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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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201079日 旧ブログ掲載記事)
 
爆発とは、音を伴なって急激に圧力が解放されること、と定義されています。
また、そういった急激な圧力を発生させる原因の一つに、モノが急速に燃えるといったことがあります。
粉じん爆発といっても、なにも特別な現象ではなく、これと同じことが起きているにすぎません。
 
そのメカニズムについて説明しますと、まずは雲状に粉が舞っているところに着火源が発生し、その着火源のまわりにある粉に熱が伝わって、それらの粉が加熱されます。
次に、その加熱された粉から可燃性ガスが発生し、そのガスに火がついて燃えます。
そして、そのガスが燃えた時の熱によって、さらに隣にある粉が加熱され、可燃性ガスが発生して、燃えます。
こういった具合に、次から次へと粉がガス化し燃焼していく急激な連鎖反応が起きる、これが粉じん爆発が起きるメカニズムなのです。
 
したがって、粉じん爆発を起こしやすい粉とは、①可燃性であり、②熱が伝わりやすく、③ガス化しやすい、④あるいは可燃性の揮発分を多く含んでいる粉、ということになります。
 

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201077日 旧ブログ掲載記事)
 
可燃性の粉が飛散して高濃度の粉じん雲が形成され、かつ、その粉じん雲に着火させるだけのエネルギーを持つ着火源が付近に発生すれば、粉じん爆発が起こります。
 
粉じん爆発は、可燃性の粉であれば、それが何であれ、起こる可能性があり、たとえば普段、家庭で使っている小麦粉も、一見、爆発とは無縁なようですが、バーナーのような強力な着火源があれば、爆発することがあります。 
 
粉じん爆発を起こしやすい粉か起こしにくい粉かは、一般的には、爆発下限濃度や最小着火エネルギーで評価可能です。ただし、そういったデータは、粒径分布や粒の形状、水分や揮発分の含有量、粉じんが飛散した場合の実際の濃度分布など、多くの因子に左右されますので、既存のデータを参考にする時は、目安として捉えておいたほうがよいでしょう。

 
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2010722日 旧ブログ掲載記事)

 

ベビコンを含めた空気圧縮機には、給油式タイプと無給油式タイプの2種類あります。
そのうち、給油式タイプのものを使用している場合には、おそらくは取扱説明書に記載されていると思いますが、定期的な清掃、点検が必要です。

なぜなら、長時間使用しているうちに潤滑油の劣化物が配管の内側に膜状にこびりつき、そこに静電気とか断熱圧縮あるいは自然発火など何らかの着火源が発生した時に、爆発する恐れがあるからです。
これはフィルムデトネーションと呼ばれる現象であり、機械の損傷はもちろんのこと、配管が噴破するなどして人身事故につながることもあります。

 

一方、爆発はしなくても、圧縮時に温度が上がるなどして潤滑油が一部不完全燃焼を起こし、一酸化炭素が発生する可能性もあります。

それゆえ、空気呼吸器用の空気供給源として給油式圧縮機を使用することは避けたほうがよいでしょう。

もし避けられないなら、一酸化炭素濃度警報などの対策をとっておいたほうがよいでしょう。

 

 

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(2010年12月2日 旧ブログ掲載記事)
 
2010年9月から11月までの間、自然発火が原因とみられる火災事例が3件、報道された。
 
自然発火は、産業現場でもしばしば発生する現象で、以下の2つの条件が揃った後、数時間あるいは数日経ってから発火するという特徴がある。
特に外気温の高い夏場に多い現象であるが、冬場に起きても不思議ではない。
 
[条件1] 油など、酸素と結合する可能性のある二重結合を有する物質が、布や紙、保温材などの多孔質物体に浸み込んで、空気と大きな表面積で接している。
[条件2] そういった多孔質物体が積み重なった状態になっていて、内部で発生した熱が逃げ難くなっている。
 
