2018年6月15日6時30分に日本経済新聞電子版から、下記趣旨の記事が写真や図解付きでネット配信されていた。
「まもなく橋が架設位置に到着! 橋をおろして固定しま
す」。
2018年5月12日から13日にかけて、東京臨海部の道路を封鎖し、重さ1300トンもある巨大な鋼製の橋桁を大型多軸台車で一括架設する夜間工事。
発注者である東京都港湾局は、ツイッターで工事の進捗を逐一、発信していた。
様相が一変したのは、その直後だ。
「橋の架設の際、障害物に接触する恐れが生じたため、(工事は)延期となりました」。
【封鎖した道路を引き返す】
現場にいた作業員らの視線の先にあったのは、架橋地点のそばに立つ1本の支柱だ。
車の通行状況などを観測するため、警視庁が設置した車両感知器だった。
たった1本の支柱が障害となり、1300トンの橋桁は、架設完了まであと一歩のところで引き返す事態となった。
施工していたのは、IHIインフラシステム・JFEエンジニアリング・横河ブリッジ・三井E&S鉄構エンジニアリングの共同企業体(JV)。
東京都江東区有明から、中央防波堤内側埋め立て地、外側埋め立て地を南北に結ぶ「臨港道路南北線」を整備する一環で、外側埋め立て地を東西に走る「東京港臨海道路」の上空を横断する橋を架ける。
【橋桁が支柱にぶつかりそうに】
この橋桁は内部を中空にした箱形断面の鋼製の箱桁(鋼箱桁)で、架設地点から200mほど東側にある臨海道路脇の施工ヤードで組み立てた。
桁の長さは56m、幅も37mと大きい。
左右の張り出し部が長いからだ。
5月12日午後8時、臨海道路の約5kmの区間を通行止めにした後、計176個のタイヤを備えた2台の多軸台車が、鋼箱桁を載せてジャッキアップ。
ヤードから臨海道路まで引き出してタイヤの向きを直角に変え、午後11時ごろから道路上をゆっくりと架設地点まで運んだ。
翌13日午前0時ごろには、多軸台車に載せた鋼箱桁が架設地点に到着。
ジャッキダウンして、道路の左右にあらかじめ施工しておいた橋脚上に下ろすだけとなった。
この時、桁の南西角付近にある張り出し部が、感知器の支柱にぶつかりそうになっていることを現場の作業員らが目視で確認。
JVは架設を諦めて、桁を施工ヤードまで戻した後、予定より3時間も早い13日午前3時に通行止めを解除した。
桁と感知器が接触して壊れるなどの事故はなかった。
【支柱の存在を知っていた】
東京都港湾局港湾整備部によると、JVは感知器の支柱の存在を前もって把握していたという。
JVが事前に提出した施工計画では、桁と支柱が接触する恐れが生じた場合、架設を取りやめて撤収すると書かれていた。
存在が分かっていたはずの感知器の支柱が、なぜ、鋼箱桁の架設当日まで現場に残っていたのか。
JVは、「感知器の支柱は、別工事で事前に数mほど移設する計画だった」と明かす。
ところが、警視庁との協議などに時間がかかるなどして、移設工事が計画よりも遅延。
加えて、JVの担当者は、架設当日までに感知器の支柱が実際に移設されたかどうかの最終確認を怠っていた。
当然、計画通りに移設されているだろう、という思い込みもあった。
失敗に終わった架設工事に要した費用の数1000万円は、IHIインフラシステムJVが負担する。
工期は19年7月末までと余裕があるため、竣工時期に影響はないもようだ。
一連の工事は、「平成27年度中防内5号線橋りょうほか整備工事」として15年7月、鹿島・IHIインフラシステム異工種JVが受注。
契約総額は334億8000万円となっている。
異工種JVは、東西水路横断橋に加え、臨海道路横断橋とそれに取り付く4つのランプ橋の橋梁上下部工事や、道路改良工事の実施設計から施工までを一手に担う。
異工種JVのうち、IHIインフラシステムJVが主に鋼橋の製作と架設を、鹿島・東亜建設工業・竹中土木JVが一般土木工事を、それぞれ手掛ける。
感知器の支柱の移設工事は、鹿島JVの担当だった。
問題の感知器の支柱は5月中に移設。
IHIインフラシステムJVは、予備日としていた6月2日から翌3日にかけて、再度、周辺を通行止めにして鋼箱桁の架設を完了した。
出典
『巨大橋桁、架けられず たった1本の支柱に阻まれ』
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31142710Q8A530C1000000/?n_cid=NMAIL007
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。