2019年10月17日23時16分に毎日新聞から、下記趣旨の記事が解説図付きでネット配信されていた。
台風19号により、21都県の住宅約3万9000棟(17日午後2時半現在)が床上・床下浸水した。
甚大な浸水被害があった長野市や宮城県丸森町などでは、洪水時の浸水想定区域を示すハザードマップと今回の浸水区域がほぼ一致している。
一方、住民の間では十分に浸透しているとは言い難い。
専門家は行政に周知方法で工夫するよう求めるとともに、住民にはマップを活用して避難計画を立てるよう呼び掛けている。
【「重要性感じた」 「知らずに怖い思いした」】
千曲川の堤防が決壊して大規模に浸水した長野市では、市が「1000年に1回程度の降雨」を見込んで作ったハザードマップと実際の浸水区域がほぼ同じだった。
ハザードマップには土砂災害や地震を想定したもののほか、河川の氾濫を予想したものがある。
浸水の範囲を深さに応じて色分けし、避難所の場所も示した地図で、市町村などが作る。
長野市は最近、千曲川の流域で2日間に平均396ミリと膨大な雨が降ったと想定した最新版を作製。
被害が予想される地域で今夏に全戸配布したばかりだった。
市のホームページ(HP)でも公開している。
国土地理院が発表した今回の浸水区域(推定)とマップを比べると、堤防が決壊した西岸は同じように浸水していた。
北陸新幹線の車両が水につかった長野新幹線車両センターの周辺は、マップでも浸水が最も深い場所だった。
今回、決壊地点近くの2日間の平均雨量は186.6ミリ(速報値)と想定の半分程度で、雨量がさらに大きければ被害が拡大した可能性がある。
決壊地点がある穂保(ほやす)地区に住む芝波田(しばた)さん(男性、66歳)はかつて地元で区長(町内会長)をしており、マップの存在を知っていた。
地区には12日午後11時40分に避難指示が出され、13日午前0時には近くの観測所で千曲川の水位が氾濫危険水位を超えた。
周囲が騒がしくなり、危険を感じた芝波田さんは同1時ごろ、同居する母親(97)を連れて避難所へ逃げた。
家は床上浸水で済んだが、市内では2人が亡くなった。
押し寄せた水から逃げ遅れた可能性がある。
芝波田さんは「マップを見ていないと、どこに逃げたらいいか分からない。マップの重要性を感じた」と話す。
町の中心部が水につかった宮城県丸森町も、2015年に作製して全世帯に配ったハザードマップと台風19号による浸水区域がほぼ一致した。
ただ、浸水の仕方は想定と微妙に異なっていた。
町では、役場がある中心部と北部の間を流れる阿武隈川の北側堤防が決壊すると想定。
北部の被害が大きいと予想し、民家が多い場所は3~5メートル浸水するとみていた。
今回、阿武隈川の堤防は決壊しなかったが、中心部に近い支流の内川と新川の合流付近で堤防が決壊。
中心部には山側からも雨水が流れ込み、排水ポンプの処理能力を超えて内水氾濫が起きた。
北部は10センチ程度の浸水だったものの、中心部はほぼ全域が水につかった。
町内全域に最高警戒レベルの「災害発生情報」が発令され、町民に避難が呼び掛けられたのは12日午後7時50分。
ただ、ハザードマップを知らず、逃げ遅れた人もいた。
会社員の菅野さん(女性、58歳)は「マップがあるのを知らず、あの日は自宅にいた。水が家の2階の階段まで迫り、怖い思いをした。マップを知っていれば、行動も変わっていたかも」と話す。
小学校に避難した大河内さん(女性、78歳)もマップは配られた際に見たものの、今回改めて見直すことはなかった。
「避難の指示もマンネリ化して、よその地域の避難のニュースをテレビで見るなどしていた。今回の被害は、まさに青天のへきれきだった」と振り返った。
町内では今回、多数の死者・行方不明者が出ているが、その多くが周辺部の山間地域。
土砂崩れで住人が巻き込まれたとみられる。
町も土砂災害は予想していたが、雨で地盤が緩んだ後に起きると予測しており、今回のように一度の雨で発生したのは想定外だったという。
担当者は「ハザードマップの周知には努めたいが、想定通りに被害が起きるとは限らない。危険性を町民に認識してもらうにはマップだけでは十分ではなく、他の方法も考えないといけない」と話した。
【江戸川区「 ここにいてはダメです」のインパクト】