11月27日の事例など、「アロマオイルが化学反応で発火した可能性が高い」と報道されているが、おそらくはアロマオイルが浸み込んだタオルなどをドサッと容器などに入れっ放しにしておいたため、内部で蓄熱し、発火に至ったものだろう。
思い込みはよくないとは知りつつも、以下に、11月27日の事例が自然発火に至ったであろうシナリオを考えてみた。大体の自然発火は、このようなプロセスを辿るものである。
①アロマオイルが浸み込んだタオルを何枚も積み重ねた状態で保管箱に放り込んだまま、帰宅した。
②タオルが積み重なった奥の方で、アロマオイルが酸化し始める。
③酸化の進行に伴い熱が発生するが、奥の方ゆえ熱は外に逃げていかず、その場所に蓄積され、当該部分の温度がゆるやかに上昇していった。
  ※店の人としては、いつも通りの行動だったかもしれないが、この日たまたま、オイルの付き具合やタオルの積み重なり具合などが、蓄熱に適した状態になっていたのだろう。いつもにもまして二重結合の多いオイルを使っていたかもしれないし・・・。
④温度の上昇とともに酸化反応は促進され、それまでは緩やかな温度上昇カーブを描いていたものが、ある時点を境に急上昇し始め、ついには発火に至った。
(一般に、多孔質物質に浸み込んだ油などは、通常の発火温度よりも、かなり低い温度で発火する)

こういった事例から得られる教訓として、油が浸み込んだ多孔質物体を保管する場合は、まずは水で濡らしておくこと。そして乾燥を防ぐため、蓋の付いた金属製バケツ等の中に入れておくといった対策が必要だ。
 
以下は、2010年9月~11月にネット配信された記事3件。
事例2は、揚げカスの酸化熱が原因だろう。ゴミ箱の中で揚げカスが積み重なっていたため、酸化熱が蓄積されたものと考えられる。
事例3は、フード内にビッシリこびりついていたスス状の物質が、内部で発生した食用油の酸化熱を閉じ込めてしまったものと思われる。
 
事例1)
アロマオイルが化学反応、発火?セラピー店ぼや
 (2010年11月28日12時18分 読売新聞)
27日午前2時半頃、富山市婦中町田島の木造2階アパートに入居しているアロマセラピー店「ドージング・アロマ」(山口智子さん経営)から出火し、火災警報器に気付いた男性住民が110番した。
店内にあったタオルなどを焼いたが、けが人はなかった。
 富山西署の発表によると、アパートは1、2階を合わせて1室となるメゾネットタイプ。店内は無人で、施錠されていた。タオルはアロマ成分が含まれており、同署は、アロマオイルが化学反応して発火した可能性が高いとみて調べている。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101128-OYT1T00308.htm

(2011年1月5日 修正1; 追記)
2011年1月5日付の毎日新聞東京版朝刊に、下記趣旨の記事が掲載されていた。またネットでも配信されていた。
美容オイルのしみこんだタオルが自然発火する事故が相次いでいる。オイルが酸化することで発生した熱が逃げ場をなくすと高温になるためで、経済産業省などが注意を呼び掛けている。
 富山のアロマセラピー店では、床に重ねて置かれたタオルから出火したとみられる。従業員によると、タオルは美容オイルでマッサージする際に使い、26日午後5時半ごろ洗濯・乾燥を済ませた。警察は、タオルを乾燥機にかけた際、しみついたオイルが酸化反応によって発熱し、取り出し後に重ねて置いたため熱がこもり発火した可能性が高いと結論づけた。
独立行政法人「製品評価技術基盤機構」(NITE)などによると、美容オイルなどの植物性油は酸化しやすい「不飽和脂肪酸」を多く含むという。機構の実験では、美容オイルが付いた衣類を洗濯・乾燥機にかけ、かごに重ねて置いたところ、かご内は最高427℃に達し、約2時間15分後に発火した。植物性の食用油や機械油でも同じことが起こるという。
 機構のまとめでは、油のついたタオルが自然発火したとみられる火災は05年4月以降39件あり、うち21件は美容オイルが原因。大半がエステティックサロンやアロマセラピー店で、住宅やホテルでも発生。08年12月には、福島県いわき市の老人介護施設で2人が死亡、3人が重軽傷を負う火事があり、マッサージ用の美容オイルを拭き取ったタオルが原因とされた。機構の担当者は「ぼや程度なら報告されないこともある」とし、実際の件数はさらに多いとみている。
 油分は洗濯しても完全には除去できないため、機構や経産省は美容オイル類が付いた衣類は自然乾燥させるよう呼び掛けている。
 
