2018年3月2日18時12分にNHK北九州から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
建設機械の運転教習などを行っている北九州市の教習所が、平成25年から4年間にわたり法律で定められた講習の時間を満たしていなかったとして、福岡労働局はこの教習所を2日から2か月間の業務停止処分とした。
労働局は、この間に運転などの資格を取得した9200人余りは有効な資格を取得していないとして、補講を受けるよう呼びかけている。
出典
『建設機械運転講習時間不足補講を』
http://www3.nhk.or.jp/lnews/kitakyushu/5025686112.html
本件、2017年12月12日11時5分に週間朝日オンラインから、下記趣旨の詳細な記事がネット配信されていた。
製品のデータ改ざん問題で揺れる神戸製鋼所で、グループ企業の新たな不正が発覚した。
クレーンやフォークリフトの運転資格の教習事業などを手がける「コベルコ教習所」(本部・兵庫県明石市)で、法律で定める講習時間が勝手に短縮されていた。
“手抜き講習”によって、約2万3000人が補講や追試を受けなければいけなくなる。
技能講習機関の不正の規模としては過去最大級とみられ、グループの管理体制が改めて問われる。
コベルコ教習所は、大手建設機械メーカーの「コベルコ建機」の100%子会社で、神戸製鋼所の孫会社に当たる。
社員の名刺には「KOBELCO」(コベルコ)のロゴと、「神戸製鋼グループ」の文字が書かれている。
北海道から熊本まで全国に11拠点があり、運転資格取得のための実技教習や労働安全に関わる技能講習などを実施して、多くの受講生を受け入れている。
こうした事業を手がける企業の中では、大手の一角だ。
会社のホームページでは、<「教習」という事業を通じて、労働現場に「安全」をお届けし、豊かな社会の発展に貢献していきます>と、経営理念をうたっている。
だが、それに反するようなことが行われていた。
拠点の一つの「北九州教習センター」(北九州市小倉北区)で、法律で定める講習時間が短縮されていたのだ。
コベルコ教習所は、クレーンやフォークリフトなどに関する様々な技能講習を実施している。
建設会社の社員ら受講者は、講習を受け修了試験に合格すると「技能講習修了証」をもらえる。
クレーンやフォークリフトの運転、重いものをつり上げる「玉掛け」など、危険な業務に就くにはこの修了証が必要だ。
資格がない人を危険な業務に従事させた場合、その会社と経営者は労安法に違反する。
そんな重要な講習で、長年“手抜き”が続いていた。
厚労省の出先機関の福岡労働局は4月17日、北九州教習センターに立ち入り調査した。
その結果、玉掛け技能講習の時間が14分間足りなかったことが判明した。
3時限目は10時55分から11時55分まで60分間、学科の授業をすべきなのに、早めに終えていた。
講習は通常コースで3日間(19時間)あり、14分ぐらいたいしたことはないと思うかもしれない。
しかし、講習時間やその内容は法令で厳格に定められている。
不十分な講習で安全ルールなどを理解しないまま危険な業務に就くと、死亡事故につながる恐れもあるためだ。
時間不足がわかると、受講者は補講を受け、その分野の理解度を確認する試験を再び受けないといけない。
不十分な講習をした事業者には、労働局が業務停止命令などの行政処分を出すこともある。
コベルコ教習所の矢仲社長は、取材に対し、「講習時間は法令で定められている。60分なら60分きちんとやらないとだめなのに、できていなかった」 と謝罪した。
あってはならないはずの時間不足の理由は、意外なものだった。
受講生は、昼食として弁当を業者に注文し、直接購入することになっていた。
その業者が昼休みよりも早めに届けに来ているため、弁当の受け渡しをしやすいように、教習センター側が配慮していたのだ。
たわいもない理由かもしれないが、労働安全に関わる講習がないがしろにされたことを考えると、笑えない問題だ。
結局、4月17日に玉掛け講習を受けていた19人は、足りない分の補講を受けることになった。
