2023年1月10日19時17分にNHK NEWS WEBから下記趣旨の記事が、現場写真や航跡解説図付きでネット配信されていた。
10日正午すぎ、海上自衛隊の護衛艦が山口県沖の瀬戸内海を航行中にスクリューが故障して自力で航行できない状態となり、その場で停泊を続けています。
海底の岩などに接触したとみられ、海上自衛隊や海上保安庁が詳しい状況を確認しています。
海上自衛隊によりますと、10日午後0時10分ごろ、護衛艦「いなづま」が山口県の周防大島沖の瀬戸内海を航行していたところ、身動きができない状態となりました。
その後、船体の後部にあるスクリューが故障しているのが確認できたということです。
海上保安庁によりますと、護衛艦から「船体に大きな振動があった」と通報があったということで、スクリューが海底の岩などに接触したとみられるということです。
けが人はいませんでしたが、周囲に油が漏れ、夕方までにほぼ回収されたということです。
護衛艦は自力で航行できない状態のため、その場でいかりをおろして停泊を続けていて、海上自衛隊が護衛艦をえい航するための船を現場に派遣しましたが、動かせるのは早くても11日の夜明け以降になる見通しだということです。
「いなづま」は広島県呉基地の第4護衛隊に所属していて、広島県内の造船所で定期検査を受けたあと、10日、周辺の海域で試験運転を行っていたということで、海上自衛隊は今後、事故調査委員会を立ち上げて詳しく調査することにしています。
【流れ出た油を吸着する作業か】
10日午後3時半ごろ、NHKが上空から撮影した山口県周防大島沖の映像では、海上自衛隊の護衛艦1隻が、いかりをおろして海上に停泊している様子が見え、周辺には海上保安庁などの船が複数、航行していました。
護衛艦後方のデッキには20人ほどが集まり、海に向けて白いシートのような物を投げ入れていて、流れ出た油を吸着する作業を進めているとみられます。
また、護衛艦の後方の海上にはボートが出て、手作業でシートを回収している様子が見えます。
【護衛艦の航跡は】
船舶の位置情報などを公開している民間のホームページ「マリントラフィック」によりますと、海上自衛隊の護衛艦「いなづま」は、10日午前7時40分ごろ、造船所がある広島県の因島を出発し、午前9時ごろには愛媛県今治市の沖合を通過したとみられます。
その後、瀬戸内海を南西に進み、正午前に山口県の平郡島と愛媛県伊方町の間の海域で反転したあと、現場の海域に向かったとみられます。
発生時間の午後0時10分ごろには、護衛艦は時速およそ58キロで航行していたと記録されています。
【現場は潮流が速く浅瀬が比較的多い海域】
海上保安庁によりますと、現場は山口県周防大島町の沖家室島の沖合です。
この海域は潮流が速く、浅瀬が比較的多いところで、付近には船舶に対し、岩礁や浅瀬などの障害物を知らせるための灯標が設置されていました。
また、護衛艦が乗り上げた現場は一般の船舶が航行する航路から南に2キロほど離れていたということです。
護衛艦のスクリューが海底の岩などに接触したとみられ、海上保安庁は巡視船艇を派遣し、原因を調べるとともに、周辺に漏れ出た少量の油を希釈する作業を行っているということです。
【 “えい航のめど立たず”海上保安部】
現場の海域を管轄する広島海上保安部によりますと、身動きができなくなった海上自衛隊の護衛艦「いなづま」は、広島県尾道市の因島にある造船大手「ジャパンマリンユナイテッド」の造船所で整備を行っていたということで、10日午前7時45分に試運転のために出発し、現場付近で折り返して呉地方総監部に戻る予定だったということです。
護衛艦に乗っていた乗組員など190人にけが人はいないということです。
護衛艦からはタービン油がおよそ900平方メートルにわたって海に漏れ出しましたが、吸着マットなどを使い、10日夕方までにほぼ回収されたということです。
海上保安庁と海上自衛隊が護衛艦の損傷部分の確認を進めていて、現場には護衛艦をえい航する海上自衛隊の船が到着しているということですが、いつ移動できるか具体的なめどは立っていないということです。
【漁協「被害などの情報は入っていない」】
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【海自の護衛艦 これまでの自力航行できなくなる事故など】
海上自衛隊の護衛艦は、これまでにも浅瀬に乗り上げるなどして、自力で航行できなくなる事故などが起きています。
