2020年2月18日2時0分に日本経済新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
政府は17日、新型コロナウイルスによる肺炎に集団感染したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応を続けた。
英国籍の同船には日本の法律や行政権を適用できない原則があり、対応を複雑にした。
国際法上の「旗国主義」が、こうした船舶内の感染症対策で落とし穴となっている。
国際法では、公海上の船舶は所属国が取り締まる「旗国主義」という考え方をとる。
国連海洋法条約で、公海上の船舶は旗国の「排他的管轄権に服する」と明記する。
旗国の義務として、「行政上、技術上および社会上の事項について有効に管轄権を行使し、および有効に規制を行う」と定める。
例外として
(1)海賊行為
(2)奴隷取引
(3)無許可の放送
(4)無国籍や国籍を偽る
という外国船舶の取り締まりを認める。
今回のような感染症拡大の防止は想定していない。
日本の領海を航行中であっても、外国船籍の船舶は、陸上と同等の日本の管轄権は及ばない。
犯罪の結果が日本に及ぶ場合の刑事裁判権や、領海通航中に発生した債務や責任に関する民事裁判権などに限られる。
東京・中央の「カーニバル・ジャパン」が運航するダイヤモンド・プリンセス号には、乗員・乗客約3700人が乗っていた。
17日時点で延べ1723人を検査し、感染者は計454人に上る。
1月20日に横浜を出発後、鹿児島、香港、ベトナム、台湾、沖縄を経て、2月3日夜に横浜沖に停泊した。
クルーズ船では、乗員・乗客の集団行動や共用設備が多い。
運航中に新型コロナウイルスが広がったとみられる。
公海上にあった同船舶には、国際法上、日本が感染拡大の措置を講じる権限や義務はなかった。
義務を負っていたのは、船舶が籍を置く英国だった。
香港で下船した乗客のウイルス感染が確認された2月1日以降も同船は運航し、レストランなども営業していたとされる。
3日に日本の検疫官らが乗り込んで「臨船検疫」に乗り出した。
乗客の客室待機など感染拡大を予防する措置を徹底したのは5日からだった。
新型コロナウイルスの検査体制には限界があり、乗船する約3700人全員に一度に対応するのは難しい。
56カ国・地域の乗客が乗り、各国が自国民の健康や処遇に関心を寄せる。
米国は17日、チャーター機で米国民のうち検査で陰性を確認できた人を帰国させた。
カナダやイタリア、オーストラリアなどがチャーター機の派遣を決め、イスラエルなども自国民の下船を要請した。
日本が着岸を認め、乗員・乗客の検査や生活支援に取り組んだのは、国際法上の義務ではない。
乗客の半数近くが日本人という事情を踏まえた判断だった。
その結果として、米国やカナダなどが自国民を下船・帰国させるのにも協力する。
日本政府関係者は、「本来は、クルーズ船の着岸を拒否することもできた」と語る。
集団感染の疑いがある船舶の受け入れには、各国ともに二の足を踏む。
アジアを回るクルーズ船には入港拒否が相次ぐ。
米ホーランド・アメリカ・ラインが運航するオランダ籍の「ウエステルダム」は、その例だ。
5日に台湾を出た後、接岸できる港を見つけられず、カンボジアに受け入れられるまで、1週間あまり洋上をさまよった。
同船には日本も、出入国管理法に基づいて外国人の乗員・乗客の入国を拒否した。
日本は7日、台湾で寄港を断られて那覇に向かっていた香港の企業が運航するバハマ籍船についても、入港辞退を求めた。
ダイヤモンド・プリンセス号の場合を含め、船籍国と運航会社のある国、沿岸国がそれぞれ異なる。
一般的にどの国も、自国民がほとんど乗っていなかったり、地理的に遠かったりする船舶には積極的に対応しない。
国連海洋法条約は旗国と船舶の間の「真正な関係(genuine link)」を求めるが、実際は船舶の所有会社と登録先の国が異なる場合が多い。
国によっては、登録料収入などを期待し、船籍を容易に与える。
日本のタンカー船でもパナマ船籍が多い。
こうした「便宜置籍船」は、かねて問題になっている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55736490X10C20A2PP8000/?n_cid=NMAIL007_20200218_A アカスミ
2月20日付で毎日新聞東京版からは、領海では主権も及ぶという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
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「世界初」のクルーズ船での新型感染症まん延に対し、国際法上の責任の所在はあいまいだ。
国連海洋法条約では、船舶は公海では「旗国」(ダイヤモンド・プリンセスは英国)の主権下にあり、沿岸から12カイリ(約22キロ)の領海では沿岸国の主権も及ぶ。
運航中の船内の公衆衛生は、運航会社や船長が責任を持つ。
領海内での集団感染に対し、日本には検疫などの感染防止措置を取る「権利」はあるが、「義務」は規定されていない。
船内では、船籍国の法律が優先される「旗国主義」も事態を複雑にした。
日本の検疫法に基づく検疫は、船側の「協力」によって行われる建前となる。
条約では、公海上の船について、各国が自国船の「行政、技術、社会上の事項を有効に管轄・規制する」ことを求め、他国の領海内でも「旗国」の一定の管轄権が認められる。
ただ今回、英国からの対応申し出はなかったという。
外務省関係者は、「条約の起草者は、今回のような事態は想定していなかっただろう。沿岸国、旗国、運航会社、乗員・乗客の出身国の56カ国・地域の役割についてガイドラインがなかった」と指摘する。
菅義偉官房長官は19日の記者会見で、「感染症対策で国際的な協力体制の構築を含め、望ましい対応を検討したい」と述べ、国際ルールの必要性を訴えた。
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https://mainichi.jp/articles/20200220/ddm/003/040/094000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。