2020年2月11日に掲載した元記事がブログサイト運営会社の字数制限に抵触しましたので、ここに新情報を第2報修正4として掲載します。
第1報(2/2)は下記参照。
https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/10441/
(2020年7月5日 修正4 ;追記)
2020年6月28日2時0分に毎日新聞からは、遺族がマンション管理会社の代表とマンションの区分所有者を告訴した、区分所有者には賠償も求めているという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
遺族がマンション管理会社の代表を業務上過失致死の疑いで県警逗子署に刑事告訴した。
マンションの区分所有者の住民らも過失致死の疑いで告訴し、いずれも受理された。
捜査関係者への取材で判明した。
告訴は23日付。
捜査関係者によると、事故前日、マンションの管理人が斜面に数メートルのひび割れがあるのを発見し、管理会社に伝えていた。
遺族側は、管理会社は適切な措置を講じなかった責任があり、住民らも安全管理を怠ったとしているという。
現場は民有地で、県は2011年に、この斜面一帯を土砂災害警戒区域に指定していた。
事故後、国土交通省国土技術政策総合研究所は「風化を主因とした崩落」と指摘している。
関係者によると、遺族は区分所有者に対し、内容証明郵便(25日付)で総額1億1800万円の損害賠償を求めている。
https://mainichi.jp/articles/20200627/k00/00m/040/180000c
6月27日5時0分に神奈川新聞からは、損害賠償請求に関するやや詳しい記事が下記趣旨でネット配信されていた。
遺族側が同マンションの区分所有者に対し、安全対策を怠っていたとして、総額約1億1800万円の損害賠償を請求したことが26日、関係者への取材で分かった。
同マンションの区分所有者は約40世帯いるが、遺族側の請求への対応を今後協議し、判断するとみられる。
今回の事故の崩落原因については、現地調査を行った国土交通省国土技術政策総合研究所が3月に最終報告を発表。
「水による流動・崩壊ではない」と指摘し、直接的な引き金は不明としつつ、「地表面の低温、凍結、強風の複合的な作用で風化が促進された」などと結論付けている。
関係者によると、遺族側は同研究所の調査結果を踏まえ、崩落が発生しないように安全性を確保するための斜面の管理がなかった結果、事故が起きたなどと訴えている。
亡くなった女子生徒が将来就労することを想定した逸失利益や慰謝料などとして、総額約1億1800万円を請求している。
https://www.kanaloco.jp/article/entry-392885.html
(ブログ者コメント)
〇2011年の県指定に関し、第1報(1/2)では、以下の報道内容も紹介している。
県は、この斜面を「急傾斜地の崩壊」の恐れがあるとして、2011年に土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に指定している。
〇責任問題については、少し前になるが、以下のような解説報道もあった。
(2020年2月21日 週間ダイヤモンド)
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「台風や地震で崩落したわけではないのでマンションの所有者全員か管理組合に責任がある」
現地調査を行った国土交通省は2月14日、報告書(速報)を公表。
「日当たりの悪い斜面のため(地盤を固める)植生が弱く、風化により崩落した」などと結論付けた。
国交省の示した事故原因は、同じような斜面を持つマンションならば他でも起こり得ることを示している。
実際、土砂災害警戒区域に所在する物件は少なくなく、大手デベロッパーや管理会社はこの前代未聞の事故に度肝を抜かれて、自社物件の総点検をこっそり行っている。
だが、最終的に事故の責任はマンションの所有者にある。
「台風や地震によって斜面が崩落したわけではないので、マンションの所有者全員か管理組合が占有者として責任を負うことになるだろう」と話すのは、不動産に詳しい「麹町パートナーズ法律事務所」の神戸靖一郎弁護士だ。
そのうえで、「賠償額は被害者の年齢から7000万~8000万円。遅延損害金や弁護士費用も含めれば、総額1億円を超える可能性もある。もし賠償責任保険が出なければ、所有者全員で自己負担することになるだろう」(神戸弁護士)という。
マンション所有者の負担はそれだけにとどまらない。
不動産関係者は、「人命を失うような事故が起きたことで、物件の資産価値の大幅な低下は避けられない」と、口をそろえる。
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http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/28827
(2月7日6時0分 日刊ゲンダイ DIGITAL)
(神戸靖一郎弁護士のコラム?)
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道路脇にある擁壁上の土ののり面は、あるマンションの敷地となっており、区分所有者が共有している。
傾斜地にあるマンションは少なくないので、自分のマンションで同じ事が起きるのではないかと心配になる人も多いだろう。
こうした事故で被害者に対する損害賠償責任を誰がいくら負担するのか、簡単に解説したい。
民法には「土地工作物責任」という制度がある。
土地の工作物の設置または保存の瑕疵によって損害を生じた場合、占有者(二次的に所有者)が責任を負うというものだ。
「土地の工作物」というのは建物などが典型的だ。
のり面下の石積みの擁壁は工作物に当たるが、土ののり面自体が「工作物」なのか若干疑問はあるものの、宅地造成で作られたものであれば、該当する可能性が高い。
設置または保存の瑕疵は、判例的には「工作物が通常有すべき安全性を欠く」ことをいう。
要するに、土ののり面に欠陥があったり、崩れそうなのに放置したりすることである。
地震や台風の後に事故が起きたわけではないので、土ののり面に瑕疵があったことは十分に考えられるだろう。
いずれの要件もクリアになると、土砂崩れの原因箇所の占有者が「土地工作物責任」を負う。
のり面が原因箇所である場合は、マンションの管理組合または区分所有者全員が占有者となる。
なお、のり面が工作物に当たらない場合も、その管理に過失があれば、管理組合は不法行為責任を負うことになる。
もちろん、のり面に全く瑕疵がない場合は、マンション側は土地工作物責任を負わない。
この場合、被害者側は市道を管理する逗子市に賠償責任の追及を検討することになるが、マンション側に対する請求よりも格段に難易度が高くなる。
さて、仮にマンション側が損害賠償責任を負うとして、その損害額はいくらになるか。
人身事故の損害額は大体の基準が定まっている。
18歳未成年者の死亡事故による損害額は7000万円~8000万円が相場だ。
多くの事案では、訴訟ではなく示談交渉で解決するが、訴訟となった場合は、遅延損害金や護士費用によって、賠償額が1億円を超えることもある。
賠償責任保険が使用できず、管理組合にカネもないということであれば、区分所有者が全員で支払うしかない。
1億円を区分所有者で負担すると、単純計算で、50戸のマンションであれば1戸当たり200万円。100戸だと100万円になる。
徴収に応じない人がいれば、他の区分所有者でその分を立て替えることになる。
それでも支払いができなければ、被害者側は各区分所有者の部屋を強制執行することも、給料を差し押さえることもできる。
【管理組合にお金がなければ区分所有者が負担】
こうした事態を想像すると、事故後、すぐにマンションを売って出て行きたいという区分所有者もいるだろうが、それで責任を免れるかは難しい問題である。
責任を免れるケースもあり得るが、その場合、買主が責任を負担することになる。
マンション側で損害賠償金を支払うとなると、必ず、管理会社に責任を転嫁できないかという声が出てくる。
実際に敷地の管理をしているのは管理会社なので、管理契約の内容や管理実態によっては、一定の損害を負担させることも不可能ではない。
ただし、明らかな落ち度がない限り、素直に支払いに応じる管理会社があるとは思えないので、多くの事案で訴訟提起が必要になるだろう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/268737
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。