このうち2005年4月には、沖縄県の沖合を航行していた護衛艦が浅瀬に乗り上げて動けなくなり、当時の艦長が注意を怠ったとして戒告の処分を受けました。
また、10年前の2013年1月には、青森県の沖合を航行していた護衛艦のスクリューが定置網に絡まって、およそ10時間にわたり動けなくなり、海上保安部が当時の航海長を業務上過失往来危険の疑いで書類送検しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230110/k10013945571000.html
1月10日23時40分に読売新聞からは、現場周辺の海図には水深7mの浅瀬も記されており浅瀬を示す「灯標」も設置されている、波はほとんどなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
10日午後0時半頃、山口県・周防大島の南の沖合で、海上自衛隊の護衛艦「いなづま」から「船体に大きな振動があった」と、無線で広島海上保安部に通報があった。
船体後部のスクリューが破損しており、浅瀬に接触した可能性がある。
約170人の乗員にけがはなかった。
同艦は自力で航行できない状態で、海自と海上保安庁が原因を調べている。
防衛省海上幕僚監部などによると、同艦は同0時10分頃、現場付近を航行中に乗員が大きな振動を感じたため、いかりを下ろして停泊した。
二つあるスクリューのプロペラに損傷が確認されたほか、船体後方から約30メートル四方に油が漏れ出していたため、乗員が吸着マットで除去した。
護衛艦は、海図をもとに前方の水深や暗礁の有無などを確認し、安全な航路を選んで航行する。
現場の周辺は、他の船も行き交うが、浅瀬や岩礁が多く、海図上では水深約7メートルの浅瀬も確認されているという。
事故当時の天候は晴れで、波もほとんどなかった。
海上には衝突するような目標は確認できなかったという。
広島海上保安部によると、現場近くには、浅瀬があることを示す「灯標」が設置されていた。
同部は、浅瀬に誤って接触した可能性があるとみている。
柳井海上保安署は、業務上過失往来危険容疑で乗員から事情を聞く。
「いなづま」は、広島県尾道市にある造船大手「ジャパンマリンユナイテッド」の因島事業所のドックで年次検査を受けており、この日は同島から出航し、瀬戸内海でエンジンの状態を確認する試験運転をしていた。
見張りなどは通常の態勢がとられていたという。
同艦は、全長約150メートル、幅約17メートル、水面から船底までの最も深い部分は10・9メートルで、2000年3月に就役した。
海自と海保は、複数の艦艇や巡視船を現場に派遣し、事故調査と船体の損傷状況を確認している。
同艦は自力での航行ができない状態で、えい航も検討する。
「いなづま」艦長の相沢2佐は10日、「海上保安庁の調査に全面的に協力し、事案の原因の究明に努める」とするコメントを出した。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230110-OYT1T50207/
1月11日17時48分にYAHOOニュース(テレビ山口)からは、結構浅いため地元の漁師はあまり近寄らない場所だったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
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現場付近は、地元では「センガイ瀬」と呼ばれ、岩や浅瀬があるため、地元の漁業関係者は、あまり近寄らないといいます。
地元の漁師:
「島と島との間に灯台がたってるよね、岩があるけ。センガイはけっこう浅いよね。あんまり寄らんけどね」
https://news.yahoo.co.jp/articles/079123c2d3cf4d637fde702564546e4a3fd5e07d
1月12日11時32分にYAHOOニュース(中国新聞)からは、海のプロとしてありえない事故ではなかろうか、疑問だらけだという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
ブログ者の抱いた疑問が全て書かれている。
海上自衛隊の艦船うんぬんというより、海のプロとしてありえない事故ではなかろうか。
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最大の問題点はなぜ、危ない浅瀬を通ったのかだ。
いなづまは前日まで広島県尾道市因島のドックで定期点検を受けていた。
