2020年7月20日付で毎日新聞東京版から、下記趣旨の記事が写真付きでネット配信されていた。
「これは防災業界が猛省すべき事件だ」――。
京都市伏見区の「京都アニメーション」で1年前に起きた放火殺人事件は、国内トップクラスの消火器メーカーにも衝撃を与えた。
スタジオ内にまかれたガソリンは瞬時に燃え広がり、社員ら36人が死亡、34人が重軽傷を負う平成以降最悪の惨事となった。
火災は、なぜ食い止められなかったのか。
今後、同様の事態を防げるのか。
事件を機に、新しい防災機器を開発した技術者らの挑戦を追った。
事件は2019年7月18日午前10時半ごろに起きた。
殺人や現住建造物等放火などの疑いで逮捕された青葉容疑者(42)は、鉄骨3階建てのスタジオに侵入。
1階の入り口付近でガソリンをまき、簡易ライターで放火したとされる。
揮発性の高いガソリンが充満し、一気に燃え広がる「爆燃現象」が起きたとみられ、多くの社員らは逃げる間もなく犠牲になった。
青葉容疑者は「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思った」と供述。
現在は、心理状態などを調べる鑑定留置が行われている。
東証1部上場の消火器メーカー「日本ドライケミカル」(本社・東京都)の技術顧問、高橋さん(男性、58歳)は、「事件で、自分たちが手掛ける製品が否定されたように感じた」と打ち明ける。
同社は消火器や火災報知機から、石油コンビナートなどの防災設備まで幅広く手がけるが、これまで製品開発で重視してきたのは「発火後にどう対応するか」という視点だった。
しかし、ガソリンはひとたび火がつけば爆発的に燃え広がり、なすすべもない。
それならガソリンに薬剤を吹き付け、事前に引火を抑える機器を作れないか。
「消火」から「引火抑制」へ――発想の転換だった。
おりしも、同社は数年前から、海外で続発していた大型バスの炎上事故に着目。
漏れた燃料に引火するケースが多いことから、薬剤を高速噴射して消火する技術を開発していた。
これをさらに広範囲に噴射できるようノズルを改良。
薬剤についても成分の微調整を重ねた。
泡と膜でガソリンの気化を抑え、引火を防ぐ新しい防災機器が誕生した。
製品名「クイックスプラッシャー(火災抑制剤放射器)」。
重さは約5キロと一般的だが、約10平方メートルの範囲に2・5リットルの薬剤をわずか1・8秒で噴射する。
30~60秒かかる一般的な消火器と比べると差は歴然だ。
同社の実験動画では、一般的な消火器は噴射に時間がかかり、ガソリンに火を近づけると瞬時に引火し、炎上してしまう。
一方、同社の新製品は、高速噴射した薬剤がガソリンの気化を抑え、燃え広がらなかった。
引火したガソリンに吹き付けた場合でも、5秒ほどで火勢が弱まった。
過去に消防署長などを務め、実験にも立ち会った公益財団法人「市民防災研究所」(東京都)の坂口事務局長は、「ガソリンは、いったん火がつくと消すのが難しい。引火抑制に成功したのは画期的だ」と評価する。
ガソリンによる放火事件は、過去にも多くの犠牲者を出してきた。
03年9月、名古屋市東区のビルに男が立てこもった事件では、床にまかれたガソリンが爆発・炎上し、3人が死亡、41人が重軽傷を負った。
09年7月に大阪市此花区のパチンコ店で起きた事件では5人が死亡、10人が重軽傷を負った。
大阪市消防局によると、ガソリンに特化した装備はなく、消火には通常の泡消火剤を使う。
屋内にまかれた場合は、換気して、気化したガソリンを外に出すが、消防隊員にとっては最も危険な現場の一つだ。
日本ドライケミカルの新製品は、こうした火災や交通事故現場でのガソリン漏れ、公共交通機関や大規模イベントでのテロ対策などに活用してもらうことを想定しているという。
同社は現在、引火抑制や噴射などの技術について特許出願中で、防災週間(8月30日~9月5日)中の発売を目指している。
高橋さんは「京アニのような被害を二度と出したくない」と強調した。
https://mainichi.jp/articles/20200720/dde/041/040/027000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。