事例2)民家火災:揚げかすで発火、ごみ箱内で高温に 
 (毎日新聞 2010年9月21日 香川版)
 20日午前4時10分ごろ、三豊市の男性(57)方から出火。木造平屋の住宅約100平方メートルのうち、約40平方メートルを半焼した。天ぷらの揚げかすが原因で発火したと見られ、三観広域消防本部は「揚げかすの温度を下げてから適切に処理してほしい」としている。
 三豊署によると、午前0時半ごろ、男性の妻(56)が天ぷらを揚げ終え、台所のごみ箱に揚げかすを捨てたといい、揚げかすの熱で、ごみ箱内の紙くずなどが燃え上がったとみている。同消防本部によると、揚げた直後の揚げかすは100~200度。油には熱をためる性質があり、ごみ箱内でさらに高温になる場合がある。このため紙など燃えやすいものがあれば発火するおそれがあり、同様の原因の火事は同本部管内でも年に数件あるという。
 同本部は「トレイなどで揚げかすを一度広く伸ばせば、温度はすぐ下がる」と話している。


事例3) 酸化発熱:台所の換気扇、付着の油が自然発火
 (毎日新聞 2010年9月14日 愛知版)
 豊田市内で今年になって、食用油が付着した台所の換気扇のフード部から自然発火し、大きな火災になる寸前に住民が消し止めていたことが分かった。市南消防署によると、付着していた食用油が空気中の酸素と結合して発熱する「酸化発熱」が原因とみられるという。同署は、使用開始から時間がたった換気扇は「こまめに掃除を」と呼び掛けている。
 同署によると、出火騒動があったのは市南部の集合住宅。1階の部屋から煙が出ているのを2階の住民が気付いた。1階の部屋は留守で、2階の住民がたまたま開いていた窓から消火器で消し止めた。けが人はなかった。
 同署が調べたところ、換気扇のフィルターなどフード部に付着した食用油の酸化が進んでおり、自然発火したらしい。
 付着した食用油は、周辺にほこりがたまっていたり、密閉状態だと熱が蓄積されやすいとされる。過去には、換気扇近くのガスコンロを使用後、30分~2時間後に自然発火した例が報告されているが、「同市内では珍しいケースではないか」(署員)という。
 同署は「予想もしなかった原因で発生した火事を紹介して、市民に注意を呼び掛けたい」と今月から市のホームページで事例の紹介を始めた。同署は、他地域で発生した同種の酸化発熱の例として、油をふき取り、ゴミ箱に入れていたペーパータオルから出火したり、機械油が付着した作業着を洗濯、乾燥後、たたんでおいたところ自然発火した例を挙げている。
 
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(2010年7月27日 旧ブログ掲載記事)


現場で取扱っている可燃性ガスや粉じんが、どの程度爆発しやすいものであるかを知っておくことは、安全対策上、非常に大切なことです。
ここでは、そういった爆発のしやすさを知るための指標の一つである「爆発範囲」について説明します。
 
爆発範囲、それは、空気(酸素)中に可燃性ガスあるいは粉じんが何%含まれていれば爆発するか、という濃度の範囲のことです。
具体例で説明しますと、私たちが普段使用しているLPガスには、ガス漏れ検知のため、わざと臭いを付けていますが、ちょっとガス臭いかな?と感じる程度の薄い濃度では爆発しません。それが、非常にガス臭いと感じるほどの濃い濃度になれば、爆発します。そして濃さが更に増していき、ある濃度以上になると、今度は燃えるために必要な酸素が足りなくなるので、爆発しなくなります。
 