福岡労働局は、問題があった北九州教習センターの玉掛け講習について、6月15日から8月14日まで2カ月間の業務停止命令を出した。
そして、ほかにも時間不足がないか調べて、補講などの対応をするよう指示したという。
弁当業者への配慮は、長年続いていた。
玉掛け以外のクレーンやフォークリフトの受講生も弁当を食べるので、時間不足は、ほぼすべての講習で生じているはずだった。
以前、講習を受けたことがある北九州の30代の男性は、こう証言する。
「講習中なのにセンターの幹部が教室に入ってきて、『弁当屋が来ているので講習をやめなさい』と講師に指示していた」
ところがコベルコ教習所は、福岡労働局に、時間不足があったのは玉掛け講習1日分だけだと文書で回答していた。
11月に入り、本誌が問い合わせると、当初は玉掛け講習1日分だけの問題であるかのように説明していた。
弁当業者が長年納入していることを指摘し、事実関係の確認を求めると、12月4日になって時間不足の恐れがある受講者がほかにも多数いることを認めた。
技能講習のほかに、小型建設機械などの特別教育でも問題があり、補講や追試などを受けなければいけないのは最大約2万3000人に上るという。
結果的に、福岡労働局には、“うそ”の報告がされていたことになる。
コベルコ教習所は、「1日分だけの問題でないことはわかっていたが、関係者のヒアリングなどに時間がかかった。労働局には結果として実態と異なる報告をしてしまった」(矢仲社長)と釈明している。
技能講習を巡る不正はこれまでにもあったが、これだけの人数になるのは極めて異例で、過去最大級とみられる。
厚労省の担当者は、「技能講習機関への業務停止命令自体が珍しい。補講の対象者が2万人を超えるような事例は聞いたことがなく、講習制度への信頼を揺るがしかねない」と、問題の深刻さを指摘する。
福岡労働局は、実態と異なる報告がされていたことを問題視。
これまでの経緯について報告を求め、改めて立ち入り調査などをする方針だ。
実は、監督する福岡労働局にも問題があった。
業務停止命令を出した場合は公表すべきなのに、「事務的ミス」でしていなかった。
コベルコ教習所は、予約を断った一部の受講生には知らせたものの、自社のサイトでは玉掛け講習ができないことを「諸事情により」と説明。
処分を受けていることは、ほとんどの人に隠されていた。
「サイトに講習中止のお知らせが突然表示されただけで、労働局の発表もなく、何が起きているのかわからなかった。もみ消されていたのではないかと思ってしまう」(前出の30代男性)
約2万3000人の受講生には、コベルコ教習所がこれから連絡して、補講を受けに来てもらう。
人数が多いため、全員終わるまでには、数年かかる可能性もある。
連絡が取れない受講生もいそうで、不十分な講習を受けたまま、いまも危険な業務に多数が従事している。
さらにコベルコ教習所では、ほかの不正も浮上している。
広島教習センター(広島市安佐南区)の移動式クレーン運転実技教習で、教習時間の不足が見つかった。
詳細は「現在調査中」としているが、複数の拠点で手抜き講習が横行していた疑いもある。
神戸製鋼では10月に製品データの改ざんが発覚。
グループ企業を含め管理体制を強化し、再発防止に取り組んでいる。
新たな不正が明らかになったことは、信頼回復に向けて大きな痛手だ。
神戸製鋼の広報担当者は、「大変申し訳なく、重く受け止めている。コベルコ建機やコベルコ教習所を厳しく指導していきます」としている。
日本労働弁護団幹事長で労災問題に詳しい棗(なつめ)一郎弁護士はこう指摘する。
「技能講習は労災を防ぐための大切な制度。不十分な講習で被害を受けるのは現場で働く人たちだ。時間不足が長年続いていたとすれば、これまで見抜けなかった国の責任も問われる」
出典
『神戸製鋼グループのコベルコ教習所で“手抜き講習” 受講者2万3千人が補講や追試へ』
https://dot.asahi.com/wa/2017121200003.html?page=1
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。