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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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2011年11月17日12時17分に、NHK熊本から下記趣旨の記事がネット配信されていた。

ことし5月、熊本市のメッキ工場「K防錆工業株式会社」で男性が窒息して死亡した事故で、特定化学物質を扱う責任者を選任していなかったとして、会社と51歳の製造次長が労安法違反の疑いで17日、書類送検された。

この事故は、ことし5月12日、当時52歳の男性社員が排水処理施設の排水を浄化するタンクの中で倒れ死亡したもの。
労基署によると、男性はタンクの中に入って配管の詰まりを取り除いていたところ、使っていた塩化水素でタンク内の酸素の濃度が下がり窒息したという。

労基署によると、この工場では塩化水素を扱う時に義務づけられている「特定化学物質作業主任者」を選任せずに男性に作業させていたという。


出典URL■■■


一方、11月18日付の朝日新聞熊本全県版(聞蔵)からは、「作業員が窒息死」というタイトルで下記趣旨の記事がネット配信されていた。ただ、作業していた状況がNHK報道とは異なった記述になっている。

容疑は、特定化学物質作業主任者を置かず、男性作業員に塩化水素がたまった調整槽(縦・横1m、深さ1.5m)で作業させた疑い。
作業員は倒れた状態で見つかり、救急搬送されたが、呼吸機能障害で死亡した。




(ブログ者コメント)

□事故が起きたタンクは、両記事から考えると、排水に塩酸を加えてph調整するためのタンクだと思われる。

□そのタンク内で、NHKは「配管の詰まりを塩化水素を使って取り除いていた」といい、朝日新聞は「塩化水素が溜まった調整槽で作業していた」という。 どちらが正だろうか?
前者であれば、配管スケールを塩酸で溶解洗浄していたのかもしれない。
後者であれば、まだ塩化水素臭のするタンク内で詰まり除去作業をしていたのかもしれない。
いずれにせよ、深さが1.5mしかないタンクの中で、作業中に窒息死したという状況が、よくわからない。立てば新鮮な空気に触れられるほどの深さしかないからだ。
たとえ浅くても、酸欠場所に入れば一発でアウト。確かにそんな事例は山ほどある。しかし今回は「作業中に死亡した」という報道。徐々に酸欠状態になったものと思われる。
一体、何がどうなったのだろうか?

□そもそも、両記事ともに「窒息死」となっているが、本当だろうか?
塩化水素蒸気による中毒死ではないのか?
窒息=酸欠になる前に目の刺激とか中毒症状が起きて、とても酸欠になるまでタンク内には居られない筈だ、とブログ者は考える。
窒息死とは、司法解剖した結果の判断だろうか?
それとも被災者発見時にタンク内の酸素濃度を測定し、酸欠レベルになっていたから、そう判断したのだろうか?
委細不明。 そこで、以下の考察を試みた。

□「考察」
塩化水素は、常温では塩酸という液体状態で存在する。 その塩酸から発生した塩化水素蒸気で、どの程度、酸欠状態になるものか?
飽和蒸気圧の観点から考察すると、以下のMSDSには、36%濃度の塩酸の飽和蒸気圧は、20℃で106mmHg、40℃で322mmHgという記載がある。
    
 ■■■

5月のタンク内温度は高くても40℃だろう。その温度であれば、タンク内に塩酸液があったとすれば、密閉空間の半分近い容積を塩化水素蒸気が占める計算になる。
よって、タンク内に塩化水素蒸気が充満し、酸欠状態になっていた可能性は十分にある。
しかし、同」MSDSによれば、5分間のLCL0(吸入最小致死濃度)は3000ppm、つまり0.3%だ。 これでは、酸欠になる前に塩化水素中毒で死んでしまう。
それ以前に、以下の資料によれば、数10ppmの段階で目や鼻が刺激されるので、とてもじゃないが、タンク内には居り続けられないだろう。
    
 ■■■

□結局、今回の事故は、身を屈めるか何かした時に、瞬間的に高濃度の塩化水素蒸気を吸込んで中毒死した、あるいは蒸気を吸込んだ時に意識を失い、そのまま周囲が酸欠状態に移行して窒息死したものではないだろうか?
その辺、熊本労基署や県警のホームページなど、情報がありそうなところを探してみたが、本ブログ記載以外の情報は見つからなかった。


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魚田慎二
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自己紹介:
化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。

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