このように、可燃性ガスや粉じんが燃えるためには、空気と薄すぎもせず濃すぎもせず、ある範囲の濃度で混じりあっている必要があるのです。その濃度の幅が爆発範囲と呼ばれるものであり、可燃性ガスや粉じんの種類によって固有の値です。ただし、温度や圧力が変わったり、また空気中か酸素雰囲気かといった環境の違いによって、その値は違ってきますので、注意が必要です。
 
爆発範囲の中の一番下の濃度は爆発下限濃度、一番上の濃度は爆発上限濃度と呼ばれていますが、可燃性ガスや粉じんの爆発しやすさは下限濃度で評価します。つまり、下限濃度が低いものほど燃えやすい、と評価するわけです。
 
ちなみに、工場、あるいは家庭においても、可燃性ガスが漏れる恐れのある場所にはガス漏れ警報器が設置されていますが、その警報値としては、ガスの爆発下限濃度に、いくばくかの安全率を見込んだ値が採用されています。よって、警報が鳴ったといっても、すぐに爆発するような状況になっているとは限らないのです。しかし、それは警報器設置場所付近の話であって、漏れ箇所付近には必ず爆発範囲に入っているエリアがあることを忘れてはいけません。
 
警報が鳴った後、緊急避難する、あるいは現場に行って洩れ箇所を確認するといった対応処置は、その時々の状況に応じて判断するしかありませんが、複数の警報器が一斉に鳴った時などは大量漏洩の疑いが濃厚ですので、現場には行かないほうが無難でしょう。
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 (2010年7月5日 旧ブログ掲載記事)

 
火災とは「モノが燃える」ということですが、モノがあるからといって、めったやたらに燃えるものではありません。
燃えるには、
 ①そのモノが可燃物であること
 ②燃えるモノの周りに支燃物があること 
 ③火をつけるための着火源があること
という「燃焼の3要素」の全てが揃っている必要があります。
どれか一つでも欠けていたら、モノは燃えないのです。
 
の可燃物ですが、産業現場には、固体、液体、粉体、ガスなど、いろんなカタチでモノが存在しています。よって、いま取扱っているモノが燃えるものか?燃えないものか?・・・燃えるものであれば、燃えやすいものか?燃えにくいものか?・・・を把握しておくことが、火災防止を図る上での第一歩となります。
事故が起きた後、そんなに燃えやすいものだとは知らなかった・・・・というのでは、遅いのです。
取扱っている物質について過去に安全性を確認したことがなかったなら、再度、MSDSに目を通し、あるいはメーカーに問合わせるなどして、確認しておいたほうがよいでしょう。
神奈川県環境科学センターの化学物質安全情報提供システム(kis-net)などを利用するといった方法もあります。
 
の支燃物は、モノを燃やすために必要なものであり、その代表が酸素です。
酸素は空気中に21%存在していますので、われわれが日ごろ、現場で可燃物を取扱う場合には、必然的に「燃焼3要素」のうちの2つまでが揃っていることになります。
したがって、一般的にいえば、火災事故を起こさないようにするには着火源を管理すること、それしか方法はありません。
 
ただ、タンクなどの密閉された空間において、着火源となり得るようなことが起きる可能性がある、たとえば静電気放電が起きる恐れがある、といった場所については、当該空間の酸素濃度を限界酸素濃度未満に下げて管理する、という方法がとられることがあります。これは、「燃焼3要素」のうちの支燃物という要素を排除することで、爆発を防ぐ方法です。
  ※「限界酸素濃度」 密閉空間で酸素濃度を下げていくと、だんだん火がつき難くなり、ついには、どんなに強力な着火源をもってしても、火がつかなくなります。そのようになる時の酸素濃度が限界酸素濃度であり、物質によって、その値は異なります。ちなみに、普通の可燃性ガスであれば、8%程度というケースが多いようです。
 
③の着火源については、多種多様
マッチ、ライター、溶接火花といった移動可能なものから、電気器具のスイッチ火花や高温熱面といった固定されたもの、また静電気や自然発火といった、何時どこで起きるか予測困難なものなどがあります。
 
