2021年12月14日10時20分に読売新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
業務上のミスなどで生じた損害について、自治体が職員個人に賠償を請求する例が増えている。
住民による行政監視が強まっていることが背景にあるとみられ、民間企業よりも厳しい対応が求められているようだ。
【「迷惑かけられぬ」全額支払い】
兵庫県では昨年11月、県庁の貯水槽の排水弁を約1か月閉め忘れたことで水道代約600万円が余分にかかったとして、県が50歳代の男性職員を訓告処分にし、半額の約300万円の弁済を請求。
職場でカンパを募ることも検討されたが、職員は「迷惑をかけられない」と辞退し、昨年12月に全額を支払った。
京都府向日市では2016年、災害時用の備蓄食料の購入で、納品を確認せずに代金を業者に支払った後に業者が経営破綻。
半数程度の食料が未納になり、市は17年8月、当時の市長、副市長のほか、職員4人に計約750万円を請求した。
【損害の5割】
地方自治法では、役所の物品の損傷などで「故意」か「重過失」が認められる場合、職員に損害賠償を請求できると規定している。
「重過失」に当たるかどうかの判断は、自治体の裁量に委ねられている。
総務省は自治体の職員個人に賠償責任が生じたケースについて、2~4年ごとに統計を取っている。
1995~98年度の4年間は45件だったが、2009~11年度の3年間は54件、16、17年度の2年間は51件と、増加傾向だ。
職員はどの程度弁済すべきなのか。
兵庫県が排水弁の閉め忘れで弁済額の参考にしたのが、東京都立高校で15年、8日間排水バルブが開いた状態でプールに給水を続け、都に約116万円の損害が生じたケースだ。
都は注意義務違反にあたるとして、関係した教職員7人に半額相当の賠償を求め、全員が納付。
この後、全額負担を求める住民訴訟が起こされ、東京地裁は訴えを棄却する一方、設備上の問題などを認め、職員の負担割合は「5割を限度に認めるのが相当」との判断を示した。
一方、企業法務に詳しい村松由紀子弁護士によると、民間企業では、従業員が委縮したり、責任のある仕事を避けたりすることを防ぐため、損害賠償を個人に求めることはほとんどなく、企業側が保険に加入して備えるのが一般的という。
同志社大の太田肇教授(組織論)は、「公務員は、市民の税金を扱っている以上、民間よりも責任が厳しく問われるケースがある」と指摘する。
【情報公開が浸透】
職員個人の賠償責任を問う自治体が増えている背景として、全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士は、住民による行政監視の環境が整ったことを挙げる。
01年に情報公開法が施行され、国の公文書を開示請求できるようになり、市町村でも同趣旨の条例の制定が進み、情報公開が浸透した。
火災保険の契約切り替えができていなかったため、高知市が市営住宅で起きた火災の保険金を受け取れなかったケースでは、発生から4年後の04年に市民から住民監査請求を受けたのを機に、市が関係職員4人に計約700万円の損害賠償を請求した。
総務省によると、自治体を相手取った住民訴訟の件数は、1992~94年度(3年間)に334件だったが、2012、13年度(2年間)は483件、16、17年度(同)は512件に増えた。
新海弁護士は、「情報公開制度や住民訴訟が活用されるようになった結果、役所側のミスや不祥事が表面化し、職員個人の賠償につながっているのではないか」と話している。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211214-OYT1T50058/
(ブログ者コメント)
兵庫県庁と都立高の排水弁閉め忘れ事例は、本ブログでも紹介スミ。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。