2021年7月13日19時9分にYAHOOニュース(東北放送)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
12日午後2時40分頃、女川原発2号機建屋内で猛毒の硫化水素が漏れ出しました。
耐震工事などにあたっていた男女7人が硫化水素を吸って体調不良を訴え、現在も1人が入院中です。
事故の直前、2号機に隣接する1号機建屋内の廃棄物処理施設で、作業員が衣服などを洗濯していました。
硫化水素は洗濯後の廃液に加える硫酸と衣服に付いた汗などが反応して発生するため、廃液タンクに空気を入れて発生を抑えていました。
ところが、何らかの原因で硫化水素が発生してしまい、配管を伝って2号機建屋内に漏れ出したとみられます。
東北電力では、発電施設への影響はないとした上で、事故の原因を調べています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/20236e49958c9ff633884149cd8b2b8a4293d043
7月13日19時6分にYAHOOニュース(河北新報)からは、下記趣旨のやや詳しい記事がネット配信されていた。
東北電力は13日、女川原発(宮城県女川町、石巻市)で協力企業の作業員7人が硫化水素を吸い込み、病院に搬送される事故が12日にあったと発表した。
いずれも軽症という。
防護服などを洗濯した後の廃液のタンクで硫化水素が発生し、排水管を通じて現場に流れ込んだとみられる。
7人は12日午後2時40分ごろ、2号機の制御建屋1、2階で頭痛やめまいなどを訴え、石巻市内の病院を受診した。
硫化水素中毒と診断された50代女性は経過観察のため入院し、13日に退院。
40代女性は帰宅後に改めて体調不良を訴え、13日に入院した。
他の20~40代の男性5人は自宅療養中。
東北電によると、硫化水素は洗濯廃液の処理過程で加える硫酸と、皮脂などを分解するバクテリアが反応して発生する。
事故当時、隣接する1号機の廃棄物処理建屋では、硫化水素発生を抑えるため廃液タンクに空気を注入する作業をしていた。
硫化水素はタンクにつながる排水管を伝わり、2号機の制御建屋に流入した可能性があるという。
石巻署も原因を調べている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f5edbe170b335e2bc63d3a87840878b1931d53df
7月15日19時32分にYAHOOニュース(東日本放送)からは、建屋内の硫化水素濃度は50ppmを超えていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
硫化水素が流れ込んだ制御建屋内では、50ppmを超える値が観測され、めまいや吐き気といった中毒症状を生じる状況にあったということです。
県などによる15日の立ち入り検査では、酸素を送り込む作業が正しく行われていたかや、設備に異常が無かったかなど調べましたが、硫化水素が漏れ出た原因は特定できませんでした。
https://news.yahoo.co.jp/articles/42d8c2735fe41c9f7fb184cd8f4365483e4c8efc
(2021年11月7日 修正1 ;追記)
2021年11月5日18時44分にNHK東北からは、タンク内には8年間撤去していなかった泥状の活性炭があり、その中に含まれていた大量の硫化水素が排気装置の能力を超えて発生したなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
ことし7月、東北電力女川原発で、作業服などを洗濯した際に出る廃液をためるタンクから2号機の制御建屋に硫化水素が流れ込み、吸い込んだ作業員7人がめまいや吐き気などを訴えて、このうち2人が一時、入院しました。
東北電力が原因を調査し、5日、その結果を公表しました。
それによりますと、タンクには廃液から洗剤の成分を取り除く際に出る、活性炭が泥状になった物質が大量にたまっていて、この中に硫化水素が含まれていたということです。
この物質は、タンク内に76立方メートルまでためることができますが、当時、74立方メートルがたまっていて、大量に発生した硫化水素が排気装置の能力を超えたため、配管を通じて、別の建物に流れ込んだということです。
最後にこの物質を撤去したのは、およそ8年前だったということです。