移動可能な火気については、使用場所を制限する、周囲に可燃性ガスが存在しないことを確認してから使用するなど、日常的にしっかりと管理しておくことが大切です。
固定された着火源については、いかなる事態になっても、その周辺に可燃性ガスや蒸気が流れ込んでこないことを確認しておく必要があります。もし流れ込んでくる可能性がゼロでない場合は、その可能性の大小に応じ、設備対応などの対策をとっておくことが望まれます。
 
静電気など予測が困難な現象については、過去の自社あるいは他社の事故事例から発生危険場所を予測する、そういった現象について従業員に教育する、危険な場所がないか一斉点検する、といった対策が考えられます。
 
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(2011年3月16日 旧ブログ掲載記事)

東日本大震災で、東京電力に対するマスコミの論調が非常に厳しい。福島原発と計画停電で国民に多大なる不安を与え、不便をかけてしまったので致し方ないことだが、同じような装置産業で働いていた身としては、胸が痛むこと甚だしい。
なんとか早期に収束に向かうよう、祈るばかりだ。
 
さて、今回の地震でブログ者が一番知りたかったのは、三陸、田老地区の被害状況だった。というのは、数十年前、かの地に旅していた際、巨大な堤防が小さな集落に設置されているのを見て不思議に思い、なぜかと尋ねると、チリ地震津波の教訓で、二度と同じ被害を出さないため・・・といった説明をされた記憶があったからだ。それが、14日になってやっとテレビで報道されたが、なんと他の地区と同様な被害を被っている模様だ。
 
あの巨大堤防でさえも防ぐことができなかった今回の大津波。それは全くの想定外であり、その強大な力によって福島原発の非常用冷却設備をも破壊してしまったのだろう。大津波さえなければ、非常用冷却設備は、あそこまでの壊滅状態にはなっていなかっただろうと思われてならない。
すでに中電浜岡原発では高さ10mを超える堤防建設の検討を始めたと報道されているが、おそらくは、他の原発でも同様の検討が進められるだろう。
 
従来、原発のような最重要設備は、100年に一度の地震にでも耐えられるというキーワードで造られてきた。
最近100年で日本周辺で起きた地震のマグニチュードは、最大で8.2が2回、次が8.1で、これも2回だ。目を転じると、今回の地震は869年に起きた「貞観地震」とよく似ているとの記事もある。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110312/dst11031206120078-n1.htm
 
しかし、それでもマグニチュードは8.3。いかに今回の地震がケタ外れだったかがわかる。世界的にみても、1900年以降、今回を上回る地震は、チリの9.5とアラスカの9.2しかない。
こう見てくると、今回は1000年に一度、起きるか起きないかといった規模の大地震。国内外の学者、専門家が、まさか起きることはないだろうと思っていた地震が起きてしまったのだ。
 
リスク管理は本当に難しい。想定を厳しくすればするほどコストが嵩んでしまうからだ。隕石が落ちてくることも想定すべきリスクの一つだが、そこまで想定に入れているところは世界中、どこを探してもないだろう。どこで折り合いをつければいいのか?その答えの一つが、地震については100年に一度の大地震に耐えられるということだったが、その想定では甘かった。
今後は、原発に限らず重要な建築物に対しては、1000年に1度の地震にも耐えられるものが求められるだろう。
 
人間が想像できる範囲のことは起こり得る、といった趣旨の言葉があるが、まさにその通りだ。しかし、想像できること全てに対応をとっておくことは不可能。起きる確率が高いと思われるものなど、優先順位をつけて対応するしかないが、事故というものは、えてして想定しなかったところで起きるものだ。いや、想定しなかったからこそ起きるのが事故なのだ。
 
対応したつもりでいても、起きる可能性がある事故。どこまで対策をとっておけばいいのか?その答えを出せる人は誰もいないが、強いて言えば、責任もって安全を管理する立場の人だろう。安全に関する専門知識を持ち、また現場にも精通している人が、剣道の見切りのように、ここまで対応すると決定する・・これが正解だとは思わないが、その程度しかブログ者には思い浮かばない。
 
 
 
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(2011年1月19日 旧ブログ掲載記事)

