2021年11月8日23時10分に毎日新聞から下記趣旨の記事が、左半分が崩落したという説明書きのある現場写真付きでネット配信されていた。
JR東海は8日、長野県豊丘村のリニア中央新幹線「伊那山地トンネル」の工事現場で土砂が崩れ、50代の男性作業員が右足を負傷したと発表した。
リニアのトンネル工事では、10月27日に岐阜県中津川市で作業員2人が死傷する崩落事故が起きたばかり
同社によると、8日午前8時20分ごろ、伊那山地トンネル本体を造るための作業用トンネル内(地上入り口から200メートル付近)で、掘削面から5立方メートル(約10トン)の土砂が崩れた。
当時、トンネル内には男性作業員を含む8人がおり、岩盤を爆破する火薬を仕掛ける作業をしていた。
作業員の一人が、掘削面に吹き付けたコンクリートのひび割れが大きくなっている異常に気付いて退避中、崩落が発生し、男性作業員の右足に土砂が当たって軽いけがをしたという。
詳しい事故原因は調査中だが、爆破後の崩落だった前回と違い、今回はコンクリートを吹き付けた掘削面が爆破前に自然に崩落したという。
同社は「国のガイドラインを順守して作業していた」と説明し、安全確認がとれるまで同工区の工事を中断する。
他の工区でも同社の社員が現場に立ち会い、指導徹底を図る。
同社は「原因を調査し、再発防止に努める」とコメントした。
https://mainichi.jp/articles/20211108/k00/00m/040/195000c
11月8日18時10分にYAHOOニュース(日テレNEWS24)からは、肌落ちが起きた、事前に異常に気付いたのは作業責任者だったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
リニア中央新幹線の伊那山地トンネル内で8日、“肌落ち”と呼ばれる、一部の土砂が落下する事態が起きました。
作業中に監視責任者が異常に気づき、退避していたところ、作業員1人の右脚ふくらはぎに土砂の一部が当たり、軽傷だということです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/353b408187bd7948ddbb17f19a804655331f7c7e
11月8日21時23分に読売新聞からは、肌落ちの規模に関し、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
トンネル内の壁面が高さ約5メートル、幅約6メートル、厚さ20~50センチにわたって崩れ落ちた。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211108-OYT1T50162/
11月8日17時50分に朝日新聞からは、負傷の詳細ならびに中津川での事故を受け中断していた工事を今月1日に再開したばかりだったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
本線につながる作業用トンネル(斜坑)の入り口から200メートル付近で事故が発生した。
トンネル先端を爆破するために作業員が爆薬を詰める作業をしていたところ、別の作業員が斜坑内の異変に気づき、逃げるように指示。
先端にいた作業員が退避中、崩れてきた土砂が当たった。
工事会社の車で病院に搬送され、右足ふくらはぎの筋肉の炎症と診断された。
中津川市での事故を受けて、現場では安全対策を確認し、1日から作業を再開していた。
当時、トンネル内では8人が作業中で、厚生労働省の安全のためのガイドラインは守られていたという。
https://www.asahi.com/articles/ASPC85V6HPC8OIPE01F.html
11月9日20時24分にYAHOOニュース(信越放送)からは、肌落ちは通常現象、今回の現場付近には沢山の断層が走っているなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
リニア中央新幹線のトンネル工事で相次いだ事故。
現場の地質や工事を続けていく上での注意点を、地質の専門家に聞きました。
地質学を専門とする信州大学の大塚勉特任教授は、今回の「肌落ち」という現象について、こう説明します。
信州大学・大塚勉特任教授/地域防災減災センター:
「トンネルを掘っていくときに、切り刃で岩石を露出していくわけですね。 岩石が崩れやすかったりもろかったりするとそれが崩れる、そういった現象、通常起こる現象なんですけれども、それを肌落ちと呼んでいます。 しっかりした岩盤、固ければ当然そういったことが起きにくいですし、何らかの原因で柔らかくなってる、あるいは元々の柔らかい地質であれば、そういった現象が起こるのではないかと考えられます」。