命を守るためにハザードマップの周知が課題となる中、認知度を向上させた例がある。
東京都江戸川区が5月、新たに発表したマップだ。
表紙に描かれた江戸川区の地図に「ここにいてはダメです」とインパクトのある言葉を記し、千葉や埼玉、東京西部など区外への広域避難を呼び掛けている。
江戸川区は東は江戸川、西は荒川に挟まれ、南は海。区面積の約7割が、満潮時の水面より低い「ゼロメートル地帯」だ。
避難者の受け入れ先が決まっていない状態で区外に避難を促すことに「行政の責任放棄」という指摘も出ているが、区防災危機管理課の本多課長は「情報を正しく理解してもらい、広域避難を考えてもらうための思いを込めたフレーズ」という。
水害リスクを隠さず、「お役所」らしくないフレーズが反響を呼んだ。
台風19号では結果的に区内は大きな被害はなかったが、「今回の台風は危ないの?」「どこに逃げれば?」などとする問い合わせの電話が区に相次いだ。
本多課長は「水害リスクの周知は進んでいる」と実感している。
ハザードマップを巡っては、昨年7月の西日本豪雨で浸水被害を受けた岡山県倉敷市真備(まび)町地区でも実際の浸水区域とほぼ一致していた。
行政依存の防災からの転換を訴えてきた東大大学院の片田敏孝特任教授(災害社会工学)は「どんなに分かりやすいハザードマップを作っても、見るつもりがなければ無用の長物」と指摘。
その上で「今はハザードマップの精度も高くなり、極めて有効。行政側も単に公表するだけでなく工夫が必要だが、何より住民側が『災害は自分たちに起こる問題』と思い、主体性を持って行動することが重要だ」と強調する。
三重大大学院の川口淳准教授(建築構造・地域防災)は「最悪のリスクを認識し、空振りを恐れずに浸水域外へ避難してほしい」と指摘している。
https://mainichi.jp/articles/20191017/k00/00m/040/335000c
10月18日付で信濃毎日新聞からは、長野市の浸水区域とハザードマップの一致状況に関し、下記趣旨の記事が図解付きでネット配信されていた。
台風19号による大雨で甚大な被害が出た長野市の浸水範囲が、四つの被災エリアの合計で1500ヘクタール余に上ることが17日、市の調査で分かった。
千曲川の堤防が決壊した穂保や豊野など市東北部が916ヘクタールに上ったほか、千曲川が越水した篠ノ井エリアが359ヘクタール、松代エリアが156ヘクタール、若穂エリアが80ヘクタールだった。
今回のそれぞれの浸水範囲は、市が「千年に1回程度」の降雨を想定して作った「洪水ハザードマップ」の浸水想定区域とほぼ一致。
今回の被害は想定上の「最悪」に近い状況だったことも分かった。
調査は市河川課が13、14日に実施。
小型無人機ドローンを使って、低空から被災エリアを撮影しながら確認したほか、市職員が現地を歩いたり近隣に住む職員から情報を得たりして調べた。
同課担当者は「市のハザードマップと合わせると、浸水範囲はほぼ一致した」と分析している。
国土交通省北陸地方整備局によると、ハザードマップの基になる浸水想定区域は同省が市町村に提供した。
過去に流域で観測された大雨の地点と降水量、時間などを基に、48時間で396ミリの雨が降った場合を想定。
複数の観測事例に当てはめて予想し、最大の被害を浸水想定区域として反映させた。
長野市は今年7月にハザードマップとしてまとめ、8月から浸水想定区域の各戸に配布し、市ホームページでも公表した。
台風19号は、東北信地方の広い範囲で大量の雨が降った。
気象庁によると、県内のアメダス観測点で13日までの48時間の期間最大雨量は、南佐久郡北相木村で観測史上最多となる411・5ミリを記録。
上田市鹿教湯、佐久市、北佐久郡軽井沢町、上高井郡高山村の4カ所で300ミリを超え、軽井沢町を除く3カ所は観測史上最多を更新した。
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191018/KT191017ATI090036000.php
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
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