2011年1月18日10時38分に、朝日新聞から下記趣旨の記事がネット配信されていた。
 
名古屋市立東市民病院で、昨年10月、患者のCT写真の表裏を見誤って、本来とは反対の左側の頭部に穴を開ける手術をしていたことが、18日、病院への取材で分かった。

病院によると、患者は、慢性硬膜下血腫のため、他の病院から入院。
側頭部の左右両側に血腫があり、脳神経外科の主治医が緊急で手術が必要と判断した。


翌日に手術をした際、前の病院で撮影したCT写真の表裏を見誤り、右側頭部の血腫を取り除くはずが、左側頭部の骨に直径1センチの穴を開けた。
左側の血腫が小さかったために誤りに気付き、すぐに穴を閉じ、右側を手術した。
患者に手術による後遺症はないといい、すでに退院した。


同病院は「あってはならないミスで大変申し訳ない。緊急の場合でも、院内の電子カルテに写真を取り込んだ上で、手術室の全員で確認するなどの再発防止策を徹底した」と話している。
 
 
(ブログ者コメント)
 
□いくら緊急のことだったとはいえ、慌ただしい時だからこそ、ヒューマンエラー対策には、その役割を発揮してほしかった。

□レントゲン写真の表裏見間違いといった事例・ヒヤリは、過去に結構ある筈で、当然、見間違い防止対策をとっていた筈だが、今回、なぜ、その対策をすり抜けたのだろう?そこが一番の問題だ。ひょっとして無対策?

□なぜ見間違えたのか?その原因を掘り下げて分析してこそ、真の対策につながる。記事に書かれている内容で再発防止できるのなら、それでもよいが、カルテに写真を取り込む際にも見間違いは起こり得る。

□たとえば、写真の右上に目印を付けるといったシステムにすれば、根本対策になると思うのだが・・・。
 
 
 
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(2010年9月27日 旧ブログ掲載記事)

2010年9月23日午後6時ごろ、千葉県いすみ市大原で、伝統あるはだか祭りのみこしに落雷があり、2名が重傷、32名が軽傷を負った。
 
たまたまブログ者は、その祭りに行ってみようかと思い、朝から天気予報をチェックしていたが、一日中雨、かつ夕方5時くらいには房総半島の中心付近に雷雲が生じるだろうという予想図も見たので、悪天候の中、わざわざ出向くこともないかと考え、行くのは中止した。
 
その際、日々、安全について考えている身としては、「雷雲が通り過ぎる間、祭りは中断されるのだろうか?」といったことに思いを馳せるべきだったのかもしれないが、残念ながら、そういった考えは全く頭に浮かばなかった。
 
まあ、私の場合は第三者であるので、そこまで気が回らなくても仕方がないという言い訳はできるが、祭りの実行責任者の人たちは、一体どうだったのだろうか?
 
25日付の毎日新聞千葉版には、市長の「9月に落雷があるとは思わなかった」とか「朝から雷注意報が出ているとしても、雷が落ちるとは思わなかった」といったコメントが載っている。まあ、実際、そんな感じだったのだろう。
 
雷が落ちてケガをした、火災になったという報道はタマにあるが、実際にそういった経験をした人は、ほとんどいないだろう。過去に一度も経験したことがないのでは、雷鳴が轟いても、それは他人事。まさか自分が直撃を受けるとは思ってもみないのが人の常だ。しかし、事故とは、その「まさか」が現実となって自分の身にふりかかることなのだ。
 
「まさか」の段階で対策を言いだすと、やれ、スケジュールが狂うだの、周りに迷惑がかかる、あるいは余計なカネが必要になるなどと、多くの抵抗が出ることだろう。今回の事例でも、そういった思いが責任者の心の中に生じたであろうことは、想像に難くない。
 
事故が起きた後では何とでも言えるが、滅多に起きることのない事故に備え、どこまで事前に対策をとっておくべきかということは、本当に難しい問題だ。
 
産業安全の世界では、一度ケガした人は二度と同じケガはしない、と言われている。それは、ケガした人は、以後、他人事ではなく自分のこととして真剣に注意するようになるからだ。はだか祭りも、来年からは天気予報に敏感に反応するようになるだろう。
 