東北電力は、この物質を撤去する頻度を高めるとともに、条件に応じて配管の弁を閉めるなどの再発防止策をまとめました。
東北電力原子力運営課の鈴木課長は、「迷惑をおかけし、おわびします。再発防止対策を確実に実施し、安全確保を徹底していきます」と述べました。
https://www3.nhk.or.jp/tohoku-news/20211105/6000016876.html
2021年11月5日付の東北電力プレスリリ-ス(抜粋)からは、タンク内のスラッジが固まったため空気の経路が限定され攪拌効果が弱まり、そこで従来よりも高い圧力で空気を注入したところ、通常の排気ライン以外の配管を通じて硫化水素が系外に流出したなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
【硫化水素が2号機制御建屋に流出したメカニズム】(別紙3参照)
これまで実施した調査の結果、硫化水素が2号機制御建屋へ流出したメカニズム等について、以下のとおり推定した。
(1)タンクに堆積している多量のスラッジ※3が時間の経過とともに固まったことにより、注入した空気の経路が限定され、硫化水素がスラッジ内に蓄積されている状態となっていた。
(2)このため、定期的(1週間に1回程度)に実施している空気攪拌作業の効果が弱まってきたことから、前回(事象発生の前週)実施した作業では、硫化水素発生の抑制効果改善等を目的に、予め定められた手順に基づき、従来よりも高い供給圧力でタンク内に空気を注入したところ、スラッジがほぐれ、新たな空気の経路が形成された。
(3)こうした状態において、事象発生日当日も、硫化水素発生の抑制等を目的に、従来よりも高い供給圧力で空気攪拌作業を実施したところ、スラッジ内に蓄積していた多量の硫化水素が、新たな空気の経路を通じてタンク内に放出されたが、通常の排気ラインである換気空調系で排気しきれずに、タンクに接続している配管等を通じて系統外へ流出した。
※3
管理区域内で使用した被服の洗濯廃液等に含まれる洗剤成分を除去する際に生じた活性炭等が泥状の固体となったもの。
【事象発生の原因】
本事象の発生に至った原因について、以下のとおり抽出した。
(1)タンク内のスラッジの定期的な排出処理を実施しておらず、長期間にわたりスラッジが多量に堆積した状態となっていた。
(2)当日の空気撹拌作業により硫化水素がタンク内に多量に放出し、換気空調系で排気しきれなかった。
(3)硫化水素が多量に発生した場合に備え、2号機制御建屋への流出を防止するための配管の隔離措置を取っていなかった。
(4)空気攪拌作業にあたり、酸欠作業※4に準じた立入禁止措置、非常時の連絡体制等の措置を取っていなかったことに加えて、硫化水素流出時に協力企業作業員との間での情報共有、避難誘導が円滑に行われなかった。
※4
酸素欠乏症等防止規則に基づき、酸素欠乏症または硫化水素中毒を防止するため、作業方法の確立、作業環境の整備その他必要な措置を講ずる必要がある作業。
【再発防止対策】(別紙4参照)
抽出した原因を踏まえた再発防止対策について、以下のとおり講じることとした。
(1)タンクからスラッジを定期的(年1回以上)に排出するなどし、堆積量が一定レベルを超えないよう維持することとし、その旨を社内文書に規定する。
(2)空気攪拌作業時には、事前に換気空調系の排気量を増やす。
(3)空気攪拌作業時には、タンクから2号機の制御建屋に繋がる配管の弁を閉じ、流出経路を隔離する。
(4)空気攪拌作業時には、酸欠作業に準じた措置を行うとともに、流出経路の隔離措置や漏えい防止、緊急・異常事態が発生した際の報告フロー等について、社内文書に規定するとともに、所員および協力企業作業員へ周知する。
これまで実施してきた空気攪拌作業では、多量の硫化水素が発生し、系統外へ流出した事例がなく、今回のような事象が発生する可能性について予見できなかったことから、今後の作業にあたっては、今回策定した再発防止対策の実施に加えて、硫化水素による人体への影響に鑑み、当該作業の従事者のみならず、その他の作業員への影響も評価するなど、より慎重なリスク想定を行ってまいります。
https://www.tohoku-epco.co.jp/news/atom/1222383_2549.html
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。