留することを防止するために「開」として運用しており、注意札(※2)を弁に取り付けている。
(※2)注意札(コーションタグ):
機器の隔離や通常状態と異なる操作を実施する場合に用いる札
• 当社保全部門は、当社運転部門に対して、最新の現場状態に関する問いかけが不十分だったため、適切な手順書の作成に至らなかった(※3)。
(※3) 当社運転部門は、手順書を確認し、操作や確認の手順自体に誤りが無いことを確認したが、当該弁の現場状態が手順書と異なっていることまで思いが至らず、当該弁が「開」であることを伝えられなかった。
(2)現場作業段階の問題点
• 作業員(弁確認者)は、手順書に従い、ヒューマンエラーを防止するための手法(※1) を活用しながら弁の確認行為は行っていたが、弁番号と手順書が一致していることの確認に留まり、弁が「閉」状態でないことを見落とした。
(背後要因)
• 手順書では線量低減作業開始前に当該弁の『「閉」を確認する』とされていた。
• 本作業は当該元請企業により定期的に行われていたが、至近数年の実績では「閉」状態で作業が開始されていた。
• 作業員(手順確認者)は、これまでの経験から、当該弁が常に「閉」状態であると認識していた。
作業前日の手順書読み合わせの際、作業員(弁確認者)に対して当該弁は、これまで「閉」状態であったと伝えていた。
• 作業員(手順確認者・弁確認者)2名は、このような認識により、弁が「閉」状態でないことを見落とし、注意札も見落とした。
また、高線量下の作業であることから、早く作業を終えたいとの意識もあった。
(※1) ヒューマンパフォーマンスツール(HPT) :
指差呼称、操作前の立ち止まりなど、 ヒューマンエラーを起こさないような 基本動作のふるまい、手法
・・・
https://www.tepco.co.jp/decommission/information/newsrelease/reference/pdf/2024/1h/rf_20240215_1.pdf
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。