しかし、一度ケガすれば、その後、ケガしようにも、作業自体ができない身体になってしまう恐れがある。ケガした後に注意するというのでは、もう遅いのだ。
ここに、事例活用の一つの意義が見出せる。
 
過去に誰かが実際に起した事故の原因を知り、わがことのように捉えることで、自分の脳の中に、疑似体験としてインプットしておく。そうすれば、同じような場面に遭遇した場合、自分のこととして真剣に注意するようになることが期待されるのだ。
 
このブログに最近の事故事例を掲載しているのも、そこにこそ目的がある。
事例を過去のものとして遠ざけたままにしておいては、宝の持ち腐れになってしまうだけだ。
ケガをした人は、後日、同じような作業をする人のために、自分が痛い思いをしてまで貴重な教訓を残してくれたのだと考え、感謝の念を持ち、わがことと捉えて事例を勉強すること。その姿勢が、今後、自分の身を守ることになるのだと、ブログ者は考えている。
 
(関連情報)
 
2010年10月4日8時15分からのNHK「あさいち」で、雷が落ちた場所付近で高く提灯を掲げていて雷撃を受けた人の証言が放映されていた(その提灯に雷が落ちたかも、という別報道もある)。
ちなみに、その人の右足のスネ部分は全面やけど状態で、新品の地下足袋(ゴム底)はズタズタに裂けていた。右足以外はなんともなかった模様。よくぞ頭に落ちなかったものだ。
 
証言内容;それまでは全く光っておらず、いきなり落雷した。
 
いくら雷注意報が出ていたとしても、それまで全く光っていなかったのでは、対応の取りようがなかっただろう。
先に、今後、まつり実行委員会は天気予報に敏感に反応するようになるだろうと書いたが、そのような状態であったのでは、なかなかに今後の対応は難しいかもしれない。
 
ただ、同番組に出演していた専門家は、雷雲が数kmといった大きさの場合には、端っこで落雷しても反対側の端っこでは光が見えない可能性もあり、かといって雷が落ちる危険性は、雷雲の下、全体にある、と説明していたので、やはり、雷注意報には敏感に反応すべきなのだろう。
 
そういえば、ブログ者が見た当日夕方5時くらいの天気予報図では、縦長の雷雲の下の端っこが大原付近にあったような気もする。


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(2010年6月26日 旧ブログ掲載記事)

事故防止について考える場合、どんな事故を防ぎたいのか、ターゲットを絞っておく必要があります。
そうでないと対策が総花的になり、結果、対策は建てたものの実効が期待できない、といったことになりかねません。
人身事故を防止したいのか?火災爆発事故を防止したいのか?あるいは、起きてしまった事故の再発を防止したいのか?起きる可能性がある事故を未然に防止したいのか?等々、ターゲットとしては色々と考えられますが、知識がないがゆえの事故は起こさないようにしたいとか、知識があるのに起きてしまう事故をゼロにしたい、といった考え方も、また、できるかと思います。
 
「知識がないから起きる事故」を防ぐには、実際に現場で作業する人はもちろんのこと、経営者や安全管理者といった人たちも、自職場で起こり得る事故に関する知識(事故事例を含む)を持っておくことが必要です。

そのための手段としては、
  
安全に関する文献、雑誌に目を通す
  
安全講習会に参加する
  
同業他社と情報を交換する
などが考えられます。
 
ただ、事業所によっては、そうしたいと思っていても、時間が足りない、人がいない、あるいは、どこに何を聞けばいいか分からない・・・・・といった事情があるかもしれません。
 
しかし、そのような状態を放置しておけば、いつか、知識がないがゆえの事故が起きてしまい、大事な仲間に怪我をさせてしまう、あるいは事故による操業停止で、経営上、大きなダメージを被ってしまう、といったことにもなりかねません。 
 