今回「肌落ち」が起きた原因については、「現場を見ていないため断定はできない」とした上で、近くには断層がいくつも走っていると指摘します。
大塚特任教授:
「今回の坑口はこのあたりですね。 ここに既存の地質図でも黒い線がたくさん引かれていますけれども、これが地質調査の結果、断層が走っているとされている場所なんですね。 ひょっとしたら断層の影響があって崩れやすい状況に差し掛かっていた可能性もあると思っています」。
大塚特任教授は、今後、安全に工事を続けていくためには、地質の特徴を十分に把握することが必要と話します。
大塚特任教授:
「地質構造に垂直、断層に垂直に掘るときは、次々といろいろな断層にあたる。 断層があると、周りの岩石がその断層運動によって砕かれて破砕帯と呼ばれるもろい地帯を形成します。 地質の特徴を十分予測しながら、掘削していく必要があるのではないでしょうか」。
https://news.yahoo.co.jp/articles/386b753d4160cf87bdc3878d8c398a8eb39dfe46
(2022年4月3日 修正1 ;追記)
2022年1月18日付で事故報告書(全36ページ)が公表されていた。
ブログ者が主要と感じた記述は以下のとおり。
・・・
3-2 切羽の状況
3-2-1 切羽観察 (11ページ)
「4」(※肌落ち発生箇所)での切羽観察でも「1」と同様に、閃緑岩と泥質片麻岩の互層が現れていることが確認され、泥質片麻岩が鏡面の大半を占めていた。
岩石強度は岩片を手に持ってハンマーでたたくと割れる程度であった(図3-4)。
・・・
4.肌落ち災害の発生状況について
8:15~ 8:17 切羽観察 (17ページ)
鏡面から約8m離れた地点から鏡吹付コンクリートにひび割れや剥離が発生していないかを観察。
この時点でも吹付コン クリートにひび割れ等の変状は見られなかったと証言を得ているが、上半上部の観察が十分に行われていなかった可能性がある。
8:17 装薬作業開始
8:20ごろ 変状発見
作業員Aが頂部へ移動する際、鏡面左上において削孔穴を結ぶ形で直線状に入ったひび割れ(幅:約1cm、長さ:約50 cm)を発見し、大声で他の作業員へ危険を知らせた。
作業員Aがひび割れを発見するのとほぼ同時に切羽監視責任者が小片の落下を確認。
切羽の異常を認め大声で作業員に対し退避 16 指示を出した。
作業員Aがひび割れを確認してから2~3秒で肌落ちが発生した。
なお、ひび割れについては削孔穴を結ぶ形で直線状に入っていたので、削孔後に生じたものと考えら れる。
退避
作業員A及び切羽監視責任者の退避合図を受け、ベンチ上にいた作業員C,D,Eは退避行動を開始。
鏡面向かって中央及び右側にいた作業員D,Eは退避を完了した。
鏡面向かって左側にいた作業員Cについては、退避行動中に肌落ちした岩片が当たった(図4-2、図4-3)。
・・・
4-3 肌落ち発生の原因と肌落ちが労災につながった原因について
4-3-1 各作業工程における要因抽出 (21ページ)
鏡吹付コンクリートの厚さについてはコンクリート総使用量で必要厚さを管理しているが、吹付機のオペレータの目視のみで鏡吹付コンクリートの仕上がりを確認していたため、施工時に一部ムラが生じ、 必要な厚さが確保されなかった。(推定)
・・・
5.対策について
・・・
5-2 肌落ちの推定要因に対する施工業者への指導 (26ページ)
〇鏡吹付コンクリートの施工管理
今後は吹付機のオペレータに加え、ずい道等の掘削等作業主任者等、経験年数の豊富な作業員を指名し、仕上がり状態の確認を行う。
また2日以上の休工を伴う週末や長期休工の際には、鏡吹付コンクリートの厚さを基準値より厚くする。
・・・
https://www.pref.nagano.lg.jp/linear-shin/documents/220118report.pdf
(ブログ者コメント)
2022年3月1日にも春日井市のリニア新幹線トンネル工事現場で吹付けたコンクリートが剥がれ落ち1名が負傷する事故が起きている。
そして、その原因は「コンクリートを必要以上に厚く吹き付けていたこと」と報じられた。(本ブログで紹介スミ)
そのこともあって、上記の報告書抜粋は、コンクリート吹付けに関する記述を中心に行った。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。