2021年12月15日付で毎日新聞東京版から下記趣旨の記事が、エレベーター内で地震に遭った場合の対応説明図付きでネット配信されていた。
10月、東京23区で10年半ぶりに震度5強の地震があり、過去の震災の記憶がよみがえった人も多いだろう。
首都直下地震や南海トラフ地震で懸念されながらも、利用者による対策は進んでおらず、盲点になっているのが、エレベーター内に閉じ込められる問題だ。
閉じ込めに遭遇したら、どうすべきなのか。
日本エレベーター協会によると、全国のエレベーターの台数は今年3月現在、77万2715基。
マンションなどが多い都市部で大地震が起きると、閉じ込めが発生しやすい。
2018年の大阪北部地震では、大阪など11府県で約6万3000基が停止。
うち5府県の346基で閉じ込めがあった。
今年10月に東京都と埼玉県で震度5強を観測した地震では、首都圏を中心に約7万8000基が止まった。
夜間で利用者が少なかったことなどから、閉じ込めは25基にとどまったものの、国の中央防災会議が13年に公表した首都直下地震での想定では、閉じ込めの被災者は「最大約1万7400人」となっている。
なぜ、閉じ込めが起きるのか。
大きな揺れにより、エレベーターのかごがレールから外れるなどのトラブルが起きたり、階の途中で安全装置が働いたりするからだ。
これを避けるため、揺れを検知すると最寄りの階に自動停止して乗客を逃がす「地震時管制運転装置」の設置などが09年、建築基準法施行令で義務づけられた。
日本エレベーター協会によると、全国約77万基のうち、約59万基にこの装置が設置された。
最近では、一旦閉じ込められても、異常がなければ再び動き出し、最寄り階で乗客を逃がす機能が付いたものもある。
それでも、地震によっては、閉じ込めが防げない場合がある。
地震は、振幅が小さく小刻みに揺れる初期微動(P波)の後に、被害をもたらす強い揺れの主要動(S波)が来る。
この装置は、P波を検知すると最寄り階にエレベーターのかごを停止させて、乗客を逃がす仕組みだ。
ところが、震源が近く、最寄り階に到着する前にS波に襲われると、かごが止まってしまう。
また、地震の性質にかかわらず、エレベーターに予備電源がないと、停電が閉じ込めの原因になることもある。
「震源の浅い直下型地震では、震源地から45キロ圏内で震度5強以上の揺れだと、装置があっても閉じ込められる可能性は高い」と、防災対策を進める民間のグループ「災害対策研究会」の釜石事務局長は指摘する。
大阪北部地震の震源は都市部で浅かったこともあり、139基は、この装置を備えていたのに閉じ込めがあった。
全体(346基)の4割に上る。
地震大国でエレベーターに乗っていたら、いつ閉じ込めに遭ってもおかしくない。
だが、マンションを中心に、対応は進んでいない。
閉じ込められた人の救出は、エレベーター保守会社の保守員や消防のレスキュー隊員に任せるのが大前提になっている。
住民による救出活動は2次災害につながる危険性があるためで、それゆえ、住民参加の救出訓練に及び腰の保守会社は多い。
ある大手保守会社の保守員は、「住民による訓練はほとんど聞いたことがない」と明かす。
地震の被害状況によっては、保守会社やレスキュー隊員が駆けつけられない恐れがある。
釜石事務局長は、こうした現状に危機感を持ち、各地の講演会で住民参加の訓練の必要性を訴える。
「住民同士で訓練の必要性や危険性について十分議論し、訓練の実施に向け保守会社と粘り強く交渉してほしい」
【全ての階のボタン押して】
一方、エレベーターの中で大きな揺れがあった場合、どうすればいいのか。
エレベーター保守会社「i-tec24(アイテックツーフォー)」(東京都世田谷区)の吉村専務が教えてくれた。
全国約77万基のうち約18万基には、揺れを検知すると最寄りの階に自動停止する装置が付いていない。
ただ、地震に遭った時、自分がたまたま乗っていたエレベーターにこの装置が付いているかは分からない。
「やってほしいのは、揺れを感じた直後に、全ての階のボタンを押すことです」。
すると、どこかの階に止まって扉が開くかもしれないからだ。
そうしたら、速やかに外へ避難できる。
その後、揺れが大きいと扉が閉まって、保守会社の保守員が点検するまで停止状態になる。
もし、正しい位置で停止した後、扉が閉じて避難し損ねても、焦る必要はない。
エレベーター内の「開」のボタンを押せば開くからだ。
外のボタンを押しても開けられない。
もし、外に出られなかった場合は、できるだけ早く外に知らせることが重要だ。
覚知が早いほど、救出が早まる可能性は高い。
11年の東日本大震災では、覚知までに80分ほどかかった事例があった。
マンションだと、エレベーター内のインターホンのボタンを押すと、管理人室や保守会社などにつながる。
つながらなければ、携帯電話で連絡してもいい。
吉村専務は、「連絡がつけば、保守員は必ず復旧に向かうので、慌てずに救助を待ってほしい。密室で不安になると思うが、閉じ込め自体でけがをすることはほとんどなく、酸欠などの心配もない」と話す。
家族や知人が閉じ込められたら、どうすればいいのか。
その場合、インターホンや携帯電話がつながれば、「中は安全だ」と伝えた上で状況を聞き取り、保守会社や消防のレスキュー隊に救助を求めると、よりスムーズな救出につながる。
【主な地震でのエレベーターの閉じ込め件数】
2011年 3月 東日本大震災 210件
16年 4月 熊本地震 54件
18年 6月 大阪北部地震 346件
21年 10月 東京都と埼玉県で震度5強を観測
した地震 25件
※国土交通省などへの取材に基づき作成
https://mainichi.jp/articles/20211215/ddm/012/040/078000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。