2023年2月10日20時17分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
滋賀県立琵琶湖博物館(草津市下物町)で10日朝、ビワコオオナマズ1匹を飼育していた水族展示室の大型水槽のアクリルが破損し、約100トンの水が流れ出た。
通路が最大約62センチの深さに浸水、押し流された物がぶつかった衝撃で壁に穴が開くなどした。
原因は不明。
来館者はおらず、人的被害はなかったが、1996年の開館以来、最悪の事故となった。
安全性が確認されるまで、水族展示室は閉鎖される。
【100t流出、正面の壁に大穴】
博物館によると、水槽は円柱状で高さ3・8メートル、直径5・1メートル。
背面はコンクリート製、前面は厚さ4センチのアクリル製となっている。
水槽内には水が約78・4トン、水を浄化するろ過槽には約24トンが入っていた。
10日午前8時20分ごろ、ろ過槽の水位低下警報を防災監視センターが受信、駆けつけた飼育員が水槽破損を確認した。
水槽正面のアクリル部分が幅約2メートル、高さ約3・5メートルにわたって割れており、約100トンの水が一気に流れ出たらしい。
水槽内にあったガラス繊維製の擬岩が崩れ、一部は外に押し流された。
水槽正面の壁には、擬岩の破片が激突したとみられる大きな穴が開いた。
展示室の通路は半分が水につかった。
ビワコオオナマズは体長85センチで、同日午後2時過ぎ、水が残っていた水槽の底で発見、救助された。
すり傷がみられるものの、「命に別条はない」という。
【9日の検査では異常なし】
水槽は、9日夕の目視検査では異常はなかった。
開館当時から利用されてきたが、「水族館の水槽としては比較的新しい。老朽化では片付けられない問題の可能性がある」という。
博物館で記者会見した西村副館長は、「水槽の破損は、まったく想定していなかった。来館者の安全確保、危機管理を今後、しっかり検討しなければならない」と述べた。
https://mainichi.jp/articles/20230210/k00/00m/040/278000c
2月13日20時43分にYAHOOニュース(テレビ朝日)からは、考えられる原因について、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
・・・
なぜ突然、水槽は割れたのでしょうか。
県立琵琶湖博物館:
「基本的には前兆というものは全くございません。
前の日の夕方にも目視による点検を行っていて、異常は確認されていない」
琵琶湖博物館では老朽の可能性は低いとし、事故が確認される前日の9日夕方ごろも異常はなかったとしています。
県立琵琶湖博物館:
「異常がないかの目視による巡回は毎日、行っている」
前日、異常が無かったものがなぜ突然に…。
水槽を作る会社に話を聞くと。
有限会社キィーズ代表・棚倉さん:
「まず考えられるのが、アクリル自体が割れた」
考えられる原因について、水槽を作る会社に事故原因の可能性について聞きました。
有限会社キィーズ代表・棚倉さん:
「擬岩というイミテーションの石かもしれないんですけど、そういったものが組み込まれているので、それが中で崩れた」
さらに、水槽内の床が沈んだ可能性もあるといいます。
有限会社キィーズ代表・棚倉さん:
「長年にわたって力がかかって割れた。おそらく、そういうことも考えられる」
琵琶湖博物館は、水槽が破損した原因は調査中としていますが、人為的なものである可能性は低いとみています。
琵琶湖博物館では大型水槽の破損を受け、観覧料を800円から550円に下げると発表しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/231369853418caa2e86d86f911a88a6b347962d6
(ブログ者コメント)
同種事故としては昨年末、ベルリンでアクリル製の大型水槽(2003年設置)が破損している。(本ブログにも掲載スミ)
(2023年9月4日 修正1 ;追記)
2023年9月1日20時47分に産経新聞からは、アクリル板の背面に擬岩装着用のモルタルが塗られたことで板の膨張が圧迫された、過去にシーリング材などの溶剤でクラックが発生し削り取っていたが微小クラックが残っていたなどとする報告書が公表されたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
原因を調査していた第三者委員会は1日、報告書を公表した。
破損の原因について、アクリル面の一部に擬岩を固定するためのモルタルが塗布されたことでアクリル全体が歪み、薬品によって発生した小さなクラック(裂け目、割れ目)が拡大し、破損した可能性を指摘した。
博物館では、日本動物園水族館協会前事務局長の岡田尚憲氏を委員長とする第三者委員会を設置し、原因を調査してきた。
今回、報告書をまとめ、岡田委員長が高橋啓一館長に手渡した。
報告書では破損原因の推定として、
①アクリル板の厚さの不足
②アクリル板の経年劣化
③急激な温度変化
④アクリル板の拘束(圧迫)
⑤薬品によって発生したクラック
⑥過去の修理
を指摘。
とりわけ④のアクリル板の拘束と⑤のクラックが関与した可能性に触れ、「水槽を破損させた直接的な原因」とした。
アクリル製の水槽には、観覧するための前面と擬岩に覆われた背面があり、アクリルは水圧と吸水によって膨張する性質がある。
背面のアクリルには擬岩を装着するためのモルタルが塗布されていたため、膨張が圧迫される一方、前面に膨張する力が集中し、破損につながった可能性が考えられるという。
また水槽では、破損面と擬岩の間に薬品によるクラックも発見された。
過去にはシーリング材などに含まれる溶剤が原因とみられるクラックが見つかっており、平成16年、削り取りの工事が実施されていた。
報告書では、この段階では見つからないほどの小さかったクラックが、その後のアクリルの歪みや劣化に伴って成長したと推定した。
こうした可能性を踏まえ、報告書は根本的な破損原因として「アクリル水槽の特性に関する関係者間の共通理解と意思疎通の不足」も指摘した。
https://www.sankei.com/article/20230901-FIVPRKFLKNOTRORJTCH2RYFWLA/
9月2日付で毎日新聞滋賀版からは、報告書では工事業者間で素材や構造の問題点が共有できていなかったと指摘された、3月2日にも中型水槽で亀裂が見つかっていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
事故の原因などを調査する第三者委員会(岡田尚憲委員長)は1日、水槽工事に関わった業者間の情報共有が不十分で、素材や構造の問題点が共有できていなかったことが破損の大きな原因だとする報告書を、高橋啓一館長に提出した。
事故は2月10日に、ビワコオオナマズを展示していた直径5・1メートル、高さ3・8メートルの大型円筒水槽で発生し、周囲が最大約70センチ浸水した。
3月2日には直方体の中型水槽1基にも亀裂が見つかった。
両事故とも、人的及び展示魚類への被害はなかった。
県は3月12日に第三者委による調査を開始し、委員は事故現場の検証や原因究明の討議を重ねてきた。
報告書は大型円筒水槽の事故について、岩を模した展示物を水槽の外壁となるアクリル板に接するように設置したことでアクリル板の膨張が妨げられ、負荷が生じた可能性を指摘。
また、水槽建設時に使用した接着剤が原因で生じた細かなひび割れが破損の一因になった可能性も示唆した。
中型水槽については、アクリル板同士の接着強度不足などを原因に挙げた。
そのうえで、「大型水槽建築という特殊な工事には異業種の業者が関わるが、全工程を通じた情報共有ができる体制がないまま、設計や施工が進んだことが根源的な原因」と結論づけた。
高橋館長は「報告書を熟読し、これから整備する新しい水槽に反映させていく。報告書は広く公開し、全国の水族館の水槽点検などに活用してもらいたい」と話した。
https://mainichi.jp/articles/20230902/ddl/k25/040/200000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。