2020年6月19日19時17分にNHK富山から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
去年11月、富山市で福祉車両と乗用車が衝突し、車いすの高齢者が死亡した事故で、検察は19日、乗用車の運転手を過失運転致死の罪で在宅起訴しました。
捜査関係者によりますと、亡くなった高齢者はシートベルトで腹部を圧迫されるなどしたため死亡したとみられるということです。
去年11月、富山市高木南の住宅街の市道でデイサービスの利用者5人を載せた福祉車両と乗用車が衝突し、福祉車両に車いすのまま乗っていた吉田さん(女性、当時94)が事故の2日後に死亡しました。
検察は乗用車を運転していた富山市の47歳の男が考え事をしていたため、ハンドル操作を誤ってセンターラインを超え、対向車と衝突したとして、過失運転致死の罪できょう、在宅起訴しました。
この事故では、福祉車両の座席や補助いすに座っていたほかの4人のお年寄りは、いずれも軽いけがでした。
一方、死亡した女性は車いすのまま乗車し、2点式と呼ばれる腰にかけるシートベルトをしていました。
捜査関係者によりますと、この事故ではシートベルトが衝撃を緩和する腰骨の部分に当たらず、腹部を圧迫したほか、上半身が不安定になって前後に激しく揺さぶられたことで死亡したとみられるということです。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/toyama/20200619/3060004786.html
(ブログ者コメント)
関連情報調査結果、車椅子の構造にまで言及した、かなり詳しい記事が今年1月、複数の解説写真とともにNHKからネット配信されていた。
(2020年1月22日 NHK未来スイッチ)
デイサービスなどの福祉施設の車にお年寄りが車いすごと乗り込んで、送迎してもらう様子をよく見かけるようになりました。
でも、送迎中に起きた死亡事故の取材を進める中で、車いすメーカーの開発担当者は言いました。
「通常の車いすは、車での送迎を想定していないんです」
高齢化で増える車いすの送迎の安全を、もう一度考えてほしいのです。
【車いすのお年寄りだけが死亡した】
富山市で去年(2019年)11月2日、デイサービスなどの福祉施設に送迎する車の事故が相次いで、車いすのお年寄り2人が亡くなりました。
富山市高木南でお年寄り5人を乗せて走行していて、事故に遭った送迎車です。
センターラインを超えてきた乗用車と衝突し、運転手やスタッフにけがはなく、座席にいた4人の高齢者はいずれも軽いけがでした。
車いすに乗っていた吉田さん(94)だけが亡くなったのです。
【安全対策をしていたのに】
吉田さんが通っていたデイサービスでは、職員が利用者を車で送迎していました。
施設で使っていた車両はリフトで車いすごと乗り降りできるもので、「3点式」のシートベルトを装着できるタイプでした。
しかし、亡くなった吉田さんは高齢で姿勢が前かがみだったため、3点式だとベルトが首にかかって危ないと判断され、腰の部分にだけかかる「2点式」のベルトを装着していました。
「私たちにできる安全対策はとっていました。
車いすの固定も職員が確認し、シートベルトの装着も付き添いの職員がしたと聞いています。
明らかな急発進や急ブレーキをしたという話も聞いていません。
私たちの車に乗っていただいていた方が事故にあわれたことは、非常にショックで申し訳ないと思っています」
【ベルトが腹部を圧迫したか】
なぜ車いすの吉田さんだけが亡くなったのでしょうか。
車いすの利用者が時速50キロで衝突したときの様子を再現した実験映像です。
上半身などに強い衝撃が加わることがわかります。
捜査関係者によると、吉田さんは事故の衝撃でシートベルトがずれ、胸を圧迫されたり、前後に激しく揺さぶられたりしたことで死亡したとみられています。
同じ日に起きた別の送迎車の事故でも、亡くなった男性はベルトで腹部を圧迫されていました。
【車いすとシートベルトは「相性が悪い」】
利用者を守るはずのシートベルトが逆に命を脅かすことにつながる理由は、車いすとの「相性の悪さ」にあります。
福祉車両の販売やレンタルの事業者でつくる「日本福祉車両協会」が事故のあと、送迎時の安全について講習会を開くというので取材に向かいました。
広島市の福祉施設で行われた講習会で、担当者は次の点を強調していました。
・シートベルトは、車の座席と同じ「3点式」が基本
・お年寄りの体の状況によっては「2点式」にならざるを得ない場合もある
・腰の部分のシートベルトは、衝突時に腹部を圧迫しないよう、腰骨にしっかりあてる
ここで課題があります。
車いすには「アームレスト」と呼ばれるひじ掛けがあり、この上にベルトを通すと腰骨にあたりません。
アームレストの下を通す必要がありますが、これでも不十分なのです。
実は、多くの車いすには、衣服の巻き込みを防ぐ「スカートガード」と呼ばれる板がついています。
これが邪魔になって、ベルトが腰骨に当たらない場合があるということです。
スカートガードの下を通せばいいのですが、物理的にそれができない車いすも少なくありません。
「車いすの送迎中の事故は後を絶ちません。
ただ、シートベルトの効果的なかけ方について、介護施設の現場の職員も悩んでいるということをよく聞きます。
その方法は車いすによって様々なので、こうした講習会を通じて、それぞれのケースでどうしたらいいのかをよく考えてくださいと伝えています」
【見過ごされてきた車いすの安全対策】
法律上の規制はどうなっているのでしょうか?
