2016年12月25日0時41分に日本経済新聞電子版から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
化学大手が、研究開発中に失敗した実験のデータを保存、活用する仕組みをつくる。
住友化学は、2017年4月から電子材料の開発で、実験内容を成否と関係なく電子データとして記録する。
三菱ケミカルホールディングスも、17年度中に高機能材料で、同様の取り組みを始める。
データの共有によって、同じ失敗の繰り返しを防ぐほか、別の製品開発にも役立てる。
化学メーカーは、さまざまな実験をしながら、電子機器や自動車の部材に使う材料を開発する。
実験で思い通りの結果が出た場合は、これまでも量産化のためにデータを記録してきたが、研究者が「失敗」と感じた場合は、記録しなかったり、個人のノートに書くだけにとどまったりしていた。
住化は17年4月から、電子機器向け部材の研究開発部門の一部で、実験ノートをタブレット端末に切り替える。
成功した実験だけでなく、失敗した場合も、条件や化学反応の結果などをデータとして記録。
別の研究者が似たような実験をする時に、過去の事例をすぐに探せるようにする。
三菱ケミカルHDも、実験結果を共有データとして蓄積する。
このほど、IT(情報技術)企業と組み、データを入力するシステムの試作に着手した。
17年度中に、高機能材料を扱う一部の研究現場で利用を始める。
研究者の利便性を検証しながら、導入する現場を広げる。
両社は、研究者が互いに実験データを参照し合うようにし、失敗した実験を繰り返さないようにすることをめざす。
化学業界では、ある製品の開発で「失敗」と見なした実験結果が、他の製品の開発では貴重な資料になることも少なくない。
住化が16年に発売した和紙のような質感のフィルム「WAPO」は、別の製品の失敗作に研究者が注目したことで生まれた。
水のろ過に使う三菱ケミカルHDの中空糸膜も、別製品の実験で偶然できた材料が開発のきっかけになった。
両社が、失敗した実験データの保存に乗り出す背景には、大量の情報を扱うビッグデータ技術の発達がある。
多くのデータを保存し、そこから必要な情報を拾い出したり、新たな結論を導き出したりすることが容易になっている。
両社は、埋もれた情報を有効活用し、製品開発のペースを速める。
化学業界では、原油価格や市況の影響を受けやすい石油化学製品への依存度を下げ、収益性の高い特殊品に軸足を移す動きが広がっている。
住化は年間約1600億円、三菱ケミカルHDは年に約1400億円を研究開発に投じており、特殊品開発の拡大で、今後、さらに増える見通しだ。
世界で大規模な化学メーカーの合併・統合が相次ぐのも、研究開発の負担増が一因。
研究開発の改革は、業界の大きな課題になっている。
出典
『「失敗」実験をヒットの種に 化学大手、データ活用』
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO11052530U6A221C1TJC000/?n_cid=NMAIL003
(ブログ者コメント)
記事中、別表として、ポストイットなど、失敗や偶然から生まれた身近な商品や素材が6件紹介されている。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。