2019年10月8日21時54分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
8日午後1時半ごろ、北秋田市森吉の小又峡(こまたきょう)にある「三階滝(さんかいのたき)」付近で男女2人が流されたと119番があった。
いずれも70代で、男性は関東圏などの中高年18人が参加したツアーのガイドで、女性はツアー客。
秋田県警のヘリが小又川の下流部で女性を発見し救助したが、心肺停止で死亡が確認された。
県警と消防が9日も男性の捜索を続ける。
県警によると、男性は秋田県仙北市の会社役員、小野さん(73)、女性は静岡県藤枝市在住とみられ、身元の確認を進めている。
ツアーを企画した旅行会社「クラブツーリズム」(東京都新宿区)によると、秋田の名勝地などを1泊2日で巡る内容で、ガイド1人と添乗員1人が引率していた。
この日は現場に近い森吉山(約1454メートル)に登る予定だったが、天候の悪化で取りやめ、小又峡の散策に変更。
18人のうち16人が参加した。
散策の参加者らから事情を聴いた地元の観光業関係者によると、散策中に小又川が急に増水し、一部の参加者が橋の上に取り残された。
この中にいた女性がバランスを崩し、小野さんが女性を支えようとして一緒に川に転落して流されたという。
残った参加者はその後、自力で脱出し無事だった。
気象庁によると、現場に近い北秋田市阿仁合地区ではこの日未明から断続的に雨が降り、午前9~11時に13ミリを観測していた。
県警は、安全管理面や当時の状況などについて、同社や参加者から事情を聴いている。
現場一帯は県北部に位置し、森吉山の北東山麓(さんろく)にある小又峡は、太平湖の船着き場から三階滝までの1・8キロにわたって遊歩道が整備されている。
県の名勝と天然記念物に指定され、初夏から秋には多くの観光客が訪れる。
現在は紅葉シーズン。
三階滝付近では2015年8月、沢登りをしていた4人グループのうち埼玉県と横浜市の男性2人が滝つぼに転落して死亡する事故が起きている。
https://mainichi.jp/articles/20191008/k00/00m/040/290000c
10月12日付で秋田魁新報からは、下記趣旨の補足的記事が現場写真付きでネット配信されていた。
北秋田市森吉の小又峡(こまたきょう)でツアー客とガイドが死亡した水難事故で、ツアーを企画した旅行会社「クラブツーリズム」(東京)の小山社長が11日、秋田県庁で会見し、小又峡で想定される雨天時の危険性について「把握していなかった」と述べた。
増水した渓流を渡る間に、水位が上昇した状況も明らかにした。
地元ガイドらは小又峡に関し、降雨後に渓流が急激に増水することがあると指摘している。
同社によると、ツアーの企画の際、知識豊富なガイドを交えた会議を開き、コースの危険性についても意見を交わす。
だが、小又峡は同社ツアーのコースに組み込まれていたにもかかわらず、雨天時の水位上昇に関する情報は共有されていなかったという。
増水した渓流を渡る判断は小野さんがしたとし、「添乗員はガイドの資格がなく、現場ではガイドの判断が優先される」と話した。
小野さんは15年ほど前から同社のガイドを務め、ツアー客の人気も高く、信頼していたとした。
添乗員の話として、往路で現場の渓流に架かる橋を通った際は、水量が多くなかったが、帰りは橋の階段の1段目と遊歩道の一部まで増水したと説明。
添乗員は「足場を確保できれば渡れる」と認識したが、小野さんが安全な場所までツアー客を一人ずつ誘導している間に、さらに水位が上昇したという。
小山社長は会見冒頭で謝罪し、「ツアーを管理する役目があり、責任があると認識している」と述べた。
https://www.sakigake.jp/news/article/20191012AK0022/
(2019年10月19日 修正1 ;追記)
2019年10月17日7時30分に毎日新聞から、事故時のやや詳細な状況や記者が現地確認した様子などが現地の写真付きで下記趣旨でネット配信されていた。(新情報に基づき、タイトルも修正した)
北秋田市の渓谷・小又峡(こまたきょう)で8日、雨で増水した川にツアー客と山岳ガイドの2人が流され水死する水難事故が起きた。
・・・・・
関係者によると、当時、一行は三階滝を目指していたが雨が強くなったため途中で折り返し小又峡桟橋に戻る途中だった。
