2021年10月24日5時0分に日本経済新聞から下記趣旨の記事が、音消し壺の写真付きでネット配信されていた。
海外からも多彩な機能が注目される日本のトイレ。
排せつ音を紛らす擬音装置は、とりわけ興味を引くようだ。
昔ながらの「恥の文化」から生まれた発想だ。
この夏の東京五輪・パラリンピック。
多くの報道陣らが発信したのは、競技だけではなかった。
「東京で最もクールだったのはトイレ。
水が流れる音に衝撃を受けた」、「小鳥のさえずりまで聞こえるものがある」などと、擬音装置について驚きを表現する記者たちがいた。
2013年の調査だが、日本に来てびっくりしたモノは何かを日本に住む外国人女性200人に米国の旅行会社が尋ねたところ、「擬音装置」が27.0%と1位だった。
「豊富な種類の自動販売機」(23.0%)、「コンビニエンスストアの多さ」(20.5%)と続き、4位は「自動洗浄装置」(17.0%)。
上位4つのうち2つがトイレの機能だった。
【中小企業が開発】
現在のような擬音装置は、いつお目見えしたのだろうか。
1979年、折原製作所という東京都荒川区の中小企業が最初に開発した。
電気的な流水音が鳴り、芳香剤まで香る世界初の装置に、折原社長は「エチケットーン」と自ら名付けた。
名前の通り、「聞かれたくない音」を消すための装置だ。
続いてTOTOが88年に、擬音装置の代名詞にもなった「音姫」を発売した。
女性社員に調査したところ、排せつ時の音はもちろん、衣服を脱ぎ着する音や生理用品を扱う音などが「気になる」ことがわかった。
現在、同装置などの開発を担当する松山さんによると、「当初は機械音だったが、2011年からは本物の小川のせせらぎ音を使っている」。
鳥のさえずりを重ねることもできる。
90年に参入したLIXILも、やはり水の音を採用している。
2018年には、電子楽器メーカーのローランドと独自のせせらぎ音を共同開発し、「サウンドデコレーター」と名付けた。
広報担当の河合さんは、「心地よい音が、排せつ音を聞こえにくくするマスキング効果をより高めている」と話す。
だが、音消しの文化は200年以上前の江戸時代にすでに存在した。
実は、その現物が今も残っている。
岡山県倉敷市にある古刹、蓮台寺。
岡山藩主の祈願寺として、約1300年の歴史を持つ。
風格のある客殿の奥に「音消しの壺(つぼ)」がある。
直径約50センチメートルの青銅製の壺で、高さ約2メートルの石柱に置かれている。
壺には蛇口があり、栓をひねると、地面に敷き詰められた瓦にしたたり落ちた水の音が鳴る仕組みだ。
このすぐ奥に客人用の便所がある。
藩主の池田翁が祈願のために宿泊した折には、お付きの者が殿の用足しの際に水音を響かせた。
副住職の佐伯さんは、「かつては瓦の下に音を共鳴させる水琴窟もあり、恥じらいの音を美しい水音で消した」と解説してくれた。
この音消しの壺は、火災後に再建された江戸後期の1799年に設置された。
「当時は蓮台寺と江戸城の大奥にしかなく、その後全国に広まったようだ。使われた当時のまま現存するのはここだけ」(佐伯さん)という。
貴重な文化財だ。
【節水、感染予防へと進化】
この音消しのアイデアが現代によみがえったのが、折原製作所などの擬音装置なのだ。
恥じらう心を水の音で消すアイデアは、昔も今も変わらない。
だが、現代はより重要な理由が加わっている。
節水だ。
TOTOの調査では、擬音装置がないと、女性は音を消すため平均2.3回水を流す。
これが、装置があると1.5回に減る。
女性が400人いるオフィスでは1年間の節水効果は約5500キロリットル、金額では約386万円にもなる。
実は折原製作所も「本来の目的は節水にこそあった」(営業業務グループリーダーの矢野巌さん)。
開発時、東京は異常な渇水に見舞われた。
都議会では節水策を問われた水道局長が、エチケットーンを手に「こういう消音器も考案されている」と流水音を議場に響かせたという。
新型コロナウイルス禍の今、LIXILもTOTOも、水を流す前に便座のフタを自動で閉じるタイプを増やしている。
ウイルスが舞い上がるのを防ぐためだ。
トイレをはじめ水回りの製品は、手を使わなくても反応する非接触型が主流になりつつある。
恥じらいから節水、感染予防へ。
かゆいところに手が届く多彩なトイレ文化は、これからも進化し続けるに違いない。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFE182ES0Y1A011C2000000/?n_cid=NMAIL007_20211024_A&unlock=1
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。