私たちが利用する車の座席では、3点式シートベルトやヘッドレストの装備や着用、さらには衝突の際の強度まで、法律で具体的に定められています。
一方で車いすは、シートベルトについて座席ほど細かな義務づけはありません。
ヘッドレストや車いすの強度については、なにも決まりがありません。
理由について国は、「車いすは利用者の身体機能などによって形状が多種多様で、一律の基準や義務を設けることは難しい」としています。
車いすの事故については、全国でどれぐらい起きているかの統計もありません。
車いすの送迎中の安全対策は、その難しさから見過ごされてきたともいえます。
【「車いすは車載を想定していません」
日常用からパラリンピックのアスリート用まで、さまざまな車いすを製作している岐阜県養老町のメーカーに取材したところ、開口一番、こう言われました。
「通常の車いすは日常の移動を楽にすることを前提に設計してあり、車に載せることを想定していません。
非常に危ない事ですので、できれば車載用の車いすと通常の車いすを使い分けていただけたらと思います」
これが車載での送迎用に開発された車いすです。
特徴は次の4点です。
①シートベルトが腰骨にあたるよう穴が開いている
②ヘッドレストがある
③車いすを床に固定するフックをかけられる
④車の座席並みに20Gの衝撃に耐えられる肉厚のパイプを使用している
会社では、自動車メーカーの求めに応じて、10年以上前にこの車いすを共同開発しましたが、売れるのは年間20台ほどで、あまり普及していないそうです。
車載用の車いすは、複数のメーカーが作っていますが、
①通常の車いすに比べて重かったり、費用が高かったりする
②通常の車いすを送迎で使うことの危険性が知られておらず、ニーズ自体が少ない
こうしたことから広まっていません。
車いすの安全について詳しい、元神奈川県立保健福祉大学講師の藤井直人さんは次のように指摘します。
「車いすのお年寄りも表に出たいのです。
車いすで車に乗って移動することにどういう危険があるか、まず情報として知ってもらうことが必要です。
そのうえで、国やメーカーが協力して送迎用の車いすの安全基準を作り、その利用を広める取り組みが必要です」
【「いつもどおり帰ってくると思っていた」】
富山市の事故で亡くなった吉田さんは絵を描くのが大好きで、風景画をよく描いていたといいます。
4年前に脚を悪くしてから車いすが欠かせなくなり、週3回デイサービスに送迎されてお風呂に入るのを楽しみにしていました。
事故が起きた日も家族はふだんどおり帰ってくるのを待っていました。
(家族)
「もう帰ってくる時間だなあと思ってたんですけど、まさか交通事故に
あうとは思っていませんでした。
100歳まで生きるんじゃないかと思ってたんですけど、ショックです」
介護保険を使って車いすを利用するお年寄りは、全国で73万人に上ります。
送り出した家族のもとへ笑顔で帰ってくるために、車いすの安全対策を社会全体で考えていく時期に来ていると感じます。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/miraiswitch/article/article36/
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。