2020年6月17日5時0分に神奈川新聞から、下記趣旨の記事が複数枚の写真付きでネット配信されていた。
16日午後1時25分ごろ、横浜市中区の横浜港大さん橋に着岸中のクルーズ船「飛鳥Ⅱ」(約5万トン)から「最上部で火災が発生した」と第3管区海上保安本部に無線で通報があった。
市消防局の消防車両約30台が消火活動に当たり、約3時間半後に鎮火した。
当時、乗客はおらず、乗組員153人がいたが、けが人はなかった。
乗組員は整備作業に従事していたという。
県警などが出火原因を調べる。
所有する郵船クルーズ(横浜市西区)や市によると、火元は最上階の12階にある資材庫内で、約50平方メートルを焼いた。
資材庫には、シーツやカーペットなどが保管されていたという。
国の運輸安全委員会は17日以降、船舶事故調査官3人を派遣し、火災の調査に当たる。
飛鳥Ⅱは、2006年2月に就航。
全長241メートル、全幅約30メートルで、436の客室を備える国内最大のクルーズ船。
横浜港を母港にしており、4月1日に帰港し、大さん橋に着岸していた。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今後の運航は未定になっている。
現場では黒煙が上がり、多くの消防車両が駆け付け、一時、騒然となった。
横浜海上保安部の巡視艇など5隻も現場海域の警戒に当たった。
消火活動を見守った男性(46)は、「飛鳥Ⅱは横浜市民に最も愛されているクルーズ船。コロナ禍から立ち直りつつある中で、火災はショックだ」と不安そうに話した。
https://www.kanaloco.jp/article/entry-382696.html
6月20日6時25分にNHK NEWS WEBからは、溶接の熱が伝わって資材置き場の鉄の壁が高温になったらしいという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
19日、国の運輸安全委員会の船舶事故調査官3人が初めて現場に入って詳しく調べた結果、当時、近くでは1500度を超える高温になるバーナーを使って溶接作業が行われていたことが分かったということです。
これまでの調べでは、溶接で出た火の粉が原因の可能性もあるとみられていましたが、事故調査官によりますと、現場の構造などから溶接の熱が伝わって資材置き場の鉄の壁が高温になり、資材置き場の中にあった物から発火した可能性が高いということです。
火が出たとみられる壁際の燃えかたが最も激しかったということで、運輸安全委員会は引き続き原因を調べることにしています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200620/k10012477801000.html
6月19日20時14分に産経新聞からは、通気管の中で溶接作業が行われていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
「飛鳥II」の資材庫が焼けた火災は、資材庫周辺の溶接作業で発生した1500度を超える高温が伝わり、出火した可能性が高いことが19日、分かった。
船内を調査した運輸安全委員会の船舶事故調査官が明らかにした。
愛甲主管調査官によると、溶接作業が行われていたのは通気管の中で、資材庫と隔てる鉄板に目立った隙間や穴はなかった。
溶接作業の熱が鉄板を通じて資材庫内のシーツやカーペットに伝わり、発火したとみられる。
https://www.sankei.com/affairs/news/200619/afr2006190031-n1.html
2021年7月29日10時57分に読売新聞からは、運輸安全委から報告書が公表されたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
運輸安全委員会は29日、修繕で床板を切断した際の熱が原因の可能性が高いとする調査報告書を公表した。
作業時の安全確認も不十分だったとし、運航する「郵船クルーズ」(横浜市)に安全教育の実施などを求めた。
報告書によると、火災は昨年6月16日午後1時過ぎ、同船最上階の倉庫で発生。
壁(厚さ約7ミリ)や家具補修用の布などを焼いた。
けが人はなかった。
当時、倉庫に隣接する換気用通路では、乗員が腐食した鋼製の床板(同)を、高圧ガスと炎を噴射する工具を使って切断していた。
安全委は、この時に生じた高温の熱が倉庫内の壁際にあった段ボール箱に伝わり、出火したと判断した。
同社は、火気作業時には近くに燃えやすいものがないことの確認や船長への報告を定めていたが、調査報告書は「安全措置が確認されずに切断作業が行われ、発火、延焼した」と結論付けた。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210729-OYT1T50200/
7月29日10時14分に時事ドットコムからは、壁で隔てられた倉庫は火気使用時の可燃物有無確認の対象外だと考えていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。(新情報に基づき、タイトルも修正した)
運輸安全委員会は29日、直近の甲板で行われていた床の修繕作業で生じた熱が壁越しに伝わり、倉庫内の段ボール箱が発火したとする調査報告書を公表した。
報告書などによると、甲板では床板をガス切断する作業をしていた。
火を使う作業の際、責任者が付近に可燃物がないか確認する必要があったが、壁で隔てられた倉庫は対象外と考え、確認していなかったという。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021072900348&g=soc
7月29日11時34分にNHK NEWS WEBからは、監督者は床下だけが安全確認の対象だと認識していたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
調査報告書によりますと、当時、資材置き場の周辺では、鉄製の壁とつながった床板をガスバーナーで切断する作業を行っていて、壁に高温の熱が伝わったことで、そばにあった段ボールが発火し、燃え広がった可能性が高いとしています。
火を使う作業では、船で定められた手順書で周辺も含めた安全確認が求められていたものの、作業の監督者が床下のみを確認対象と認識していたなど、安全確認が不十分だったと指摘しています。
また、任意で設置されていたスプリンクラーも、ポンプが自動に作動する設定ではなく、十分に水が出ていなかったということです。
事故の後、船の運航管理会社は、火を使う作業の研修のほか、手順書の記述を見直すなどの防止策をとったということです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210729/k10013167071000.html
7月29日10時0分にYAHOOニュース(共同通信)からは、修理作業の現場責任者は部下に任せきりだったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
報告書によると、修理作業の現場責任者を務める担当部長は、普段から担当技師と整備士に任せきりで、当日も立ち会わなかった。
作業の許可証は、本来の船長に代わり、航海士が勝手に署名していた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/35c3862143493059a268b7e8d2b6fff1c195f318
以下は、伝熱による温度上昇と保管されていた資材類の発火点を比較した調査報告書の記述。
(p14/36)
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酸素ガス切断に関する文献*4によれば、板厚12mmの軟鋼製鋼板を試験体として切断するガス切断試験(以下「ガス切断試験事例」という。)において、予熱ガスに水素LP混合ガスを使用し、試験体に対して切断火口から噴射する火炎を 300mm/min.の速度で進め、試験体とした鋼板の加熱表面から2m下方及び加熱 線上から正横方向に20mm離れた位置で、切断中の被切断材温度を測定したところ、測定位置での温度が約300℃となることが報告されている。
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一般的に、US室に保管されていたような布、木材、紙等の可燃物の発火点は、 ポリエステルが255~260℃、綿が366℃(化繊便覧第3版)、杉等の木材が280~400℃、紙類が290(新聞紙)~450℃(上質紙)で、ダンボールが250℃であり、化学繊維の布、古紙を含むダンボール等は、本ガス切断試験事例で測定されたような熱が伝導した場合、発火点に達して発火する可能性があり、燃焼については、綿が速やかに燃え、ポリエステルが黒い煙(煤)を出して溶融しながら燃えるという。
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図8(p17/36)
https://www.mlit.go.jp/jtsb/ship/rep-acci/2021/MA2021-7-1_2020tk0004.pdf
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。