試験運転で乗組員とドック関係者の計190人を乗せ、伊予灘を南西に進んだ後に、現場付近で折り返して呉に戻る予定だったという。
試験運転は通常、最大速度を出して操作性を確認する。
事故当時はエンジン関連の試験中だった。
しかし、現場は岩礁が多い「センガイ瀬」と呼ばれる海域であり、漁業者から見れば巨大船が通ることなど考えにくい場所のようだ。
しかも付近には浅瀬を示す灯標が設置され、晴れていて目視は十分可能だった。
そもそもチャート(海図)を見ていれば、通るべき海域でないことはすぐ分かったはずだ。
ルートの選択ミスなのか、目指すルートから外れたのか。
チャートや見張り、ソナーによる確認を手順通りしていたのか。
艦内の意思疎通に問題はなかったのか。通常と違って民間人が乗っていたことは、事故に影響していないのか。
さまざまな疑問が湧いてくる。
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https://news.yahoo.co.jp/articles/76a8fcbf9711700cd4adc563201e1b2e1a3ba520
(2023年5月12日 修正1 ;追記)
2023年5月9日15時38分にNHK山口からは、艦長が航路変更の指示を出した際に幹部は海図を確認しなかった、前方に障害物ありという情報が艦橋には伝えられたが幹部には伝わっていなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
海上自衛隊は、9日、内部の事故調査委員会の調査結果を公表しました。
それによりますと、艦長は、試験が予定より早く進んだため、計画していた航路を変更する指示を出した際に、安全面の検討を行わなかったうえ、時速およそ55キロの最大速度で航行したとして、指揮監督が不適切だったとしています。
また、艦橋で航行を指揮する幹部は、航路変更の指示が出た際に、針路上にある障害物を海図などで確認しなかったうえ、周囲の警戒を行う指揮所に航路変更することを伝えないなど、知識や安全意識が不十分だったとしています。
さらに、指揮所から艦橋に対し、前方に障害物があることが複数回連絡されていたものの、幹部には伝わっておらず、艦内のコミュニケーションが図れていなかったとしています。
これらが事故の要因になったとしたうえで、再発防止策として、艦長の教育訓練を再検討するほか、航行を行う際の安全調査を充実させ、安全に関する情報が幹部に確実に伝わるよう連絡手段を追加するなどとしています。
今回の事故で、護衛艦の修理にかかる費用はおよそ40億円で、修理が完了するまで数年かかる見込みだということで、海上自衛隊は調査結果を踏まえ、関係者の処分を検討するとしています。
今回の事故では、海上保安庁が業務上過失往来危険の疑いで捜査を行っています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/20230509/4060016958.html
(2023年5月19日 修正2 ;追記)
2023年5月17日18時8分にYAHOOニュース(中国新聞)からは、1等航海士の男性が20日以上欠勤したまま行方不明になっているので懲戒免職になったという、という、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
海上自衛隊呉地方総監部(呉市)は17日、正当な理由なく欠勤したとして、護衛艦いなづまの1等海士男性(23)を懲戒免職処分にしたと発表した。
同総監部によると、1等海士は1月22日、課業開始時刻になっても出勤せず、正当な理由なく20日以上欠勤した。
家族は警察に捜索願を出した。
現在も連絡が取れず、行方不明のままという。
海自呉基地(呉市)を母港とするいなづまは、1月10日に山口県周防大島町沖で浅瀬に乗り上げて自力航行できなくなる事故を起こしている。
同総監部は、事故との関連は不明で「本人に確認できていないので欠勤の理由は分からない」としている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/848bc00e5e35166eed8c9cf1ea53e604db889956
(ブログ者コメント)
ネットで調べてみると、1等航海士は実質上の運航責任者らしい。
ということは、これまで報じられた「幹部」は、この人だったのかもしれない。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。