2019年6月8日19時54分に京都新聞から、下記趣旨の社説がネット配信されていた。
日本の死因究明は、先進国の中で遅れている。
犯罪死の見逃しだけでなく、災害で亡くなった人の死因や身元を特定する体制も十分とは言えない。
死因究明を推進する基本法が衆議院で可決成立した。
2012年に2年間の時限立法が成立したが、今回は恒久法だ。
死因の特定は、社会安定の基盤となる。
これまで政府の動きは鈍く、自治体の取り組みにはバラツキがある。
新法を生かせるか、本気度が問われる。
近年は、子どもの虐待や高齢者の孤独死が深刻な問題になっている。
一方で、死亡数は年々増え、いわば多死社会になってきている。
新法は、死因究明に携わる人不足から、人材の育成を盛り込んでいる。
さらに科学調査を重視し、磁気共鳴画像装置(MRI)などを積極活用するよう求めている。
身元確認のためのDNA検査や死因特定の解剖結果などをデータ保存することも重要になる。
行方不明者の捜索や事故の再発防止のほか、広く公衆衛生にも役立つことが期待されている。
遺族への丁寧な説明や情報開示も忘れてはならない。
これまで死因究明は、犯罪の有無を判断する司法解剖や検視が前面に出て、警察中心の見方になりがちだった。
しかし、犯罪死だけでなく、広く死因不明に目を向ける必要がある。
新法は、死因究明推進本部を厚労省に設置するとしており、新しい流れといえよう。
政府が施策を総合的に策定し、自治体が地域に応じて施策を作り、実施する。
そうした役割分担が打ち出されている。
地域差をなくすため、全国に専門機関を整備するとしている。
しかし、現状をみると、地域の間で取り組みの差が大きい。
14年に決定された推進計画に基づき、政府は都道府県に地方協議会の設置を要請したが、実現したのは、5年たっても37都道府県にとどまる。
協議会は、知事部局と医師会、歯科医師会、大学、警察などが構成メンバーで、地域の取り組みを協議する。
滋賀県は熱心で、全国で3番目に発足、提言も出しているが、一方で冷ややかな県もある。
そもそも、法医学の専門家が少なく、人材育成や解剖・検査への費用負担も軽くない。
新法は政府の財政措置を明記しているが、十分なものになるのかどうか。
来年4月に施行し、新しい推進計画など、中身はこれからだ。
人の死にきちんと向き合う社会への一歩にしないといけない。
出典
『死因究明推進法 地域の差をなくせるか』
https://this.kiji.is/510046472919090273?c=39546741839462401
6月7日付で日本医事新報からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
死因究明体制の充実に向け、国と地方公共団体の責務として専門的な人材の確保などを定めた「死因究明等推進基本法」が6日の衆議院本会議で、全会一致で可決、成立した。
死因究明に携わる人材の育成や教育・研究拠点の整備を通じて、犯罪・災害・事故・虐待による死亡の再発防止につなげる。
2020年4月に施行される。
死因究明体制を巡っては、時津風部屋力士暴行死事件(07年)などを契機として、12年に旧推進法が成立したが、2年間の限時法だったため、14年に失効した。
今回成立した新推進法は恒久法となっている。
推進法は、新旧ともに議員立法。
新推進法では、国と地方公共団体に対し、死因究明に関する医師・歯科医師への教育・研修を充実させるものと定めている。
死体の科学調査(病理学的検査、薬毒物検査、死亡時画像診断=Aiなど)の活用を進めるための連携協力体制の構築も求めている。
死因究明で得た情報の活用については、遺族に対して適時かつ適切な方法で説明することを促す施策を求めた。
厚労省には、特別機関として、厚労相を本部長とする「死因究明等推進本部」を設置。
政府の「死因究明等基本計画」の案を作成するほか、関連施策の進捗状況の評価・検証を行う。
附則では、法施行後3年をメドに検討する事項として、
▽死因究明で得られた情報の一元的な集約・管理体制
▽子供の死亡の原因に関する情報の収集・管理・活用の仕組み
などを挙げている。
出典
『死因究明等推進基本法が成立、20年4月施行へ』
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=12482
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。