そういった事態を避けるべく対策を思案中の方々に対し、少しでもお役に立てればと思い、このブログを立上げました。
今後、随時掲載していく予定の諸記事が、皆さまが安全を考えるうえでのヒントになれば幸いです。
 
一方、「知識があるのに起きる事故」を防ぐには、経営者の熱意、不断の安全活動と教育訓練、そして、これがなかなかに難しいことではありますが、仕事中の緊張感を常に持続させる・・・といった、地道な努力あるのみだと思っています。
ただ、そのようなことは、あえて、このブログで触れなくても、産業安全について真摯に考えている人でしたら、骨の髄までしみ込んでいるでしょうから、ここでは、説明は省略します。


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事故は、何故、起きるのか?

 

その理由、原因については、古今東西、斯界の有識者などによって多種多様な観点から論じられてきましたが、私としては、畢竟、「知識がないこと」ならびに「ヒューマンエラー」の、いずれかに集約できるだろうと思っています。

 

「知識がないために起きる事故」を未然に防止するには、事故防止に関するさまざまな知識を習得しておくことが大切です。

具体的には、安全工学的なこと、安全管理に関すること、過去の事故事例から学びとるべき教訓などです。

 

一方、「ヒューマンエラーによる事故」を防ぐためには、ヒューマンエラーに関する理解を深めるとともに、エラーを起こさせないような環境、管理体制を整えておくことが大切です。

 

本ブログでは、それら2つの視点に立ち、産業現場における事故の撲滅を目指して、以下のような知識、情報を提供することにしました。

□安全工学に関する知識、情報

  ※火災爆発防止に関する知識、情報など

□ヒューマンエラーに関する知識、情報

  ※心理学的知識、情報など

□事故情報、ヒヤリ事例情報

※新情報を入手した時は、最初の記事に追記するスタイルにしています。

※事例によっては、コメントを付記するようにしています。

中でも、事故原因については可能な範囲で推定し、コメントするように試みています。

なぜなら、事故原因がほとんど世に出てこない現状、現時点で得られる情報から何らかの教訓、知見などを読み取り、それをコメントとして書くことで、読者の方々に自職場の安全を考える材料を提供したいと思っているからです。

それが仮に、当該事例の真の原因から外れたコメントだったとしても、コメントとして焦点を当てた部分に事故防止のヒントになることがあるかもしれない・・・そのように思っています。

 


ただし、以下に示す情報は、原則、掲載対象外としました


『ブログ開設当初から』

・原子力、交通、医療、農水などの事故


『ブログ開設後 ;都度、連絡済』

(2012年以降)

・労災統計、災害防止動向

・学校や遊園地、街中のビルなど産業現場以外の場所での事故、トラブル(特に物品落下)

・当初から掲載対象外としていた交通関係の事故、トラブル(特に物品落下)

・一般住宅建設現場での墜落など同種事例が頻繁に起きている事故

・家内工業的産業現場での事故

・設備の破損、腐食、経年劣化などに起因する小トラブル

  *ボイラーチューブ開孔、老朽埋設管の腐食による漏洩 

・単純な転落、挟まれなどの事故

・産業現場における交通事故的な事故

・一般家庭の日常生活でも起きるような事故

・産業廃棄物の収集処理やリサイクルに関する事故

(2013年以降)

・給食に異物混入

・給食を食べてアレルギー

・竜巻

・ヒラメに寄生するクドアで中毒

・鉄道における枕木発火

(2014年以降)

・風車の破損

・樹木倒壊など

・鉄道や橋からのコンクリート落下

・飛行機への落雷

(2015年以降)

・確認不足などによる救急車出動場所間違い

体育館などで滑り込んだ際に床材が刺さる

・カラスやヘビによる停電

・下水道管の老朽化等による水流出で道路陥没
・学校などでプールの給水弁を閉め忘れ

 

    

本ブログに掲載した知識、情報がヒントとなり、一件でも、産業現場における事故が減ることを願っています。

 

 
       労働安全コンサルタント  魚田慎二






 

 

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 プロフィール Profile 
HN:
魚田慎二
性別:
男性
自己紹介:
化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。

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