2020年5月11日1時14分に日本経済新聞電子版から下記趣旨の記事が、踏切写真と同種踏切数の棒グラフ付きでネット配信されていた。
遮断機も警報機もない踏切で、歩行者や通行車両が巻き込まれる事故が後を絶たない。
踏切の廃止や遮断機の整備などの対策には多額の費用がかかる。
利便性の面から廃止に反対する住民も多く、問題の解消が進んでいない。
2019年3月、神奈川県逗子市のJR逗子駅近くの踏切で、走行中の電車が線路を横断していた90代男性をはねる死亡事故が起きた。
踏切の長さは35メートルと通常よりも長いが、遮断機も警報機も設置されていなかった。
事故を調査した国の運輸安全委員会は20年3月、「横断前の確認だけでは安全に渡りきるのは困難」と指摘した。
JR東日本横浜支社の担当者は、「逗子市に踏切の廃止を求めてきたが、議論が進まなかった」と明かす。
同社は、警報機や遮断機のスペースが確保できないため設置が難しく、約300メートル離れた歩道橋や別の踏切で代替できるとして、07年に市側に廃止の方針を伝えていた。
廃止できない背景には住民の反対がある。
生活道路として利用する住民からは、迂回するのは不便との声が上がった。
近所の男性(78)は、「買い物や市役所に行く際に渡っており、廃止は困る」と語る。
10年以上住んでいて事故を見たのは初めてといい、「通り慣れた近隣住民しか使わないし、危険だとは感じない」。
同社や市などは歩道橋へ誘導する看板も設けたが、日中は数百人が踏切を通行する。
事故後も住民説明会などを続けるものの、廃止のめどは立っていないという。
国土交通省によると、遮断機も警報機もない踏切は全国に2652カ所(18年度末時点)あり、廃止されたのは18年度までの5年間で329カ所にとどまる。
全国にある踏切全体に占める割合は1割以下だが、安全委によると、同じ5年間で34件の死亡事故が発生している。
18年6月には、佐賀県小城市の踏切に進入した自動車と電車が衝突。
車を運転していた同市の女性(当時29)が亡くなった。
安全委によると、女性は普段、この道とは違う田園地帯を通る道路を使っていたが、農繁期となり、農業用の車両の行き来が増えたために迂回し、踏切を渡ったとみられている。
この踏切では1日に約180本の列車が通行し、最高速度は時速115キロに上る。
1997年以降、ほかにも自動車が接触するなどの事故が3件発生した。
管轄するJR九州は15年以降、同市に廃止や保安設備の設置を要望していた。
死亡事故の後、同社や小城市は急きょ、踏切の自動車の通行を禁止し、道路にポールを設置。
廃止に向けた協議を続けている。
国交省鉄道局によると、安全確保や渋滞解消を目的として、50年間で半数の踏切が廃止され、大半には遮断機などの保安設備が設けられた。
しかし、歩行者や通行車両が少ない踏切では、鉄道会社側も対策に及び腰だ。
「遮断機や警報機の設置には少なくとも1千万円はかかるうえ、点検や補修などの維持費も必要」と大手鉄道会社の担当者は語る。
関西大の安部誠治教授(交通政策)は、「利用者が多ければ歩道橋の設置や線路の高架化も選択肢となるが、保安設備のない踏切は地方に多く、コストのかかる対策は難しい。生活道路として維持するのであれば、まずは過去に事故が起きたことを示す掲示板や警報を設置するなど、すぐにできる対策を急ぐべきだ」と指摘する。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58805790X00C20A5SHJ000/?n_cid=NMAIL007_20200511_A
(ブログ者コメント)
遮断機と警報機がない第4種踏切の問題については、過去にも本ブログで、事例を含め、紹介している。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。