だが、小橋付近まで戻ると川が増水していたため、小野さんはツアー客を橋上などに待機させ、自分の荷物を橋の階段に置いて1人ずつ手をつなぎながら小又峡桟橋側の岩場を渡らせていたという。
加納さんが渡る番となり移動を手伝っていた際にバランスを崩し、一緒に流されたという。
小橋には一時ツアー客7人が取り残されたが、4人は自力で川を渡り、残り3人は水位が低くなってから脱出した。
事故発生時、川の水は小橋の階段の2段目付近まであったとされる。
その高さを測定すると50センチ近くあった。
成人男性の膝丈ほどだ。
岩場は晴れていれば靴のグリップも利くが、ぬれると一気に滑りやすくなる。
凹凸もある地形で、一帯が深さ数十センチの濁流に覆われてしまえば、目での足元の確認は困難となる。
そんな状況下で川を渡っていたことを想定すると背筋が冷たくなった。
小又峡の遊歩道は普段、初心者でも散策を楽しめるコースとされ、スニーカーにジーンズ姿で訪れる人もいるほど。
気軽に非日常の自然を満喫できるのが売りだ。
北秋田市商工観光課によると、小又峡と近くの太平湖には観光客が年3000人前後訪れるという。
ただ、ほとんど手つかずの自然が残る裏返しで、天候が悪化すると全く異なる「顔」を見せる。
地元ガイドらによると、小又峡はV字型の地形になっており、付近の山から流れ込む支流も多い。
それらを流れる雨水が一気に小又峡に集まるため、上流部で雨が降ると短時間で増水するという。
小又峡の下流にある人工湖の太平湖で遊覧船を運営する観光業「ぶなの郷(さと)あきた」の社長・間杉さんらによると、天候悪化の際は千畳敷付近が危険性を判断する一つの指標となる。
間杉さんは船を下りる観光客に飛び石の上の部分に水が来た場合、それ以上の散策はやめるように伝えているという。
小橋も指標の一つで、階段の1段目に水が来ていたら引き返すようにアドバイスしているという。
また、地元のガイドの中には「雨が降りそうだったら小又峡には行かない」と明言する人もいる。
【増水の予測難しく】
地元の森吉山岳会の森川会長(70)によると、小又峡に向かう手前の森吉山(標高1454メートル)では水難事故前日の7日夜から雨が降っていたという。
気象庁によると、最も近い観測地点の北秋田市・阿仁合では8日に降水量が計32ミリを記録。
小又峡付近でも、まとまった雨が降った可能性がある。
記者が小又峡を訪れた時は、阿仁合の観測地点では、その前日、前々日とほぼ降雨を記録していなかった。
小又峡では水が引き、川の透明度も高かった。
森川会長は「小又峡では雨が降っていなくても、山の奥の方で降っているために水がどっと押し寄せることもある。増水の予測は難しい」と指摘。今回の水難事故については、「急に水かさが増えたのではないだろうか。橋の上で待機すればよかったという声もあるが、ガイドは、客の行程の帰りの時間を気にしがち。小野さんはガイドの経験も豊富な方だったが、難しい判断を迫られたのだろう」と話した。
https://mainichi.jp/articles/20191016/k00/00m/040/300000c
10月18日19時27分にNHK秋田からは、ツアー会社が悪天候時のツアー中止判断基準を作るという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
ツアーを企画した東京の旅行会社によりますと、今月8日は当初、北秋田市にある森吉山での登山を予定していましたが、当日の朝、雨が降っていたため、渓流付近の散策に行程を変更しました。
この変更は、ガイドの意見を参考に、会社の担当者が最終的に判断したということで、会社側は、悪天候の際に山の散策などを取りやめる会社の判断基準がなかったことなどから、渓流付近の散策を事前に中止しなかったとしています。
このため、この会社では、ツアーで計画している登山や山の散策について、事前に中止することを判断するため、雨量や風速などの具体的な基準を新たにつくり、来年春から運用する方針を決めました。
ツアーを企画した「クラブツーリズム」は、「今回の事故を重く受け止めている。お客さまの安全を最優先に考え、ツアーの内容が当初と変わることになっても、理解してもらえるよう努めたい」と話しています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/akita/20191018/6010005147.html
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。